二極化するペーパーレス対応、生産性向上への期待が「好循環」生む手がかりに
ペーパーレス化はどの程度進んだ?
根強く残っていた押印という習慣も、最近になって必要な書類は目に見えて減りました。在宅勤務やテレワークをする機会が増え、ハンコに縛られた状態の弊害が深刻になった影響なのかもしれません。
同じように、紙の書類もICT推進の妨げになるため、ペーパーレス化を求める声は以前から多くあります。効率よくテレワークをするのなら、ペーパーレス化は必要不可欠です。
現在、ペーパーレス化はどの程度進んでいるのでしょうか。
4分の3以上がペーパーレス推進
ペーパーロジックは2021年1月、東京に本社がある企業の経営層を対象として、ペーパーレス化に関する調査(※1)を実施しました。
2020年に社内でペーパーレス推進を行ったかどうか尋ねたところ、「積極的に行った」は36.1%、「ある程度行った」は39.6%と、ペーパーレス化に取り組んでいた企業は4分の3以上もあります。逆に、「あまり行っていない」は15.3%、「一切行っていない」は5.4%と少数派です。
やはり、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策で在宅勤務が広まり、ペーパーレス化の必要性が高まったからでしょう。
ペーパーレス化を「積極的に行った」または「ある程度行った」理由としては、予想どおり「新型コロナ禍でテレワークを促進するため」という回答が寄せられました。そのほかには、「検索性の向上」「事務の効率化」「残業時間の短縮」や、「紙ゴミ削減」「SDGs推進の一環」といったコメントもあります。
※1 ペーパーロジック『都内企業55.1%が2021年度に「ペーパーレス化推進システム導入の予算配分を予定/検討」と回答、昨年対比で19.1%上昇』,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000023701.html
ただし過半数は進捗せず?
日本能率協会(JMA)は、対象者を企業や団体の従業員などに広げた同様の調査(※2)を、2021年8月に実施しました。
1年間のペーパーレス化進捗度については、「とても進んでいる」(7.2%)と「やや進んでいる」(36.7%)の合計が全体の4割強あります。一方、「あまり進んでいない」(35.4%)と「まったく進んでいない」(20.7%)の合計が過半数もあり、ペーパーレス化は全体的な流れにはなっていないようです。
「電子化」によってペーパーレス化が進んだ(「完全に電子化された」と「一部電子化された」の合計)具体的な手続きは、「勤怠管理」が7割強で最多でした。
電子化されずに紙で運用され続けているという回答率が高かったものは、「FAX」(61.7%)、「印鑑」(60.5%)、「契約書」(49.9%)です。対外的なやり取りを必要とする手続きは、自社だけの取り組みでペーパーレス化が難しいため、このような結果になったと考えられます。
※2 日本能率協会『2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【ペーパーレス化の実施状況】』,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000016501.html
くっきり分かれる肯定派と否定派
日本能率協会の調査では、82.5%がペーパーレス化に何らかのメリットがあった、と回答しています。具体的なメリットは、「コスト削減」が74.1%でもっとも多く、「省スペース化」(46.1%)や「業務効率化」(45.9%)を挙げる回答者も目立ちました。
また、ペーパーレス化が生産性に与える影響については、「向上する」と「やや向上する」を合わせた5割弱が生産性向上を期待していました。ペーパーレスによって生産性が低下すると考える人(「やや落ちる」と「落ちる」の合計)は、約1割にとどまっています。
ペーパーレスで生産性は? | 回答の割合 |
---|---|
向上する | 12.9% |
やや向上する | 32.5% |
変わらない | 44.5% |
やや落ちる | 7.5% |
落ちる | 2.6% |
注目すべき点は、ペーパーレス化が進んでいる職場ほど生産性向上を期待し、進んでいない職場ほどペーパーレスに否定的だったことです。
職場におけるペーパーレス化が「とても進んでいる」と答えた人は、45.8%が「(生産性が)向上する」、34.7%が「やや向上する」を選び、8割が肯定派です。これに対し、「まったく進んでいない」と答えた人は、「向上する」(10.1%)と「やや向上する」(12.6%)を合わせた肯定派が2割程度でした。
ペーパーレス化に積極的な職場はペーパーレスを好意的に受け止め、さらにペーパーレス化が進む、という好循環が生まれます。その反対にペーパーレス化が進んでいない職場は、肯定的に受け止める人が少ないため、積極的に推進されません。その結果、両者の差は開いていきそうです。
予算面でも差が拡大
ペーパーロジックの調査では、ペーパーレス推進に予算を配分するかどうかを調べています。
2020年にペーパーレス化を「積極的に行った」「ある程度行った」企業は、ペーパーレス化システム導入の予算配分を「予定している」が27.4%、「検討している」が33.3%で、さらなるペーパーレス化を推進するところが多数派です。「予定/検討していない」は26.2%でした。
ペーパーレス化を「あまり行っていない」「一切行っていない」ところは、「予定/検討していない」が56.5%、「予定している」が0.0%、「検討している」34.8%と、正反対の結果です。
このことからも、推進する企業としない企業の差は大きくなる一方と予想できます。
高まるペーパーレス化への圧力
ペーパーレス推進のメリットは大きいと考えられます。ペーパーレス化しないと、さまざまな面で紙の制約にぶつかるはずです。
事実、ペーパーロジックの調査では、「(ペーパーレス化が課題になっていると)非常に感じる」という回答は33.4%、「少し感じる」という回答は40.5%に上ります。課題を感じる場面については、コストや効率、テレワーク、セキュリティに関する障害を指摘する人が多くありました。
課題を感じる場面 | 回答の割合 |
---|---|
紙により 無駄なコストがかかっている |
59.8% |
紙により 業務が非効率になっている |
58.5% |
テレワーク実施が 最適にできていない |
41.5% |
セキュリティ上 紛失や情報漏洩のリスクがある |
34.1% |
企業としてDX化していないことが 逆ブランディングになっている |
13.4% |
ペーパーレスを見送っていると、非効率なまま業務を改善できません。それどころか、最悪の場合、取引先を失ってしまいます。ある調査によると、大企業は9割以上が「取引先もDX推進すべき」と考え、大多数がDX推進意向のない企業との取引を躊躇するとしていました。
しかも、デジタル化やペーパーレス化、オンライン化は、企業活動のあらゆる面で急速に進んでいます。電子帳簿保存法改正、電子インボイス制度開始など、圧力はますます高まるでしょう。
ペーパーレス化を強く推進する理由はあっても、見送る理由はありません。
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