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ストレスチェック後の産業医の役割とは?面接指導による予防と対策の重要性

最終更新日:(記事の情報は現在から2507日前のものです)
ストレスチェック義務化によって、実施企業が9割に達するまで浸透しましたが、人事労務の観点からはその後の対応に苦慮している声が聞こえてきます。高ストレスを抱える対象者を面接指導に導くには?産業医が果たす役割の重要性を解説します。

 

ストレスチェック後に実施すべき企業対応

2015年12月1日ストレスチェック義務化法案(労働安全衛生法の一部を改正する法案)が施行されたことにより、2016年度には、実に9割もの対象事業所でストレスチェックが実施されるようになりました。

これによって高ストレス者であると判断された従業員は、本人の希望により医師による面接指導を受けることができます。

しかし、さまざまな理由からストレスチェック結果の開示を希望しないというケースも多く、面接指導が行われないばかりか、その後の職場環境改善につながらないなどが起こっています。

義務化から間もないこともあり、企業の人事担当者の間でも「ストレスチェックは実施したものの、その後どうしたらいいのかわからない」という声も多く、適切な企業対応のもと、産業医による面接指導の実施が急がれている状態です。

以下の記事では、ストレスチェックの現在の市場規模と今後のストレスチェック市場について解説しています。あわせてご覧ください。

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ストレスチェックの対象者

高ストレス者に対して、企業がどのような対応をすべきなのかを解説する前に、ストレスチェックの対象者について触れてみましょう。

なぜならば、ストレスチェック対象者とは、その時点で企業に関係するすべての従業員であり、パート、アルバイト、派遣などの雇用形態や就労時間に関係なく、1年に数回しか出社しない従業員でも、継続して雇用関係にあれば対象となるからです。

例外となるのは使用者である代表や社長、役員のみであり、ストレスチェック実施時点で対象を正社員のみに絞っていると、全社的なストレス状況把握が困難になってしまい、適切な企業対応ができなくなってしまいます。

以下の記事では、ストレスチェックには具体的にどのような種類があるのか、ストレスチェックのおすすめサービスを紹介しています。ぜひご覧ください。

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高ストレス者の基準

それでは、適切な対象者に対してストレスチェックを実施し、高ストレス者であると判断される基準とは何でしょうか。

  • 心身のストレス反応に関する項目の評価点合計が高い者
  • 心身のストレス反応に関する項目の評価点合計が一定以上かつ、仕事のストレス要因および周囲のサポートに関する項目の評価点合計が著しく高い者

一般的には以上のようにして選定されますが、客観的な評価点をもって判断されるわけではなく、社内の衛生委員会による審議が行われたうえで、最終的には事業所で基準を設定します。

このような場合でも客観的な視点で意見を述べることのできる、適切な産業医の存在が重要になってきます。

高ストレス者への対応

いずれにしても、高ストレス者であると判断された従業員は、適切な面接指導を受ける必要がありますが、自身のメンタル状況を上長に知られたくないなどの理由から、結果の開示を希望しないという場合があります。

以下に、4つのパターンを例にとって対応を解説しましょう。

結果開示に同意/面接希望

一番問題なく面接指導が実施できそうですが、それでも上長や同僚に自身のメンタル状況を知られたくないという心理が働きます。

個人情報保護を確約したうえで、産業医とのスケジュール調整を慎重に行うことが重要です。

結果開示に同意/面接希望しない

間違ってチェックしてしまった、産業医のことがよくわからずチェックしてしまったというケースがあります。

まず開示に同意したのが正しいかどうか本人確認を行い、その後に面接を希望しない理由を聞き取る必要があるでしょう。

産業医の宅割りがわからないという場合は、じっくりと本人と話し合い、面接指導に誘導することが重要です。

結果開示に同意しない/面接希望

面接希望の時点で結果開示に同意するとみなせるため、本来このケースはあり得ないことになっていますが、人事総務にメンタル状況を知られたくないという心理から、現実には起こりうることです。

2のケースと同様、本人と話し合うことが必要になりますが、結果開示に同意していないため、ストレスチェック実施のEAP(従業員支援プログラム)担当者から連絡をさせる必要があるでしょう。

結果開示に同意しない/面接希望しない

どちらも希望していないため、経過を見守るしかない状況です。

しかし、企業の安全配慮義務の観点からも、面接指導を受けることを勧める必要があり、しつこくならない程度の頻度で継続して行っていくことが重要になります。

産業医とは

ここまで、ストレスチェック後に企業が実施すべき対応を解説しましたが、高ストレス者の基準や判断、面接指導で重要な役割を果たすのが産業医です。

しかし、上述の結果開示に同意/面接希望しないでも触れましたが、企業内でも産業医の存在や役割を把握していないケースが多いといえます。

産業医を簡単に解説すると、従業員の健康管理などについて、専門的な立場から指導・助言を行う医師のことであり、一定規模の事業所においては産業医の専任が義務付けられているのです。

産業医の要件

産業医となるためには医師である大前提のほかに、厚生労働省が定めた、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

日本医師会認定産業医となるには、

  • 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了したもの
  • 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指 定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれら の経験者

となっています。

産業医の職務

産業医の具体的な職務は以下のように規定されています。

  • 健康診断、面接指導などの実施、およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理など労働者の健康管理
  • 健康教育、健康相談、その他労働者の健康の保持増進をはかるための措置
  • 労働衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因調査、および再発防止のための措置

また、労働者の健康管理に関して、産業医は事業者に勧告することもでき、メンタルヘルスケアでも重要な役割をもつことがわかります。

以下の記事では、メンタルヘルスについて詳しく解説しています。

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ストレスチェック後の面接指導

それではストレスチェック後の面接指導は産業医によってどのように行われるのか、その内容を見てみましょう。

面接指導前の準備

まずは面接指導にあたって産業医が参考にする情報を準備する必要があります。

  • 対象従業員の氏名、性別、年齢、所属事業所、部署、役職など
  • ストレスチェックの結果
  • 実施直前1か月の労働時間、日数、業務内容など
  • 健康診断などの結果
  • ストレスチェック時が繁忙期か閑散期だったかの情報
  • 職場巡視による職場環境の情報

産業医は情報とストレスチェックの内容に剥離がないかを確認します。

面接指導の目的

過労やストレスによる心身の不調を未然に防止するのが面接指導の目的です。

そのため、従業員への指導にとどまらず、医学的な見地から事業者への職場環境改善や労働時間の短縮を勧告します。

面接指導の内容

実際の面接指導では、対象者に対してストレスチェック項目を含めた以下の項目の確認が行われます。

勤務状況の確認

労働時間や業務内容はもちろん、職場での人間関係や業務内容や役割の変化、他社からの支援状況も確認します。

ストレス状態の確認

抑うつ症状などを確認し、場合によってはうつ病のスクリーニング検査構造化面接が行われます。

その他の心身状態の確認

過去の健康診断や現在の生活状況などを聞き取りつつ、うつ病やストレス関連疾患の症状がないかを確認します。

保健指導

気付きとセルフケアを中心とした、ストレス対処法についての指導を行います。

受診指導

面接の結果、受診の必要があると認められた場合、専門機関での受診の勧奨と紹介を行います。

面接指導後に企業が行うこと

面接指導後、企業は可能な限り早い段階で産業医の意見を聴取する必要があり、それに応じた職場環境の改善や対象者の労働時間短縮などの措置をとらなければなりません。

また、面接時の記録は5年間の保存義務があり、以下の内容が含まれている必要があります。

  • 面接指導の実施年月日
  • 面接指導を行った産業医の氏名
  • 対象従業員の氏名・勤務状況・心理的な負担状況
  • その他の心身状況
  • 健康保持のための産業医の意見

面接指導結果を受けて企業が注意すべきこと

労働安全衛生法第66条の10第3項により、面接指導を理由に従業員が不利益を被るような措置を取ることは禁止されています。

つまり、面接指導の結果にもとづき、解雇や退職勧奨、不当な配置転換や役職変更などは行えません。

対象者が不利益を被るとしてもそれが健康上やむを得ない場合、産業医の意見を聴取し、法的に適正な手続きを経てから措置を行う必要があります。

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ストレスチェック実施促進の助成金

ストレスチェック実施からその後の面接指導まで、産業医が果たす役割が非常に重要であることを解説してきましたが、産業医を専任する必要のない従業員数50名未満の事業所では、ストレスチェック実施にあたって専門の資格を持った医師を確保する必要があります。

ストレスチェック義務化の対象から、従業員数50名未満の事業所が外れているのはこのためでもあり、現在は努力義務とされています。

しかし、政府は2020年までにストレスチェック実施率100%を目指していたため、対象外の企業でも実施できるよう、助成金制度を設けています。

助成金の対象事業者

現在ストレスチェックが努力義務とされている、従業員数50名未満の事業所が対象となります。

助成金の必要要件

以下の5つの要件をすべて満たしている必要があります。

  • 労働保険の適用事業所であること
  • 常時使用する従業員が派遣労働者も含めて50名未満
  • ストレスチェックの事業者が決まっていること
  • 事業者が産業医師資格を持った医師と契約し、ストレスチェックに係る医師の活動すべてまたは一部を行わせること
  • ストレスチェックの実施/面接指導を行う者が、自社の使用者/労働者以外であること

助成金額と対象経費

必要要件を満たし、ストレスチェックと面接指導を行った場合の助成金額は以下のとおりとなります。

  • ストレスチェック実施に対して、1従業員につき最大500円
  • ストレスチェックに係る面接指導などの医師の活動に対して、1事業所1回につき最大21,500円(最大3回まで)

医師の交通費などの必要経費が生じた場合、これは助成対象とならず、あくまでもストレスチェックとそれに係る医師の活動に限られることに注意が必要です。

以下の記事では、ストレスチェックの助成金の申請の流れについて詳しく解説しています。

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産業医によるメンタルヘルスケアの重要性

労働者の健康管理を行うための専門知識を持つ医師である産業医は、従業員のメンタルヘルスケアを行ううえで重要な役割を果たしており、特にストレスチェックにともなう面接指導には欠かせない存在です。

しかし、ストレスチェック義務化の対象とならない従業員数50名未満の事業所では、同様に産業医を専任する義務がなく、また専任する余裕もないかもしれません。

変化の激しい市場経済の中では、企業規模にかかわらず、労働者が大きなストレスを抱えているのは事実であり、そのための措置として助成金制度が設けられているともいえるでしょう。

ストレスチェック実施のみにとどまらず、面接指導によるメンタルヘルス不調の予防と対策を強化するためにも、あらゆる手段をつくして産業医の確保を行うことをおすすめします。

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