スペースXの人工衛星を使った高速インターネットが「安い」ワケ

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イーロン・マスクにより設立されたスペースXは2018年2月、人工衛星を打ち上げて世界中に高速インターネット通信を提供するスターリンク・プロジェクトを開始した。再利用できるロケット等、コスト削減を徹底し、OneWebを始めとする競合企業に勝る、低所得層にも利用できる安価なサービスを実現する。
スペースXの人工衛星を使った高速インターネットが「安い」ワケ

世界中に安価な高速通信環境を普及させる「スターリンク」プロジェクト

スペースXのロケット打ち上げは「スターリンク」プロジェクトの始まりとなった。このプロジェクトは1万2000基近い人工衛星を地球の周りに飛ばし、世界中のあらゆる場所にブロードバンド環境を提供することを目的とする。

2018年2月、2基の小さなテスト用人工衛星「ティンティン (Tintin) A&B」が打ち上げられた。高度の低い軌道を周るこの人工衛星は、通信速度の向上に寄与するとして注目を集めた。インフラの行き届かない地方や、航行中の飛行機・船舶に利用される目論みだ。

実は米国だけでも、1400万人がモバイル・ブロードバンドに接続できていない。全世界では所得の低い約40億人がインターネット環境になく、学習や貧富の差が広がる「デジタル・デバイド」の状況を生んでいる。

スターリンクは、現在先進国で利用されているものよりも高度な5G(第5世代移動通信システム)のインターネット接続を低価格で提供するという。デジタル・デバイドを解消するために、極めて安価な設定になると考えられる。

このためスペースXは、人工衛星の打ち上げ・設置まで含めて、コストを抑えるよう、全体の設計を行っている。特に、ロケットの再利用を可能にし、従来よりも大幅なコスト削減を目指す。

低軌道の人工衛星を活用し、通信遅延を解消

人工衛星を使ったインターネット接続を実現したのは、スペースXが初めてではない。ボーイングが初めて双方向のブロードバンド環境を目指してプロジェクトを開始したのは15年前になる。

これまでの人工衛星では、地表から人工衛星までの距離が遠いために、通信の遅延時間(レイテンシー)が長くなってしまう問題があった。スペースXでは、地球に近い軌道を用いて、待ち時間の短縮を図った。

通常の人工衛星が約35000キロの高度をとるのに対し、スペースXの人工衛星は1000~1300キロを飛ぶ。低い軌道の人工衛星は、一基が通信できる範囲が狭くなるという課題があるが、その分、多くの人工衛星を飛ばして、十分な範囲を網羅できるようにする計画だ。

DirecTV、Dish Networkといった企業が現在提供している人工衛星通信では、最高でも600ミリ秒の遅延時間がかかるのだが、スペースXではその数倍速い、25~30ミリ秒の遅延時間を目指す。

2025年までに売上は300億ドル、スターリンク・プロジェクトの収益性の高さ

ある調査では、人工衛星1トン当たり1130万ドルがかかり、打ち上げには193億ドルが費やされると見られている。さらに、10年の運用を含めると、約2倍になる計算だ。ウォールストリートジャーナルは、スターリンク・プロジェクトが2025年までに300億ドルを売り上げ、同社の営業利益を200億ドルまで押し上げると試算した。ロケット事業の約6倍の事業規模になる見込みだ。

Googleが進めている高速光ファイバー事業では、米国の都市圏に導入するだけでも100億ドルのコストが必要だとされる。全世界、数十億人にサービスを提供できるスペースXの方が、最終的には収益性が高くなる可能性がある。

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