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支払誓約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から151日前のものです)
金銭債務を明らかにして、支払計画やペナルティを設定し、法的証拠能力を付加できる「支払誓約書」というものがあります。本記事では、支払誓約書の意味や必要性を紹介し、記載事項とその書き方や注意点についても解説します。記事の最後ではすぐに使える「支払誓約書」のひな形がダウンロードできます。

支払誓約書とは

支払誓約書とは、当事者の一方が相手方に対して金銭を支払う意思を示す書面です。当事者双方が署名捺印する契約書とは異なり、誓約書を受け取る側は署名捺印しません。片方の当事者のみが署名捺印して、書面の内容どおりに相手方へ金銭を支払うと確約する書面です。

ただし、勝手な内容で一方的に支払誓約書を作成して通知するのではなく、支払誓約書を作成する段階ではすでに、当事者間で支払内容について合意が整っているのが一般的です。なお、書面のタイトルが〇〇誓約書でも、双方の当事者が署名捺印している場合には、原則として契約書と同様の取扱いになります。

支払誓約書はなぜ必要か

本来であれば、商品やサービスなどの売買取引では契約書を締結して行われます。しかし、本契約とは別に支払誓約書の作成が必要になる理由には、次のようなの場合があります。

  • さらに強く金銭支払いを促す
  • 事実関係と金銭債権の存在を明確にする
  • 強制執行をスムーズに行う準備

さらに強く金銭支払いを促す

支払誓約書を自ら提出させることにより、相手方に金銭支払をより強く意識させプレッシャーを与えて、金銭の回収確率を上げる効果が期待できます。

支払が滞るということは、契約書にある金銭支払の約束を破ることにつき、迷惑をかけて申し訳ないという感覚が薄れているといえます。そこで、自分の非を認めて自ら金銭支払の期日や方法を申告させることで、債務者の改心や支払への努力を促すためです。

事実関係と金銭債権の存在を明確にする

取引によっては、書面の契約書を作成せず口頭で約束しただけの契約もあります。民法上は口約束の契約も法的に問題なく、双方が合意した時点で契約の成立要件を満たしているため有効です。しかし、双方の契約内容に対する認識のズレや、万が一の揉めごとへの対処方法をあらかじめ決められるため、契約締結の際は契約書面を取り交わすことが常識です。

なお、証拠が残っていない口約束の場合には「そんな約束はしていない」と債務者が言えばそれ以上の追求は困難です。支払誓約書には、双方の間にある事実関係を整理して書面化できるため、具体的な証拠能力を得られるという大きな意味があります。裁判へ進んだ場合にも事実関係は明確に示せるため、特に口約束ではじまった契約の場合には作成しておくとよいでしょう。

強制執行をスムーズに行う準備

差し入れた支払誓約書を相手方が履行しない可能性が高い場合には、強制執行に発展するケースを想定して、支払誓約書を公正証書で作成する方法があります。

公正証書とは、公証役場の公証人(法曹経験者、実質的に公務員)が作成する公文書です。公正証書の文面に「債務不履行があれば直ちに強制執行を受けてもやむなしとする文言(強制執行認諾文言)」を記載しておくだけで、債務不履行の発覚後に裁判をすることなく、即時強制執行へと移行できます。

通常の文書として支払誓約書を作成しても法的効力はありますが、公正証書の方法で作成すれば支払誓約書の強制力が高まることは知っておきましょう。

支払誓約書の法的効力

支払誓約書には、当事者の一方が金銭支払を約束する記載があり、作成前には当事者で支払内容について合意しているはずです。また、支払誓約書が相手方に交付されたあとにも、交付された側(金銭支払を受ける側)が支払誓約書の内容に異議を申し出なければ、支払誓約書の内容を追認(後から認めた)ことになります。

したがって、誓約書が交付されて双方に異議がなければ、支払誓約書も契約書などと同様に法的効力があると推定できます。書面に法的効力があるのであれば、その内容に背いた場合には債務不履行責任の追及が可能です。

ただし、誓約書の内容が公序良俗に反する内容(例えば、お金が支払えない場合は死んで償うなど)の誓約書は無効です。そのため、不倫関係を続ける契約に違反して別れを切り出した相手方への慰謝料支払誓約書は、不倫契約という違法行為からスタートしているとして無効とされます。一方で、不倫してしまった有責配偶者の不倫相手(違法行為をした者)への損害賠償金の支払誓約書は有効です。

この場合も、裁判に発展した場合には、不倫の事実を当事者が認めたという証拠が支払誓約書によって残されるため、その後の交渉や裁判において重要な意味を持ちます。

支払誓約書の主な記載事項

支払誓約書に記載すべき内容は、法律では定められていません。しかし、主な目的は金銭支払の約定であるため、支払条件などが詳細に書かれていることが重要です。

支払誓約書の作成は、手書きでもパソコンで作成しても問題ありません。ただし、書面の性格上は慰謝の意味を含むことが多いため、住所や署名の記入は手書きで押印まで行うほうが望ましいといえます。

支払誓約書の主な記載事項について解説します。

  • 支払内容
  • 支払金額
  • 支払方法

支払内容

支払誓約書には、何が原因で金銭支払する必要があるのか、下記のように債務不履行の内容を明らかにして認めさせる必要があります。

〇〇年〇月〇日付けの商品売買契約に基づく金銭支払債務に関して、商品受領者の債務不履行によって、〇〇年〇月〇日時点において金〇〇円の滞納金があることを認めます。

支払金額

売買契約書などの支払債務が発生した原契約の内容はさておき、現在の滞納金を将来に向かってどのような計画で支払うのかについて、以下のように確約します。

私は、貴殿に対する債務全額について、以下のとおり分割で支払います。

〇〇年〇月〇日から毎月末日限り金〇〇万円ずつ

支払方法

金銭支払は一括が原則ですが、金額が大きい場合には分割になることがよくあります。支払は、現金持参もしくは銀行振込などがありますが、振込なら下記のような記載にして手数料の負担区分も規定しておきます。

<支払方法>

滞納金の支払は、指定する下記口座に振込の方法で行います。なお、振込手数料は債務者の負担とします。

<振込先口座>
〇〇〇〇銀行〇〇支店
口座番号:12345678
口座種別:普通預金
口座名義:誓約太郎

<支払期限>
支払には必ず期限を設けて、支払の遅延には下記のように「遅延損害金」のペナルティを付加すれば、支払をより強く促すことができます。
前項記載の分割払いを2回分(〇〇万円)以上怠った場合は、期限の利益を喪失し、一括で請求されても異議を述べません。

また、遅延損害金利率:年14.6%とします。

なお、「期限の利益」とは、本来なら一括で支払うべきところを、分割払いを承諾して待ってもらえる利益です。期限の利益を失えば、一括で支払わなければなりません。また、遅延損害金利率が利息制限法第4条第1項に規定された上限率(14.6%)を超える部分は無効になります。

支払誓約書作成時の注意点

支払誓約書の内容が公序良俗や強行法規に反する内容は無効になります。強行規定とは、当事者間の合意があっても排除できない絶対的なルールで、労働者の最低賃金や利息制限法などです。

また、債務者が納得していない内容を支払誓約書に書かせて、嫌がる相手を詐欺や脅迫による方法で誘導してサインさせたような場合は、誓約書の法的効力は失われます。そのため、誓約書の作成から同意までが詐欺や脅迫に基づいていないという客観的な証拠を、債権者側(支払誓約書の受領側)から立証できるよう整えなければなりません。

支払誓約書のひな形(テンプレート)

支払誓約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しました。支払誓約書を作成する際にはぜひご利用ください。

支払誓約書のひな形(テンプレート) 支払誓約書のひな形(テンプレート)

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