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工事請負契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から112日前のものです)
工事請負契約は、授受される金額が大きく決定事項が膨大であるので揉め事に発展しやすいこともあり、建設業法によって契約書の記載事項が定められています。したがって、工事請負契約を締結する際には、その内容が盛り込まれていて万が一の際にも対応できるのかをチェックしなければなりません。工事請負契約の概要や締結の目的および工事請負契約書に記載すべき事項について解説し、工事請負契約書のひな形(テンプレート)も紹介します。

工事請負契約書とは

工事請負契約とは、事業主や施主などの工事の「発注者」と建設会社などの「受注者」との間で締結する契約です。工事請負契約書は契約時に当事者双方が契約内容に合意した証明として、記名押印をして1通ずつを手元に保管する書類です。発注者と受注者は下記の関係にあります。

  • 発注者:建設工事の注文者
  • 受注者:建設工事の請負人

なお、工事請負契約は業務委託契約の一種であり、発注者には受注者に対する業務上の指揮命令権はないため、仕事のやり方やスケジュールの判断は受注者の裁量に委ねられます。また、報酬は仕事の完成が条件であるため、受注した工事が仕様どおりに完成しないかぎり、報酬を受け取れません。

請負契約書と委託契約書の違い

請負契約書と委託契約書の違いは、「何かを完成させる目的なのか」という最終目標です。

請負契約は、依頼品の完成が最終の目的になっている契約で、建物を完成させて納品する建築工事のような契約では請負契約書を用います。一方で、委託契約は完了ではなく業務の遂行が目的であり、保守メンテナンス業務などのように反復継続する終わりのない業務であれば業務委託契約書が適切です。

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工事請負契約書を作る目的

工事請負契約書を作る目的は、建築の契約では受注側よりも発注側のほうが力関係で優位になることが多いため、過度に発注側が有利にならないようにするためです。そういった事態を防止するために、工事請負契約書の記載事項や時期が法定されています。

建築工事を発注する際の工事請負契約書については、建設業法第19条に「契約書を作成・交付する義務、双方が署名(または記名押印)する義務」が規定されており、後述する契約書に記載しなければならない内容も指定されています。

ちなみに、契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行わなければなりません

※出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第5版)」(2024年1月12日閲覧)

工事請負契約書の必須記載事項(法定記載事項)

建設業法第19条によって工事請負契約書への記載が義務付けられている事項について、それぞれ解説します。

工事請負契約書を作成して双方が保有しておけば当事者の認識のズレはなくなり、将来のトラブルの芽を摘んでくれます。それでもトラブルが起こることはありますが、あらかじめトラブルの対処方法や罰則を決めておけば、万が一揉め事が起きたとしても被害を拡大させずに解決に向かうでしょう。

なお、国土交通省内にある「中央建設業審議会」が定めた「建設工事標準請負契約約款」は、国内の業者が工事請負契約書の作成に活用することで、標準的な業界ルールの浸透やモラル向上に役立っています。

工事内容

工事請負契約書には、工事名と場所だけでなく施工する内容を記載します。施工内容は文章の記述だけでなく、図面や仕様書を添付してイメージが伝わりやすくするとよいでしょう。

請負代金の額

請負代金も必ず記載してください。

なお、工事請負契約書には印紙税がかかり、契約書に記載された請負金額によって印紙税額が異なります。消費税額が契約書上で判断できない場合には、税込かどうかに関わらずその記載金額を課税金額として印紙税を計算するため、消費税額と本体価格が明確にわかるような記載方法にしておきましょう。

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工事の着手の時期及び工事完成の時期

工事の着手や完成見込み、引き渡し時期などを下記のように具体的に記載します。

  • 着手:契約の日から◯日以内、工事許認可の日から◯日以内、◯年◯月◯日から など
  • 完成:着手の日から◯日以内、◯年◯月◯日に完成 など
  • 引渡:◯年◯月◯日に引き渡し

工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

工事を施行しない日や施工しない時間帯など、建設現場を止める曜日や時間帯がある場合は、その曜日や時間帯を記載します。

建設現場の稼働時間帯を決めておくと、発注者の視察スケジュールの決定やご近所への配慮や説明に役立ちます。

請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

前金払または出来形部分、請負代金の支払については、その支払の時期や方法などを具体的に記載します。

一般的には、下記のように途中で請負代金を何回かに分けて支払い(下記の1・2・3)、最終決済日に完成した建物と引き換えに請負代金の残金(下記の4)を支払うことになります。

注文建築の請負代金の支払例

タイミング 詳細 支払割合
1. 契約成立 契約時 1割
2. 部分払い 着工時 3割
3. 部分払い 棟上時 3割
4. 完成引渡 引渡時 3割

ただし、上記の分割回数や割合は一例であり、契約内容によって多少変わります。

一方で、工事の出来形に応じた部分払を短い間隔で行う「前金払又は出来形部分に対する支払」の方式で代金を支払う場合には、その支払時期や回数や方法について記載します。

なお、請負代金支払いに関して「従来の一般的な方式」と「出来形部分払方式」との違いはこちらをご覧ください。

延期や中止の申出があった場合の工期の変更・請負代金額の変更・損害の負担及びそれらの額の算定方法

発注者の工事中止権や契約解除権についても工事請負契約書に記載します。

発注者が必要だと認める場合は、受注者に対し書面で通知して、工事の中止・契約の解除を行える場合があります。ただし、「工事の中止・契約の解除によって受注者に発生した損害は発注者が賠償する義務を負う」という規定が原則です。

そのうえで、それらの損害を例外的に受注者(施工業者)へ請求できる場合を例示するのが一般的です。

なお、発注者から受注者へ工事の中止や契約解除を請求できる例として「正当な理由なく、受注者が工事着手日を過ぎても工事に着手しない場合」があります。そのような場合に、工事の再開や工期の延長および契約解除までに、完成している部分の帰属や費用の精算についても決定しておきます。

天災その他不可抗力による、工期の変更・損害の負担及びその額の算定方法

天災をはじめ、受注者の責任ではない理由で工事の現場や建築物が被害を受け、工事が続けられなくなった場合の取り決めも記載しましょう。

そのような事象が発生した際には、発注者は工事の中止について受注者へ通知し、工事の一部もしくは全部を中止しなければなりません。そして、受注者は損害の状況が確認できた場合には損害の負担を発注者に請求できます。

価格等の変動若しくは変動に基づく、請負代金の額又は工事内容の変更

着工後、工事内容や請負代金が変更できるのはどのような場合かを記載します。

工事内容は、必要があると判断できる場合には、発注者から工事の追加や変更および一時中止の請求が可能です。その際に、変更によって請負金額や工期も変更する必要が生じる場合は、発注者と受注者は協議のうえで請負金額や工期を変更できます。

請負代金については、予期せぬ事情により請負代金が明らかに不相当となった場合には、請負代金の変更につき双方から請求できるものとします。たとえば、工事内容の追加や変更および工期の変更、もしくは急激なインフレーションまたはデフレーションなどが該当します。

工事の施工により、第三者に対して支払う損害賠償金の負担

工事現場の近隣住民から、騒音・臭気・粉塵・治安などに関するクレームを受けた場合や、第三者になんらかの損害を与えてしまった場合、および第三者との間でトラブルが発生した場合の対応方法についての記載も必要です。

たとえば「工事の施工により第三者が損害を受けた場合は、まずは受注者がその解決にあたります。ただし、その損害が発注者の故意過失による場合は、発注者が対応しなければなりません」という内容です。

費用や工期についても同様に「原則として費用は受注者の負担とし工期の延長もありません。ただし、発注者の故意過失によって生じた場合には発注者の負担とし、必要があると認められる場合には受注者から工期の延長を請求できます」などと定めます。

注文者が資材を提供したとき・機械を貸与するときは、その内容・方法

発注者が、工事で使用するために資材や建設機械を提供する場合は、その内容や方法などのルールについても記載が必要です。

たとえば「貸与品は支給後直ちに現場職員が受注者とともに検査して借用書を交付します。ただし、使用するにあたって品質や性能が不適切だと判断できる場合には発注者に通知しなければなりません」というように定めます。

注文者による完成検査の時期・方法、引渡の時期

受注者から発注者への目的物の引き渡しや、完成検査の実施時期および方法について定めます。また、発注者がいつまでに目的物の完成を確認し、所有権はいつ移転するのかについても定めます。

工事完成後における、請負代金の支払の時期・方法

工事完成後に行う請負代金の請求時期や支払時期について定めます。完成までに行う部分払いや中間払いについても、前述の部分を参照して規定しましょう。

契約不適合責任、又は契約不適合責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

契約時に告知がなく目的物の引き渡し後に、その目的物に瑕疵(カシ:破損・劣化・不具合など)が見つかった場合の責任(契約不適合責任)および、瑕疵担保責任保険の付保などについて定めます。

受注者が責任を負う期間や発注者が受注者に補修を求める期間や条件、損害賠償請求や契約解除条件などについては、とくに詳しく記載します。

債務不履行の場合における遅延利息・違約金その他の損害金

期日を過ぎても工事が完了しない場合、請負代金が支払われない場合、その他必要な補修や手続きなどが完了していない場合に備える規定です。

各当事者の債務の履行遅滞や債務不履行に対して付加される遅延利息や、問題の解決までに要した目的物の管理費用の負担についても定めておきます。

工事請負契約に関する紛争の解決方法

当事者間で紛争が起きた場合の解決方法について記載します。

建設業法による「建設工事紛争審査会」の担当委員へ「あっせん」「調停」「仲裁」による解決手続きを依頼する手段など、当事者が意見を主張する方法や窓口を記載します。

その他国土交通省令で定める事項

そのほか、工事請負契約書に記載すべき特段の事情や補足事項があれば記載します。

工事請負契約書のその他の記載事項

上記項目の標準的な決定以外にも、工事請負契約書では当事者の合意によって自由に条項を定められます。工事請負契約書に別途定められることが多い条項として「ローン特約」や「反社会的勢力の排除」があります。

ローン特約

ローン特約とは、住宅ローンの審査が否決され、指定期日までに銀行融資以外の方法でも資金調達ができない場合に、買主側からの契約解除を無条件で認める特約です。

銀行融資が通らなければ目的物の購入はほとんど不可能である事情を考慮し、消費者(買主)保護の観点から、建売住宅・注文住宅の新築工事などで使用する工事請負契約書には、必ずといってよいほど規定されている条項です。

反社会的勢力の排除

反社会的勢力の排除は、当事者やその役員などが暴力団員もしくはそれに準ずる危険団体に該当しないことなどを相互に表明保証し、違反した場合の契約解除や損害賠償請求を規定する条項です。

工事請負契約書のひな形(テンプレート)

BOXILでは、工事請負契約書のひな形(テンプレート)を無料でダウンロードできます。工事請負契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

工事請負契約書のテンプレート 工事請負契約書のテンプレート

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