電子契約の偽造防止のためにできる対策は?刑罰や該当する行為
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- 電子契約を偽造されないための防止策
- 電子署名やタイムスタンプを活用する
- 閲覧権限を適切に管理する
- 印刷やダウンロードに制限をかける
- 電子契約の偽造や改ざんをしたときの刑罰
- 私文書偽造罪や変造罪
- 公文書偽造罪や変造罪
- 電磁的記録不正作出罪と供用罪
- 契約書の偽造と見なされる行為
- 記載内容や印鑑を偽造する
- 締結後の契約書を書き換える
- 不正アクセスにより電子契約を書き換える
- 権限のない契約書を作成し締結する
- 電子契約だけでなく紙の契約書でも必須の偽造対策
- 安全な場所に契約書を保管する
- 契約書に割印を押す
- 改ざん防止機能付きの用紙を使う
- コピーしにくい印影の印鑑を使う
- 社印や個人印鑑の管理を適切に行う
- 紙の契約書よりも安全な電子契約を導入しよう
電子契約を偽造されないための防止策
電子契約を偽造されないための防止策には次のようなものがあります。
- 電子署名やタイムスタンプを活用する
- 閲覧権限を適切に管理する
- 印刷やダウンロードに制限をかける
電子署名やタイムスタンプを活用する
電子署名やタイムスタンプを活用することで電子契約は偽造されにくいです。
電子署名とは紙文書の押印処理に似た概念で、この処理を行うことで誰が電子契約を行ったかがわかります。また、タイムスタンプを付与することでいつ契約が行われたかも判断可能です。
改変時にもタイムスタンプは付与されるため、万が一改ざんが起こった場合にもすぐにわかります。改変時に適切な電子署名とタイムスタンプがなければ偽造や改ざんだとわかるため、電子契約の偽造防止策として電子契約システムに搭載されています。
閲覧権限を適切に管理する
閲覧権限を適切に管理することも電子契約の偽造防止策として有効です。
電子契約はセキュリティの高さもメリットとして知られています。システマチックに契約を管理することから契約の流れもわかりやすくなり、閲覧権限に制限をかけられることで必要な人員のみに閲覧を許可し、不要なアクセスを遮断可能です。
さらに、契約書に対して誰がどのような操作をしたかの操作ログを残せる電子契約システムもあるため、より強固なセキュリティで契約情報を保護できます。
印刷やダウンロードに制限をかける
印刷やダウンロードに制限をかけることで、意図せぬ持ち出しや情報流出のリスクも低減可能です。
電子契約システム上で印刷やダウンロードができなければ、システムにログインして閲覧するしかありません。電子契約システムのログインや操作はシステムが自動で監視しているため、不正アクセスは不可能に近いです。
紙で契約業務をしているよりも強いセキュリティで契約書類を守れるため、重要な契約をセキュアに管理したい場合に電子契約は有用です。
電子契約の偽造や改ざんをしたときの刑罰
電子契約の偽造や改ざんをしたときには、次のような刑罰を受ける可能性が考えられます。
- 私文書偽造罪や変造罪
- 公文書偽造罪や変造罪
- 電磁的記録不正作出罪と供用罪
私文書偽造罪や変造罪
個人や法人間の電子契約を偽造したり変造したりすると、私文書偽造罪や変造罪に問われる可能性があります。私文書とは公人ではない人が作成した書類のことで、権利や義務、事実証明に関する文書や図画のことです。
このような私文書を偽造、もしくは変造すると次のような刑罰を受ける可能性があります。印章や署名を偽造しているかどうかによっても刑罰が変わることにも注意しましょう。
条文 | 罪名 | 刑罰 |
---|---|---|
刑法第159条第1項 | 有印私文書偽造罪(印章や署名の偽造あり) | 3ヵ月以上5年以下の懲役(罰金規定はなし) |
刑法第159条第2項 | 有印私文書変造罪(印章や署名の変造あり) | 3ヵ月以上5年以下の懲役(罰金規定はなし) |
刑法第159条第3項 | 無印私文書偽造罪(印章や署名の偽造なし) | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
刑法第159条第3項 | 無印私文書変造罪(印章や署名の変造なし) | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
※出典:e-Gov 法令検索「刑法:第百五十九条」(2024年10月29日閲覧)
公文書偽造罪や変造罪
公人ではない人が作った私文書に対して、公務員や議員などの公人が作った文書は公文書といいます。公文書を偽造、もしくは変造した場合は私文書の偽造や変造よりも重い罪に問われます。
公文書についても私文書同様、印章や署名を偽造・変造しているかどうかによって罪の重さが変わることに注意しましょう。
条文 | 罪名 | 刑罰 |
---|---|---|
刑法第155条第1項 | 有印公文書偽造罪(印章や署名の偽造あり) | 1年以上10年以下の懲役(罰金規定はなし) |
刑法第155条第2項 | 有印公文書変造罪(印章や署名の変造あり) | 1年以上10年以下の懲役(罰金規定はなし) |
刑法第155条第3項 | 無印公文書偽造罪(印章や署名の偽造なし) | 3年以下の懲役または20万円以下の罰金 |
刑法第155条第3項 | 無印公文書偽造罪(印章や署名の変造なし) | 3年以下の懲役または20万円以下の罰金 |
※出典:e-Gov 法令検索「刑法:第百五十五条」(2024年10月29日閲覧)
電磁的記録不正作出罪と供用罪
人の事務処理を誤らせる目的で事務処理に必要な電子データを不正に作ったり、不正に作られた電子データを誰かに提供したりすると、電磁的記録不正作出罪と供用罪に問われます。刑法第161上の2に定められた犯罪で、これも公文書と私文書で刑罰の重さに差があります。
条文 | 罪名 | 刑罰 |
---|---|---|
第161条の2第1項 | (私)電磁的記録不正作出罪 | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
第161条の2第2項 | (公)電磁的記録不正作出罪 | 10年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
第161条の2第3項 | 不正作出電磁的記録供用罪 | 電磁的記録不正作出罪と同一の刑 |
※出典:e-Gov 法令検索「刑法:第百六一条の二」(2024年10月29日閲覧)
契約書の偽造と見なされる行為
契約書の偽造と見なされる行為には次のようなものがあります。
- 記載内容や印鑑を偽造する
- 締結後の契約書を書き換える
- 不正アクセスにより電子契約を書き換える
- 権限のない契約書を作成し締結する
記載内容や印鑑を偽造する
契約書に記載してある内容を書き換えることや、印鑑を偽造したり偽造印鑑を使用したりすることは契約書の偽造と見なされます。
たとえば、AさんがBさんの名前や偽造印鑑を勝手に使い、Bさんの所有する土地に関する契約を行うことは私文書の偽造と見なされます。また、AとBの間に金銭の貸借があった場合に、本来貸し借りしたお金が100万円なのにもかかわらず、貸主が借主に許可なく200万円に変更することも文書の偽造です。これらの行為を行うと、有印・無印を問わず私文書偽造罪となります。
また、私文書だけではなく、公文書の偽造についても当然罪に問われます。公文書の場合は私文書よりも重い罪として刑法に定められていることにも注意しましょう。
締結後の契約書を書き換える
締結後の契約書を相手方の許可なく勝手に書き換えることも文書偽造罪として罪に問われます。
たとえば、A社とB社で物品の売買契約を結んだときに、A社がB社に断りなく契約書の金額を変更した場合、私文書偽造罪に問われます。また、企業が人員を雇用し雇用契約書を締結した後に、被雇用者となった人に断りなく雇用契約書を変更する行為も私文書偽造罪にあたります。
締結前の契約書を相手方の同意なく改ざんする行為だけではなく、締結後に契約書を勝手に改ざんする行為も文書偽造にあたるため行ってはいけません。
不正アクセスにより電子契約を書き換える
文書偽造罪は紙の文書だけではなく電子契約にも当てはまります。電子記録として残っている電子契約に対して不正にアクセスを行い、契約内容を書き換える行為も契約書の偽造として罪に問われます。
2022年に電子帳簿保存法が改正され電子契約も広く普及する昨今、電子データで重要な書類を管理する事業者も多いです。万が一電子データの契約内容を取引先に断りなく変更してしまった場合、文書偽造の罪に問われてしまいます。
このような偽造や改ざんが発生すると、従業員が罪に問われることはもちろん、企業の信頼に傷がつくでしょう。従業員のコンプライアンス意識を高めるほか、電子署名やタイムスタンプを利用する、閲覧やダウンロードに制限をかけるなどのシステム機能を十分に活用し、従業員と企業ブランドを守りましょう。
権限のない契約書を作成し締結する
権限のない契約書を勝手に作成し締結した場合も、文書偽造を行ったとして罪に問われます。
先に紹介したAさんがBさんの名前を使い、印鑑を偽造したうえで勝手にBさんの所有する土地を売ってしまったケースで考えましょう。この場合、Aさんは権限がないBさんの土地に関する契約を勝手に行っています。これはAさんの偽造にあたります。
また、雇用契約を雇用主が勝手に書き換えてしまったケースも考えてみましょう。雇用契約は労働者と使用者の間で合意があってはじめて内容の変更ができるため、従業員の許可がない場合、使用者は権限がないため勝手に雇用契約書の内容を変更できません。
それにもかかわらず、雇用主が従業員の許可なく雇用契約書を書き換えた場合、権限がない状態で勝手に雇用契約を改ざんしたとして文書偽造の罪に問われます。
電子契約だけでなく紙の契約書でも必須の偽造対策
実際の現場では紙の契約書についても偽造対策は必須です。次のような偽造対策を行うことで紙の契約書が偽造される可能性を低減できます。
- 安全な場所に契約書を保管する
- 契約書に割印を押す
- 改ざん防止機能付きの用紙を使う
- コピーしにくい印影の印鑑を使う
- 社印や個人印鑑の管理を適切に行う
電子契約よりもセキュリティリスクが高いとされる紙の契約書の偽造対策についても確認しておくべきです。
安全な場所に契約書を保管する
紙の契約書の偽造対策でもっともベーシックなものは安全な場所に契約書を保管することです。重要な書類は施錠ができるキャビネットにしまって流出や紛失を防止しましょう。また、誰もが出入りできる部屋で管理するのではなく、入退室が管理されている部屋で書類を管理することでも、重要な書類を取り扱う際のセキュリティを強化できます。
不特定多数が出入りできる状態で書類を管理すると、万が一紛失や盗難があった際に書類の発見が困難です。いつ、誰がその書類を使用したときになくなったか管理することで、書類を探すべき範囲を特定し、書類の発見を早められます。
紛失や盗難を防止することはもちろん、万が一の事態になった場合にもリカバリーしやすい体制を整えて書類を管理しましょう。
契約書に割印を押す
契約書に割印を押すことも偽造対策には有効です。2部の書類をずらして置き、それぞれの書類に印影が残るようにまたがって押印することで割印ができます。契約書であれば契約者が双方に保管する契約書に割印を押すことが一般的で、それぞれが割印付きの契約書を保持することで偽造や改ざんを防止します。
また、割印のほかにも押印で偽造を防止する方法としてよく利用されるものが契印です。この契印は、契約書が複数枚あるときに利用されるもので、複数枚の契約書が一連の契約書であることを示すために契約書の綴じ目や裏表紙の帯などに押印を行います。
この契印があることで、複数枚ある契約書の一部入れ替えや偽造を防止できます。割印や契印はシンプルな方法ですが、契約書の偽造防止策としては効果的です。
改ざん防止機能付きの用紙を使う
改ざん防止機能付きの用紙を使うことで、不正な改ざんやコピーの作成を防止できます。
改ざん防止機能付きの用紙とは、原本では見えにくくともコピーをしたときに文字が浮かび上がったり、製造ロットが印刷されていたりするものを指します。よく利用されるものでいえば、契約書をコピーしたときに、コピーして作られたほうの契約書にコピーや複写の文字が複数表示されるものです。
紙自体に特殊加工がなされており、複製されたものと原本を明確に区別できるため、偽造を行いにくくなっています。
コピーしにくい印影の印鑑を使う
印鑑のコピーや偽造防止のために、コピーしにくい印影の印鑑を使うことも文書の偽造対策として有効です。
たとえば、コピー機での印刷の際に印影をきれいに出力できないように印影を複雑なものにすることや、手彫りの印鑑を使って世界に1つの印影をもつ印鑑を利用することがこの対策にあたります。
昨今は3Dスキャナや3Dプリンタなどの技術が発達しており、印影から印鑑を再現することが非常に簡単になっています。手書きの署名のコピーは難しくとも、シンプルな印影の印鑑のコピーは簡単にできるため、最新技術でもコピーが難しい印影をもつ印鑑を利用して偽造を防止しましょう。
社印や個人印鑑の管理を適切に行う
書類だけではなく社印や個人印鑑の適切な管理も文書の偽造防止に役立ちます。
社印や角印などを誰もが自由に利用できる場所で管理していると、印鑑の無断使用や書類の偽造が簡単に行えてしまいます。契約に利用できる印鑑や個人名の入っている印鑑は厳重に保管し、利用履歴が残る形で管理しましょう。
また、印鑑を使用する際は申請制とし、最後に印鑑が使用された日時や現在の印鑑所持者をわかりやすくすることで、印鑑の紛失や盗難も防ぎやすくなります。印鑑の管理や申請制の実施は少し手間がかかりますが、印鑑を不正使用されてしまい文書を偽造されるケースの事後処理と比較すると小さな手間です。印鑑は適切かつ厳重に管理し、不正利用が起きないようにしましょう。
紙の契約書よりも安全な電子契約を導入しよう
電子契約は電子データによって契約が管理されるため、紙の契約よりも複製が行いやすいと勘違いされがちですが、これは誤りです。実際は紙の契約でも偽造が行われるリスクは高く、紛失や盗難のリスクは紙のほうが高いでしょう。
電子契約では電子署名やタイムスタンプの活用、閲覧や印刷、ダウンロードに制限をかけることで偽造リスクを低減できます。操作やアクセスのログを取得できるシステムを使えば、より安全に契約を管理できます。紙の契約書も偽造や改ざん、紛失や盗難の防止策はありますが、電子契約ほどはシステマチックではなく、電子契約と比較するとややリスクが高いといえるでしょう。
契約書が偽造された場合、偽造を行った人は罪に問われ、偽造が発生した企業の信用には大きく傷がつきます。そのような事態にならないように、セキュアに契約を管理できる電子契約の導入を検討しましょう。
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