電子契約のリスクは?リスクの種類や対策・紙契約との比較
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- 電子契約とは?
- 電子契約に潜むリスク
- 契約の有効性を確認しにくい
- なりすましによる契約が発生する
- 契約書が改ざんされる
- 情報漏えい
- 電子契約できない契約も存在する
- 取引先が対応していない場合もある
- 紙よりも保存期間が短い
- 電子契約のリスクへの対策
- 電子署名やタイムスタンプを利用する
- 法務部門や顧問弁護士の承認を通す
- アクセス権限を必要十分に設定する
- 徹底した社内教育を行う
- ウイルス対策ソフトを活用する
- 契約企業に事前に同意を取る
- 必要なら電子契約システムを活用する
- 紙による契約にもリスクは存在する
- 契約まで時間がかかる
- 紛失や盗難が発生する可能性が高い
- 印鑑の持ち出しや偽造が容易
- 電子契約のメリットやデメリット
- 電子契約のリスクを回避して上手に活用しよう
電子契約とは?
電子契約とは、電子データで作成された契約に電子署名や電子サインを行うことで契約業務を行うことです。電子契約を行うことでリモートワークの推進や業務効率化が図れるなど多くのメリットがあります。
電子契約についてより詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
電子契約に潜むリスク
電子契約には次のようなリスクが潜んでいます。電子契約のこれらのリスクについて1つずつ確認しましょう。
- 契約の有効性を確認しにくい
- なりすましによる契約が発生する
- 契約書が改ざんされる
- 情報が漏えいする
- 電子契約できない契約も存在する
- 取引先が対応していない場合もある
- 紙よりも保存期間が短い
契約の有効性を確認しにくい
電子契約においては、データで契約を締結します。従来の紙の契約書と違い、相手と対面して自筆の署名を行うわけではなく、インターネットを介して契約を行うことも多いでしょう。
お互いに対面して契約書にサインを行えば、誰がいつどのようにサインをしたかを確実に把握できます。しかし、インターネットで契約を結ぶ場合、画面の向こうにいる人が本当に取引先の相手かどうかはわかりません。また、自社が適切だと判断して行っているような契約業務を相手も行っているかは不明です。
双方が適切な処理をした契約であることがわからず、契約そのものが有効なものかわからないことは、電子契約のリスクの1つです。
なりすましによる契約が発生する
相手が契約に同意した経緯や、契約業務を行っている相手が本当に適切な取引先かわからないことで、なりすましが発生するリスクがあります。
企業が用意した印鑑を使って契約をする場合、印鑑を保有する企業の内部の人間以外には押印作業ができません。セキュリティの厳しい企業に入り込んで印鑑を不正利用することは難しいためです。
しかし、電子契約の場合は不正アクセスやそのほかの理由で電子契約のためのIDやパスワードが流出すれば、企業の建物の外からでも契約業務を行えます。なりすましが物理的な印鑑を使うよりも簡単にできてしまうため、この点も電子契約のリスクと考えられるでしょう。
契約書が改ざんされる
不正アクセスが行えるような技術をもつクラッカーであれば、電子契約を行うパソコンやシステム本体に侵入して契約書の改ざんを行う可能性があります。
書面での契約であれば契約書の改ざんは非常に難しく、いざ改ざんできたとしても改ざんの形跡が残ります。しかし、電子契約であれば内容を変更したりデータそのものを差し替えたりしても、ぱっと見では改ざんの形跡に気付きにくいです。
両者に内容の違う契約書が残った場合、どちらの契約書が正しいものか判断できずトラブルに発展してしまう危険性もあります。このような改ざんの可能性があることも電子契約のリスクといえます。
情報漏えい
不正アクセスが起きた場合には、偽造や改ざんだけではなく情報そのものが流出・漏えいしてしまう危険性もあります。
紙の契約書であれば、原本が社内から持ち出されなければ情報が流出するリスクは限りなくゼロに近いです。しかし、電子契約の場合不正アクセスのほかにも、送信先を誤ってファイルを送信してしまうことや、取引先になりすました攻撃者にファイルを送信してしまう可能性も否定はできません。
このように、電子データだからこその情報漏えいリスクがあることも覚えておきましょう。
電子契約できない契約も存在する
近年多くの契約で電子化が認められていますが、まだ契約の電子化が認められていない契約もあります。たとえば、事業用定期借地契約や任意後見契約などは、公正証書の作成が義務付けられていることもあり、電子化が認められていません。
公正証書については現在電子化を推進する動きがあることから、今後は電子化される可能性があります。しかし、現段階では電子化が認められておらず、電子契約を行う場合は、このような電子契約できない契約もあることに注意しながら行わなければなりません。
取引先が対応していない場合もある
これまで紙ベースの契約書を使って契約をしてきた企業が、まだ電子化に対応していないこともあるでしょう。契約者間で一方が電子化を進めており、もう一方が紙ベースでの契約を希望している場合、どちらかが契約形式を相手に合わせなければならず、契約者の一方が不便な契約業務を行わなければならない可能性があります。
電子契約システムの中には一方が契約していればもう一方は契約不要で利用できるシステムもあるため、紙ベースの企業が電子契約の利用に同意してくれれば問題はありません。しかし、社内ルールのために紙でなければ契約できないとなると、電子契約を推進している企業は紙の脱却ができず不便に感じてしまう可能性が高いでしょう。
このように、契約者間で電子契約の取り扱いが異なるときに情報管理の煩雑化によりリスクになり得ます。
紙よりも保存期間が短い
電子データは紙よりも保存期間が短いことも、電子契約のリスクの1つと考えられるでしょう。
紙の種類にもよりますが、紙は適切な保存を行えば非常に長期にわたって長持ちするため、法的に長期保存しなければならない書類を作成することに向いています。一方で、電子データとして保存する場合、CDやDVDなどの光学メディアは予測寿命が紙より短いとされています。そのため、長期保存しなければならない書類や資料の保管にはやや向いていません。
電子データが消えてしまうのではなく、記録メディアが破損しメディア内のデータが見られなくなってしまったという事態も起こりえることから、電子契約はリスクがあるといえるでしょう。
電子契約のリスクへの対策
電子契約のリスクへの対策としては、次のようなものが考えられます。
- 電子署名やタイムスタンプを利用する
- 法務部門や顧問弁護士の承認を通す
- アクセス権限を必要十分に設定する
- 徹底した社内教育を行う
- ウイルス対策ソフトを活用する
- 契約企業に事前に同意を取る
- 必要なら電子契約サービスを活用する
電子署名やタイムスタンプを利用する
電子署名やタイムスタンプは契約の有効性確認やなりすまし防止、改ざん防止に役立ちます。
電子署名とタイムスタンプは紙の書類でいうところの押印にあたるものです。通常紙の書類では、押印が行われていれば二段の推定によって、契約書に同意した契約者が本人であること、また本人が契約に同意し契約していると推定してよいとされています。
これは電子署名も同様で、電子署名とタイムスタンプが正しく付与されていれば、契約は本人が同意し、本人が行ったものと推定してもよいとされています。
電子署名やタイムスタンプ、そしてそれらの効力を支える電子署名法があるため、電子契約であっても契約の有効性は確認でき、なりすましや改ざんの防止が可能です。
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法務部門や顧問弁護士の承認を通す
契約前に法務部門や顧問弁護士の承認を通すことも、電子契約におけるリスク対策の1つです。
第三者が契約を事前に確認することで、契約内容に問題がない状態で契約に同意できます。また、万が一契約後に改ざんが発生した場合にも、法務や顧問弁護士を通していることからどちらの契約書が正しいものか判断しやすいです。
その後の影響が大きいと考えられる重要な契約は、契約者のみで契約業務を進めるのではなく、法務や顧問弁護士などに相談しながら契約を進めることを検討しましょう。
アクセス権限を必要十分に設定する
電子契約はアクセス権を設定できます。一定の役職者と契約業務の担当本人のみが契約書を作成・閲覧できるようなアクセス権にしていれば、不要なリスクを最小限にしながら契約業務を進められるでしょう。
必要なタイミングで必要な人員だけが契約書にアクセスできるようにしておけば、無駄なリスクを追うことなく電子契約を利用可能です。
徹底した社内教育を行う
従業員が適切に契約業務を行えるようなコンプライアンス意識が醸成されていれば、電子契約のリスクはそこまで大きなものではありません。
電子契約であれ紙ベースの契約であれ、従業員のコンプライアンス意識の欠如は大きなリスクになります。契約は企業活動にとって非常に重要なものであると認識し、適切な手順で法令に違反しないように契約業務ができれば契約のリスクはほとんど心配する必要はありません。
そのため、電子契約を含めた契約業務を適切に行うために何よりも重要なことは徹底した社内教育であると考え、社員の教育にも力を入れましょう。
ウイルス対策ソフトを活用する
高機能なウイルス対策ソフトの導入、ファイアウォールの設定などを行い、システマチックに悪意ある攻撃から情報を守りましょう。ウイルスに感染すると情報漏えいや改ざんの被害に遭うだけではなく、攻撃者の踏み台として利用され、感染したウイルスをさらに他社に送りつける加害者になってしまう危険性もあります。
ウイルス送付の加害者となった場合、大きなトラブルになりやすいため、被害者にも加害者にもならないようにウイルス対策は徹底して行わなければなりません。
契約企業に事前に同意を取る
取引先が電子契約に対応していない場合、紙と電子の両方が混在する契約フローになることを、契約や商談の前に確認することが効果的です。
電子契約に対応している場合には、契約の方式が当事者型か立会人型かまで把握できると契約をよりスムーズに進められるでしょう。もしも電子契約に対応していない場合にも、立会人型であれば相手企業が電子署名をもっていなくても、システムの機能を使って問題なく電子契約ができます。
必要なら電子契約システムを活用する
電子契約そのものや電子契約のセキュリティ対策を自社だけで対応することが難しい場合には、電子契約システムの活用を前向きに検討しましょう。
電子契約システムを利用すればリスク対策の多くをシステムがまかないます。たとえば、電子署名やタイムスタンプの付与、アクセス権限の適切な設定、法務や顧問弁護士の確認を通すなどは電子契約サービスの機能で十分に対応可能です。
電子契約システムを導入することでセキュリティリスクが低減できることはもちろん、保管・検索機能の強化で業務効率化を図ったり、アラート通知で契約書の更新漏れを通知したりと多くの契約業務が便利になります。
電子契約のリスクが気になる方だけではなく、紙の業務に課題を感じている方もぜひ電子契約システムの導入を積極的に検討しましょう。
紙による契約にもリスクは存在する
ここまで電子契約に関するリスクばかりを紹介しましたが、紙による契約にも次のようなリスクがあることは忘れてはいけません。紙で契約業務を行うことのリスクについても確認し、電子契約に移行すべきか検討しましょう。
- 契約まで時間がかかる
- 紛失や盗難が発生する可能性が高い
- 印鑑の持ち出しや偽造が容易
契約まで時間がかかる
紙での契約は締結まで時間がかかることがリスクといえます。
紙での契約業務は、契約書の作成・封入・郵送・押印・返送などのステップが多く、それぞれに手作業が必要なため契約締結までのリードタイムが非常に長くかかります。社内の承認フローも、承認者がオフィスにいなければ進まないため、さらにムダな時間がかかってしまうことも多いです。
リードタイムが長ければ長いほど売上計上のタイミングが遅れたり、サービス提供を受けられる期間が延びたりとデメリットも多いです。これが紙による契約のリスクの1つです。
紛失や盗難が発生する可能性が高い
紙の契約書は紛失や盗難が発生する可能性が高いです。
物理的に存在する紙の契約書は持ち出しやコピーが簡単に行えるため、自宅で作業しようと考えた従業員がうっかり書類をなくしてしまったり、悪意ある第三者に盗まれてしまったりと情報が流出するリスクが高いです。
情報流出は企業にとって致命的なブランド毀損になるため、紛失や盗難が発生しやすい紙の契約書はリスクが大きいと考える事業者も増えています。
印鑑の持ち出しや偽造が容易
物理的な印鑑は持ち出しや偽造が容易です。
企業で利用される社印や角印は小さく、誰かが持ち出そうと思えば簡単に持ち出せてしまいます。持ち出して複製を作ることも簡単で、悪意ある人に印鑑を持ち出されたら偽造は容易に行われてしまうでしょう。
また、3Dスキャナや3Dプリンタの技術革新が目覚ましい昨今は、印影から印鑑を再現することも難しくありません。これまで押印は紙の契約書の信頼性を担保するために利用されてきましたが、技術革新が進む現代ではリスクとも捉えられています。
電子契約のメリットやデメリット
電子契約にはこの記事で紹介したリスクのほかに、メリットとデメリットがあります。それぞれどのようなメリット・デメリットがあるか確認しましょう。
電子契約のメリットには次のようなものがあります。
- 契約手続きの手間が省ける
- 契約の検索や閲覧が容易になる
- 契約業務にかかるムダなコストを削減できる
- テレワークにも対応できる
- 書類の保管スペースが不要になる
紙ベースでの契約業務でリスクとなっていたことが電子契約を導入することでカバーできるでしょう。
一方、電子契約には次のようなデメリットもあります。
- システム導入に費用がかかる
- 社内にシステムを浸透させるまで時間がかかる
- 取引先との合意形成が必要
- 電子契約に対応できない契約がある
電子契約のデメリットは一時的なものや、今後解消が見込まれるものが多いため将来性も含めて電子契約を検討しましょう。
電子契約のメリットやデメリットについては次の記事にて詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
電子契約のリスクを回避して上手に活用しよう
電子契約には契約の有効性を確認しにくいことや、なりすまし・改ざん・情報が漏えいなどのさまざまなリスクがあります。しかし、これらのリスクは電子契約システムの機能で対策できるものも多く、リスクよりもメリットが大きいと感じることも多いでしょう。
また、紙の契約書にも契約締結までに時間がかかることや、直接的・間接的コストがかかること、さらに紛失や盗難が発生する可能性が高いことなどリスクがあります。
これらのリスク回避にも電子契約は役に立つため、紙ベースの契約業務に課題を感じている事業者は電子契約システムの導入を検討しましょう。
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