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【請求書,手書きも】AI-OCR3社の精度を実際に読み取って検証比較!AISpectが1番のスコア

最終更新日:
請求書・契約書・入会申込書・発注書の計28件を使ってSmartRead、AISpect、DynaEyeの読み取り精度を徹底検証しました。CERとF1スコアで数値化し、折れ・汚れ・傾きや手書き・印鑑など現場で起こる状況も再現しています。精度の比較表と、帳票種類ごとの良い点と気になる点、目的別におすすめツールも解説。実際の使用感も含めた自社に適したシステム選びに役立ちます。

検証方法・結果概要

検証方法

  • AI-OCRの検証対象は、SmartRead、AISpect、DynaEye
  • 評価対象の文書は、請求書10件、契約書3件、入会申込書10件、発注書5件
  • CER(文字列の正確さ)とF1スコア(読み取る箇所の正確さ)でそれぞれの読み取り精度を評価
  • AI-OCRから出力した後に、全角や半角、日付データのフォーマットなどは正規化している

結果概要

  • AISpectが最も高い精度を示し、申込書と発注書でCERが0.7%以下、F1スコアは0.96以上
  • SmartReadは、全体を通して一定の精度を実現。しかし、レイアウトが複雑な準定型の請求書と発注書で精度が落ちるケースあり
  • DynaEyeは、初回の検証において他社に一歩劣る傾向がある。ただし、学習モードを使うことで2回目以降の読み取り精度が向上する

※CERは4種類の帳票のうち3種類にて数値が最も低いこと、F1スコアは3種類とも最も数値が高いことから、「AISpectが最も高い精度」として表記している

各サービスの特徴

  • SmartReadは、設定や修正機能が充実しており、出力結果を詳細にコントロールできる
  • AISpectは、全体を通して読み取り精度が高く扱いやすい
  • DynaEyeは、学習機能により継続利用することで読み取り精度が向上するので、長期的な運用に適している

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検証に用いる帳票

BOXIL編集部が今回の検証で試した帳票は、請求書10件、契約書3件(計5ページ)、入会申込書10件、発注書5件の合計28件です。

レイアウト 活字・手書き 件数
請求書 準定型 活字 10件
契約書 非定型(テキスト) 活字+手書き 3件(計5ページ)
入会申込書 定型 手書き 10件
発注書 準定型 活字 5件

※定型は、項目の位置や構成が固定化された書類
※準定型は、項目がおおよそ決まっているものの、構成にばらつきがある書類
※非定型は、項目も位置も決まりがない書類

請求書 10件

レイアウト 活字・手書き 件数
準定型 活字 10件

ITサービスや広告代理店などから実際に発行されたPDF10社分を使用しました。横書きで1〜3行程度の明細を含むほか、発行日の位置や消費税欄の有無などは意図的にばらつかせています。

送付された請求書原本を各社のAI-OCRで読み込み。CSVとして出力した後、明細1行につきCSVも1行となるような形式に整えて、CERとF1スコアを算出しました。

なお、AI-OCR各社の機能により読み取り結果が自動補正された場合も、適切に読み取れていると判断しています。具体的には、日付の表記、数値の桁区切りの有無、全角と半角の表記などについては、正解データに合わせるよう一部加工を行いました。

評価ポイント

各社によってばらつきの多い請求書のフォーマットに対して、読み取り箇所を適切に定められるか、紛らわしい表記も正確に認識できるかをチェックしました。

  • 漢字やひらがな、カタカナ、英字、数字、記号を正確に抽出できるか
  • 税区分や通貨単位など帳票に明示されていない、暗黙的な項目を適切に推定できるか
  • 海外の請求書、印鑑がある請求書、割引されている請求書などにも柔軟に対応できるか

契約書 3件

レイアウト 活字・手書き 件数
非定型(テキスト) 活字+手書き 3件(計5ページ)

土地賃貸借契約のサンプル

※本画像は株式会社マネーフォワードが作成したテンプレートを加工したものであり、テンプレートの著作権は株式会社マネーフォワードに帰属します。元の帳票は動産売買契約書土地賃貸借契約アルバイト雇用契約書のダウンロードフォームから取得しました。

動産売買契約書、土地賃貸借契約、アルバイト雇用契約書の3種類で契約書のサンプルを作成。署名が活字か手書きか、印鑑があるかなどのバリエーションを用意し、それぞれの読み取り精度を確認しました。

動産売買契約書はパソコンで作成したPDFを使用しました。土地賃貸借契約とアルバイト雇用契約書は、印刷した後に署名欄を手書きし、スキャンしてPDFにしたものを各社のAI-OCRに読み込ませています。

読み取り形式は全文テキストとし、TXTファイルで出力しました。ただし、AISpectのみはCSVファイルとして出力されたため、これを使用しています。改行やスペース、カッコ付き数値などの表記揺れを正規化してからCERを算出しました。

評価ポイント

契約書特有の長文構造を読み取れるか、手書きの署名サインや印鑑を加味して適切に出力できるかなどを確認しました。

  • 契約書固有の言い回し(例:「乙は、甲に対し…」)を誤変換せずに抽出できるか
  • 署名欄の横にある印鑑が本文に混入しないか

入会申込書 10件

レイアウト 活字・手書き 件数
定型 手書き 10件

入会申込書のサンプル

※本画像は株式会社マネーフォワードが作成したテンプレートを加工したものであり、テンプレートの著作権は株式会社マネーフォワードに帰属します。元のテンプレートは入会申込書のダウンロードフォームから取得しました。

多くの申込書に共通する氏名や住所、電話番号などの項目を含む申込書を準備。氏名の異体字や二重線での訂正などを意図的に配置することで、実務で発生し得る課題に対応できるか検証しました。

入会申込書をパソコンで作成して印刷し、手書きにて記入欄を埋めた後にスキャンしてPDF化しています。各AI-OCRにて設定した読み取り項目に基づいて、定型文書のモードを利用して読み取りを実施。出力されたCSVをもとにCERとF1スコアにて精度を計算しました。

入会申込書をスキャナで取り込み

評価ポイント

入会申込書は手書き率が高く、文字の癖や訂正が精度に大きく影響します。以下の観点で各サービスを評価しました。

  • 手書きで崩れた文字を正確に読み取れるか
  • 異体字(例:「髙」「﨑」)を適切に読み取れるか
  • 二重線での訂正箇所を適切に無視・除外できるか
  • 枠線からはみ出した文字を誤検出しないか

発注書 5件

レイアウト 活字・手書き 件数
準定型 活字 5件

発注書のサンプル

※本画像は株式会社マネーフォワードが作成したテンプレートを加工したものであり、テンプレートの著作権は株式会社マネーフォワードに帰属します。元の帳票は発注書のダウンロードフォームから取得しました。

テンプレートをもとに5種類の発注書サンプルを作成。品番や品名、数量、単価、金額などの明細行を複数行含んでいます。パソコンで作成した2種類のPDFのほか、一度プリントして、意図的に読み取りづらくした3種類の帳票を準備しました。具体的には、三つ折り、コーヒー汚れ、傾きをそれぞれ付加し、スマートフォンにて撮影しました。

発注書をスマートフォンで撮影

合計5件のPDFファイルを、準定型の文書読み取りモードにてAI-OCRで文字を認識。一部の日付表記や数値の桁区切りなどを補正して、CERとF1スコアの集計を実施しました。

評価ポイント

発注書に特有の複数行に渡る明細を読み取れるか、帳票の傾きや汚れがある場合でも正確に出力できるかを確認しました。

  • 明細の品番や数量、単価、金額などを誤認せずに抽出できるか
  • 外枠線の有無が読み取り精度に影響しないか
  • 折れや汚れ、傾きでレイアウトが崩れても正確に読み取れるか

検証の手法

精度の検証には、読み取った内容の精度を表すCERと、読み取るべき項目を発見する精度のF1スコアを用います。両指標によって、文字起こしの精度と項目を認識する精度の両方を測定でき、各AI-OCRの読み取り精度のバランスを適切に評価可能です。

CER(文字列の正確さ)

CERとは、文字レベルでの誤り率を示す指標です。たとえば 100 文字中 1 文字を誤認した場合、CERは1%となります。例えるなら、どのくらいの割合でタイピングミスしたかを数える状況に近いです。

算出方法

  1. OCRの出力と正解データを項目ごとに対応させる
  2. 日本語・英語ともに全角/半角・ひらがな/カタカナなどの表記揺れを前処理で統一
  3. Levenshteinライブラリを用いて編集距離(Levenshtein distance)を計算
  4. 下式に当てはめ、帳票単位でCERを求めた後、平均値を算出

CERの求め方

F1スコア(読み取る箇所の正確さ)

F1スコアは、目的の項目(発行日・金額など)を正確に識別できたかを0〜1で表す指標で、1に近いほど適切に認識できていると判断します。Precision(読み取った項目のうち、読み取るべき項目の割合)と Recall(読み取るべき項目のうち、読み取れた割合)の調和平均であり、両者のバランスが取れているほど精度が高くなります。

F1スコアのイメージ

算出方法

  1. OCRの出力と正解データを項目ごとに対応させる
  2. 日本語・英語ともに全角/半角・ひらがな/カタカナなどの表記揺れを前処理で統一
  3. 項目ごとにTP(正しい検出)、FP(誤った検出)、FN(検出漏れ)をカウント
  4. Precision・Recall・F1を算出し、帳票単位で平均値を取得

F1スコアの求め方

検証の結果・ポイント

CER

CERの数値をふまえると、請求書と発注書ならAISpect、契約書ならSmartReadが精度高く読み取れていました。定型文書である申込書は、各社CERが低い傾向にあります。

請求書 契約書 申込書 発注書
SmartRead 9.31% 3.70% 0.67% 33.30%
AISpect 5.97% 17.07% 0.67% 0.68%
DynaEye 45.47% 非対応 19.66% 56.67%

※DynaEyeは文章の読み取りができないので、検証の対象外とした

F1スコア

F1スコアは全体を通してAISpectが高精度でした。他社と差がついた要因としては、英語の請求書、傾いた発注書をうまく読み取れたことが挙げられます。

請求書 契約書 申込書 発注書
SmartRead 76.40% - 96.20% 69.40%
AISpect 92.30% - 96.80% 96.60%
DynaEye 58.00% - 68.90% 53.60%

請求書の傾向とポイント

請求書の読み取り傾向
・複数の文字種が混じっても読み取れるのは、AISpect
・帳票に明示されていなくても結果として出力してくれるのも、AISpect
・英語の請求書はどのAI-OCRも苦手

請求書の読み取り精度は、AISpectがCERとF1スコアともに高水準でした。このことから、基本的に精度の高いAISpectが請求書の読み取りには適していると言えます。

しかし、SmartReadとDynaEyeは、システム上でデータ確認が可能であるという特長があります。そのため、読み取りが困難な特殊な請求書が多い場合には、AISpect以外の製品の検討も有効です。

CER Precision Recall F1スコア
SmartRead 9.31% 0.734 0.797 0.764
AISpect 5.97% 0.918 0.929 0.923
DynaEye 45.47% 0.606 0.559 0.580

ポイント1.漢字や英字、数字、記号の読み取り

帳票番号や郵便番号、会社名などの漢字/英字/数字/記号が混在するエリアを中心に、Oと0、Iと1、Sと5などの類似文字を誤っていないかチェックしました。

【正誤イメージ】

プロダクション プロダクシヨン
2025年 2O2S年
株式会社テックイノベーション 株式会社デックイノバーション

傾向:AISpectが誤りほぼなし

AISpectは、誤りがほぼなく正確に読み取れていました。SmartReadは、少し修正が必要な箇所が見受けられました。DynaEyeは修正が必要な箇所がやや多い傾向にあります。

ポイント2.帳票に明示されていない項目の読み取り

請求書では、税区分の「10%」「8%」や通貨単位の「JPY」「USD」など、帳票には記載がなくても推定すべき暗黙的な項目もあります。今回は税区分と通貨単位として読み取り項目を設置し、各サービスがどこまで識別できるか検証しました。

傾向:AISpectは未表示項目も高精度で識別

AISpectは明示されていない税区分や通貨単位であっても高精度で読み取れています。他3製品は読み取れていないケースが時折見受けられました。なお、「JPY」を「円」や「¥」として出力するケースがあるため、その点を踏まえた変換処理はいずれのシステムでも必要です。

ポイント3.各社の特殊な帳票への対応力

各社が発行する多様な請求書に対応できるかを検証しました。具体的には、以下のような特殊なパターンを含む請求書で精度を確認しました。

【対象の例】

  • 英語の帳票(海外の通貨、住所などを含む)
  • 明細が1レコード内で改行
  • 印鑑が読み取り対象と重なる
  • 割引価格の読み取り(例 -10,000円)

傾向:英語の帳票はどのAI-OCRも苦手

英語の帳票は各システムが苦手としており、PrecisionとRecallがともに低い結果となりました。意図に沿った形式での明細読み取りや印鑑が含まれる箇所の読み取りは、AISpectが最も優れていました。次いでSmartReadの読み取り精度が高かったです。

契約書の傾向とポイント

契約書の読み取り傾向
・SmartReadとAISpectは大差ない
・印鑑が含まれる場合には、文中に割り込まないよう各社工夫が必要

契約書の読み取り精度は、各社で大きな差異はありませんでした。なお、DynaEyeは契約書の読み取りに対応していないので、検証の対象外としています。

精度としてはAISpect(カンマ削除の補正後)が優れています。ただし、差異が小さいことから、契約書の読み取り精度に注意を払うより、他に読み取りたい帳票の精度を優先して検討する方がよいと考えられます。

CER
SmartRead 3.70%
AISpect 17.07%
AISpect(カンマ削除の補正後) 2.51%

※AISpectのデフォルトのダウンロード形式はCSVです。そのため、出力したそのままの結果と、カンマを削除して補正した結果の2パターンを併記しています。

ポイント1.契約書に固有の言い回しを読み取り

契約書では「乙は、甲に対し…」「本条1号」「(以下『本契約』という)」など、一般文書では登場しない独特の言い回しが頻出します。それらの特殊な条項表現や、漢数字および括弧書きの読み取り精度を検証しました。

傾向:3社のシステムはいずれも高水準で読み取り

検証したSmartRead、AISpectのシステムはいずれも高精度で読み取れていました。なお、「(1)」と「 ⑴ 」 のような読み取りの揺れは部分的に見られるので、これらは読み取り後に一斉に置換することをおすすめします。

ポイント2.手書きや印鑑の読み取り

手書きの署名や朱色の印鑑が含まれるときの読み取り精度を検証しました。

契約書の手書きや印鑑のイメージ

傾向:印鑑が署名に割り込むので、対策が必要

署名欄の横に印鑑があり、OCRが横向きに読み取りをする仕様上、署名の間に印鑑の文字が割り込むケースが各社で発生しました。たとえば、次のような読み取り結果がありました。

甲 住所埼玉県さいたま市大宮区桜木町一丁目7番5号
会社名 株式会社サンライズ不動産 不動産 サンライズ 株式会社
氏名 高橋 一 郎

これを回避するには、SmartReadのJSON形式で読み取って印鑑のある当該箇所の文字を無視する方法、印鑑を読み取り前に取り除く方法などが考えられます。あるいは、署名欄の住所や会社名それぞれは影響を受けていないので、印鑑のテキストが入り込むことを許容する選択肢もあります。

入会申込書の傾向とポイント

入会申込書の読み取り傾向
全体を通してSmartReadとAISpectが高精度
・異体字を間違えなかったのは、SmartRead
・二重線消しに対応できたのは、AISpect
・枠線からはみ出てもSmartRead、AISpectは影響なし

入会申込書のRecallはすべての製品において1、ないし1に近い値を示しており、読み取るべき項目をしっかり読み取れていました。その一方で、PrecisionはSmartReadとAISpectが0.9以上の数値を出し、DynaEyeと差をつける結果となりました。

精度が高い一因として、SmartReadは異体字の間違いがなかったこと、AISpectは二重線消しをすべて適切に処理できていたことが挙げられます。

CER Precision Recall F1スコア
SmartRead 0.67% 0.938 0.987 0.962
AISpect 0.67% 0.938 1.000 0.968
DynaEye 19.66% 0.525 1.000 0.689

ポイント1.手書き文字の読み取り

手書き文字の読み取り精度を検証しました。文字のクセや数字の書き方など、人によって異なる書体を加味してどこまで読み取れるのかをチェックしています。

入会申込書の例

【正誤イメージ】

@example.com @examele,con
2025年5月7日 202S年5月7日
08023456789 0802234526789

傾向:SmartReadとAISpectが優勢

SmartReadとAISpectのCERは1%を切っており、非常に高い読み取り精度を示しています。DynaEyeは、例えば電話番号で「0112314111」を「011231141111」とするように、文字を増やす傾向が見られました。

ポイント2.「はしご高」「立つ崎」といった異体字の読み取り

氏名や住所には「高」と「髙(はしご高)」、「崎」と「﨑(立つ崎)」といった、似ているが異なる漢字が存在します。OCRは一般的に使用頻度の低い文字を一般的な文字に置換する傾向があります。そこで、氏名・住所に異体字を含め、正しく認識できるかを検証しました。

はしご高のイメージ

【例】

髙橋 高橋
藤﨑 藤崎
薮ノ内町 蔽ノ内町

傾向:SmartReadは間違いがなかった

SmartReadは異体字をすべて正しく読み取っていました。DynaEyeも誤りは多くなかったため、確認時に注意して修正を加えれば運用可能なレベルでした。AISpectは「髙橋」「藤﨑」「薮ノ内町」を正しく読み取れていない場合があり、運用時には注意が必要です。

ポイント3.二重線消しへの対応

手書きで発生しやすい二重線での打ち消しを考慮できるか検証しました。

申込日の二重線消し

メールアドレスの二重線消し

性別の二重線消し

傾向:AISpectが対応可能、他3社は認識に課題あり

AISpectはいずれの二重線消しも考慮して読み取れていました。一方、SmartRead、DynaEyeは正確に解釈できておらず、二重線消しの箇所が他の文字として認識されています。

ポイント4.枠線からはみ出した文字の対応

手書きの文字が罫線を越えてはみ出すと、OCRは他の文字として認識する可能性があります。そこで、はみ出した文字が他の読み取り項目に影響していないかを検証しました。

枠線からはみ出した文字のイメージ

傾向:SmartRead、AISpectは問題なし

SmartRead、AISpectは特に影響を受けず、正確に読み取れていました。一方、DynaEyeは「045-210-1111」を「0451-2102-1111」としたように、はみ出した文字によって他の項目の読み取り結果が変わっていました。

発注書の傾向とポイント

発注書の読み取り傾向
・通常の読み取りは、SmartRead、AISpectが高精度
・外枠線が無いケースに、DynaEyeは標準では対応していない
・書類が傾いていても読めるのは、AISpect

発注書の読み取りは、AISpectが突出した結果となりました。SmartReadは、会社名や税額といった明細以外の複数行にわたる項目の読み取り精度によって数値が低めになっていますが、項目数自体はさほど読み取りに苦戦していませんでした。

SmartReadの空列

DynaEyeは、読み取った箇所の精度のほか、読み取るべき項目の認識にも課題が見られました。DynaEyeの場合は、読み取る項目を細かく指定したり、事前に学習データを登録したりできるので、これらで対策すると精度向上を見込めるでしょう。

CER Precision Recall F1スコア
SmartRead 33.30% 0.656 0.738 0.694
AISpect 0.68% 0.933 1.000 0.966
DynaEye 56.67% 0.539 0.532 0.536

ポイント1.明細項目の読み取り

発注書の明細行では、品名や数量、単価、単位、金額などが固定幅セルに並びます。特に金額は1桁変わると大きなズレが生じてしまいます。そのため、発注書の明細が問題なく読み取れているかを検証しました。

発注書の明細

傾向:SmartRead、AISpectはほぼ間違いなし

SmartRead、AISpectは、後述の傾きおよび汚れがなければ、正確に読み取りました。DynaEyeは、品名や単価を読み取れない例が確認されました。

ポイント2.外枠線の有無による読み取り精度

発注書の種類によっては、外枠線がある場合とない場合があります。外枠線の有無による読み取り精度の違いを確認しました。

発注書の明細(外枠線なし)

傾向:SmartRead、AISpectは正確に読み取った

SmartRead、AISpectは外枠線があってもなくても、明細を適切に読み取りました。DynaEyeは外枠線がない場合は認識できず、提供会社に確認したところ、これは仕様とのことでした。なお、後述の学習モードにより改善の傾向は見られました。

ポイント3.折れ・汚れ・傾きによる精度低下

発注書を読み取る現場においては、スキャナではなくスマートフォンで撮影する機会も一定数見かけられます。その点を踏まえて、現実に起こりうる三つ折り、コーヒー汚れ、傾いた撮影状態を再現した文書を作成し、検証しました。

発注書のサンプル

傾向:AISpectはいずれの条件でも高精度を維持

三つ折りとコーヒーの汚れによる影響は、3製品とも軽微なものでした。一方、傾いている発注書はAISpectのみが正確に読み取れました。他社のF1スコアが0.5や0.2程度と低下するなか、AISpectのF1スコアは0.971と他の発注書と変わらない精度を示しました。

目的別におすすめのAI-OCR

目的ごとにおすすめのAI-OCRは次のとおりです。高精度なAI-OCRを使いたいのであればAISpectがおすすめではあるものの、修正のしやすさは他2社に軍配が上がるので、自社の運用体制を加味して検討する必要があります。

  • 複雑な帳票が多いなら丁寧に設定や修正ができる、SmartRead
  • とにかく高精度なシステムを使いたい企業は、AISpect
  • 似たような帳票が多いなら学習の恩恵を受けやすい、DynaEye

SmartRead - 株式会社Cogent Labs

SmartRead
SmartRead
BOXILセクション | BOXIL SaaS AWARD 2025
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良い
  • 読み取れる帳票の種類が多い
  • データ確認と修正のUIが良い
  • 読み取り項目を細かく設定できる
気になる
  • 似た文字や特殊な読み取り項目はやや苦手

SmartReadの良い点の1つ目は、読み取れる帳票の種類が多い点です。定型文書や準定型文書、非定型文書のいずれも読み取り可能で、比較的安定した精度で出力できます。必要に応じて販売会社へAIモデルの作成を依頼することで、最小200枚ほどであっても読み取り精度を向上させられます。

SmartReadはプリセットも多い デフォルトで用意されている文書タイプだけでも数十種類はある。SmartRead 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

良い点の2つ目は、読み取ったデータの確認と修正をしやすい点です。システムが読み取りを完了した後の確認画面では、実際の帳票と読み取り結果を照らし合わせながら修正できます。文字単位の修正であれば画面右側で修正が可能なほか、漏れている項目は手作業で枠を設定して、読み取らせることも可能です。

SmartReadは視覚的に修正がしやすい 画面右側にも読み取り結果が表示されるので、帳票から対象を探し出さないで済む。SmartRead 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

良い点の3つ目は、読み取る項目を柔軟に設定できる点です。読み取る項目を簡単に追加できるのはもちろん、読み取る項目のグルーピングができるので、読み取り後の修正がしやすくなります。また、読み取った内容をもとにどのような形で出力するのか、細かく設定できるのも特徴です。

SmartReadは出力を柔軟に調整できる たとえば、日付を読み取った際には「2025/06/03」のような形式で出力するよう指定できる。SmartRead 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

気になる点は、似た文字の読み取り間違いや、通貨単位のような特殊な読み取り項目を設定した際の読み取り精度です。特に英数字が混ざるような帳票を扱う場合や、臨機応変な読み取りが必要な場合には注意が必要です。一方で、データの修正はしやすいので、特殊な帳票は人間がチェックする前提であれば、運用に乗せやすいでしょう。

SmartReadはフィールドとページを切り替え可能 左上のプルダウンからページごとのチェックと項目ごとのチェックを切り替えられる。SmartRead 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

AISpect - 株式会社ASAHI Accounting Robot研究所

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良い
  • 読み取り精度が高い
  • 印鑑や二重線消しを考慮して読み取り
  • プロンプト機能で柔軟に設定
気になる
  • AISpect上ではデータの確認や修正ができない

良い点の1つ目は、他製品と比較して読み取り精度が高い点です。カンマを除く前の契約書以外は、いずれの帳票もCERが他社より優れている結果となっています。特に申込書や発注書は1%未満と、かなり高い水準です。そのため、パターンが少なめな帳票であれば、修正回数を大きく減らせて効率的です。

請求書 契約書 申込書 発注書
SmartRead 9.31% 3.70% 0.67% 33.30%
AISpect 5.97% 17.07% 0.67% 0.68%
DynaEye 45.47% 非対応 19.66% 56.67%

良い点の2つ目は、印鑑の重なりや二重線消しのような複雑な要素も適切に認識して出力する点です。発注書の傾きや汚れでも読み取り精度に影響がなかったように、多少人間側の都合で読みにくくなっていても、問題なく読み取れる能力は評価できる点です。

良い点の3つ目は、生成AIのプロンプト機能を活用することで、項目の指定や結果の変換を柔軟に行える点です。生成AIへの指示文のように、出力内容を簡単に調整できます。複雑な初期設定をしなくても、プロンプトの記述ができれば運用を開始できます。

AISpectはプロンプトを入力できる プロンプトに項目やデータ形式を入力すれば、出力に反映してくれる。AISpect 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

気になる点は、結果が直接出力されるので、修正がややしにくい点です。競合は結果を確認する画面があるので、実際の帳票とシステム上で照らし合わせられるのに対し、AISpectは自身で帳票を準備して比べなくてはなりません。その一方、読み取り精度が高いため、修正頻度の低い帳票を処理する場合には、工数を大きく削減できる可能性があります。

良い
  • 読み取り項目を細かく指定できる
  • 読み取り内容を確認したり修正したりしやすい
  • 使い放題のプランがあり
気になる
  • 精度の向上には事前の学習が必要
  • 独特な操作性があり、慣れが求められる

DynaEyeの良い点の1つ目は、読み取り項目を指定できる点です。項目名以外に、値の形式や文字数、記載されている位置などを細かく設定可能です。帳票に記載のある項目名を厳密に指定することで、意図しない項目が読み取られることを防げます。

DynaEyeは読み取り項目を細かく設定できる 「キーワード文字列」では項目名とは別に、同じ項目として認識してほしい文字列を指定できる。DynaEye 利用画面(撮影日:2025年5月20日)

良い点の2つ目は、読み取り内容を確認しやすい点です。画面中央に帳票が表示されるほか、右側にはどの箇所を読み取って、どのような値と認識しているのかが記載されています。確認画面は比較的シンプルな構成になっているのが特徴です。必要に応じて、読み取り項目の再設定もできます。

DynaEyeの確認画面 右側の一覧を見れば、1文字単位の修正をしやすい。DynaEye 利用画面(撮影日:2025年5月27日)

良い点の3つ目は、料金体系をLiteプランと使い放題プランから選べる点です。年間6,000枚まで対応できるLiteプランと、制限無しで使える使い放題プランがあります。また、AI-OCRを搭載しているプランでは、2つのOCRエンジンの結果を照合させるベリファイOCRも使えます。

気になる点は、今回検証に用いた製品のなかでは精度が低めなことです。また、操作に一定の慣れを要するUIではあるため、事前に社内教育をするための期間を確保しておくと、運用を成功させやすいでしょう。

DynaEyeは学習させることで読み取り精度が向上する
今回の検証結果においては、DynaEyeの精度は低めでした。この点を提供会社の株式会社PFUへ確認したところ、学習モードを用いて過去の帳票パターンを学習することで精度を向上できるとアドバイスをもらいました。実際に検証したところ、2回目以降は精度が向上しました。

DynaEye 利用画面(撮影日:2025年6月5日)

たとえば上図のように、デフォルトでは読み取れない外枠線なしの明細であっても正確に認識できるようになりました。

AI-OCRの比較ならBOXIL

BOXILでは、AI-OCRのサービス資料をマイページにて閲覧したりダウンロードしたりできます。請求した資料を使って、チームメンバーや上長へ共有するのもおすすめです。また、マイページでカスタマイズできる比較表を使えば、料金や機能を軸にサービスを見比べられて、稟議の準備に役立つでしょう。

AI-OCRの比較表とサービス資料

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