大企業9割「取引先もDX推進を」 - 中小企業のDX待ったなし、顧客失うおそれも
業務システムのクラウド化は約4割
経理や税務などの業務は、いまや紙の書類でなくデジタル処理が当たり前です。最近では、PC上のソフトウェアから、クラウド対応の会計サービスやERPへと移行した企業も多いでしょう。
マネーフォワードがクラウド会計システム/ERPの認知率や導入率などを調べたところ(※1)、調査時点で導入していた「聞いたことがあり、現在も勤務先で利用している」という回答は41%でした。また、現在は使っていないものの「聞いたことがあり、過去に勤務先で利用したことがある」は9.8%あります。利用経験のない回答者でも、「聞いたことがあり、具体的な機能や特徴も知っており、利用してみたい」人は15.4%です。
一方、「聞いたことがあり、具体的な機能や特徴も知っているが、利用する気はない」との回答は9.5%ありました。
※1 マネーフォワード『『マネーフォワード クラウド』、「会計ソフト・ERP導入についての調査」を実施』
中小企業もDX推進待ったなし
クラウド対応システムを「利用する気はない」といった、DXに消極的な姿勢の企業も、方針の見直しが必要かもしれません。DXが進んでいる大企業は、「取引先の中小企業もDXを推進すべき」と考えているからです。
大手企業から求められるDX推進
中小企業個人情報セキュリティー推進協会は、中小企業と取引のある大手企業のDX推進状況などを調査しました(※2)。
それによると、82.9%が「社内でDXに取り組んでいる」と回答し、そのうちの48.0%が「非常に(全社として)取り組んでいる」、44.7%が「やや(一部の部署などで)取り組んでいる」とのことです。大手企業において、DXは当然の取り組みになっています。
DX推進中の企業でも、実際に導入を開始するとさまざまな障害にぶつかります。課題として多く挙げられたものには、「DX推進のための人材が不足」(63.7%)、「DX推進のアイデアや企画・戦略立案が難しい」(58.1%)、「データが適切に管理できるか、情報漏洩しないか不安がある」(43.0%)などがありました。
注目したいのは、自社だけではDXの課題を解決できず、取引先である中小企業の対応を必要としていたことです。
40.8%が「自社だけDX推進しても取引先が対応してないと効果が出せない」、36.3%が「自社のDX推進の成果を出すために、取引先にも協力してもらうことがたくさんある」と回答しました。取引先にもDXを推進してもらいたい、と考える大手企業が相当数あります。
※2 中小企業個人情報セキュリティー推進協会『大手企業の8割超が自社で「DXに取り組んでいる」と回答』
DX遅れで顧客失うおそれも
取引先の中小企業がDXを推進するべきかどうかについては、52.3%が「非常にそう思う」、42.1%が「ややそう思う」と答えました。全体の9割以上が「取引先もDX推進すべき」と考えていたのです。
そして、「DXを全く推進するつもりがない企業との取引(発注)を躊躇しますか」という質問に対し、「かなり躊躇する」が25.0%、「やや躊躇する」が46.3%と回答しています。つまり、DX推進に消極的な企業は、大切な顧客を失いかねません。
ためらう理由を挙げてもらうと、以下のような具体的な回答が得られました。
理由 | 回答率 |
---|---|
生産性を上げる取組に前向きな姿勢を 持つべきと思うため |
71.4% |
セキュリティーやコンプラアインスが整備されてないと、 自社も影響を被ることがあるため |
67.5% |
受発注先事業者に対するリスク管理 において重要であるため |
55.2% |
今後、取引先に対するコンプライアンス対応が 厳しくなることが想定されるため |
48.1% |
自社の取引先管理ルールも 厳しくなることが想定されるため |
31.2% |
これらのほかにも、「自社のDX推進の妨げにならないようにするため」「自社とのシステム連携が取れない」「基本プラットフォームとの互換性」など、取引先がDX推進の足かせとなることを懸念する声もあります。
中小企業もDXの必要性は認識
とはいえ中小企業も、決してDXに対する関心がないわけではありません。現時点で取り組んでいる企業は多くないものの、必要性は認識しています。
「推進が必要」は4割
リトルソフトは、従業員数300人以下の中小企業のオーナーを対象として、DX取り組み状況に関する調査(※3)を実施しました。まず、DXに取り組んでいるかどうか尋ねたところ、「はい」は26.6%にとどまり、4分の3近くという73.4%が「いいえ」と答え、推進している企業の少ないことが分かります。
今後のDX推進が必要かどうか、という問いに対しては、「とてもそう思う」が11.0%、「ある程度そう思う」が28.3%と、約4割が必要と考えていました。必要性を感じていない「あまりそう思わない」は8.0%、「全くそう思わない」は10.1%と少数派です。42.6%は「どちらともいえない」という立場で、取引先から求められればDXを検討する可能性の高い層でしょう。
もっとも、どこからDXに着手したら良いかの判断は、現場から遠いオーナーにとって難題かもしれません。そこで、日々の業務で不便を感じていたり、取引先から要望を受けたりしている現場の従業員の意見が重要になります。
DXに関する提案などを従業員から受けたことのあるオーナーは、18.4%と多くありません。しかし、その62.0%は「可能な限り取り入れる予定」、33.3%は「内容を精査した上で取り入れる予定」と、9割以上が従業員の意見を聞こうとしています。
「取り入れる予定はない」はわずか4.7%です。
※3 リトルソフト『中小企業にDXは必要なのか?』
行政手続きの電子化も
企業が活動するにあたって、デジタル化やオンライン化は避けて通れません。取引先の大手企業が、自社のシステムと連携可能なシステム導入を求めることもあるでしょう。
政府や自治体とのやり取りにおいても、社会保険の申請や税務処理などの電子化が着々と進んでいます。電子インボイスも導入は時間の問題です。さらに、先ごろデジタル庁が発足したことで、行政のDXは間違いなく加速します。
取引先などから要求され、必要になってから検討するのでは遅すぎます。今から調査して検討を始め、できるところから、導入効果の高いところから段階的にDXを進めていきましょう。