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BPRとは? 用語の意味や目的、DXやERPとの違いから成功例まで解説

最終更新日:(記事の情報は現在から627日前のものです)
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とは、業務構造を俯瞰的に見直し、より効率的なものに再構築する「業務改革」を意味します。BPRの概要や意味、DXや業務改善との違い、メリット、実施手順までわかりやすく解説します。

BPRとは

BPRとは、現在の業務内容を根本的に見直し、効率や生産性を改善するために、顧客に対して価値を生み出すためのプロセスとなるよう全面的に再構築することです。

「Business Process Re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略称で、日本語では「業務改革」と訳されています。

BPRの発案

BPRは、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェイムス・チャンピーが1993年に出版した著作『Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution(邦題:リエンジニアリング革命)』がベストセラーになったことをきっかけとして、世界中に広まりました。

同書によるとBPRの定義は、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」とあります。(参照:総務省、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「民間企業等における効率化方針等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究」

BPRは、組織内で起きている本来の顧客に対して提供するべき価値とは無関係な業務や、部署間で重複している作業、業務を抜本的に取り除き、全面的な業務改革を図る取り組みといえます。

BPRと似た用語との違い

BPRと業務改善の違い

業務改善とは、全体の業務プロセスに問題はなく、ある業務を行う中で発生している無駄や重複事項を改善し効率化することを指します。業務の一部分を少しずつ改善することが特徴です。

一方、BPRはプロセスそのものに問題があることを前提に、現状の業務全体を抜本的に再構築することを指します。またBPRは、顧客から見て不必要なプロセスを省くところが特徴です。高度なシステムやERPを導入することにより、一部作業をオートメーションすることや全体共有することもBPRの特徴と言えます。

BPRとERPの違い

ERPとは、「Enterprise Resource Planning:エンタープライズ・リソース・プランニング」の略称で、直訳すると「企業資源計画」となります。ERPは経営資源の「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を統合的に管理し、経営の効率化を図るための考え方やシステムを指します。

ERPシステムの導入は、BPRを実施するための具体的な手法の一つとなります。

BPRとDXの違い

経済産業省が、2018年にDX推進を目指す企業に向けて発表した『DX推進ガイドライン』では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」

また、経済産業省はDXレポートのなかで、日本企業がDXを推進できなかった場合、2025年~2030年の間の5年間で、最大で約12兆円の経済損失が生じる「2025年の崖」として警鐘を鳴らしています。

このためBPRによる業務改革は、待ったなしのDX推進のための有効な手段と位置づけられます。

BPR導入の背景

1990年代:経営効率向上のため注目が集まる

BPRが日本で注目されたのは、1990年代前半のバブル崩壊の後。背景には急激な景気の悪化によって収益が減り、経営効率の向上が必要とされたからです。

特にこの時期は企業活動へのITが導入が進んだ頃です。よってバブル後にはBPRの手法として多くのIT製品が導入されていきました。

しかし、当時は非常にアナログなところからITをいきなり導入したので、混乱が生じました。これにより、当時のBPRはけっして成功とは言えない結果に終わっています。

2010年代以降:働き方改革のため再注目

バブル後の時期には、上手にいかなかったBPRですが、近年は再注目されています。なぜならば、政府が主導する「働き方改革」によって業務効率と生産性を向上させなければならないプレッシャーがかかっているからです。

長時間労働を減らすには、効率を向上させねばなりません。しかし、通常の業務改善では大きな成果を期待できません。よって規模の大きく、業務の根底から変革していくBPRが注目されています。

BPRを導入するメリット

BPRを導入するメリットは次のとおりです。

  • 業務フローの把握
  • 顧客満足度・従業員満足度の向上

業務フローの把握

BPRを導入する場合、事情があって業務フローを再構築できなくても、既存の業務フローのままに効率の改善ができます。実際に大きなプロセスの改革をしなくても、業務フローを洗い出すため改善点が見つけやすいのです。

顧客満足度・従業員満足度の向上

BPRを導入すると、業務効率が改善するので、顧客満足度と従業員満足度が向上します。BPRによって効率のよい運営体質やサービスになり、顧客はもちろんのこと、従業員自身の満足を高める結果になります。

BPRの成功例

では実際にBPRを導入した企業では、どのような改善例が見られたのでしょうか。具体例を見てみましょう。

事例1. 社員の積極的な協力

経営幹部だけではなく一般社員の協力を上手く誘発することでBPRが成功した。通常の業務に加えて、追加的なBPRの取り組みも発生するため、社員の積極的な参加や当事者意識を高め、モチベーションの向上を図るための仕組み作りが必要となる。

計画、企画段階からなるべく多くの社員を参加させる試みや業務改革の提案を組織全体から募ったり、業務改革の優秀な提案に対する表彰制度を整備したりすることで、ボトムアップ的なアプローチを取る事例が多く見られた。【製造業 A 社、製造業 C 社、 サービス業 D 社】

事例2. ITインフラ整備

仕事のやり方が変わるようにITインフラ整備がマストであり、実務としてプロセスを変える環境にしなければ、時間の経過とともに、以前のやり方へと戻ってしまうリスクがある。単にルールを変え、業務プロセスのフォーマット作るだけではBPR後の業務徹底は難しく、物理的なITインフラ整備の必要性を痛感した。【金融業 B 社】

BPRの導入事例の共通ポイント

BPRの導入事例から見ても明らかなように、慣れ親しんだ業務を改善するのではなく、すべての工程を見直す大きな改革となるため、「なぜBPRが必要なのか」を全社で共有し、共通のイメージを持つことが鍵となります。

また、BPRが実施されたのちにも、それが定着するための工夫をすることも大切なポイントです。

BPRの方法

BPRを実施するプロセスを簡単にまとめると、まず、業務全体の可視化を行い、その次に意思決定プロセスの改革をする流れになります。

BPRは、一般的に次のようなステップで実施されます。特に、検討段階の目的・目標の設定、分析段階の分析・課題の把握、設計段階の戦略・方針の策定実施方法の検討が重要とされています。

出典:総務省 「民間企業等における効率化方針等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究」

業務分析による業務仕分け

BPRのもっとも一般的な手法は、業務分析による業務仕分けです。

この業務仕分けとは、必要性に応じて、現在の全業務に優先順位をつけることを指します。ここで優先順位が低いとされたものは、廃止したりアウトソーシングしたりするのが主です。

これを業務の性質を調べたうえで、重要な業務に支障をきたさぬように再編成します。この最後のプロセスが事業仕分けの肝要な点です。

ERPシステムの導入

ERPとは、基幹系情報システムのことで主に経営層の意思決定をサポートする目的で導入されます。このERPは財務会計管理はもちろんのこと、予算管理、在庫管理、人材管理など幅広い業務を対象とするシステムです。

業務全体の可視化を行うときにERPを導入することで、ERPを最大限に活かして業務効率の管理が可能になります。

これで大規模なBPRをしたあとの、日々の業務改善ができるので、ERPの導入はよく取られる手法です。

次の記事では、ERPについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

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シックスシグマの導入

シックスシグマとは、顧客満足度の向上や不良品率の低下のために統計学を活用することを言います。

シックスシグマは、製造部門のほか、サービス業や営業部門、企画間接部門に効果的です。また、これは経営陣や部長職の権限が強い、いわゆるトップダウン型の組織と相性が良いです。

シェアード・サービスの導入

シェアード・サービスとは、社内の業務が似ていたり共通していたりする業務を集約し、コスト削減・サービス向上を目指す手法です。

この手法は、アウトソーシングと同じく、ビジネスプロセスを効率化させられるうえに、コーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化できます。

重要な顧客情報を扱う業務などは、どうしても社内にとどめておく必要があります。しかし、社内でのありかたをシェアード・サービスなどで再定義することは可能です。

BPRを進める際に重要なポイント

BPRの導入方法は上記の通りですが、うまく軌道に乗せるためには気を付けるべきポイントがあります。特に重要なポイントを紹介します。

目的意識を共有して進める

BPRは、事業部門から事業責任者をはじめ、選出されたプロジェクトメンバーが主体となり推進するケースがほとんどです。

全社的な改革となるため、経営トップと社員(スタッフ)が、BPRを推進することの背景や目的、最終形態を事前ミーティングで、すり合わせておくことが重要となります。必要に応じて、他業界も含めて他社の先行事例など外部情報を参考にして、成功要因・失敗要因を学んでおくことも大切です。

計画実行と目標の設定

抜本的に業務改革となるBPRは、組織・システム・人事の3視点を総合的に整備していくケースが多いです。改革を行うべき対象の明確化、現状の把握認識、改革の構想と目的、実行するための推進計画をまとめていきます。

その際には、現行業務の棚卸し作業をすることがマスト。共通フォーマットを作成して行い、各部門の各社員がどのような業務をどのくらいのリソースを割いているのか棚卸し作業をしていくのが良いでしょう。

そのうえで、BPR改革の対象となる部署と、改革の重点となるプロセスを明らかにすることがポイントです。BPRを遂行する目標を設定する際には、顧客満足と競争優位を実現する視点を持つことが重要です。

基盤整備を行い、BPRの浸透と共有化を図る

描いたBPR業務改革をすすめていく中で、BPR改革に沿った新たなルールの策定や、データベースの見直しなど、基盤整備を行う必要が出てきます。BPRの改革を浸透させるためにも、運用状態と成果目標を確認しながらBPR改革を随時見直し、修正していく癖をつけることが大切です。

最近では低コスト、短期間で導入できる基幹システム(ERP)も増えていますが、BPR改革に沿っていることが重要となります。

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ERP導入の検討も合わせて行う

BPRは抜本的な業務改革となるため、既存の業務工程や承認フローにも変化が起きるケースがほとんどです。新たな体制や、工程に最適な基幹システム(ERP)の導入が合わせて検討されます。

業務フローに合わせて機能を細かにカスタマイズできるものから、中小企業様向けのものなど、ERPにもサービスによって違いがあるため、最適なものを検討しましょう。

おすすめBPR研修サービス

紹介したERPサービスは、BPR(業務改革)実現に必要となる基幹システムとなります。大前提として、BPRを正しく推奨することが求められるため、下記で紹介するような研修に参加し、BPRの進め方やノウハウについて学ぶ機会を持つこともおすすめです。

エム・アイ・アソシエイツ

現状の分析から、なりたい姿の設定方法まで、体験プログラムを用いながら学べます。

研修概要
 
詳細
 
内容 経営視点の強化、ケーススタディに沿った体験プログラム
日数 2日〜5日間
対象者 社内における業務改革の推進担当者、IT部門における上流工程担当者
費用 要問い合わせ

ビーエスピーソリューションズ

ITサービス提供者を対象にして、システム運用における業務改革をテーマに、業務改革の概念とその手法を学びます。

研修概要
 
詳細
 
内容 経営視点の強化、ケーススタディに沿った体験プログラム
日数 2日間
対象者 チームリーダー(経験目安年数4~10年、システム運用中堅社員育成セミナーレベルの知識保有者)
費用 90,000円(税抜)/人

NECマネジメントパートナー

経営課題のインプットからあるべき運用業務プロセスをゼロベースで考え、業務改革を企画提案するまでの流れを、ロールプレイ型に習得していきます。

研修概要
 
詳細
 
内容 ビジネス環境やニーズの変化に合わせて既存の運用業務を改革するための、企画立案の手法を学びます。
日数 2日間
対象者 IT関連の4年~10年程度の実務経験があること、ITIL(R)ファンデーションレベルの知識があることが望ましい。
費用 90,000円(税抜)/人

日本能率協会

業務プロセスの特性を構造的に捉え、本質的な改善を進めるとともに、情報システムを活用したより効果的・発展的な管理の仕組みのつくり方を学べます。

研修概要
 
詳細
 
内容 マネジメント力向上や継続的改善推進を実現する業務・情報システムの仕組みを習得します。
日数 2日間
対象者 事業部門の改善リーダー、改善スタッフ、経営企画、事業部門内企画担当、IT企画担当、会社を統括する部門の方々
費用 直接お問い合わせください

BPRは計画的に進めましょう

BPR(業務改革)は、既存の業務工程を抜本的に変え作業となるため、導入から定着まで労力がかかるものになります。事前に、事例や進め方、考え方を学び、BPRに基づいたERPの導入で、新たな業務工程を定着化させることが大切です。

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