工事完了報告書とは?ひな形付きで記載事項を解説
工事完了報告書とは
工事完了報告書とは、建築工事を請け負って完成させた工事業者が、工事が発注どおりに完了したことを発注者へ報告する書類です。工事完了報告書の役割は完了の通知だけではなく、「受注した期間内に指示された仕様どおりに完成させたこと」を伝えるものであるため、金額や写真なども報告の裏付けとして報告書内に含めます。
なお工事報告書のフォーマットは自由であり、提出する企業が普段使っているひな形でも、報告を受ける発注者が指定するひな形でも問題ありません。作成したデータは通し番号を振り、データ提出がいつでもできるように適切に保管しておきましょう。
工事完了報告書はなぜ必要か
工事完了報告書が必要な理由は、工事が請負契約どおりの予算と仕様で無事完了したことを発注者(元請業者など)に説明するためです。また、リフォームローン利用時に金融機関の要請で施工業者の工事完了報告書を提出する場合があります。さらには、写真や領収書などの添付資料の証拠力によって、両者もしくは第三者との間で後日トラブルが起こった場合にも、強力な証明書類として利用可能です。
一方で、会計資料に計上する固定資産の証拠や、建設会社の新人教育で施工ノウハウの紹介資料として使用するケースもあります。ちなみに、工事発注者が官公庁の場合には、工事完了報告書の提出が義務付けられるのが一般的です。
なお、工事完了報告書の作成や保管について、法律上で義務はありません。ただし、報告書以外のさまざまな用途に後日流用できる有用な資料であるため、証拠能力が高くなるよう作成し、適切に保管する習慣をもちましょう。
工事完了報告書の主な記載事項
工事完了報告書の主な記載事項について解説します。
- 工期
- 工事現場
- 金額
- 工事業者・担当者名
- 工事完了の写真
工期
「工期」には、工事の着工から完了検査までのトータルの実施期間を記載します。基本的には請負契約で定めて工程表などで発注者に示した期間を記載しますが、施工の進捗が遅れた場合には後日の証拠書類としての意味も考えて、延長した日程も含めた実際の工期を記載するようにしましょう。
工事現場
「工事現場」とは工事を実施した場所の住所を記載しますが、広大な現場の場合には建物を特定する棟や部屋番号および「機械室」などの補助的な情報も付記するとよいでしょう。
金額
「金額」には原則として請負契約の受注金額を記載します。ただし、この請負金額は工事完了報告書を提出する元請業者やその他のクライアントにより、金額や認識が異なる場合があります。そのため、金額の認識の相違に関してトラブルにならないように、提出先と金額との関連性を契約書などから確認しながら慎重に判断しましょう。
請負金額の部分では材料費その他の経費を具体的な金額で記載する場合があります。使用するひな形に施工費欄しかない場合には、「材料費および経費明細」やそれらを裏付ける領収書などを添付して、本体工事と材料費および経費がいくらかかったのか区別して表記するのが望ましいでしょう。
なお、費用には材料費や機材費だけでなく、ガソリン代や有料道路代などの交通費および消耗品費が含まれます。しかし、工事や関連作業に加わった人件費は含まれません。
工事業者・担当者名
「工事業者・担当者名」は施工会社の所在と商号はもちろんのこと、工事を担当した担当者の名前も記載します。もしも現場監理者が複数人関わった場合には、現場責任者の名前を代表者として記載しましょう。
また、報告者の欄には会社印(ゴム印)と社判および担当者個人の記名押印を求められる場合が多いため、提出前にはそれらの抜け漏れがないようにチェックしましょう。
工事完了の写真
「工事完了の写真」とは、すべての施工が完了したあとに撮影した現場の写真ですが、施工による変化がわかるように、施工前の写真もあわせて添付するのが一般的です。
工事完了報告書では工事の進捗や都度の状態がわかる資料の添付が望ましく、文字で説明するよりも写真の方が多くの情報が添えられます。そのため、後日に事実を示す証拠になると想定して、複数の画像やイラストを可能な限り使いましょう。
なお、工事現場で撮影すべき箇所の例は下記のとおりです。
施工箇所
- 施工前
- 施工途中
- 施工後
- 完成後に見えなくなる箇所
その他
- 現場の全景
- 現場の施設看板
- 使用した施工道具や機材および材料など
- 異常や懸念など報告が必要だと思われる箇所
工事完了報告書のひな形(テンプレート)
工事完了報告書の作成を検討している場合に利用できるテンプレートを用意しました。工事完了報告書を作成する際にはぜひご利用ください。
工事完了報告書の提出時期
工事完了報告書の提出自体に法的義務はなく、提出期限も法定されていません。提出時期については、あらかじめ提出期限や使用するひな形の有無を発注者などの元請業者へ確認しておきましょう。
なお、工事完了報告書が自社の書類作成や写真添付だけでなく他社の協力が必要になる場合には、他社の書類の手配や見積もりおよび明細などの準備で時間がかかると想定して、余裕をもったスケジュールで作成してください。
工事完了報告書の保存期間
先々で自社でも確認できるように、工事完了報告書は手元に控えを残しましょう。
なお、建設業法施行規則第28条に「書類の保存期間は、請け負った建設工事ごとに、建設工事の目的物を引渡したときから5年間とする」とあるため、この規定に準じて帳簿を備えつけてから5年間は保存しておくとよいです。
なお、保管の際には工事ごとに固有の工事番号を割り振っておき、施工した年度や工事内容などで検索してすぐに探し出せるように整理しておくと便利です。
工事完了報告書の注意点
工事完了報告書は、工事を実施した業者がみずから作成して提出するのが原則です。工事完了報告書に関する注意点を他にも3つ解説します。
材料費やその他の経費
施工に必要な材料を購入した場合や県外などの遠方へ出向いた場合に、それらの費用を工事代金とは分けて記載する必要がある点に注意しましょう。材料の購入代や有料道路の利用明細(領収書)および、ガソリン代の領収書などを報告書に添付してください。
使用している材料・素材
発注者や元請業者へ提出する工事完了報告書では、発注した仕様どおりの性能を備えた材料や、一定の品質の素材であることを証明する資料を添付するよう求められることが少なくありません。
「有害物質の発散量が基準値をクリアしている」「JIS規格に準拠した一定以上の品質の材料を使っている」などの証明が必要になる場合には、材料の納品書や出荷証明書およびメーカーのパンフレットなどの取り寄せて対応しましょう。
工事写真
工事写真では完了した全体の写真以外にも、現場の全景や経過に応じて変化していく施工箇所の状況を記録しておくと喜ばれるケースが数多くあります。そして、施工した箇所だけでなく、拡大しても使用した素材の質感が鮮明にわかるように、高い解像度で撮影してデータを提出できるよう準備をしておくことも重要です。