LION(ライオン)絶好調のワケ、質的成長を実現した「新ローカル戦略」とは?

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記事の情報は2017-11-09時点のものです。

日用消費財メーカーのライオンは「新ローカル戦略」に成功し、4期連続過去最高を更新した。「日本マーケティング学会」に登壇した同社の榊原 健郎氏は、国内事業の質的成長を掲げた中長期戦略「Vision 2020」を紹介し、国内事業の方向性と成功の秘訣を語った。

オシャレ着洗い洗剤が、中国・四国エリアで売れなかったのはなぜ?

同氏は、まず高付加価値製品の開発・導入と新市場の創造という点について、事例を交えながら紹介した。

たとえばライオンは、オシャレ着用洗剤として有名な「アクロン」を市場に投入している。この市場は約100億円の規模があるが、このうち中国・四国エリアのボリュームは相対的に低く、構成比は10%弱ほどだ。そこで同社は消費増大の施策を練ったという。

「このエリアを調査したところ、年代構成では50~60代の消費が中心で、同居人数が多いという特徴が見えた。また月あたりの衣料支出も低めで、ファッションにお金をかけない傾向があることもわかった」(榊原氏)。

オシャレ着用洗剤は、ドライクリーニングを出さなくてはいけない衣料を除き、ほとんどのものに対応できる。クリーニングについては、このエリアはクリーニング代を節約する傾向があり、コインランドリーの利用率も高いほうではなく、家庭で洗濯することが多い。それならば、なぜアクロンが伸びないのだろう? という疑問が起きる。

「アクロンは、オシャレ着洗剤としてコンセプトを変えているのにもかかわらず、どうしても従来の毛糸洗いのイメージが強いようだ。さらに、もうひとつ大きな要因があることがわかった。実は中国・四国エリアは、小学生の90%が制服を着用するという特異なエリアだった。となれば、制服に対するニーズが重要なポイントになる」(榊原氏)

では制服と普段着と何が違うのだろう? 制服は、同じものを学期間中に着ることになる。丁寧なケアというよりも、買った状態が長持ちすることが大切で、節約ができる点を訴求したほうがよいことになる。また、匂いも気になるポイントだ。フローラル系の嗜好性よりも、子供の服に適した「清潔感がある爽やか香り」を好む傾向がある。

同氏は「そこで中国・四国エリアでは目線を変え、オシャレ着洗いでなく、制服洗いの方向にシフトした。その突破口として、学生服メーカーの管公学生服とタイアップし、訴求の仕方も変えたり地元テレビ局に生コマーシャルを投下したりといったWeb施策を強化した。アクロンを使うことで、どのくらいクリーニング代が節約できるのか、という点もアピールした」と説明する。

そして2016年春に、アクロンに「ナチュラルソープの香り」を追加し、家庭にも向いた清潔感・爽やかな香りとして、プロモーションを打ったという。これが功を奏し、中国・四国エリアに対する売上が前年比で115%ほど伸びたそうだ。地域のインサイトを見つけ、メッセージやアプローチを変えることで成功した好例といえるだろう。