時間外労働とは?36協定が必須 !割増率、計算で注意すべき点
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時間外労働とは
時間外労働(残業)とは、労働基準法第32条にて定められている法定労働時間、1日8時間と1週間40時間を超過した労働をさします。時間外労働には、所定の割増率25%にもとづいて割増賃金、いわゆる残業代が付与されます。
休日出勤との違い
時間外労働は平日や祝日といった日に関係なく、法定労働時間を超えて働くこと全般をさします。これに対し休日出勤は、企業が休日と定めた日の労働のことです。平日に残業すれば時間外労働ではあるものの休日出勤ではありません。
また休日出勤のなかでも、大きく法定休日と法定外休日の2つにわけられます。法定休日は労基法で定められた労働者に必ず与えなければならない休日のことで、最低週1日または4週で4日間以上の休日が必要です。
一方法定外休日は法定休日以外に与えられた休日のことです。週休2日制の場合もどちらか1日は法定外休日と考えられます。法定外休日でも、所定労働時間を超えた場合には時間外労働として割増賃金(25%)が発生する可能性があります。
法定労働時間と所定労働時間の違い
法定労働時間が法律で定められた1日8時間、および1週間で40時間の勤務時間であるのに対し、所定労働時間は企業が就業規則や雇用契約書によって定めた就業時間であるのが大きな違いです。所定労働時間は、法定労働時間に収まるよう企業が定めます。
所定労働時間が法定労働時間より短くなる場合、所定労働時間を超えて働いても通常の賃金しか得られないケースがあります。これは、割増賃金が法定労働時間を超えたとき発生する賃金であり、所定労働時間と残業を足しても法定労働時間に届かない状況があるからです。
例として所定労働時間が7時間であり、会社から超過勤務を命じられて1時間の残業をしても、労働時間が合計で8時間を超えていないため法内残業となり、割増賃金は得られません。
時間外労働には36協定が必要
36協定のない状態で時間外労働をさせた場合、違法になります。そのため、少しでも残業させる可能性のある企業は事前に36協定を規定しましょう。
36協定における時間外労働の上限時間
36協定の締結によってはじめて残業ができます。36協定で残業が可能な時間は1か月45時間、1年360時間です。もしこの数字を上回る時期がある場合は、36協定の特別条項を別途締結しなければなりません。
36協定をはじめ、制度によって残業できる時間の違いは次の記事で解説しています。あわせてチェックしましょう。
特別条項にて残業時間を延長
36協定の特別条項を締結している場合、働き方改革関連法案の上限に抵触しないのであれば残業時間を延長可能です。ただし1年のうち6か月しか超えてはならず、超える6か月のなかでも、次のルールがあります。
- 年間720時間以内の残業
- 月45時間を上回った月の残業が平均80時間以内(休日労働を含む)
- 月100時間未満の残業(時間外労働+休日労働)
時間外労働をはじめ割増賃金が必要なケース
時間外労働や休日労働、深夜業には割増賃金(時間外手当)の支払いが義務づけられています。労働基準法によって定められた3種類の労働について、どのようなときにどの程度割増率が発生するのか確認しましょう。
| 名称 | 条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 法定労働時間を超えた労働 | 25% |
| 時間外労働(60時間時間超え) | 1か月で時間外労働が60時間を超えた分 | 50%(25%+25%) |
| 休日労働 | 法定休日の労働 | 35% |
| 深夜労働 | 午後10時〜翌日午前5時までの労働 | 25% |
時間外労働
時間外労働は、法定労働時間を超えた労働のことで、割増率は25%です。時間外労働が60時間以上を上回る場合はさらに25%が追加され、合計50%の賃金を支払います。
休日労働
前述した法定休日に労働を行う場合、休日労働として35%の割増率が課せられます。ただし法定休日は週1日であるため、たとえば週休2日制で日曜日が法定休日だった場合、土曜日に出勤しても通常どおりの計算方法で賃金が支払われるため注意しましょう。
なお、法定休日には法定労働時間自体が存在しないため、休日労働の場合時間外労働に対する割増賃金は発生しません。
深夜労働
午後10時から翌日午前5時までの労働は深夜労働と呼ばれ、25%の割増賃金が支払われます。また労働基準法によれば深夜労働は休日労働や時間外労働の割増率と重なるため、法定休日や時間外労働で深夜労働をさせる際は計算方法に注意しましょう。
時間外労働の計算方法
時間外労働を行う場合、賃金の計算は次のような式で行います。
- 時間外労働の賃金=1時間あたりの賃金×法定労働時間を超えた時間×割増率
割増率は、先ほど紹介したケースに当てはめて決めましょう。例として1時間あたりの賃金が1,500円で、時間外労働を2時間(まだ月間で60時間は超えていない)場合で計算しましょう。
- 時間外労働の賃金=1,500×2×1.25=3,750(円)
またこれとは別に割増賃金の基礎となる賃金には、皆勤手当といった各種手当を算入しなければなりません。ただし、次の手当については算入しなくてもよいとしています。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
時間外労働の計算が複雑なケース
時間外労働は、法定労働時間を超えることによって発生するものの、いくつかの制度においてはどのような状況が時間外労働に当てはまるのかわかりにくいケースがあります。そこで次に、各制度における労働時間の上限や時間外労働のルールについて紹介します。
みなし残業代(固定残業代)
みなし残業代とは、実際の残業時間にかかわらず一定額の残業代が支払われる制度のことです。企業が月々の残業代を計算せずに済むよう、事前に定めた額の残業代を一律で支払います。
規定の残業時間より短い際は指定のみなし残業代が、長い際はみなし残業代に加えて上回った分のみなし残業代が支払われます。
注意すべきは固定残業代を超えた場合、超過分の割増手当が支給される点です。みなし残業代は、残業することを想定して前もって支払われるものの、規定以上に残業したときは余剰分を割増賃金として加算します。
みなし残業については次の記事で解説しているため、こちらも参考にしましょう。
裁量労働制
裁量労働制とは、労働時間の制限を雇用主の裁量で定められないときに利用する制度です。具体的には、従業員の仕事内容が専門的である場合や、事業運営において必要な意思決定を行う場合が該当するでしょう。裁量労働制においては、規定の労働時間を実際に働いた時間としてみなします。
裁量労働制の場合、規定の労働時間にもとづいて残業代を含め給料が支払われます。そのため、規定で時間外労働を定めていれば残業代は出ますし、定められていなければ残業代は出ません。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、清算期間と呼ばれる一定期間(1~3か月)であらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、自由に始業時間と終業時間を決められる制度です。ただし必ず出勤すべき時間(コアタイム)は設けられています。
時間外労働に関しては、清算期間中、実際に労働した時間の合計が法定労働時間を超えた場合や、1か月ごとの週の平均労働時間が50時間を超えた場合に残業代が発生します。1日のなかで残業時間や延長といった協定を行う必要はありません。
年俸制・月給制
正社員の場合、年俸制・月給制を採用しているケースが多くあります。年俸制・月給制であっても、基本的な残業代の計算方法は変わりません。
ただし、計算の際に必要となる「1時間あたりの賃金」が存在しないため、これを事前に計算する必要があります。1時間あたりの賃金を算出する計算式は次のとおりです。
- 年俸制:年俸額÷12か月÷1か月の平均所定労働時間
- 月給制:月給額÷1か月の平均所定労働時間
時間外労働における注意点
最後に、時間外労働について考えるうえで注意すべきポイントを解説します。
残業代の時効
支払われていなかった残業代はさかのぼって受け取れるものの、3年が経過した時点で権利は消滅します。例として、2024年4月30日の給与で残業代が支払われなかったのであれば、賃金を請求できるのは2027年4月30日までです。
割増賃金の重複
休日労働や深夜労働の割増賃金は重複が可能です。時間外労働を深夜に行っている場合は、時間外労働25%、深夜労働25%で、足した50%を割増賃金として支払われなければいけません。
同様に、休日労働が深夜労働となった場合には休日労働が35%、深夜業が25%で合わせて60%の割増賃金を支払う必要があります。
管理職における時間外労働の扱い
会社の管理職は、法律上「管理監督者」と呼ばれ経営者と一体的な地位にあることから、時間外・休日労働の規制対象外ですが、深夜労働の割増賃金(25%)は支払い義務があります。
ただし、管理監督者に当てはまるかどうかは役職名で決まるのではなく、どの程度の責任・権限があるかや、勤務形態の実態といった事柄で判断されます。
そのため待遇や権限が一般労働者と変わらない場合は、残業代の支払いが必要になるため注意しましょう。
時間外労働時間の数え方
時間外労働時間を計算する際、26分や37分といった中途半端な時間になることも多くあります。こういった場合、労働基準法では事務作業を簡略化するため30分未満の端数は切り捨て、30分以上の端数は切り上げていいとされています。
30分以上の端数を切り捨てた場合、切り捨てた時間分の賃金は未払いであると判断されるため注意しましょう。また原則的には、時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理とされています。
ただし、アナログな方法で分単位の労働時間を管理するのは非常に手間がかかり、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。そのため、正確かつ効率的に労働時間を管理したいのであれば、勤怠管理システムといった管理ツールを導入するのがおすすめです。
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