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【特集2】SaaSのエンタープライズ開拓は「パートナー営業」が鍵? 営業マネージャーが押さえるべき3つの営業チャネルとは

2019年4月25日(木)、SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」を運営するスマートキャンプと、これまでに多くのSaaS企業に最新テクノロジーを提供してきた日本IBMがSaaS企業のグロース戦略に関するセミナーを開催した。本記事では、昨今トレンドとなっているエンタープライズ企業の開拓について全4回の特集を通じて徹底的に解説。第2回はエンタープライズ企業を開拓するための営業のポイントについてCOO阿部が解説する。
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エンタープライズ開拓こそキーマンアプローチを意識する

エンタープライズ企業における意思決定構造は、担当者クラス、課長クラス、部長クラス、役員クラスなど階層が多く、また部門を超えた検討が必要になることも多いため複雑になっている。その中でスピーディに導入を進めるためには、実質的な意思決定権限を持つキーマンへのアプローチが重要だ。

キーマンにアプローチする方法は、当たり前ではあるが直接的にキーマンにアプローチする方法と、担当者クラスから段階的にアプローチする方法の2つに分けられる。導入までのスピードを考えれば、やはり直接的にキーマンにアプローチしたい。しかし、キーマンとの接点構築の難易度は高く、段階的なアプローチも組み合わせた営業戦略を練ることは必須だ。

営業戦略の要となる営業チャネルは、インバウンド、アウトバウンド、パートナーの3つの選択肢があるが、営業チャネルによってキーマンへのアプローチのしやすさも変化する。キーマンは自ら問い合わせせず担当者クラスに問い合わせを任せることが多いためインバウンドでの接点構築は難しく、直接的にアプローチするのであればキーマンに狙いを定めてアウトバウンドやパートナーチャネルを活用するのが有効だ。

また、いずれの営業チャネルにおいても前提となるターゲット選定が非常に重要になる。ターゲットとするエンタープライズ企業をバイネームで選定し、効率的・効果的に営業チャネルを組み立てていくべきだ。そのため、まずはターゲット選定の考え方について解説した後、インバウンド、アウトバウンド、パートナーそれぞれの営業チャネルについて最新のトレンド、ポイントについて整理したい。

ABMにもとづきバイネームでターゲット選定する

ABMとはAccount Based Marketingの略で、ターゲットとなるアカウントを具体的に選定し、それにもとづいてマーケティング・営業施策を企画・実行するという考え方である。ABMをサポートするSaaSも増えてきており、昨今のマーケティングにおいてもはや当たり前になりつつある考え方である。

ABMの登場前後でリード(見込み顧客)の考え方は大きく変化した。ABM登場前、リードは「個人情報」であったが、登場後、リードは「ターゲットアカウントの個人情報」になった。それに伴いリード単価のロジックも変化した。ターゲットアカウントの個人情報には数万円~数十万円の価値があるが、ターゲットアカウントではない個人情報には1円の価値もない。

ABMのポイントは、PDCAサイクルを回してターゲットアカウントを明確化していくことと、明確化したターゲットアカウントの導入事例を着実にストックしていくことの2つだ。まず、業界やエリアなどの一般的な属性情報から、ITリテラシーや会社のカルチャーなどより具体的な属性情報に基づいてターゲットアカウントを選定していく。始めから100%の精度である必要はなく、仮説検証を通じてターゲットアカウントをより精緻にしていけばよい。

また、仮説検証にあたっては、ターゲットとなるセグメントにおいて有効な事例になり得る企業からアプローチすべきだ。ブランド力・影響力のある企業への導入事例をつくれれば、以降その事例を活用して横展開がしやすくなる。そのためにも、最初の事例をつくる際には投資と位置付けてキャンペーン価格を設定するなども有効だろう。

このように考えると、実はビジネスのフェーズによってもターゲットアカウントは変化させるべきだ。たとえば、ITリテラシーが高く、積極的に新しいサービスを導入するカルチャーの企業はイノベーション理論でいうイノベーター、アーリーアダプターであり、積極的に新しいSaaSを導入してビジネスパートナーとして一緒に改善を進めてくれるため、SaaSの初期フェーズのターゲットアカウントとして適切である。

一方、ITリテラシーが低く、積極的に新しいサービスを導入するカルチャーではない企業はレイトマジョリティかラガードに当たり、新しいSaaSの導入ハードルが高く、また導入しても効果が出なければすぐに解約してしまうためSaaSの初期フェーズのターゲットとしては適切ではない。このような企業には、事例獲得後にアプローチしていくべきだ。

このようにABMの考え方のもとターゲットアカウントを選定してリード獲得・営業アプローチができれば営業効率が飛躍的に向上する。ターゲットアカウントではない企業にとっても導入見込みのないSaaS企業からの営業が無くなるため時間のロスがない。

特にエンタープライズ企業をターゲットとした場合、ターゲット企業の社数も限られているためABMは必ず取り入れるべきだ。ターゲットとなるエンタープライズ企業を必ずバイネームでリストアップしてアプローチしていく。

インバウンドは接点構築の仕組みを構築する

インバウンドでターゲットアカウントに設定したエンタープライズ企業のリードを獲得していくポイントとしては、1.接点構築の面を広げること、2.接点構築のきっかけになり得るコンテンツを蓄積していくこと、3.接点構築のハードルを下げることの3つがある。

1.接点構築の面を広げる

インバウンドでリードを獲得するためには、「BOXIL」のような比較サイトやGoogleのリスティング広告、SNS広告などの広告や、オウンドメディアの運営を通じて接点構築の面を広げておく必要がある。見込み顧客がいきなりサービス名を検索することは少ないため、CRMや経費精算のような領域の切り口やインサイドセールスやクレジットカード連携のようなトレンドの切り口などで広く目に触れるようにし、検討開始時に候補入りできるようにする必要がある。

2.コンテンツを蓄積する

接点構築の面を広げたうえで、接点構築のきっかけになり得る、見込み顧客の興味を引くコンテンツを用意しておくことも非常に重要だ。認知を接点に引き上げるためには見込み顧客の個人情報を取得する必要がある。個人情報を取得できなければその後アプローチすることは難しい。そのため、見込み顧客がほしいと感じるコンテンツを用意し、そのコンテンツを提供する代わりに個人情報を提供してもらえるようにする。

しかし、このようなコンテンツを用意するのは非常に手間がかかる。そこで、オフラインのイベントを開催することがおすすめだ。オフラインイベントで既存顧客やパートナー企業にセミナーやパネルディスカッションの形式で登壇してもらい、その内容をコンテンツ化すれば効率的にコンテンツを蓄積していける。

3.接点構築のハードルを下げる

また、オフラインイベントは接点構築のハードルを下げる施策としてもとても有効だ。接点構築の面を広げて、また興味を引くコンテンツを用意しても、いきなり商談に進むのは見込み顧客にとって心理的なハードルが高く接点まで到達しづらい。一方オフラインイベントは1対1ではなくN対Nの関係となるため見込み顧客にとって心理的なハードルが低く、接点が築きやすくなる。

以上の話をまとめると、広告・オウンドメディアによる面の確保、イベントの開催、コンテンツ化のサイクルを回し続けることがインバウンド成功の鍵と言えるだろう。

アウトバウンドはあらかじめキーマンを特定してアプローチする

アウトバウンドの主な手段としてまず頭に浮かぶのは電話によるアプローチだろう。電話の場合、外部情報からあらかじめキーマンを特定して、部門名、役職、氏名を正しく伝えれば接続する確率を高められる。しかし、顧客側が営業電話に慣れている場合や忙しい場合にはやはり接続が難しく、結果としてアポイント取得率が0%台か、高くても2~3%の着地になることが多い。

そのため、インバウンドと同様、アポイントだけでなくハードルの低いセミナーやイベントへの誘導も用意しておくのが効果的だ。アポイントを断られてしまった場合には、最新のトレンドや導入事例に関するセミナーを打診すると質の高い接点にしやすくなる。

また、実際にはキーマンの特定が難しい場合が多いため、担当者クラスとの接点構築がメインになる。その場合も同様で、接点構築のハードルを低くするためにセミナーやイベントの受け皿を用意しておくべきで、さらにその後段階的にアプローチしていくために担当者クラス向けのイベント、キーマン向けのイベントなど登り方を設計しておくのも重要である。キーマン向けのイベントとしては、たとえばKPIマネジメントに関するセミナーなどが考えられる。

もう一つのアウトバウンドの手段として、デジタルマーケティングの時代になった今でも手紙は有効である。これはオンラインのメルマガと同じで、広告要素の強いものではなく私信として送るのがポイントだ。役員や部長宛てに届いた郵便物は、特に私信の場合仕訳段階で廃棄されるリスクは低く、また手元に届いた際に「何だろう?」と開封してもらえる可能性が高い。あとは、手紙を送った背景やアポイントのメリットなどを送り先に合わせて記載するなど、中身を工夫する。

ここまでできれば、成功している企業では10%~20%のアポイント取得率だと言われている。とは言え、やはり手紙の作成にはやはり手間がかかるため特に重点的にアプローチしたいターゲット企業に絞って実行するのがおすすめだ。

なお、アウトバウンドのアプローチとしてリファラル営業も非常に有効だ。これは完全なるアウトバウンドではないが、SNSや名刺情報などから自社が持ちうる人脈を可視化して、すでにある接点をもとにアプローチしていくことで高確率でキーマンにアプローチできる。いずれにせよキーマンの特定が重要だろう。

パートナーとの相互提供価値と役割分担を明確にする

パートナーを活用した開拓の具体的な施策として、イベントの共催、紹介契約、販売代理契約の3つについて取り上げたい。まずイベント共催は特別な契約が必要になるわけではないため、手軽に始められるパートナー施策の一つだろう。ターゲット企業の属性が似ており、かつ競合しない企業とイベントを共催することで、互いにターゲット企業のリードを獲得できる。

一方で紹介・販売代理契約の場合は特別な契約が必要になるため手軽には始めづらいが、紹介・代理販売企業にとって金銭的なインセンティブが発生するため、条件をしっかりと整えられれば強力な顧客獲得基盤となる。

イベント共催、紹介契約、販売代理契約のいずれの施策においても、すでに保有している顧客のリスト(たとえば既存顧客)からキーマンをピンポイントで紹介してもらう、またアプローチしてもらうことができるため、特に信頼関係も重要となるエンタープライズ企業へのアプローチとして非常に有効な施策のため積極的に取り組むべきだ。

ただし、金銭的なインセンティブを設ける契約を結ぶ場合、マージンの設定が非常に重要になる。マージンが少なければ強いインセンティブにならず、紹介や代理販売が行われなくなってしまうからだ。特にSaaSの場合サブスクリプションモデルのため、それぞれがどこまで担うのかによってマージンの考え方が大きく変化する点に注意する必要がある。

1.パートナーが紹介のみの場合

パートナーは紹介のみを担い、実際の商談や受注活動、そして受注後のカスタマーサクセスは自社が担う場合には、ショットの契約金額の10%~20%が目安になる。たとえば1か月10万円で最低契約期間が12か月の場合ショットの契約金額は120万円になるため、その10%~20%として12万円~24万円というイメージである。

2.パートナーが受注までする場合

パートナーが商談や受注活動を行い、受注後のカスタマーサクセスを自社が担う場合には、こちらもショットの契約金額を対象として、20%~30%が目安になる。上記と同じ例でいうと、24万円~36万円というイメージである。

3.パートナーがカスタマーサクセスまでする場合

パートナーが商談や受注活動、そして受注後のカスタマーサクセスまですべてを担う場合には、サブスクリプションの契約金額、つまりLTVに対して20~30%が目安だ。契約継続のための活動をパートナーが担うため、たとえば上記と同じケースで契約が5年間続いた場合、5年目まで毎年24万円~36万円をパートナーが得続けるイメージだ。

なお、上記いずれのパターンに関しても記載したマージンはあくまでも目安であり、実際にはSaaSの顧客単価や顧客獲得の難易度に応じてマージンを上下調整することが必要である。上手にインセンティブを設計し、顧客へのアプローチ状況などを共有するオペレーションを構築すれば大きな効果が出る施策だ。

IBMパートナーリーグを含む、SaaSとの協業取り組みはこちら

IBMパートナーリーグは、日本のエンタープライズ企業に最新のテクノロジーを提供している日本IBMが生み出す次世代のエコシステムだ。エンタープライズ企業の開拓においては前述のとおり営業とプロダクトが重要になるが、IBMパートナーリーグは、営業の観点ではIBMやパートナー企業の営業ネットワーク、プロダクトの観点ではIBMおよびパートナー企業のテクノロジーを活かして競争力のあるサービスを構築。最終的には、パートナーのサービスを通じてエンタープライズ企業に価値を届ける高度なコラボレーションのためのエコシステムを構築している。

以下、IBMパートナーリーグを含む、IBMとSaaSの協業取り組みを紹介していきたい。

(1)ビジネス企画の拡大におけるコラボレーション
OBCの奉行シリーズといえば、中堅・中小市場において会計や給与人事の分野でシェアNo.1([2016年/2017年]ノークリサーチ調査)を持つサービスだが、IBMビジネス・パートナーが奉行V ERP10や奉行i 10シリーズの展開を全国でけん引している。

エンタープライズ要件を理解している各地のIBMビジネス・パートナーが適切なサービスを選択、組み合わせ、ときには業界特化型サービス(Vertical SaaS)と組み合わせながら、最適なシステムを顧客に届けている様相だ。

IBMパートナーリーグは、販路を拡大したいサービス(SaaS)ベンダーと、顧客の幅広い要件に応えることで差別化を測りたいサービス・インテグレーターとが出会える貴重な場だ。

(2)SaaSによるデータやテクノロジー活用の例
IBMパートナーリーグにおけるコラボレーションではないが、日本IBMのデータやテクノロジーをビジネスに活用している事例もある。

たとえば、気象ビッグデータを分析し、その日の天気や気温の変化に合わせたコーディネートを提案するWebアプリ「TNQL(テンキュール)」では、IBMグループ企業The Weather Companyが提供する気象データを活用、ユーザーのコーディネートや色の好みをIBM Watsonに学習させ、パーソナライズされたサービスを提供している。

また、iPhoneにインストールしておくだけで歩数と道のりを自動で記録し、訪問場所や撮影した写真をログできるアプリ「SilentLog」では、毎日の生活から蓄積される大量のライフログをIBM Analytics Engineを活用してデータ分析し、分析時間の削減、データ付加価値の拡大に成功している。

IBMパートナーリーグに関心のある方は気軽に事務局に問い合わせてほしい。

【IBMパートナーリーグお問い合わせ先】
IBMパートナーリーグ事務局
LGSOL@jp.ibm.com

IBMのパートナーに対する取り組みはこちら
ibm.biz/japancsp

特集連載記事一覧
第1回 SaaS企業がSMBではなくエンタープライズを開拓すべきワケ
第3回 6月27日公開予定
第4回 6月27日公開予定

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