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部下が上司を評価する制度はある?360度評価時のポイントや項目

最終更新日:(記事の情報は現在から136日前のものです)
すでに多くの企業で導入されている360度評価。上司が部下を一方的に評価するのではなく、部下も上司を評価する制度の導入が進んでおり、さまざまな業種の企業が一定の成果を上げています。部下が上司を評価するメリットや評価のポイントを解説します。

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部下が上司を評価する360度評価(360°評価)制度とは

一般的な人事評価では各部門の管理者にあたる人物が部下を評価しますが、近年は部下が上司を評価することもある360度評価(360°評価)の導入によって、部下が上司である管理職を評価する方法も広がりをみせています。

360度評価とは、従業員の能力や業績を多面的に評価する制度です。被評価者を中心に、上司だけでなく、同僚や部下、さらには社内の他部署の人からも評価を受けます。

この評価方法により、被評価者の能力や業績を多角的に測れ、個人の強みと弱みをより明らかにできます。360度評価は、組織全体の生産性向上と人材育成に役立てられている評価方法です。

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部下が上司を評価するメリット・デメリット

部下が上司を評価する360度評価制度には、次のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

客観的で多面的な評価が可能になる

部下が上司を評価することで、上司の日ごろの行動や業績を客観的に見られます。上司自身では気づきにくい点も、部下の視点から明らかにできます。また、複数の部下からの評価を総合することで、多面的な評価も可能です。

上司の強みと弱みを明確にできる

360度評価により、上司は多方向からの評価を受けることで、自己認識と他者認識のギャップに気づけます。上司自身では自覚していない強みや弱み、上司と部下の考えの乖離などを把握できるため、自己認識をさらに深められます。

また、部下からの具体的なフィードバックにより、みずからのマネジメントスタイルの見直しと改善が可能です。これは、上司の成長と組織力の強化につながります。

部下のモチベーション向上につながる

部下が上司を評価することで、部下のモチベーション向上にもつながります。部下は、自身の意見が組織の意思決定に反映されていると感じられ、仕事への意欲向上が可能です。

また、上司とのコミュニケーションが活発になり、部下の意見を上司が真摯に受け止めてくれるといった信頼関係が築けます。

デメリット

評価者の感情が影響する可能性もある

部下が上司を評価する際、個人的な感情が影響するかもしれません。上司との人間関係が良好な部下は高い評価をつける一方、上司とトラブルがあった部下は低い評価をつける可能性があります。

このように、評価者の主観が入ることで、評価の信頼性が損なわれてしまうかもしれない点も理解しましょう。

上司と部下の関係性が悪化するリスクもある

部下が上司を評価することで、上司と部下の関係性が悪化するリスクもあります。たとえば上司が部下からの低い評価を受けた場合、部下に対して否定的な感情をもつかもしれません。

また、部下が上司を評価するといった立場の逆転により、上司が部下に対して過度に気を遣うようになる可能性もあります。

評価プロセスに時間と手間がかかる

360度評価では、複数の評価者が評価を行うため、評価プロセスに時間と手間がかかります。評価者は、評価項目について理解し、適切な評価を行うために時間を割かなくてはなりません。

また、評価結果の集計や分析、評価結果のフィードバックや面談の実施にも時間が必要です。このように、360度評価の実施には、通常の業務に加えて追加の労力が発生します。

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部下が上司を評価する際に注意すべきポイント

360度評価を実際に取り入れた場合も含め、部下が上司を評価するときのポイントを紹介します。

評価者への研修を行う

評価を行う従業員への研修を実施して、客観的な評価方法を説明することが大切です。

一般的な人事評価の場合、可能な限りデータにもとづいた客観的な評価が求められます。部下が上司を評価する際にも同様に、客観的な評価をしなければなりません。評価することに慣れていない従業員が管理職を評価する場合、次のような問題が発生する可能性もあります。

  • 主観的な評価に終始してしまう
  • 単純な好き嫌いといった情緒的な観点から評価してしまう
  • 評価者ごとに違いが出てしまう

そして、360度評価は多くの人数への評価を考えなければならず工数がかかるため、効率も重視する必要があります。そのためにも、あらかじめ研修を実施しておけばスムーズな評価が実現しやすくなります。

評価項目をあらかじめ決めておく

360度評価をスムーズに行うには、あらかじめ評価項目を設定することも重要です。「どの部分をどのように評価すべきか?」を、あらかじめ決めておくことで、部下の主観による評価を排除し、ある程度客観的な評価が可能になります。

  • 問いに答える形式
  • コメントをもらう形式
  • 選択式

など、具体的な評価項目に関しては、人事部門を中心に適した方法を決めておきましょう。

上司と部下の関係性が影響しないようにする

部下が管理職を評価する場合、上司・部下の関係性への影響も考慮しなければいけません

部下は管理職からの評価もあるため、本音で話せなかったり関係の悪化を恐れて正しく評価しなかったりする可能性があります。そのため、人間関係の問題が起こらないように、匿名性にするといった工夫が必要です。

人間関係に配慮した360度評価を実現することで、企業全体の離職率が低下するケースもあるため、問題のある管理職によるパワハラやセクハラ防止にもなります。

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評価内容をそのまま開示しない

部下による評価のなかに、誹謗中傷や単なる悪口が含まれている場合や、上司が悪い評価をもらった際の報復人事が起こらないようにするために、評価内容を直接開示することは避けたほうがよいです。直接開示してしまうと、上記のように上司と部下の間の人間関係が悪くなる可能性があります。

また、たとえ部下が公正な評価をしたと思っていても、上司側が納得せず、部下の人事評価が恣意的なものになることも考えられます。

したがって、部下による評価は人事部門のみ閲覧できるといったように、評価内容を確認できる人物は決めておくことが必要です。内容を直接伝えるのではなく、まとめたコメントを伝えるようにし、評価内容は人事部の部外秘にしなければいけません。

報酬を決定する評価には直結させない

人事評価は報酬を決定することだと考えている人も少なくありません。しかし、あくまでも人事評価は評価の一面に過ぎません。さまざまな利害関係をもつ人からの評価を軸に報酬を決定するのはリスクが高く、本人の能力に整合しない可能性があります。

そのため、360度評価は報酬が直接関わる評価では使用しないようにしましょう。管理職の報酬に直結する評価は基本的にマネジメント部門が行い、360度評価の内容は、人材配置や人材育成の方針やプランの参考として活用するのがおすすめです。

部下が上司を評価する項目例と例文

部下が上司を評価するのは、主に管理職層の人材育成が目的です。導入の際はポジションごとの役割や目標を決め、マネジメント能力にフォーカスした項目にすることが理想的です。

質問項目の例文としては、次のようなものがあります。

課題の把握と解決策の考案

  • ビジネス環境の変化を常に観察し、会社として、あるいはチームとして解決すべき課題を考えている
  • 業務や職場における問題を見える化し、関係者全員で共有している
  • 組織の課題に対する現実的な解決策を考え、実行をリードしている
  • 解決策の効果を検証し、必要に応じて改善を行っている

業務遂行・時間配分・業務態度

  • 業務の進捗状況を常に把握し、問題が発生したときにも素早く対処を行っている
  • 適切な時間配分で作業を行っている
  • 他者や他の部門と協力しあって業務を遂行している
  • 業務の優先順位を適切に判断し、効率的に遂行している
  • みずから率先して業務に取り組み、部下の模範となっている

マネジメント・育成能力

  • 部下の仕事ぶりを観察し、必要に応じて適切にフォローしている
  • 部下それぞれに適切なゴールを設定し、理解させている
  • 部下の仕事に対して公正な評価とフィードバックをしている
  • 部下の能力や適性を見極め、適材適所の配置を行っている
  • 部下の成長を促すために、育成計画を立て実行している

コミュニケーション能力・リーダーシップ

  • 積極的に周囲の従業員と協力して仕事を推進できる
  • 適切なタイミングで部下をフォローできる
  • 部門の目標を達成するために周囲のメンバーのモチベーションを引き出せる
  • 部下や他部門とのコミュニケーションを円滑に行い、良好な関係を築いている
  • 困難な状況においても、リーダーシップを発揮し、チームをまとめられる

経営方針の理解とそれに沿った行動

  • 経営方針を理解し、会社の戦略や経営トップのビジョンに共感している
  • 担当部門の方向性を具体的に打ち出している
  • 自身や部下が会社の理念に沿った行動を取れているか常に確認している
  • 経営方針を部下に明確に伝え、理解と実践を促している
  • 会社の方針に沿った意思決定を行い、行動している

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機密保持機能によって、評価者の匿名性を担保しつつ、レポートを各従業員に送付可能です。次のアクションにつながる能力開発評価を実現できます。

※出典:クアルトリクス「お客様導入事例 | クアルトリクス」(2024年7月5日閲覧)

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  • 匿名性が高く安心して回答できる
  • 回答者ごとに比較しやすい結果帳票
  • 評価実施時のみ料金が発生する課金制

360(さんろくまる)は、従業員がみずからの立ち位置を確認し、次の行動につなげていくためのシステムです。どのデバイスからでも簡単に評価を入力でき、評価のグラフをワンクリックでExcelデータとしても出力可能です。出力したデータは、フィードバック資料としても活用できます。

360度評価を行う場合にのみ利用料金が発生し、通常の管理画面は評価以外でも自由に使えるので、コストパフォーマンスの高い360度評価を実現可能です。

MOA

  • 複数名の観察結果を平均して客観性・納得性・科学性の高い評価を算出
  • 世間一般での中堅社員層・管理職層・経営職層とのレベル比較ができる
  • カスタマイズなしでも十分な活用が可能

MOAはリクルートマネジメントソリューションズが提供している360度評価システムです。従業員の職務行動を上司のみならず、同僚や部下を含めた複数名が多面的に評価するための機能を実装しており、部下が上司を評価する際にも活用できます。

カスタマイズなしでも十分な活用が可能で、中堅従業員層(S)・管理職層(M)・経営職層(E)の3種類を評価の対象にできることから、すでに320社以上に導入されています。

※出典:リクルートマネジメントソリューションズ「360度評価システムMOA | 人材育成・研修のリクルートマネジメントソリューションズ」(2024年7月5日閲覧)


360度評価システムは次の記事で詳しく紹介しています。

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360度評価の導入・運用時のステップ

360度評価を導入し、運用するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。次に、各ステップの概要を説明します。

目的と評価項目の設定

360度評価を導入する際は、まず目的を明確にすることが重要です。組織の課題や目指す方向性を踏まえ、360度評価によって達成したい目標を設定しましょう。次に、目的に沿った評価項目を決定します。

評価項目は、被評価者の役割や求められるスキルにもとづいて設定するのがおすすめです。ここでの評価項目は、具体的かつ測定可能なものにしましょう。

評価者と被評価者の選定

360度評価では、被評価者を取り巻くさまざまな立場の人が評価者となります。評価者は、被評価者の上司、同僚、部下、社内の他部署の人などから選定します。

評価者の選定は、被評価者との関係性や評価の目的を考慮して行いましょう。

評価者研修の実施

選定された評価者に対して、評価者研修を実施します。研修では、360度評価の目的や評価項目について説明し、評価基準や評価方法を理解してもらいます。評価者が公平かつ客観的に評価できるよう、評価の際の留意点についても説明しましょう。

研修を通じて、評価者の評価スキルを向上させることが重要です。

評価の実施とデータ収集

評価者研修が終了したら、実際に評価を実施します。評価は、アンケート形式で行うことが一般的です。評価者は、評価項目にもとづいて被評価者を評価し、コメントを記入します。

評価結果は人事部門のような担当部署が集計し、データ化します。データ化する際は、評価の匿名性を確保しましょう。

結果分析とフィードバック

収集したデータを分析し、被評価者の強みや改善点を明らかにします。分析結果は、被評価者本人にフィードバックします。

フィードバックの際は、評価結果を客観的に伝え、被評価者の自己認識を高めることが大切です。

評価結果の効果的なフィードバック方法

普段評価をする側の上司に対して、360度評価の結果をフィードバックする際には、効果的な方法を用いることが欠かせません。次に、評価結果を効果的にフィードバックするためのポイントを説明します。

フィードバックは面談形式で行う

評価結果のフィードバックは、面談形式で行うことが効果的です。直接対面することで、上司の反応を見ながら、適切な説明を行えます。また、上司が評価結果について質問や意見を述べる機会が設けられれば、双方向のコミュニケーションも可能になります。

面談の際は、十分な時間を確保し、プライバシーが保たれる場所で行うことが重要です。

評価結果を客観的に伝える

評価結果をフィードバックする際は、客観的なデータにもとづいて伝えることも大切です。部下からの評価コメントを引用しながら、具体的な行動や事例を示すことで、上司の理解を促せます。

評価結果を肯定的な面と改善点の両面から伝えることで、バランスの取れたフィードバックにしましょう。

上司の自己評価との差異を確認する

部下からの評価結果と、上司の自己評価を比較することで、上司の自己認識と他者認識のギャップをより明らかにできます。フィードバックの際は、このギャップについて上司と話しあい、認識の違いを埋めることが重要です。

上司が自己認識を高めることで、行動変容への動機づけにつながります。

改善点について具体的なアクションプランを立てる

評価結果から明らかになった改善点については、具体的なアクションプランを立てることが効果的です。上司自身が改善策を考え、実行計画を立てるように促しましょう。計画立案の際は部下からの提案も取り入れながら、実現可能な計画を立てることが大切です。

アクションプランを文書化し、定期的に進捗を確認することで、上司の行動変容を支援できます。

フィードバックは継続的に行う

360度評価のフィードバックは一度きりではなく、継続的に行いましょう。上司の行動変容は一朝一夕では実現しません。そのため定期的にフィードバックを行い、進捗状況を確認することで、上司の成長を支援しましょう。

また、継続的なフィードバックは、上司と部下の認識の乖離を減らし、信頼関係を築くことにもつながります。

360度評価で多面的な評価を

管理職が部下を評価するだけではなく、部下が上司を評価する360度評価の導入によって、現場の風通しがよくなり、離職率の低下も期待できます。管理側もみずからが評価されるため、緊張感をもって仕事をしやすくなります。

ただし、人間関係に問題が生じる可能性もあるため、評価は匿名で行い、人事部門が評価情報を管理するといった工夫が必要です。360度評価に適したシステムを導入することも視野に、公正かつスムーズな人事評価制度を構築しましょう。

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