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[PR] SaaSの事業価値を上げるAI活用術、サイバーセキュリティクラウドが解説 ‐ SCTX2019特集

最終更新日:(記事の情報は現在から1853日前のものです)
スマートキャンプ主催ITカンファレンス「SCTX2019」では、“SaaS×〇〇”をテーマにステージセッションを実施。SaaS×AIがテーマのセッションでは「急成長SaaSスタートアップの独自AI開発」と題し、サイバーセキュリティクラウドCTOの渡辺洋司氏が登壇。多くのAIスタートアップに共通する課題、導入時のポイント、採用などについて同社の事例をふまえて解説した。

登壇者:渡辺 洋司
サイバーセキュリティクラウド取締役CTO
1975年生まれ。大学卒業後、大手IT企業の研究開発コンサルティングを行う企業で、クラウドシステム、リアルタイム分散処理・異常検知の研究開発に携わる。2016年にサイバーセキュリティクラウド CTOに就任。

AI活用企業が成長も、採用や実装の難易度高く

SaaS市場が成長する中、SaaSにテクノロジーを掛け合わせ差別化するサービスが増えている。中でも、これまで検証段階にあったAIスタートアップはステージが進み、大型の資金調達事例も出てきている。

一方で、課題とされているのが国内でも数が不足しているAIエンジニアの採用や、実装に向けた設計・開発の難しさだ。SCTX2019では、AIを活用したセキュリティSaaSとして成長するサイバーセキュリティクラウドの事例から、課題解決のためにすべきことを考察した。

サイバーセキュリティクラウドは、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」というミッションを掲げ、クラウド型WAF「攻撃遮断くん」、AWS WAF自動運用サービス「WafCharm」を提供する企業。登壇したCTO渡辺洋司氏は、セキュリティドメインにおけるサービス抽出や、AIを活用したプロダクトへの価値注入を得意としている。

なぜ自社のビジネスにAIが必要なのか

最先端のAIを自社にも取り入れたいと考える企業は多い。しかし自社のビジネスに本当にAIが必要なのか、という点はよく考察する必要があると渡辺氏はいう。

サイバーセキュリティクラウドの場合は、AI導入のメリットは明確だ。一般的に防御というのはパターンでの検知が主流になっており、パターンが存在しないケースでは検知ができないという課題があった。また、パターンが多くなれば誤検知を誘発しやすい。固定のルールで防げない攻撃や進化のスピードに対応するためには、AIが必要だったという。

現在、サイバーセキュリティクラウドでは3つのAI開発・運用を行っている。

  • AWS WAFのルールを自動適用するAI(WRAO・ラオ)
  • 攻撃に対する、誤検知や見逃しを発見するAI(Cyneural1.0)
  • 進化しながら攻撃を防御するAI(Cyneural2.0)

WRAOはWafCharmに搭載されており、Webサイトにきているアクセスや攻撃の傾向を分析し、サイトに応じたルールをおすすめするAIだ。またCyneuralは1.0と2.0に段階を踏んで開発中で、「攻撃遮断くん」で活用検討中である。1.0では、人手で発見できない攻撃や誤検知を発見するAIで、発見されたデータをもとに、人手によって評価し、ルールの改正などを行っている。

WRAO・ラオ


Cyneural1.0

これらの導入により、パターンの更新が不要、パターンに依存しない方式での検知、曖昧・複雑な表現の攻撃が検知可能になり、サービス品質向上につながった。また、人手で見つけられない攻撃を見つけるという点では、人的コストの削減にもつながっているという。

AI導入時に乗り越えるべき2つの課題

AI導入を進める場合、ハードルとなるものは何なのか。導入が難しいとされる理由について、渡辺氏は2つの課題をあげた。

  1. AIがなぜその判断をしたのか説明ができない、根拠がわからないこと
  2. 学習データに依存して精度が決まってくること

特にセキュリティ領域の場合は、万が一の事態が起きた際「判断理由がわからない」では説明責任が果たせない。サイバーセキュリティクラウドの「説明可能なAI」Cyneural2.0は、一つ目の課題をクリアするために開発されたものである。

また、「学習データに依存する」というのは、分析できるデータがそもそもない、データはあるが学習に必要な要素がない、あるいはデータはあるがラベル付けがされていない場合などを指す。

渡辺:画像認識でいうと、たとえば「猫のラベルを入れて学習したけど、犬は判読できない」だとか。データはあるんだけどラベル付けができないという問題が起きています。実際に、AIの事業をやっている会社からのこういう相談がすごく多いです。

そこで、渡辺氏がすすめるのは次の対策だ。自社の状況をとらえ、一つひとつできることを検討していく必要があるだろう。

【 分析できるデータがそもそもない場合】
- ゴールから逆算した必要データの設計
- データ収集可能な仕組みの導入
- 十分なデータ量が集まるまで待つ

【データはあるが学習に必要な要素がない場合】
- 既存のデータから抽出、生成可能か検討する
- システムログから取得可能か確認する
- なければ仕組みの開発が必要

【データはあるがラベル付けされていない場合】
- 人手でラベル付けをする
- ラベル付けする仕組みの導入
- 自社でできないことは外部サービスの利用を検討

SCTX2019、サイバーセキュリティクラウド渡辺氏セッション 自社での経験をもとにわかりやすく整理した解説に、参加者も熱心に聞き入っていた

SaaSの価値を上げる手段としてのAI

渡辺氏によれば、SaaS企業がAI導入時に検討しなければならないテーマは4つ

まず1つ目、大前提として、AIを活用することで今後の「事業の価値アップ」が見えていることだ。AIの導入は目的ではなく、あくまでも手段。たとえばオススメの精度をあげたい、人的コストを削減したいなどの課題をAI導入で解決し、それが事業価値の向上につながるかどうかは、最初に検討すべきテーマとなる。

そして、2つ目の検討テーマは「コスト」。SaaS事業者の場合、あくまでも事業本体のコストが優先。AIにはそこまで予算をかけられず、短期間で成果を出さなくてはならない。ML(マシンラーニング)やAIエンジニアの不足で人件費が高騰していることもあり、まずはコスト計画をきちんと握ることが重要だ。

となると、「採用」が3つ目のテーマになるのは必然だ。現状、大学でエンジニアを育成する学科ができはじめているものの、まだまだ人材輩出には至っていないと渡辺氏はいう。実績があるエンジニアとなれば、採用はさらに難を極める。渡辺氏は、欧米では日本ほどのエンジニア不足は起きておらず、海外からの採用も視野に入れるべきだと話す。

そして最後のテーマが「チームづくり」。SaaSスタートアップにおいてAIチームをつくるためには、ゴール設定、やっていることの評価ができる人間が必要だ。

渡辺:ポイントは、ビジネス観点でゴール設定もしつつ、技術観点へそれを落とし込めるかどうか。全自動を必須にするとハードルは高く、結局は人だよねというのは出てくるものなんです。人手を介してでもAIを導入し、一部コストを削減するほうがいいと思えるかですね。


そのうえで、AIエンジニアがドメイン知識をつけることもマストです。教育をきちんと行い、AIエンジニアが自走できる体制をつくりながらも、深い部分での判断や評価はドメイン知識のエキスパートが行い、PoC(概念検証)の高速PDCAサイクルを回すこと。適切な手法がすぐに見つかるということはほとんどありません。別アプローチをリサーチする、データ収集を見直すなど、実現可能な落としどころを進みながら調整していく必要があります。

SaaS企業にはAI導入のアドバンテージがある

「SaaSの事業推進にAIが必要」というのは、多くのSaaS事業者が持っている認識だろう。人材獲得の問題、チームづくり、技術領域の把握などさまざまな課題はあるものの、AIは事業価値を大きく向上させ、差別化する可能性を持っている。また、SaaS企業にはAI導入のアドバンテージがあると渡辺氏は語る。

渡辺:SaaS事業者は、すでに事業があり、課題がある。AI導入が目的ではなく、手段であることが明確なので、間違いは起きにくいでしょう。ビジネスドメイン知識のエキスパートがいること、そしてSaaS事業で得たデータをすでに持っていることもアドバンテージになります。

今後、SaaS×AIの流れはますます加速する。自社の長期的な戦略とポジショニングから、どのようにAI活用を行うか。早いタイミングでの検討が勝敗を分けることになりそうだ。

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