SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)とは | 2020年に日本から出展予定だった企業まとめ

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記事の情報は2018-03-16時点のものです。

「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」は、米国テキサス州オースティンにおいて最先端テクノロジーの祭典だ。2020年の開催は、新型コロナウイルスの影響により見送られている。そんなSXSWに出展している企業を2018年以降に限定して紹介する。
SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)とは |  2020年に日本から出展予定だった企業まとめ

※2020年5月28日更新(2020年日本から出展予定だった企業を追記)
※2019年2月26日更新(2019年開催情報と日本からの出展企業を追記)

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)とは

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)とは、スタートアップの登竜門といえる一大イベントだ。SXSWミュージック、SXSWフィルム、SXSWインタラクティブ、SXSWコメディの4部門にわかれて開催される。その1部門SXSWインタラクティブはIT関連企業、スタートアップの新規事業アイデア、プロトタイプ紹介がメインとなっており毎年メディアでも大きく取り上げられている。

参加企業の多くはSXSW参加者からプロトタイプへのフィードバックを受けること、事業パートナーや投資家との接点の獲得を狙いとしている。現に2007年にTwitter、2011年にAirbnb、2012年にはPinterestがSXSWにおいて表彰され、それを契機に世界の注目を浴びることになったことでも有名だ。

SXSWはリーン・スタートアップの一環

SXSW出展の価値は、当然スタートアップに限られるものではない。スタートアップにも引けを取らないユニークなプロダクトのプロトタイプや出し物を出展して目立っているが、SXSW常連のソニー。2019年は、NEC、シチズン、宇宙建築スタートアップのOUTSENSEも日本から出展した。

商用化前のプロダクトのプロトタイプに対するユーザーの反応をSXSWで見たり、フィードバックを受けることでユーザー視点からプロダクトを修正するキッカケを掴もうとしている。いわゆる「リーン・スタートアップ」の一環にSXSWを位置付け、市場に受け入れられるイノベーティブなプロダクト創出に向けて動いているわけだ。

SXSWに日本企業が出展する「価値」とは

元々は音楽のフェスティバルだったSXSWだが、近年はテクノロジーの最新動向がキャッチできるセッションや、インタラクティブイノベーションアワードも注目を集めている。各国からマーケターや目利きが集いトレンドウォッチに役立つイベントとして世界中から認知されているのだ。

その場に集まるユーザーからダイレクトなフィードバックを得られることは、出展企業にとって大きな価値だろう。市場に受け入れられる可能性の高いプロダクトを生み出すためには、多様な人間の視点を取り入れることが重要だからだ。こうしたフィードバックは日本国内では得がたいものだ。トライ&エラーでイノベーション創出していくための、ヒントや起爆剤がSXSWには溢れている。

SXSW2020 日本からの出展予定だった企業

2020年のSXSWは中止となっている。代わりに、当初予定されていた日本からの出展企業を、一部抜粋して紹介しよう。

  • シチズン時計
  • 電通
  • 博報堂
  • NEC
  • NTTコミュニケーションズ
  • パナソニック
  • リコー

SXSW2019 日本からの出展企業まとめ

2019年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)には日本から、ソニー、NEC、シチズン、OUTSENSEが出展した。

ソニー

ソニーブース(WOW Studio)内では、「テクノロジー×クリエイティビティ」をテーマとしたトークセッションやプレゼンテーションと体験型展示を組み合わせたプログラムを実施。

メインテーマはWill technology enrich human creativity?(テクノロジーはクリエイティビティを豊かにするのか?)。人間とAIの共創やクリエイティビティの拡張などについて、ゲストスピーカーを迎えながら議論していった。

  • ゲストスピーカー:ユルゲン・シュミットフーバー(Jürgen Schmidhuber)氏、ガルリ・カスパロフ(Garry Kasparov)氏、石黒浩氏

体験型展示では、ソニー 品質・環境部、クリエイティブセンター、R&Dセンターによる、視覚に頼らず楽しめるインクルーシブデザインを体感できた。障がいの有無に関わらず、多様な人が自分らしく楽しめるテクノロジーの可能性を提示。

NEC

NECは、SXSW初出展となった。一人ひとり異なる固有の生体情報に着目し、人が生まれながらに持つ個性や多様性、個々の違いが生み出す美しさを再認識するきっかけを提案。

目の虹彩から得られる固有の生体情報をグラフィックパターンに変換し、一つ一つ異なるその人のためだけのファッションアイテムやアクセサリーとして表現することで、人が生まれながらに持つ個性や多様性に目を向け、その違いが生み出す美しさや生体情報が持つ可能性を再認識するきっかけとなることを目指しました。(引用:プレスリリース)

シチズン

シチズンも、SXSW初出展だ。腕時計を起点として、ヒト・モノ・コトを有機的につなぐことで、新たな「時(=ライフスタイル)」の体験を提供する、IoTプラットフォーム「Riiiver」のコンセプトとそれが提案する未来の形を展示した。

宇宙建築スタートアップのOUTSENSE

宇宙建築スタートアップのOUTSENSEが展示するのは、建設を目指している月面基地のプロトタイプ(試作品)だ。人類が宇宙で暮らす時代の実現に向け、「折り紙」を応用した独自技術で月施設の構築を目指している。

三菱総合研究所 未来共創イノベーションネットワーク事務局 技術賞やリクルートホールディングス TECH LAB PAAK賞を受賞。宇宙建築だけではなく、次世代型テント、仮設住居、家庭用防音室、イベントブースなど、「折り畳める家」(ORIGAMI HOUSE)の活用方法は幅広い。

なお、メインイベントの一つ「SXSWピッチ」のファイナリストには、日本から唯一「Stroly(ストローリー)」が選出された。起業後まもない企業のプレゼンを公開審査するもので、2019年は世界800社以上の応募のなかから選ばれた50社が登壇する。

SXSW2018でのパナソニックの展示

パナソニックのSXSWへの参加は2017年に引き続き2回目だった。新規事業の創出を目的に設置したパナソニック社内のアクセラレータ「Game Changer Catapult」の取り組みの一環でもある。

「Panasonic House @ SXSW 2018」では衣食住に焦点をあて、 8つの新規事業アイデアと3つのプロジェクトの取り組みを紹介した。

8つの新規事業アイデア

・Sylphid
パナソニック独自のミスト技術を活用した家庭用ホワイトニングツール。

・Pecoral
ペットの歯ブラシと飼い主同士がアドバイスし合うなど交流できるオンラインプラットフォーム。

・Famileel
簡単に利用できる高齢者向けのテレコミュニケーションツール。

・Kronosys
調理トレーニングを支援するARスマートグラス。

・OniRobot
飲食店向けのおにぎりロボット。

・Ferment 2.0
マルコメ株式会社と協業し開発した味噌作りキット。

・Aromation
音楽に応じた香りを提供するサービス。

・Blockchain×Appliances
ブロックチェーン×家電の事業アイデアの紹介。

3つのプロジェクト

・FUTURE LIFE FACTORY
「豊かなくらし」を再定義するデザインスタジオ。窓がない部屋に取り付ける光・風・音で表現された新コンセプトの窓「+WINDOW」、どこにいてもパーソナルスペースを作り出せるパーテーション付きのノイズキャンセリングヘッドホン「WEAR SPACE」を紹介。

・100BANCH
パナソニック創業100周年を記念し、次の100年につながる価値の創造に取り組むとしたプロジェクト。翻訳ツール「Fukidashi」、光の3原色を照射して不思議な体験を可能にする照明ライト「RGB_Light」、ふんどしをファッションアイテムとして蘇らせる「Fundoshi Hack Project」、着物にテクノロジーを応用する「KISABURO KIMONO Project」を紹介。

・Scratch Home
プログラミングを家電とつなげ子供の創造性を育む新しい住空間のコンセプトを提案するプロジェクト。

海外のSXSW参加者からの評価は

海外のSXSW参加者は、調理トレーニングを支援するARスマートグラスKronosysを実用的だと評価したようだ。一方、プロジェクト FUTURE LIFE FACTORY が手がけるパーテーション付きのノイズキャンセリングヘッドホンWEAR SPACEに対しては、実用的ではないとしている。

商用化されていないプロトタイプの段階で率直なフィードバックを受けられることこそが、パナソニックがSXSWに見出している価値だろう。フィードバックを受けて商品化するかどうかの意思決定、修正を加える参考とすることができる。

SXSW2018でのソニーの展示

続いて、2018年のソニーの展示を振り返る。

ソニーは2017年のSXSWの「The WOW Factory」と同様、テクノロジーの説明に終始するのではなくテクノロジーとエンターテイメントを融合させ、ユーザー自ら「体感」できる出し物を「WOW Studio」に揃えた。

「WOW Studio」に並んだラインナップ

・Ghostly Whisper
ユーザーは古い館を舞台に館の家主とタロットゲームを楽しみながら不思議な体験をする。耳元で自分だけにささやく声や風の音が聴こえる(空間音響技術)、誰かに触れられたような感覚を得る(触覚提示技術 )。

・Interactive Tabletop Projector
センシング技術とプロジェクション技術を活用。インタラクティブなAR空間において指先一つで楽器の演奏を楽しめる。

・AR Hockey
ARでホッケーを楽しめる。触覚提示技術によりバーチャルパックの大きさに合わせて振動が異なる演出も。

・Superception
ヘルメット型のプロジェクターをつけて映像を映し出すことで、蚊やコウモリなどが体験している世界を疑似体験できる。

海外のSXSW参加者からの評価は

海外のSXSW参加者やメディア関係者は、「WOW Studio」の出し物そのものが商用化される可能性は低いと評価しているようだ。

しかし、出し物に使用されているセンシング技術や触覚提示技術、プロジェクション技術などのテクノロジーを人が体感できるエンターテイメントに取り入れている点を高く評価している。

次々とテクノロジーが誕生し溢れているいま、テクノロジーそのものではなくソニーのようにテクノロジーを活用したエンターテイメントで人間を楽しませるような、人間に寄り添ってテクノロジーを活用するプロダクト開発が望まれているのかもしれない。

(初回掲載日:2018年3月16日)