iPhone Xの新機能を実現した、アップル自社開発の高性能チップ
顔認証などの先進機能や、ホームボタンを廃止した新デザインで話題のiPhone Xだが、世間の感想は賛否両論だ。
調査会社の調べによると、発売後急速に売り上げを伸ばしたiPhone Xも、少し前に発売されたiPhone 8、iPhone 8 Plusを合わせた台数には及ばないという。
iPhoneは旧型機種の性能も良く、新型機種の価格は高騰しており、買い替え需要が喚起しにくくなっている。飽和しつつあるスマートフォン市場で差別化を図るのは困難な課題と言えるだろう。
しかし、注目すべきはその売り上げではない。iPhone Xには、専門家から熱い視線を送られている技術的特徴があるのだ。
それはiPhone Xの新機能を実現するために新しく開発された新型チップ。
2017年に発売されたiPhone Xに搭載された新型チップA11 Bionicは、一世代前のA10に比べて、処理速度が25%速くなり、エネルギー効率が70%向上しているというから驚きだ。
さらに、顔認証をはじめ、iPhone Xには機械学習、いわゆるAIの機能が搭載されているが、A11 Bionicは機械学習に必要な並列計算を30%速く処理できるようになった。
アップルがチップの自社開発に梶を切ったのは節目は2010年以降だ。これ以降の歴代のiPhoneおよびiPadはアップルが自社開発したチップを搭載。ハードとソフトを両輪として、理想的な製品設計が実現できる。
そう、アップルの自社開発チップは、その優れたユーザー体験を実現する要となってきたのだ。
新型チップA11 Bionicの基本設計を担当しているのはソフトバンク傘下のARMだ。省電力設計のモバイルチップでは独占的な地位を築いている企業である。
ソフトバンクがARMを買収したのは2016年。買収金額は3.3兆円で、CPU設計に関わることは孫氏の悲願だったとも報じられている。
そのARMの設計に基づき、アップルは機械学習やAR(拡張現実)、3Dゲームなどに最適化したチップを開発した。そして、チップの生産は半導体製造世界最大手、台湾TSMCに委託されている。