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電子契約に関する法律一覧!有効性や法的効力をわかりやすく解説

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電子契約システムの法的効力を担保する「民法」や「民事訴訟法」といった一般的な契約に関する法律に加え、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった関係する法律と、政府の動向などを解説していきます。

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電子契約とは

電子契約は、わかりやすくいえば電子データでやりとりをして契約を行う方法です。紙の場合は署名や押印を必要としますが、電子契約の場合は電子署名やタイムスタンプを使用します。またデータの保管はクラウドやサーバーで行うのが特徴です。

政府による社会のデジタル化促進もあり、近年電子契約を導入する企業も急増しています。これに伴って、契約やデータ管理を行う電子契約システムも多数リリースされています。

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電子契約の法的有効性

契約書の電子化に伴い気になるのが、電子契約の法的根拠や法的効力です。まず結論からいえば、電子契約システムを活用して行った契約は、一般的に紙の書類で交わした契約と同様に有効であると考えられています。

民法522条2項には、「2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」と法律に記されているからです。ただし、民事訴訟といった裁判で電子契約を有効に成立させるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

大まかな要件としては、「後から契約書内容を確認できる」「真性の書類であることを証明できる」などがあります。電子契約を行う際には、これを満たすために電子認証や電子署名といった技術が用いられているシステムを利用するといいでしょう。

電子契約が法的有効性をもつ仕組み

電子契約が法的に有効であると認められる仕組みは、主に電子署名と公開鍵暗号方式の技術にもとづいています。この技術によって、デジタルデータの真正性と不変性を保証しているのです。

電子署名の法的効果

電子署名は、電子的に作成された文書の真正性と不変性を保証するための技術です。これは、紙の契約書における印影や手書きの署名に相当する役割を果たし、文書が本人の意思であることを証明し、本人以外によって文書の改変がされにくい状態を作り出します。

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公開鍵暗号方式による安全性

公開鍵暗号方式を用いて、文書の作成者と作成後のファイルが改変されていないことを証明します。公開鍵暗号方式では、暗号鍵(秘密鍵)と復号鍵(公開鍵)を用いて、文書の暗号化と復号を行います。電子署名が付された文書は、暗号鍵の管理者によって作成され、改変されていないと推定されるのです。

電子契約サービスの利便性

電子契約サービスの利用者は、暗号技術の複雑な知識をもたなくても、簡単な操作で電子署名を行った文書の真正性を確認できます。多くのサービスは、電子署名済みの文書を開くだけで、誰がいつ同意したのか、文書が改変されていないかを簡単に確認できるように設計されています。

このように、電子契約は法的な有効性をもち、同時に利用の容易さも提供しているのです。電子契約はビジネスプロセスの効率化を促進する有力なツールとして位置づけられています。

電子契約にまつわる法律一覧

電子契約は、「民法」や「民事訴訟法」といった契約一般に関して規定している法律と、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった電子契約に特化してルールを定めている法律の、両方の規制を受けます。

これらの法律の条文には、次の規定が存在します。

  • 法律で定められているルールに従って契約を結ばなければならない「強行規定」
  • 当事者の合意によって法律の規定とは違うルールで契約できる「任意規定」

強行規定に反した契約条項は無効となるため、電子契約においても各法律に則った契約書作成が必要です。次の電子契約に関する法律を確認しておきましょう。

民法

民法は日本の主要な法律である「六法」の一つで、主に財産関係や家族関係を規律する法律です。電子契約か紙の契約かに関わらず、契約全般に関するルールが定められています。

電子契約に関わる法律は、民法第522条です。

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用:民法第522条

一般的に当事者同士の合意が発生した時点で契約は成立とみなします。電子契約も例外ではないので、メールやチャットなどでのやりとりは注意するようにしましょう。

電子署名法

2001年4月に施行された電子署名法とは、電子署名に紙の契約における捺印や署名と同等の効果をもたせるための法律です。

紙の契約書の場合は民事訴訟法228条4項によって、「署名または押印があった場合は契約が真性に成立したと推定できる旨」が定められています。しかし電子契約は物理的に署名・押印できないため、この規定は適用できません

それを補うのが電子署名法3条で、電子契約に電子署名がされていれば、契約が成立したとみなされます。ただし、「本人性」と「非改ざん性」の要件を満たす必要があります。

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民事訴訟法

民事訴訟法も六法の一つで、民事訴訟における手続きを定めた法律です。文書の成立について定めているのは、民事訴訟法の第288条と4項です。

第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
引用:民事訴訟法の第288条と4項

つまり、文書は本物であると証明する必要があり、本人または代理人の署名があることで証明となるとしています。電子契約においては、電子署名が証明にあたるとみなされます。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、帳簿や領収証、請求書、など国税関係書類の電子データ化を認める法律です。1998年に制定された法律であり、徐々に適用範囲が拡大されています。

2022年1月の法改正では、事前承認手続きの廃止・電子取引における、書面による保存の廃止・電子保存義務化の2年宥恕処置といった条項が変更されました。

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IT書面一括法

IT書面一括法は、2001年4月に電子署名法と同時に施行された法律で、正式名称を「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といいます。

顧客保護の観点から証券取引法、割賦販売法、旅行業法などの特別法によって、事業者に書面交付を義務付ける規制が数多存在していました。しかし、これらの規制が電子商取引の普及を阻害する一因でした。

そのため政府はIT書面一括法を制定し、送付される側の承諾を条件に電子メールやFAXなどの通信手段による書面送付を認め、規制を緩和します。結果、約50種類の法律において書面による交付が電子的な連絡手段で代替可能になり、電子取引が促進されました。


IT書面一括法は建設業法にも影響を与え、建設業界での電子契約を後押しするきっかけとなりました。

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e-文書法

e-文書法は財務・税務関係の帳票、取締役会議事録など商法や会社法、税法で保管が義務付けられている書類について電子データ保存を認める法律です。

電子帳簿保存法と類似していますが、電子帳簿保存法は国税関連の書類に特化しているのに対して、e-文書法は帳票や契約書など全般を対象にしているため対象範囲が広い点で異なります。

経済産業省が定めた電子データとしてこれらの書類を保管する要件は、「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つです。ただし、4つすべての要件を満たす必要はなく文書の種類のよって1〜3要件、ほとんどの文書は見読性を満たせば良いとされています。

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印紙税法

印紙税法とは、契約書や領収書など特定の文書について課税する旨を定めた法律です。

印紙税法の中で電子契約が無税である旨は定められていませんが、印紙税法3条には次のように定められています。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書〜中略〜の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
引用:e-Gov法令検索「印紙税法三条」(2023年12月2日参照)

また、印紙税法基本通達44条では

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
引用:国税庁「印紙税法基本通達 第7節 作成者等 第44条」(2024年3月4日閲覧)

と定められており、用紙に課税事項を記載しない電子契約は、課税文書に該当しないため、印紙税は必要ないとされています。

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電子契約の利用者を保護する法律について

電子契約に関する法律には、電子契約の有効性に関する法律のほかに、利用者を保護する法律も存在します。次に、電子契約の利用者を保護する法律も紹介します。

電子契約法

電子契約法は、電子消費者契約法とも呼ばれており、ネット通販といった電子商取引において、消費者を救済するための特例を定めた法律のことです。消費者のパソコン操作ミスといった過失によって本来と違った商品・サービスを購入した場合でも、場合によっては取り消しができます。

たとえば、100個発注しなければいけないところを間違えて1000個と打ち間違えてしまったとします。このとき事業者が注文の確認画面で修正できる仕様にしていないといった、操作ミスの予防措置を講じていなければ契約は取り消し可能です。

借地借家法

借地借家法は、土地や建物の貸し借りについて期間や権利、更新などについて定めた法律です。かつては電子化が認められていなかったものの、2022年5月18日に施行された改正法によって、電子契約での締結が可能になりました。

(定期借地権)
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、〜中略〜この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。
第三十八条
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
引用:e-Gov法令検索「借地借家法」(2024年3月4日閲覧)

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法(宅建業法)は、宅地や建物の取引や、購入者の利益や流通の円滑化に関するルールについて定めた法律です。こちらも借地借家法と同じくかつては電子化が認められていなかったものの、2022年5月18日に施行された改正法によって、宅地建物取引士の押印も不要とされ、相手の承諾を条件として電子契約での締結が可能になりました。

第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、〜中略〜これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
第三十七条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、〜中略〜その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
5 宅地建物取引業者は、第二項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であつて第三項の規定による措置に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該宅地建物取引業者は、当該書面を交付したものとみなし、同項の規定は、適用しない。
引用:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(2024年3月4日閲覧)

特定商取引法

特定商取引法(特定商取引に関する法律)とは、事業者の違法・悪質な勧誘行為等を防止し、いわゆるクーリングオフといった消費者の利益を守る民事ルールが定められた法律です。これまでは書面交付が義務付けされていたものの、2023年6月1日の法改正により、消費者から事前の承諾を得ることで電子契約が可能になりました。

第四条
2 販売業者又は役務提供事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。この場合において、当該販売業者又は当該役務提供事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
引用:e-Gov法令検索「特定商取引法」(2024年3月4日閲覧)

下請法

下請法(下請代金支払遅延防止法)とは、親事業者が下請事業者に対して地位を乱用しないようにし、下請事業者の立場を守る法律です。事前に同意を得られている場合は、電子契約を利用できます。ただし、取引先が電子契約での締結に同意しない場合は、書面での契約締結が必要になります。

(情報通信の技術を利用する方法)
第二条 親事業者は、法第三条第二項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該下請事業者に対し、その用いる同項前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2 前項の規定による承諾を得た親事業者は、当該下請事業者から書面又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該下請事業者に対し、法第三条第二項に規定する事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該下請事業者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
引用:e-Gov法令検索「下請代金支払遅延等防止法施行令」(2024年3月4日閲覧)

労働基準法

労働基準法とは、労働者の適切な身分や権利を守る法律です。かつては書面交付によって行われていた雇用契約ですが、2019年4月1日より電子通信(FAXや電子メール、電子契約システム)による交付も可能になり、労働条件通知書の電子化が認められました。ただし、「労働者の希望」があり、なおかつ「労働者が受け取った電子通信の内容を出力することにより書面を作成できる」といった条件付きです。

第五条
法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
一 ファクシミリを利用してする送信の方法
二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
引用:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(2024年3月4日閲覧)

建設業法

建設業法とは、建設業者の資質向上や建設工事請負契約に関するルールを定めた法律です。工事請負契約に関しては書面による締結を原則としますが、こちらも相手方の承諾があれば電子契約による締結が可能です。

(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
3 建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
引用:e-Gov法令検索「建設業法」(2024年3月4日閲覧)

電子契約を導入するメリット

電子契約を導入することには多くのメリットがあります。次に主なメリットを紹介します。

業務が効率化する

電子契約では、物理的な書類のやりとりが不要となるため、契約書の作成から署名、承認までのプロセスが大幅に効率化するでしょう。

また、電子契約システムでは契約書のテンプレートの活用やデータの自動入力、契約状況の一元管理などが可能です。これにより、手作業による作業負担が軽減され、人的ミスのリスクも低下します。さらに電子化された契約書は検索が容易であり、必要な情報にアクセスしやすいメリットもあります。

コストが削減する

電子契約ではデジタル形式での契約書管理が可能となるため、物理的な契約書の印刷、郵送、保管にかかるコストが削減されるでしょう。印紙税法により印紙税もかかりません。

また、紙の契約書を物理的に保管する必要がなくなるため、保管スペースの削減や管理コストの削減も実現するでしょう。

セキュリティが向上する

電子署名技術を用いることで、契約書の内容の改ざん防止にもつながります。また、電子契約システムでは契約書のアクセス履歴や編集履歴を追跡できるため、セキュリティの面でも優れています。

さらに、電子契約システムは契約プロセス全体をデジタルで記録するため、法的コンプライアンスを遵守しやすくなるでしょう。システムアップデートで法改正に対応しやすくなるのもメリットです。

環境への配慮ができる

電子契約により、紙の使用が大幅に削減されます。これは、サステナビリティ活動の一環としても評価され、環境への配慮に対する意識の高い企業にとって重要なポイントです。

これらのメリットにより、電子契約の導入は業務効率化やコスト削減、セキュリティの強化、環境への配慮など、多方面にわたる利点を提供します。また、社会のデジタル化が進む中、電子契約は今後さらに重要性を増すことが予想されるでしょう。

電子契約を導入する際の注意点やデメリット

電子契約は多くのメリットをもたらしますが、導入時にはいくつかの注意点があります。また、特定の状況ではデメリットも考慮する必要があります。これらを理解して対策することで、電子契約をより効果的に活用できるでしょう。

契約内容に応じた法的要件の理解が必要

電子契約が法的に認められているとはいえ、すべての契約タイプが電子契約で適切に扱われるわけではありません。現在は法改正によって電子契約が認められているものの、たとえば借地借家法や下請法などは電子契約に対応できていませんでした。

電子契約に関しては、2021年のデジタル改革関連法の施行、2022年の宅地建物取引業法改正などにより、電子契約できる契約は増加しているものの、一部の契約には紙の書類と実印を必要とするケースがあります。また、電子契約にあたって契約相手の同意が必要な場合もあります。

電子化できない書類の例は次のとおりです。

電子化できない書類の例 該当する法律
事業用借地権設定契約書 借地借家法(事業用定期借地権等)第二十三条
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「借地借家法」(2024年3月4日閲覧)
※2022年5月18日の法改正で電子契約締結が認められたのは「一般定期借地」のみで、「事業用定期借地」は依然として公正証書が必要です。
任意後見契約 任意後見契約に関する法律 第三条
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(2024年3月4日閲覧)
農地の賃貸借契約書 農地法 第二十一条
農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「農地法」(2024年3月4日閲覧)

取り扱う案件が電子契約できるか、電子契約するための条件は何かを事前によく確認しておきましょう。

適切なシステムの選定と導入が必要

適切な電子契約システムの選定は、効果を大きく左右します。利便性やセキュリティ、コスト、サポート体制など、さまざまな要素を考慮してシステムを選ぶ必要があります。

また、導入後にも従業員への研修やシステムの統合、継続的なメンテナンスを要するため、慎重に選定しましょう。

従業員に抵抗感を与えてしまう可能性がある

新しいシステムの導入は、従業員にとって大きな変化をもたらします。中には新しい技術への抵抗感をもつ人もいるため、十分な説明と研修を行い、理解と適応を促すことが重要です。

電子契約の導入がスムーズに進むよう、適切な変更管理と社内コミュニケーションをとりましょう。

データ保護とセキュリティ対策を徹底する必要がある

電子契約におけるセキュリティリスクとしては、「改ざんリスク・情報漏えいリスク・破損リスク」などが考えられるでしょう。電子化されたデータはセキュリティがぜい弱であると、情報漏えいや改ざんが発生しやすく、痕跡も残りにくいためしっかり対策する必要があります。

具体的な対策としては、次のような機能があるシステムを選び、正しく活用することが大切です。

  • ログイン時の多要素認証
  • 細かいアクセス権限の設定
  • タイムスタンプの付与
  • 電子印鑑・電子署名
  • 改訂履歴の記録

多要素認証とは、ログイン時にメールアドレスやパスワードによる認証のほかにも、ワンタイムパスワードや生体認証を組み込み、本人性の確証を高める方法です。タイムスタンプは契約書を承認する際に、日時と契約書の存在を証明する機能であり、文書の改ざんが防止できます。

紙の契約書とは違ったセキュリティ対策が求められるため、管理担当者のセキュリティ意識を高めておきましょう。

無権代理のリスク低減に向けた対策を講じる必要がある

結論からいえば、電子契約でも無権代理を防止することは可能です。まず無権代理とは、契約者としての権限をもっていないにもかかわらず、本人の代理として契約を行うことです。これは契約無効といったトラブルにつながる危険性があります。

電子契約ではICカードといった、モノ要素による認証「当事者署名型」であればこれは回避できます。しかし電子契約システムでは契約画面へのURLが付いたメールを送付して、アクセスしてもらう「事業者署名型(指図型・立会人型)」が一般的です。

この方法では、メールアドレスの所有者がそもそも契約者としての権限を与えられておらず、後々無権代理として契約無効にされる危険性があります。しかし、次の対策を行うことで、リスクの低減は可能です。

  • 契約権限があるかを事前に書面で確認
  • 事前登録フォームへの情報登録
  • 契約書に契約権限に関する条項を盛り込む
  • 一定以上の役職者のみで締結する

事前登録フォームでは、契約権限がある人物の役職や氏名、メールアドレスなどを登録してもらう方法で、管理もしやすいことがポイントです。また契約書に契約権限に関して異議申し立てや損害を与えない旨の記載によって、真正性も補充できます。

さらに、表見代理を主張しやすい部長や課長職以上で締結するよう、ルールを定めるのもおすすめです。可能であれば、代表取締役だけで契約を行うと、無権代理の問題は発生しなくなります。

総務省、経済産業省、法務省の電子契約に関するQ&A

昨今ではテレワークの推進が求められているものの、物理的な押印作業はテレワークの妨げとなります。

よって電子契約の普及とテレワークを促進するために、総務省や経済産業省、法務省が連名で2020年に電子契約サービスに関するQ&Aを公開しました。

ここで、事業者署名型(指図型・立会人型)の電子署名も、「電子署名法二条で定義される電子署名に該当する」と見解が示されました。

Q&Aの要約

電子契約において問題となるのが、「契約の真正性を何で担保するのか」です。紙の書類の場合は押印や署名がこれに該当し、電子契約の場合は電子署名が該当します。

電子署名は、電子署名法二条にて次のように定義されています。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
引用:e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」(2024年3月4日閲覧)

ただし、この条文には解釈の余地があり、さまざまな認証方法が存在する中で、具体的にどの手法が法律の定める電子認証に該当するのか不明確でした。

総務省、経済産業省、法務省が連名で発表したQ&Aによると「事業者署名型の電子契約システムも電子署名法二条の定める電子署名に該当する」と見解を示しました。

Q&Aの意義

総務省、経済産業省、法務省が連名で発表したQ&Aは、事業者署名型を電子署名として認めることで電子契約の普及のきっかけとなりました。

前述したように電子署名には大きく分けて「当事者型署名」と「事業者署名型」の2つの方式があります。しかし実務ではシステムを利用しメール送付とログインによって手軽に行える、事業者署名型が契約の手段として用いられるケースが多くを占めています。

この事業者署名型の電子契約システムが契約の本人性を証明しにくいため、「事業者署名型は法律が定義する電子署名として認めるべきか?」が専門家の間で議論の的でした。

この疑問を解決できたことは、Q&Aが発表された大きな意義でしょう。

電子契約システムを導入で契約をスムーズに

電子契約システムが、民法や民事訴訟法、電子署名法、電子帳簿保存法などで法的効力が担保されていることを解説しました。

重要な契約については、契約の真正性を高めるために電子署名を活用しなければならないケースも存在します。そのため契約の内容に関して当事者間でトラブルが発生した際に、契約にもとづいて問題解決できる準備をしておきましょう。

また、書面による締結を求める契約類型、不動産売買や金融商品などトラブルになりやすい契約に関する契約類型は、電子契約で完結できない場合もあります。

電子契約に移行したい書類を電子化しても問題ないか確認し、電子契約システムを導入してスムーズな契約を進めましょう。

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