マイナンバーカードが健康保険証に、スマホ搭載や運転免許証一体化も – 管理への備えを今から

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フリーライター 佐藤 信彦

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マイナンバーカードが一部医療機関で健康保険証として使えるようになりました。さらに今後、スマートフォンへの搭載、運転免許証との一体化などが予定されており、活用領域が広がっています。利便性が高まる一方、個人情報の漏えいなどを懸念する声も根強く、企業も収集したマイナンバーのより厳格な管理が求められます。

メリットがない?マイナンバーカード

毎年2〜3月は確定申告期ですが、2025年度も「青色申告特別控除額」は65万円が維持されています。この控除を受けるにはe-Tax(電子申告)または電子帳簿保存が条件なので、e-Taxを初めて利用する方もいるでしょう。

e-Taxと聞くと「マイナンバーカード+ICカードリーダーが必須」と誤解されがちですが、それは正しくありません。マイナンバーカードを使う方式に加えて、「ID・パスワード方式」という税務署発行のIDで申告できる手段もあり、どちらでも65万円控除を受けられます。

こうした誤解は、マイナンバーカードの普及率が低いことと、「マイナンバー(個人番号)」(「通知カード」に記載された12桁の数字)と「マイナンバーカード」(マイナンバーや顔写真が印刷され、本人確認用の電子証明書機能が搭載されたICチップ付きカード)の混同などが主な原因と考えられます。

マイナンバーカードを取得するには、交付申請のうえ、わざわざ自治体窓口へ出向いて受け取らなければなりません。手続きに手間がかかる一方、カード所有で得られるメリットはそれほど多くありません。主にコンビニで住民票や印鑑登録証明書などの交付が受けられる程度です。多くの人が日常的に活用できる環境が整わない限り、マイナンバーカードを取得する動機は生まれにくいと考えられます。

その点は政府も認識しているはずです。その対策として、マイナンバーカードをさまざまな用途に使えるよう、具体的な取り組みが始まっています。

マイナンバーカードが健康保険証に、3月から

まず、一部医療機関でマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました( 厚生労働省 マイナポータル )。3月下旬から本格運用が開始される予定です。

マイナンバーカード保険証化のメリット

マイナンバーカードを健康保険証として使うメリットは、いくつかあげられます。

まず、転職による健康保険組合の変更、引っ越しによる住所変更などの場合でも、新しい健康保険証の発行を待つ必要がありません。保険証がない状態で実費診療を受け、自治体の窓口で後日払い戻してもらう、という煩雑さが解消される可能性があります。

また、受診や処方薬の情報が記録され、マイナポータルから確認可能になる結果、確定申告の医療費控除の省力化が期待されます。この記録を「お薬手帳」として活用し、旅行先や被災時などでも安心して医療が受けられます。

さらに、医師や薬剤師などに健診や薬剤の情報を開示できて、健康管理に役立つでしょう。2022年夏ごろには、手術や移植、透析といった情報も対象になる予定です。厚労省は、電子処方箋の機能も持たせるとしています。

事務手続きの面では、高齢受給者証や限度額適用認定証などの書類を窓口へ持参する必要もなくす方針です。

保険証利用の手続き

マイナンバーカードを健康保険証として使うには、事前登録が必要。PCとICカードリーダー、またはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを使えば、「マイナポータル」上で済ませられます。

登録しておくと、病院や調剤薬局で、マイナンバーカードだけで保険診療などが受けられるようになります。病院での手続き手順は以下のとおりです。

  1. 病院や薬局を利用する際、窓口の専用カードリーダーにマイナンバーカードを置き、ICチップ内の情報を読み取らせます

  2. 「顔認証付きカードリーダー」の場合は、カードリーダーのカメラで捉えた顔画像とICチップ内の顔写真データが比較され、本人確認されます。マイナンバーカードの持ち主が4桁の暗証番号を入力する確認方法もあります

  3. 「汎用カードリーダー」の場合は、4桁の暗証番号入力で本人確認されます

健康保険証のように窓口へ預ける必要はありません。

注意点は?

マイナンバーカードの健康保険証化には、注意しなければならない点もいくつかあります。

まず3月から利用可能になるものの、すべての病院と薬局が対応するわけではありません。非対応の病院などでは、引き続き健康保険証の提示が求められます。厚労省の目標だと、ほぼすべての医療機関が対応するのは2023年3月末です。

またマイナンバーカードと健康保険証の一体化でないため、健康保険の手続きは別途行う必要があります。加入や脱退などの届け出は、マイナンバーカードの健康保険証化とは別に今後も必要です。

マイナンバーカードの健康保険証機能は、 マイナポータルのFAQページ に詳しい情報が掲載されています。対象にならない人、利用登録ができない環境などの制約もあるので、一度目を通すとよいでしょう。

2025年に加速!マイナンバーカードの利便化と普及拡大

1. 健康保険証(マイナ保険証)としての完全移行

2025年12月2日以降、紙の健康保険証は原則発行されず、マイナンバーカードによる保険証利用(マイナ保険証)が基本になります。ただし、従来の保険証も有効期限内(最長1年)は使えます。後期高齢者の方は有効期限が2025年7月31日までなので要注意です。

2025年6月末時点で、人口に対するマイナ保険証の登録率は約67.9%に達しており、着実に普及が進んでいます(2025年8月時点)。

2. スマートフォンに搭載することで携帯が不要に

マイナンバーカードは2025年6月からスマートフォンに搭載できるようになり、Android・iPhoneともに対応が始まりました。これにより、マイナ保険証としての利用や行政手続きがスマホだけで完結し、物理カードを持ち歩く必要がなくなります。医療機関では専用リーダーにスマホをかざすだけで受診でき、資格確認や薬剤情報の閲覧も可能です。

将来的には運転免許証や在留カード機能もスマホに集約される見込みで、カード忘れや紛失リスクを減らし、日常の利便性を大幅に高める施策として注目されています。ただし、医療機関側にも対応が必要で、専用のリーダー導入や支援策が議論されています。

3. マイナンバーカード+運転免許証(=マイナ免許証)

2025年3月24日から「マイナ免許証」が始まり、マイナンバーカードに運転免許情報を搭載できるようになりました。利用者は免許証のみ、マイナ免許証のみ、両方持ちから選択可能です。住所変更は市区町村窓口でワンストップ化し、更新講習もオンライン受講が可能です。

手数料も通常より割安で、カード1枚に集約できる利便性があります。ただし券面に免許情報は表示されず、紛失時やカード更新時には専用手続きが必要です。

今後のマイナンバー活用拡大策

今後具体的に検討されているマイナンバーカード活用拡大策は、ほかにもあります。

在留カードとの一体化へ

政府はマイナンバーカードと在留カードの一体化を2025年度中に開始予定です。対象は中長期在留者や特別永住者で、1枚のカードで本人確認や在留資格確認、行政手続きが可能になります。これにより、在留期間の更新や住所変更などの手続きが簡素化され、自治体や出入国在留管理庁への届出が効率化されます。

カード紛失時のリスクや、セキュリティ面での厳格な管理が課題となる一方、外国人住民にとっては利便性向上や行政サービス利用の円滑化が期待されます。

デジタル認証アプリ(仮称:マイナアプリ)を提供予定

政府は2026年夏に「デジタル認証アプリ(仮称:マイナアプリ)」の提供を予定しています。これはマイナンバーカードの機能をスマートフォンに取り込み、行政手続や本人確認をアプリだけで完結できる仕組みです。利用者はログインや署名をスマホ操作で行えるため、暗証番号やICカードリーダーが不要になり、利便性が大幅に向上します。

さらにAIによる「次に必要な手続き案内」などのサポート機能も盛り込まれる計画で、行政サービス利用のハードルが下がりそうです。今後は民間のオンライン取引や携帯契約などへの活用拡大も見込まれ、生活・ビジネス双方でのデジタル本人確認の標準ツールになることが期待されています。

ますます広がる活用領域

内閣府のロードマップ には、ほかにも多種多様な活用案が掲載されています。従業員の社会保険や税手続きなども対象になっていて、企業の担当者にとって注目すべき内容といえます。民間利用の拡大にも積極的で、オンラインバンキングや民間オンライン取引、クレジットカード、キャッシュカードへの利用も検討されています。

マイナンバーやマイナンバーカードに直接アクセスしないとしても、個人の重要な鍵となる情報の利用には細心の注意が必要です。マイナンバーカードの活用領域が広がるほど、取り扱いには用心に用心を重ねなければなりません。関係する法律や手続きを把握し、適切な管理/運用サービスを導入することが求められます。

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