玉突き人事とは
玉突き人事とは、あるニーズによって一人が人事異動することで、その空いたポストを埋めるために別の社員も人事異動するというものです。ビリヤードの玉突きを由来とする用語で、玉が他の玉にぶつかって連鎖反応で動く様子をなぞらえています。
季節ごとに計画的に行われる人事異動とは異なり、人手不足など予期せぬ事情で意図せず行われるため、戦略や計画性を欠いた人事異動になりやすいのが特徴です。いわば応急処置的な人事と言えるでしょう。
配置転換との違い
配置転換は、社員の勤務地や職種、業務内容などを変更する人事異動のことです。玉突き人事と違い、企業側に明確な意図があって実施される点が、大きな違いです。
ジョブローテーションとの違い
ジョブローテーションとは、適材適所の人事配置を目的として行われるもので、欠員の有無に関係なく実施される人事異動のことを指します。
玉突き人事とジョブローテーションは、人事異動の目的が異なる点が主な違いです。
玉突き人事が起こる理由
上記でも述べたとおり、人事異動によっておこる玉突き人事は企業にとってもリスクが高く、避けたいものといえるでしょう。それでは、玉突き人事が起こってしまう理由は一体何なのでしょうか。
人材の配置バランス調整
会社が予測していなかった退職者が出てしまった際、それによる人手不足を補うために人事異動を行わなくてはいけないケースがあります。
部署の人数の過不足を検討しバランスを取るために人事異動を行うため、結果的に玉突き人事につながることがあります。
次の記事では、適切な人材配置に役立つタレントマネジメントシステムについてサービスを活用や導入の観点から紹介しています。ぜひご活用ください。
問題ある部門の廃止や再生
人間関係の問題を抱える部署がある場合には、あえて玉突き人事を行うことによって再生を図るというケースもあります。
人間関係が組織全体に影響を及ぼしており、なかなか話し合いでは解決できない場合には、あえて玉突き人事が実施されることもあります。
社員間の不正防止
同じメンバーで長期間業務を担当していると、どうしても馴れ合いが生じてしまうことがあります。
社員間に緊張感がなくなると、生産性の低下や取引先との癒着につながります。そこで、あえて玉突き人事を行うことで、社員間の不正防止にも役立ちます。
玉突き人事の問題点
玉突き人事は社内の課題解決につながる一方で、新たな問題を生み出すこともあります。ここでは主な4つの問題点について詳しく解説します。
社員のキャリア阻害
あくまで玉突き人事は、企業の事情により行われます。玉突き人事の対象となった社員は、思い描いていたキャリアプランを実現できなくなる可能性があります。
最悪の場合、社員のキャリアが阻害され、不満や退職につながってしまうケースも考えられます。
職場のミスマッチ発生
業務を遂行するうえで人間関係はとても重要な要素であり、チームワークこそが企業にとって生産性を上げるために必要なものです。
しかし、玉突き人事で社員の異動が発生すると、職場のミスマッチが生じる可能性もあります。
もしミスマッチが発生した場合、組織の士気が下がるだけでなく、離職につながることも考えられます。
人材流出
玉突き人事を受けた社員が異動に100%満足し受け入れるケースはまれです。玉突き人事に不満を持ち、異動に納得できない場合は、退職につながる可能性が高まります。
そのため、玉突き人事には人材流出を招く可能性を考慮しておく必要があります。
社員への負担
部署が変わり業務内容や一緒に働くメンバーが変わってしまうということは、当人にとっては大きな負担がかかります。
また、まったく新しい業務内容に変わる場合は、教育担当の社員も必要となるため、当人や関係者への負担にも配慮することが大切です。
異動とは
玉突き人事について説明したうえで、ここからは一般的な異動について解説します。異動とは、企業や組織内で担当する職務や勤務地が変更されることを指し、「人事異動」とも呼ばれます。
たとえば、異動には次のようなものがあげられます。
- 営業担当から人事担当に異動になった
- 4月から名古屋に異動した
- ◯◯プロジェクトから××プロジェクトに異動になった
人事異動の種類
「採用」「昇格」「降格」「配置換え」など、人事異動には大きく分けて4種類があります。
- 採用:新しく企業に属することで新たに組織に加わる
- 昇格:業務実績が認められ、現在よりも上のポジションに変わる
- 降格:勤務態度の怠慢により、現在よりも下のポジションに変わる
- 配置換え:人員の欠員や適材な配属を行うために行われる
現在の自分の地位や配置が変わるすべての人事上の変更は、「異動」とみなされます。
人事異動は慎重に行おう
人事異動には理由が必要であり、人材のバランスを考えて異動させなければなりません。また、異動をする社員は新たに仕事を覚えなくてはいけないので、育成のために時間と労力がかかります。
したがって、周囲の社員への影響を最小限に抑えるためにも、さまざまなリスクを考慮して慎重に実施しましょう。
人事異動を命じられた社員の対応
人事異動を命じられた場合、次の3つに対応する必要があります。
- 上司にお礼を述べる
- 引継書を作成する
- 新しい部署の人に挨拶をする
異動の理由を確認し、上司にお礼をいう
異動の辞令を受けたら、まずどのような理由で人事異動をするのか確認します。異動理由が不当なものでなければ、お世話になった上司にお礼を伝え、異動先について報告をしましょう。
また、関係部署の人にも、今後また一緒に働くことを考えて、きちんと感謝の気持ちを伝えておきましょう。
引継ぎのやり方を確認し、引継書を作成する
異動の際には、後任への引き継ぎ手続きが必須です。
社内で定められた引継ぎ方法を確認し、業務の概要をまとめた引継書を作成します。引継書の内容が不十分だと後任者に迷惑をかけてしまうため、適切な引継書を作成することが重要です。
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新しい上司や新任部署の社員に挨拶する
新しい部署では、新たな人間関係を築く必要があります。まずは、チームの全体像を把握するために新しい部署やメンバーの情報を収集し、新たな職場の人々に挨拶をしましょう。
これから一緒に働くメンバーとの関係を円滑にするためにも、最初の挨拶は丁寧に一人ずつ行うことが大切です。
人事異動のポイント(人事側)
人事異動による社員の不満を防ぐためには、次の3つのポイントに気をつける必要があります。
人事異動の範囲を明記
人事異動は、実施するタイミングによっては反発が生じるケースが多くあります。
就業規則や誓約書で人事異動の範囲についてはっきりと明記し、あらかじめ採用した社員の同意を得ておくことが必要です。
社員の能力や事情の理解
適材適所への異動を実施するためには、各社員の能力や個人的事情をできる限り把握しておく必要があります。
企業として個人のすべてを把握することは不可能ですが、しっかりと考慮に入れて異動の判断を下すことが重要です。
社員の育成基本計画を作成
無計画な玉突き人事は、社員のモチベーション低下につながるおそれがあります。
計画的に進めるためにも事前に社員の育成基本計画を作っておきましょう。
人事異動が無効になる主な7つのケース
人事異動は命じられたら基本的には応じなければいけません。しかし、無効になるケースが7つあります。
1. 業務上の必要性がない場合
人事異動は業務を円滑に遂行するために行われます。業務に関連しない場合や業務上人事異動する必要性がないと判断される場合には、無効となることが多いです。
2. 労働条件が著しく低下する場合
人事異動によって労働条件が著しく低下する場合も、人事異動は無効となります。労働条件が著しく低下すると感じた場合は、上司に相談してみてください。
3. 雇用契約に違反する場合
雇用契約に違反している場合は、人事異動を拒否できます。
これはつまり、最初に会社と雇用契約を締結した際の条件に、「地域限定社員」「エリア限定従業員」といった勤務地を限定する内容があれば、転勤といった人事異動は不当なものとなります。
ただし、多くの会社員は転勤ありの条件で雇用されているため、その場合は本ケースには該当しません。
4. 不当労働行為にあたる場合
不当労働行為とは、雇用側が労働者の団結権を侵害する行為のことで、労働組合法において禁止されています。
たとえば、労働者を労働組合に加入させないことや労働組合から脱退することが挙げられ、該当する場合には人事異動は無効になるケースがあります。
5. 思想・信条その他差別待遇にあたるとされる場合
個人によっては宗教を信仰している場合もあります。しかし、思想・信条が会社の方針に合わないという理由で人事異動を行うことは認められません。
したがって、思想・信条その他差別待遇にあたるとされる場合には人事異動は無効になるケースがあります。
6. 技術の著しい低下となる場合
異動をする本人が新しい業務に携わる場合は、周りのサポートが必要不可欠です。
しかし、そのしわ寄せが周りに影響してしまい組織全体として技術・技能の著しい低下になると判断される場合には、人事異動は無効になるケースがあります。
7. 要介護人がいる場合
両親といった身内に要介護人がおり、自分しか世話ができない状態であれば、人事異動を拒否するのに正当な理由とみなされます。
他にも、まだ世話が必要な小さな子どもがいて、自分しか面倒を見られる人がいない場合も、正当な理由になります。そのような状況で人事異動を命じられているのであれば、一度上司に相談してみることをおすすめします。
異動の目的については次の記事でも解説しています。
人事異動のプロセス・ポイントを理解し適切な対応を
企業に勤務していれば、多くの人が経験するのが人事異動です。人事異動は、会社を運営するうえで、社員のマンネリ化や不正を防ぐためにも必要不可欠です。
したがって、自分自身がいつ人事異動を経験しても適切に対応できるよう、プロセスやポイントを把握することが重要です。
「どのような人事異動が不正であり無効になるケースがあるのか」、「実際に自分が辞令を受けた際には何を行わなければいけないのか」をしっかり把握しておきましょう。
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