従業員満足度調査は意味がないのか?│実態調査結果や実施ポイントを紹介
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従業員満足度調査とは
従業員満足度調査とは、ES調査とも呼ばれ、従業員が仕事や職場環境、会社の方針などにどの程度満足しているかを把握するための調査です。従業員の声を可視化し、組織の課題を明らかにすることで、職場環境の改善やエンゲージメントの向上につなげることを目的としています。
エンゲージメントサーベイとは
従業員満足度調査と似ている社内調査に、エンゲージメントサーベイがあります。
エンゲージメントサーベイとは、従業員が企業や仕事に対してどの程度熱意や愛着を持ち、積極的に関与しているかを測定する調査です。従業員のモチベーションや組織への貢献意欲を数値化し、組織の現状や課題を可視化できます。
従業員満足度調査が職場環境に対する満足度を測定するのに対し、エンゲージメントサーベイは、従業員が組織や仕事にどれだけ積極的に関与し、貢献しようとしているかを評価するという違いがあります。
エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

パルスサーベイとは
短時間で回答できるエンゲージメントサーベイとして、多くの企業で導入されているのがパルスサーベイです。
パルスサーベイとは、従業員の満足度やエンゲージメント、メンタルヘルスの状態などを把握するために、短期間で簡単な質問を繰り返し実施する調査手法です。
週1回から月1回の頻度で行われ、1回の調査では5~15問程度の簡単な質問が用意されるのが一般的です。
エンゲージメントに限らず、ストレスチェックや職場環境の改善にも活用されることが特徴です。
パルスサーベイについて詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

厚生労働省が従業員満足度調査を推奨する理由
厚生労働省は、生産性向上と人材確保のための取り組みとして、魅力ある職場づくりを推奨しています。そのためには、評価や処遇の改善、人材育成、ワークライフバランスを実現できる職場環境の整備が効果的です。
厚生労働省が行った調査※によると、従業員満足度と顧客満足度の両方を重視する企業は、顧客満足度のみを重視した企業に比べ、業績の向上や人材確保の効果が高いことがうかがえます。
また、魅力ある職場づくりは、短期的な取り組みではなく、従業員目線で継続して行うことが重要であると伝えています。
※出典:厚生労働省「従業員の職場定着など、雇用管理面でお困りの事業主の皆さまへ」(2025年2月6日閲覧)
従業員満足度調査は意味がない?実態調査からわかるその理由
しかし実際には、従業員から「従業員満足度調査は意味がない」と言われることがあります。
組織コンサルティング事業を営む株式会社識学は「社員満足度調査に対するエンゲージメント調査」を実施しました。
社員満足度調査を受けたことがあり、不満を感じたことがある男女を対象に行ったその調査によれば、「社員満足度調査と聞いてイメージするものは?」との質問には、約40%が「無意味」と答えています。
「満足度調査の結果がどの程度反映されていると思うか?」には、約73%の方が「反映されていない」と回答。社員満足度で会社が改善されると思わないとする方は、「会社の風土は簡単には変わらない」「結果を受けて改善ができる責任者がいない」などの理由から、従業員満足度調査には意味がないと感じているようです。
また、全体の約77%の回答者が「本音以外を書いたことがある」と答えました。
こうした結果から、改善のアクションにつながらない従業員満足度調査は、従業員から敬遠される傾向がうかがえます。その結果、従業員は「どうせ改善されないなら」と本音で回答せず、企業側も本当の課題を発見できない悪循環が生まれていると考えられます。
※出典:PR TIMES「『社員満足度調査』へのホンネ。7割以上の人が『本音以外を書いたことがある』と回答」(2025年2月6日閲覧)
従業員満足度調査を有効にするためのポイント
従業員満足度調査を組織と従業員双方にとって有意義なものにするためには、次のポイントに留意することが重要です。
1. 目的の明確化
従業員満足度調査を実施する際、まず重要なのは目的を明確にすることです。単なる慣習化したアンケートではなく、具体的な課題を把握し、どのような改善を目指すのかを明確に定める必要があります。
たとえば、「職場環境の向上」「業務負荷の適正化」「経営陣と従業員の信頼関係の強化」など、何を目的として調査を行うのかを決めておくことで、質問設計や結果の活用が効果的になります。
2. 適切な質問項目の設定
従業員満足度調査を有効なものにするためには、設問の設計が重要となります。設問はシンプルかつ明確にし、回答者が直感的に理解できるものにすることが望ましいです。設問数が多すぎると、回答者の集中力が切れてしまうため、適切な数に抑えることが求められます。
また、単純な選択式の質問だけでなく、自由記述の項目を設けることで、より具体的な意見を得られるようになります。たとえば、職場環境に関する質問では「現在の業務環境について満足していますか?」という選択肢に加え、「業務環境に対して改善してほしい点があればお書きください」といった自由記述欄を設けるとよいでしょう。
従業員満足度調査の質問項目と例文については、次の記事で詳しく解説しています。


3. 匿名性と信頼の確保
従業員満足度調査で正直な意見を引き出すためには、回答者が安心して本音を述べられる環境を整えることが不可欠です。従業員が「特定されるのではないか」という不安を抱えると、回答が慎重になり、調査結果の信頼性が低下する可能性があります。そのため、調査は匿名で実施し、結果公表の際には個人が特定されないよう十分に配慮することが推奨されます。
4. 従業員に目的を周知して理解を得る
従業員に対して、満足度調査の実施目的やその重要性を十分に伝え、理解を得ることが大切です。従業員が調査の目的を理解し、その重要性を認識することで、調査への参加意欲が高まり、より正確で有益なデータを収集できます。
5. 適切なタイミングと実施頻度
調査の実施タイミングも重要な要素となります。業務が繁忙期の際に実施すると、従業員が十分に回答できず、結果の精度が下がる可能性があります。適切な時期を選び、従業員が回答しやすい環境を整えることが大切です。
また、満足度調査は一度限りの実施ではなく、定期的に行うことが望ましいです。年に一度だけではなく、半年ごとに実施することで、組織の変化を継続的に把握し、長期的な改善につなげられます。
6. 調査結果のフィードバック
従業員満足度調査の結果を単に集計して終わるのではなく、フィードバックを従業員に適切に伝えることが重要です。調査の結果を従業員に共有し、職場のどの点が評価され、どの部分に課題があるのかを明確に伝えることで、組織全体として課題解決に向けた共通認識を共有できます。
フィードバックの際には、調査結果を単に数値で示すだけではなく、具体的なコメントや事例を交えて説明することで、従業員にとってより実感の湧くものとなるでしょう。
7. 具体的な改善策の実施
従業員満足度調査の最も重要な目的は、従業員の声を組織の改善につなげることです。結果を受けて経営陣がどのような改善策を取るのかを明確に示し、従業員に伝えることで、信頼関係の構築につながります。これにより、従業員は満足度調査には「意味がある」と思うようになり、定期的な調査にも協力的になることが期待できます。
8. 継続的な評価と改善のサイクル
従業員満足度調査は一度きりの施策ではなく、継続的な取り組みの一環として位置づけることが重要です。前回の調査結果をもとに実施した施策がどの程度効果を上げたのかを評価し、新たな課題に対応していく仕組みを整えましょう。これにより、組織内でのPDCAサイクルが回り、より良い職場環境の実現につながります。
従業員満足度調査に役立つツール
従業員満足度調査や意識調査に役立つツールを紹介します。
従業員満足度調査テンプレート
ボクシルでは、Wordで必要な箇所を記入するだけで簡単に従業員満足度がわかる、無料のテンプレートをダウンロードできます。テンプレートを活用するだけで、社員満足度調査が実施できるので、ぜひ活用してみてください。
【無記名式テンプレート】
【記名式テンプレート】
従業員満足度調査ツール
従業員満足度調査は、アンケートの作成や集計・分析といった手間が多いため、ツールやサービスを利用して効率的に実施することが継続できる秘訣です。
その際、組織のニーズや目的に適した調査ツールを選定することが重要です。調査項目設定の柔軟性やカスタマイズ性、データ分析機能の充実度、使いやすさなどを考慮し、組織の要件に最適なツールを選択しましょう。
エンゲージメントサーベイツール
従業員満足度以外に、従業員が会社や仕事にどれだけ愛着や熱意を持っているかを測定したい場合には、エンゲージメントサーベイツールが役立ちます。従業員の仕事への意欲や会社への貢献意識を把握でき、離職防止に効果的です。

従業員満足度調査を無意味にしないために
従業員満足度調査は、意味のない単なるアンケート調査ではなく、組織の成長と従業員のモチベーション向上のための重要なツールです。適切な設計と実施、そして結果の有効活用を通じて、より良い職場環境を築くことが実現できます。
従業員満足度調査を有効に活用するためには、適切なサービスの選定が不可欠です。自社のニーズや予算に合わせて、複数のサービスを比較検討しましょう。選定の際には、機能の充実度や使い勝手、無料プランや無料トライアルの提供状況などを十分に考慮することが重要です。
また、導入前には実際に試験運用を行い、従業員満足度調査の適切性や効果を確認しましょう。これにより、従業員の声を有効に活用し、組織全体の改善につなげられます。
従業員満足度調査ツールは、次の記事でも詳しく紹介しています。
