スペースXの人工衛星を使った高速インターネットが「安い」ワケ

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記事の情報は2018-03-18時点のものです。

イーロン・マスクにより設立されたスペースXは2018年2月、人工衛星を打ち上げて世界中に高速インターネット通信を提供するスターリンク・プロジェクトを開始した。再利用できるロケット等、コスト削減を徹底し、OneWebを始めとする競合企業に勝る、低所得層にも利用できる安価なサービスを実現する。

厳しい競合環境が通信事業の値下げ圧力を強める

人工衛星を使ったインターネット接続は、既に厳しい競争が始まっている。10億ドルもの大型な資金調達をソフトバンクから行ったOneWebは2019年を目途に、低軌道の人工衛星を飛ばす予定にある。

また、フェイスブック、ボーイング、Telesat、Space NorwayなどもFCC(米国連邦通信委員会)に、通信事業の計画を提出した。さらに中国では、宇宙開発を手掛ける国有企業CASICが中心になり、人工衛星による通信事業を進めている。

ビジネス上の競合は、物理的な競合関係を生んでしまう。低い軌道での人工衛星の有用性が証明されれば、どの企業も近い軌道を狙うようになるだろう。利用可能な軌道が徐々に少なくなり、人工衛星同士が衝突するリスクなども高まってしまう。関係当局からの規制も強まり、事業運営はより難しくなる恐れも出てくる。

一方、全世界へ安価な通信環境を構築する取り組みは、人工衛星以外の手法でも試みられている。アルファベット(グーグル)では熱気球を使って広範囲にインターネット環境を届けるプロジェクト・ルーンが開始された。

既存の通信事業者も手をこまねいて見ているわけではない。米国ではベライゾンが5Gのモバイル通信環境を地方にも構築する計画を進めている。コストがかかる光ファイバーではなく、モバイル通信によって低価格のサービスを提供する。

こうして競争が激化することで、通信事業の値下げ圧力も強まっていくのではないだろうか。

ちなみにスペースXのロケット事業は、コスト削減を重視した収益性の低いものだ。低価格で広範囲にサービスを提供できる通信事業から、多くのキャッシュを獲得する戦略だと見られている。スペースXは、通信事業の収益で経営を支え、最終的なゴールである火星移住計画を推し進めていく。