不動産テックとは?種類・課題・メリット【注目の不動産業界カオスマップ】
不動産テックとは、現在不動産業界に大きな変化をもたらしている新たな潮流です。これにより市場の活性化や、私たち消費者にとってもメリットが生まれるかもしれません。そこで、この記事では不動産テックの概要や基礎知識、メリットについて解説します。
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- 不動産テックとは
- 不動産テックの市場規模
- 不動産業界の課題
- 人材不足
- 生産性の低さ
- 情報の不透明性
- デジタル化の遅れ
- 空き家問題
- 持続可能性への対応不足
- 不動産テックの代表的なテクノロジー
- デジタルプラットフォーム
- AIとデータ分析
- スマートホーム技術
- バーチャルツアーと3Dモデリング
- ブロックチェーン
- 建築・施工テクノロジー
- 生成AI
- 不動産テックのカテゴリー
- 1. 不動産データベース
- 2. 業務支援
- 3. ローン・保証
- 4. スペースシェアリング
- 5. マッチング
- 6. 価格可視化・査定
- 7. IoT
- 8. VR・AR
- 9. 生成AI
- 10. クラウドファンディング
- 不動産テックの進化によるメリット
- ITによる情報の質・量の向上
- 消費者の購買意欲が高まり、不動産市場が活性化
- 不動産業界の公平化、透明化が進む
- 不動産テックの今後
- デジタル化の加速による業務効率の向上
- 顧客体験の個別最適化とパーソナライズの進化
- 環境配慮型技術と持続可能性への対応
- 地方活性化と都市部との格差是正
- 投資機会の拡大と新しい資産運用の形
- 新しい働き方やライフスタイルへの対応
- 不動産テックが革新する不動産業界
- BOXILとは
不動産テックとは
不動産テックとは、「不動産」と「テクノロジー」を組み合わせた新しい概念で、不動産業界の課題を解決するための革新的な技術やサービスのことです。英語では「PropTech」と言われています。
不動産テックは、ITツールやインターネットを活用して不動産の売買や賃貸、投資に関する新たな仕組みを構築し、ユーザーとサービス提供者の取引の在り方を変革するものです。これにより、業務プロセスの自動化や情報の透明性の向上が進み、効率化やコスト削減、迅速かつ正確なサービス提供の実現が期待できます。
不動産テックの市場規模
不動産テック市場は急速に拡大しており、2022年度には市場規模が9,402億円に達し、前年度比で21.1%の成長を見せました。さらに、2030年度には約2.5倍の2兆3,780億円に達すると予測されています。
※出典:矢野経済研究所「不動産テック市場に関する調査を実施(2024年)」(2025年8月27日閲覧)
この成長は、消費者向けサービスと事業者向けサービスの両方で見られます。不動産マッチングサービスや、不動産仲介・管理業務支援、価格査定支援サービスの拡大などが、市場拡大に貢献すると考えられるとのことです。
不動産業界の課題
不動産テックが登場した背景にある、不動産業界の課題について詳しく解説します。
人材不足
不動産業界では、人材不足が深刻な課題となっています。建設現場の高齢化や若者の業界離れが進む中、経験豊富な専門家の減少が顕著です。
不動産営業や管理業務には専門知識とコミュニケーション能力が求められるため、新しい人材の育成や魅力的な労働環境の提供が急務と言えます。
また、ITやデジタル技術の活用が進む中で、これらのスキルをもつ人材の確保も重要です。
生産性の低さ
不動産業界はいまだに手作業やアナログな業務が多く、他業界と比べて生産性が低いと指摘されています。不動産取引には多くの書類や手続きが伴い、その一つひとつが時間とコストを要します。
契約書や物件情報の管理には紙媒体を使用することが多く、業務効率化が進んでいません。これにより、時間やコストが無駄にかかり、生産性と利益率の低下を招いています。
情報の不透明性
不動産取引においては、情報の不透明性が信頼性を損なう原因となっています。物件の詳細や価格設定、管理状況が十分に公開されていない場合、消費者や投資家が正確な判断を下すのが難しいです。
また、物件価格の妥当性や市場動向についての情報も偏りがちで、個人にとって十分に理解しづらいといった問題も存在しています。取引の透明性を高める取り組みや情報公開の推進が必要でしょう。
デジタル化の遅れ
不動産業界では、デジタル化の進展が他業界に比べて遅れていると言われています。紙ベースの業務や対面での手続きが依然として主流であり、業務の効率化や顧客サービスの向上が阻まれているからです。
たとえば、物件の情報は広告や仲介業者を通じて提供されることが主流で、買い手や借り手が適切な情報にアクセスするまでに時間のかかるケースが多く見られます。
また、オンラインでの物件閲覧や契約手続きの普及が不十分なため、顧客体験が向上しにくいのも課題です。そのため、業界全体でのデジタルツールの導入や、AIやブロックチェーンを活用した取引プロセスの改善が求められています。
空き家問題
日本では、人口減少と都市部への人口集中が進む一方で、地方を中心に空き家問題が深刻化しています。これらの空き家は、地域の景観や治安の悪化、災害時のリスク増大といった問題を引き起こすことがあります。
また、管理や維持費の負担が所有者にとって大きな負担となり、結果として適切な活用がされないことも多いです。この問題に対処するためには、空き家の再利用促進や、規制緩和による利活用の可能性拡大、地域コミュニティとの連携が必要でしょう。
持続可能性への対応不足
不動産業界は、エネルギー消費や温室効果ガスの排出量が多い分野の一つです。
しかし、従来の不動産開発や管理では、環境問題に十分配慮されていないことが多く、持続可能な社会の実現に向けた課題として認識されています。この点で、効率的なエネルギー管理や環境負荷の低減を実現する技術が求められています。
不動産テックの代表的なテクノロジー
不動産テックの代表的な技術について紹介します。
デジタルプラットフォーム
オンラインマーケットプレイスやアプリを通じて、不動産の売買・賃貸を効率的に行います。これにより、従来の不動産仲介業務が簡略化され、利用者は手軽に物件情報を閲覧・比較できるようになっています。
AIとデータ分析
人工知能(AI)や機械学習を活用し、次のようなサービスを提供します。
- 購入者や借り手のニーズ予測
- 不動産価格の予測
- 市場動向の分析
スマートホーム技術
IoTを活用し、住宅の電力消費管理・セキュリティシステム・遠隔操作可能な家電など、住環境を向上させる技術が発展しています。
バーチャルツアーと3Dモデリング
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用して、物件の内覧をオンラインで可能にする技術です。これにより、実際に現地を訪れる前に詳細な確認ができ、時間や労力が削減されます。
ブロックチェーン
不動産取引における契約や所有権の管理を透明化し、信頼性を高めます。また、スマートコントラクトを用いることで、取引プロセスの自動化・効率化も可能です。
建築・施工テクノロジー
3Dプリンティングやロボティクスを用いた建築技術の導入により、建設コストや時間の削減が進められています。
生成AI
生成AIは、不動産業界の効率化や顧客体験の向上に貢献する最新の技術であり、大量のデータやパターンを学習して、新しいコンテンツや価値を創出します。この技術は、次のような形で不動産テックに革新をもたらしています。
- 物件広告の自動生成
- 顧客からの問い合わせに対応する高度なチャットボット
- 契約書の作成支援
- リノベーションやインテリアデザインの提案
不動産テックのカテゴリー
一般社団法人不動産テック協会では、毎年、不動産テックのカテゴリーと企業を網羅したカオスマップを掲載しています。「不動産テックカオスマップ(第10版)」※より、不動産テックのカテゴリーを整理して紹介します。
※参照:不動産テック協会「不動産テック カオスマップ」(2024年12月2日閲覧)
1. 不動産データベース
不動産関連データの分析・提供を行うサービスが含まれている、物件情報メディアと不動産情報が統合されたカテゴリーです。
不動産登記情報、都市開発状況、ハザード情報などを地図上で確認できます。計測機能を活用し、建物の面積や外周を効率的に調査可能です。
2. 業務支援
不動産業者の業務効率化を目的とした支援サービスで、次のサブカテゴリーに分かれます。
集客
不動産売却希望者をサポートするオンラインプラットフォームや、物件検索に特化したホームページの構築支援など。
顧客対応
AIによる24時間自動応答や、スマートフォンでの鍵開閉システムを活用した非対面内見サービスなど。
契約・決済
募集から契約・決済までの業務を一元管理するシステムや、電子契約・決済、本人確認ツールなど。
設計・施工
現場での作業報告や工事日報を作成できるアプリ、アナログなやり取りにも対応した施工管理サービスなど。
管理・アフター
空室対策や内見対応、契約更新、工事業務など、プロパティマネジメント業務を効率化する支援サービスやツール。
3. ローン・保証
不動産購入時の金融機関選びやローンの借り換えシミュレーションなど、ユーザーの条件に適した住宅ローンを提案するサービスを提供しています。また、フリーランスや個人事業主向けの賃貸保証サービスも含まれます。
4. スペースシェアリング
空きスペースの有効活用を目的に、インターネットやアプリを通じて貸し手と借り手をマッチングするサービスです。
会議室・駐車場・オフィス・倉庫・住宅など、多岐にわたるスペースが対象となります。多様化する働き方や暮らし方に対応し、新たな市場の創出や社会的課題の解決に貢献する可能性があります。
5. マッチング
インターネット上で不動産における需要と供給を効率的につなぐサービスです。
オーナーと賃借人、出店希望者と不動産会社、職人・大工・作業員など、不動産に関わるさまざまな人や企業をマッチングします。シェアリング、リフォーム・リノベーション関連は除かれています。
6. 価格可視化・査定
AIや機械学習を用いて不動産の多様なデータを分析し、価格の見える化や査定結果、将来の見通しを提供するサービスです。これにより、適正な不動産価格の把握や市場の透明性・効率性の向上が期待できます。
7. IoT
IoTカテゴリーには、カメラやセンサーをインターネットと連携させ、不動産の状況をリアルタイムで確認できるシステムや、スマートフォンで開錠可能なスマートロックやスマートメーターおよびスマートホームなどが含まれます。
これらのIoT機器は、不動産の管理や運用の効率化だけでなく、入居者の快適性や安全性の向上にも寄与します。
8. VR・AR
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)も、不動産テック領域における特徴的な技術です。
VRを活用して物件の空間や雰囲気を再現し、現地訪問せずに内見を体験できるサービスや、ARを用いて実際の物件に視覚情報を重ね、家具の配置や壁紙の素材・色の変更を試せるサービスがあります。これらの技術の活用により、業務効率や集客力の向上が期待されています。
9. 生成AI
生成AIは、不動産業界でのさまざまな課題に対し、効率化や新しい価値創造を提供します。物件広告の自動生成から契約書や提案資料の作成支援、問い合わせ対応のチャットボット、さらに物件のビジュアル作成まで、多岐にわたる用途があります。
とくに、ビッグデータと組み合わせて市場分析を行い、物件の将来的な価値や賃貸需要を予測可能です。また、空室対策としてターゲット層に合わせた広告コピーや画像を自動生成するなど、よりパーソナライズされた顧客体験を提供するツールとしても注目されています。
10. クラウドファンディング
個人を中心とした複数投資者から、Webプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行うサービスです。不動産事業を目的とした資金需要者と提供者をマッチングさせるサービスもあります。
個人にとっては少額から不動産投資を行えるようになり、資金調達側にも、クラウドファンディングによって機会が拡大するメリットがあります。
不動産テックの進化によるメリット
不動産テックの進化によって、先にあげた課題が解決され、不動産業界に次の3つのメリットをもたらす可能性があります。実際にどのようなメリットがあるのか紹介します。
ITによる情報の質・量の向上
一つ目は、ITによる情報の非対称性の改善です。ITのおかげで、私たちはインターネットによって多くの物件情報を得られるようになりました。
たとえば賃貸物件の場合、現地に行かなくても、賃料や間取り・広さなどの情報は取得できます。このように、ITによって情報の量・質は大幅に向上しています。
消費者の購買意欲が高まり、不動産市場が活性化
テクノロジーによって、消費者の購買意欲を高めて、契約促進につながる可能性もあります。
たとえば、VRの活用です。VRによって、物件の内覧が現地に行かなくても簡単にできるようになります。これにより、消費者が物件に対してより具体的なイメージを持てるようになり、取引への意欲が高まることが期待できます。
不動産業界の公平化、透明化が進む
また、不動産業界の公平化、透明化にもテクノロジーが効果を発揮できます。悪質な業者の情報を消費者だけでなく、業界内部でも簡単に共有できるようになりました。
いわゆる「おとり物件」を使った不動産営業は、今後なくなることが予想されます。また、売主・買主の情報も透明化されることで、取引の透明性が増すことでしょう。
不動産テックの今後
不動産テックの今後の展開と進化について解説します。
デジタル化の加速による業務効率の向上
不動産業界は、長らくアナログなプロセスに依存してきましたが、今後はさらにデジタル化が進むと予測されています。契約書や登記などの煩雑な手続きは電子化され、時間やコストの削減が実現できます。
電子契約やキャッシュレス決済が標準化されることで、取引のスピードアップが図られ、仲介業者や顧客の負担が軽減されるでしょう。とくに、生成AIやブロックチェーン技術を活用した透明性の高い自動化プロセスの導入がポイントとなります。
顧客体験の個別最適化とパーソナライズの進化
不動産テックは、AIやビッグデータを駆使して、個々の顧客ニーズに最適化されたサービスを提供する方向に進化しています。たとえば、物件検索プラットフォームでは、過去の検索履歴や購入履歴にもとづいて、顧客に最適な物件を提案する機能がさらに高度化されるでしょう。
また、リノベーションやインテリアデザインでは、顧客の好みや予算に応じた高度なカスタマイズ提案も可能になります。こうしたパーソナライズされた体験が顧客満足度の向上につながることが期待されます。
環境配慮型技術と持続可能性への対応
持続可能な社会の実現に向け、不動産テックは環境配慮型の技術をさらに推進するでしょう。エネルギー効率を高めるIoT技術の普及や、スマートホームデバイスの活用が進むことで、建物の省エネルギー化が実現されます。
また、空き家や遊休スペースを有効活用するシェアリングエコノミー型サービスが拡大し、社会資源の効率的な活用も促進されるでしょう。不動産開発においても、カーボンニュートラルを意識した建築材料や手法が普及することが予測されます。
地方活性化と都市部との格差是正
地方の不動産市場は、これまで都市部と比べて情報の流通や取引の活発さに課題がありました。
しかし、不動産テックの普及により、地方市場のポテンシャルが引き出されることが期待されています。オンライン内覧やリモート契約が標準化されることで、地理的なハンディキャップが解消され、地方物件の取引が活発化するでしょう。また、地方独自の魅力をアピールするデジタルマーケティングの強化も進むと考えられます。
投資機会の拡大と新しい資産運用の形
クラウドファンディングやデジタル証券化の進展により、不動産投資がより身近なものとなり、少額からでも参入可能な仕組みが広がるでしょう。
従来、大規模な資金が必要だった不動産投資が、多様な投資家層に開かれることで、個人投資家や若年層が積極的に市場に参加するようになると予測されます。また、AIを活用したリスク分析やポートフォリオ管理が進化することで、安全かつ効率的な資産運用が可能になるでしょう。
新しい働き方やライフスタイルへの対応
テレワークやハイブリッドワークが浸透する中、不動産テックは、こうした新しい働き方やライフスタイルに対応するソリューションを提供しています。
たとえば、リモートワークに適したスペースのシェアリングサービスや、サードプレイスの提供が拡大するでしょう。また、多拠点居住をサポートするプラットフォームも増加し、住まい方や働き方の多様化に対応する不動産サービスがさらに進化することが期待されます。
不動産テックが革新する不動産業界
ここまで、不動産テックの概要とカテゴリー、メリットについて説明しました。
近年、金融の世界ではテクノロジーが広まり、FinTechという造語が知られるようになりましたが、不動産業界も同様の流れが起こっています。今のうちから不動産テックに対する理解を深めておくと、今後の不動産業界の動向を知りやすくなるでしょう。
BOXILとは
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