安全在庫とは?適正在庫との違いや計算式、メリット、注意点

目次を閉じる
安全在庫とは
安全在庫とは、需要の変動や供給の遅延といった不確実な事態に備え、最低限確保しておくべき在庫数のことです。これは、顧客からの注文に確実に応えるために必要不可欠です。
万が一、在庫が不足してしまうと、販売機会の損失や顧客の信頼を失うことにつながりかねません。安全在庫を持つことで、こうしたリスクを回避し、安定した事業運営を維持できます。
適正在庫との違い
適正在庫とは過剰な在庫を抱えず、かつ欠品も起こさない、理想的な在庫量のことです。適正在庫を維持することで、在庫保管費用や機会損失などのコストを最小限に抑えられます。
安全在庫と適正在庫の大きな違いは、安全在庫が欠品を防ぐための最低限の在庫量であるのに対し、適正在庫は在庫管理の効率化と利益の最大化を目的とした、在庫量の範囲を示す概念である点です。
安全在庫の計算式
安全在庫の計算式は、次のようになります。
安全在庫 = 安全係数 × 使用量の標準偏差 × √(発注リードタイム + 発注間隔)
この式には、いくつかの要素が含まれています。それぞれの要素について、詳しく解説します。
安全係数
安全係数とは、需要の変動や納期の遅れなど、予測できないリスクを考慮して設定する数値です。この数値が大きくなるほど、安全在庫も多くなります。欠品許容率は100回の受注があったとして、そのうち何回の欠品を許容できるかで考えます。たとえば欠品を5回まで許容できるなら、欠品許容率は5%です。
欠品許容率ごとの安全係数は次のとおりです。
欠品許容率 | 安全係数 |
---|---|
30% | 0.53 |
20% | 0.85 |
10% | 1.29 |
5% | 1.65 |
2% | 2.06 |
1% | 2.33 |
0.1% | 3.10 |
このように、欠品許容率を低く設定するほど安全係数は高くなり、より多くの安全在庫が必要になります。許容できる欠品率と、在庫保管コストのバランスを考慮して、適切な安全係数を設定しましょう。
使用量の標準偏差
使用量の標準偏差とは、過去の販売データから算出される、需要のバラつきの程度を示す指標です。標準偏差が大きいほど、需要の変動が大きく、安全在庫を多く持つ必要があります。
標準偏差は、ExcelのSTDEV関数を用いて、過去の販売データから簡単に算出できます。関数の書き方は次のとおりです。
=STDEV(指定期間の在庫使用数が入力された範囲を指定)
たとえば在庫使用数がB3~B13に入っているなら、関数は次のようになります。
=STDEV(B3:B13)
発注リードタイムと発注間隔
発注リードタイムとは、商品を発注してから入荷するまでの期間のことです。発注間隔とは、商品をどれくらいの頻度で発注するかを示す期間のことです。これらの期間が長くなるほど、その間に需要が増加する可能性が高まり、安全在庫を多く持つ必要が生じます。
たとえば、ある商品の発注リードタイムが3日、発注間隔が7日だとします。この場合、発注してから次の入荷までに10日間(3日 + 7日)かかるため、この10日間の需要変動を考慮して安全在庫を設定する必要があります。
なお、発注間隔が不定期な場合は、発注間隔を0日として計算します。
安全在庫を把握するメリット
安全在庫を正しく把握することは、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
メリット1. 欠品による機会損失を防げる
安全在庫を持つことで、需要の急増や入荷の遅れなどに対応できるようになり、欠品による機会損失を防げます。機会損失とは、商品を販売する機会を失うことで発生する損失のことです。安全在庫があれば、顧客の注文に確実に応えられ、販売機会を逃さずに済みます。
メリット2. 過剰在庫を防げる
安全在庫は、過剰な在庫を抱えることを防ぐ効果もあります。過剰な在庫は、保管スペースの圧迫や管理コストの増加につながります。また、食品や医薬品のように品質保持期限がある商品では、過剰在庫は廃棄ロスにもつながるでしょう。安全在庫を適切に管理することで、これらの問題を回避できます。
メリット3. キャッシュフローを改善できる
安全在庫を適切に管理することは、キャッシュフローの改善にもつながります。過剰な在庫を抱えていると、その分の資金が在庫に固定化されてしまいます。安全在庫を適正なレベルに保つことで、不要な在庫を抱えることを防ぎ、資金の流動性を高められるでしょう。
安全在庫の注意点
安全在庫は、在庫管理において重要な概念ですが、運用にはいくつかの注意点があります。これらの注意点を理解することで、より効果的に安全在庫を活用できます。
注意点1. 欠品を完全に防げるわけではない
安全在庫を保有していても、欠品を完全に防げるわけではありません。自然災害や予期せぬ事故など、予測不可能な事態が発生した場合、在庫の確保が難しくなり、欠品が発生する可能性があります。
注意点2. 需要変動が大きい商品には使えない
需要変動が大きい商品は、過去の販売データに基づいて安全在庫を計算することが難しく、適切な安全在庫量を設定できません。そのため、季節商品や流行に左右される商品など、需要変動が大きい商品には、安全在庫の考え方は適していません。
注意点3. 計算に使う数値は変動する
安全在庫の計算に使用する数値は、需要やリードタイムなど、常に変動する可能性があります。そのため、定期的に数値を見直し、安全在庫を再計算する必要があります。
安全在庫を把握し欠品や過剰在庫を防ごう
安全在庫を把握することは、欠品による機会損失を防いだり、過剰在庫によるコスト増加を抑制したりするなど、企業の安定的な経営に役立ちます。
しかし、安全在庫や適正在庫を把握するだけでは、適切な在庫管理を実現することは難しいでしょう。在庫管理システムを導入することで、在庫状況をリアルタイムで把握できるようになり、発注業務の効率化や在庫の適正化を促進できます。ぜひ、在庫管理システムの導入を検討してみてください。
こちらの記事ではおすすめの在庫管理システムを紹介しています。在庫管理システムに興味がある方、在庫の過不足に悩む方は、ぜひお読みください。
