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シンクライアントとは?背景・メリット・実装方式・課題

最終更新日:(記事の情報は現在から1653日前のものです)
シンクライアントとは、OSやアプリケーションをサーバで一元管理し、ストレージのない簡素なクライアントPCでセキュアな環境を実現するシステムです。そのメリットと実装方式にはどのようなものがあるのか、概要とともに解説します。

シンクライアントとは

シンクライアントとは、エンドユーザのクライアントPCをストレージも搭載しない簡素なものとし、サーバに集中させたOSやアプリケーション、データにアクセスすることによって作業を可能にする、統合管理システムのことです。

これによって、システム管理の簡素化や情報漏えいを防ぐなどのメリットがあり、企業の運営に最適なシステムだと考えられています。

シンクライアントの歴史・普及の背景

シンクライアントの歴史は意外に古く、ハードウェアが非常に高価だった1990年代半ばには、Oracle「Network Computer」のように安価な端末を使用したシステムの共有が行われていました。

その後、デスクトップPCの低価格化が進み、シンクライアント導入のメリットが少なくなると、クライアント・サーバ型という1人1台のPC + 各種サーバというシステムが主流になります。

しかし、2005年の個人情報保護法をきっかけに、シンクライアントの情報漏えいやセキュリティに対するメリットが評価されたことから再度普及が進み、2011年の東日本大震災などの災害時での有用性が確認されると、モバイル環境での活用を含めた進化が加速、現在にいたっています。

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シンクライアントのメリット

外出先からの使用が可能

外出先での接続環境が良好ならば、クライアントPCをサーバに接続して通常通りの業務を行うことが可能です。

セキュリティ

シンクライアントでは、データは全てサーバ側が保持するため、クライアントPCには一切のデータがなく、紛失や盗難などによる万一の情報漏えいを防ぐことができるほか、SSLなどの暗号化技術により、Free Wi-Fi使用時などでも安全です。

PC環境の一元管理が可能

クライアント・サーバ型システムの場合、1人1台のPCにOSやアプリケーションをインストールするため、OSのアップデートを含むシステム管理がどうしても煩雑になってしまいます。

これに対して、シンクライアントの場合はOSやアプリケーションをサーバ側が保持し、クライアントPCはサーバに接続してインターフェイスの操作を行うだけとなるため、サーバ側の管理のみを行うことによって、システム全体の一元管理を可能としています。

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シンクライアントの活用イメージ

シンクライアントを有効に活用できる場面としては、以下のような状況が考えられます。

  • フェイルセーフによる災害時の保護機能
  • コールセンターなどのような定型業務を複数人数で行う場合
  • クライアントPC/モバイルデバイスを使用した外回り営業
  • 海外拠点での展開

これ以外にもさまざまな活用場面が考えられますが、通信インフラが整備されたことを前提に、データセンターで運用されるサーバの堅牢性と、データを保持しないクライアントPCというシンクライアントの持つ特徴が、システムの一元管理や強固なセキュリティが必要な場面で有効となっているのが分かります。

シンクライアントの実装方式

シンクライアントの実装にあたっては、その方式を選択する必要があります。
それぞれにメリットがありますが、大きく分けて「ネットワーク型」と「画面転送型」の2つに分けることができ、さらに画面転送型は「ブレードPC型」「プレゼンテーション型」「仮想PC型」に分けることができます。

最大の違いは、ネットワーク型がクライアントPCのCPUやメモリーなどのリソースを使用するのに対し、画面転送型ではリソースをサーバ側に依存し、クライアントPCは操作をするだけになります。

ネットワークブート型シンクライアント

ネットワークブート型シンクライアントは、OSやアプリケーションなどを格納した単一イメージファイルをサーバに用意し、イメージファイルをネットワーク経由でクライアントPCのメモリーにその都度ダウンロード、起動させる方式です。

保存しなければならないデータなどは、同様にネットワーク経由でネットワークストレージに保存することによって、クライアントPCにデータを保存しない環境を実現します。

メリット

ネットワーク型シンクライアントの場合、メモリーにダウンロードされたイメージファイルを展開した後は、クライアントPCのCPUで処理を行うため、ローカル環境と同様の操作感を得られることが最大のメリットといえます。

また、システムに接続するクライアントPCが、同一のイメージファイルを利用することにより、システム管理が簡単になるという利点もあります。

ブレードPC型シンクライアント

ブレードPC型シンクライアントの場合は、サーバにブレードサーバのクライアント版となる「ブレードPC」を複数導入することが前提となります。

複数用意されたブレードPCにOSを含むシステムを構築して動作させ、紐づけられたクライアントPC上に画面転送を行い、操作するという仕組みになります。

当然のことながら、クライアントPCの数だけブレードPCを用意する必要があります。

メリット

ブレードPC型シンクライアントは画面転送型とはなりますが、それぞれのクライアントPC専用のブレードPCを用意するため、ブレードPCの高いパフォーマンスを占有して使用することが可能です。

このため、クライアントPCのパフォーマンスが通常のPCと同等となり、個々のPCに依存するグラフィック作業などを行うのに最適である、というメリットがあります。

プレゼンテーション型シンクライアント

プレゼンテーション型シンクライアントの場合、Windows ServerなどのサーバOS上にアプリケーションを直接インストールして動作させ、画面転送された複数のクライアントPCで共有して使用する仕組みになります。

サーバOS上でのアプリケーション共有という仕組みから、アプリケーション側の対応や動作確認が必須になります。

メリット

プレゼンテーション型シンクライアントの場合では、複数のクライアントPCがサーバー上のアプリケーションを共有するため、サーバのリソース自体も共有することになりますが、サーバに求められるシステム要件がそれほど高くないため、コストパフォーマンスに優れたシステム構築が可能というメリットがあります。

また、システムがサーバに集中するため、管理が容易になるというメリットもあります。

仮想PC型シンクライアント

仮想PC型シンクライアントの場合、高性能な単一サーバ上に「VMware vSphere」「Hyper-V」などを使用した複数台分の仮想デスクトップを構築し、画面転送によってクライアントPCが接続、使用するという仕組みになります。

この場合の接続も専用に割り当てられたものではなく、コネクションブローカーというサーバが自動割り振りするため、ユーザー側が接続先を意識する必要もありません。

メリット

仮想PC型シンクライアントでは、複数の仮想デスクトップを持つ画面転送型という仕組みから、管理の容易さを保ちながら、個々のクライアントPC環境の独立性を確保できる、割り当てられたリソースをフル活用できるというメリットがあります。

シンクライアントが解決する課題

ハードウェア:クライアントの延命化

従来のクライアント・サーバ型システムの場合、ハードウェアに関して以下の課題を抱えていました。

  • 個々のハードウェアのCPU/メモリーなどのリソースは共有することが出来ない
  • PCの故障や異常など、データ消失の危険性がある
  • PCのパフォーマンス向上に台数分のコストが必要

これらの課題はシンクライアントによって、以下のように解決できます。

  • サーバのリソースをクライアントPCで共有
  • データセンターでのサーバ稼働で冗長性を確保
  • クライアントPCにパフォーマンスが必要なく、延命化が可能

管理者:集中管理

同様に、管理者は「運用管理」「維持・保守」「資産管理」という課題を抱えていました。

  • 複数のハードウェア・複数の拠点での管理により複数の管理者が必要
  • メンテナンスにかかる手間とコスト
  • 個々のライフサイクルによって資産管理が煩雑

これらの課題はシンクライアントによって、以下のように解決できます。

  • サーバの一元管理により個別の管理が不要
  • クライアントPCの交換のみ個別のメンテナンス不要
  • リプレースがシンプル

セキュリティ:情報漏えい防止

セキュリティに関し、従来システムではシステムレベルとユーザーレベルで課題を抱えていました。

  • 個々のユーザーに割り当てられたPCにデータ保存ができてしまう
  • 簡単に外部ストレージへのデータ保存ができてしまう

シンクライアントの場合では、

  • ストレージのないクライアントPCにはデータ保存ができない
  • 強固な認証システム採用でデータ持ち出しの規制が可能

という解決策を提示することが可能です。
しかしながら、この点で重要なのはユーザーを含む企業全体での意識だということになります。

ユーザー:使い勝手・紛失防止

ユーザーの使い勝手等に関して従来システムでは「リモートワーク」と「紛失のリスク」を抱えていました。

  • 限定されたPCの設置場所・持ち出し禁止
  • 個々のPCのメンテナンス依頼が必要
  • 紛失の際の情報漏えいリスク

シンクライアントの場合、

  • クライアントPCにデータが保存されないため持ち出し可能
  • サーバに管理が集約するためメンテナンスを気にする必要なし
  • 万が一紛失してもデータ保存されていないため情報漏えいのリスクがない

外回り営業などの際にもシンクライアントは有効ですが、在宅勤務などのリモートワークにも効果を発揮する、といえます。

シンクライアント活用でリスク回避と業務効率化を

インターネット新時代ともいうことができる、高度なネットワーク化が進み、情報化社会となった現在では、ビジネス上でのセキュリティ管理や効率化は無視できない状況となっています。

従来のシステムでは管理する人間にその大部分を依存していたこれらの要因は、シンクライアントの導入によって大きく改善されることが期待できます。

それぞれのシンクライアント実装方式によって、享受できるメリットやかかるコストは変化しますが、業務内容に見合ったシステム導入を行うことによって、そのメリットを最大化し、効率化をはかることが可能になるでしょう

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