VDI(デスクトップ仮想化)とは?シンクライアントとの違い・サービス比較
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- VDI(デスクトップ仮想化)とは
- VDIの仕組み
- VDIが再注目される背景
- シンクライアント・リモートデスクトップ・物理デスクトップとの違い
- シンクライアントとの違い
- リモートデスクトップとの違い
- 物理デスクトップとの違い
- VDIの方式
- VDI方式
- SBC方式
- HDI方式
- DaaS方式
- VDI導入の2つの選択肢を比較
- オンプレミス型
- DaaS(Desktop as a Service)/クラウド型
- VDIを導入する4つのメリット
- 情報漏えい対策
- コスト削減
- ワークスタイル変革
- 事業継続計画(BCP)対策
- VDI導入で失敗しないための5つの注意点・事例
- VDIのライセンス契約
- 仮想PCのレスポンス問題
- 不必要な最新機能
- バージョンの混在と運用管理が複雑化
- デフォルト設定でスタートした結果、問題だらけ
- VDIサービス(クラウド型)の比較
- Parallels Remote Application Server
- Amazon WorkSpaces
- VMware Horizon Cloud
- NEC Cloud DaaS
- IIJ GIO
- VDIシステム導入で気をつけるべきこと
- BOXILとは
VDI(デスクトップ仮想化)とは
VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)は、ユーザーが使用する端末(クライアント端末)の機能は必要最小限にとどめ、アプリケーション、データをサーバー上に集約し、処理を行う仕組みのことをいいます。
VDI(デスクトップ仮想化)では、手元の端末からネットワーク経由でサーバー側の自分の仮想デスクトップを操作します。よって、端末とネットワーク環境さえあれば、自分のコンピューターを持ち歩かずとも、さまざまな場所からログイン可能です。
VDIの仕組み
VDIは、サーバー側にクライアントの数だけハイパーバイザといわれる、OS・アプリケーション・データ領域からなる仮想マシン環境を整え、サーバーが処理を行うことによって、クライアントは通信・操作だけを集中して実行するという仕組みです。
これによって、サーバーとクライアント間は画面情報と操作情報のみのやりとりとなるため、データ転送量を低く抑えられ、サーバーの高性能化とあわせ、実用に堪えうる業務環境構築が可能になるのです。
「仮想化」という言葉のとおり、画面が自分の操作に応じて変化するので端末を普通に操作している感覚で使用できますが、実際にはサーバー側の画面をクライアント端末に転送しているだけなのでデータはクライアント端末側には残りません。
VDIが再注目される背景
働き方改革や事業継続計画の観点からVDIに注目が集まっています。
従来は会社の中で実施していたコンピューターによる業務が、今後働き方改革や緊急時の事業継続のために自宅やサテライトオフィスなどの社外で実施することが容易に想像されます。そして、従業員のコンピューターを社外に持ち出すと情報流出のリスクが高まります。
しかし、VDIを使用すれば、サーバー側で情報を管理、端末側にはデータが残らないのでデータの流出リスクを削減できます。
シンクライアント・リモートデスクトップ・物理デスクトップとの違い
VDIと混同しがちな、シンクライアント・リモートデスクトップ・物理デスクトップとの違いをそれぞれ解説していきます。
シンクライアントとの違い
VDIの話題になると、必ずといっていいほど登場する言葉に「シンクライアント」がありますが、これはVDIと何が違うのでしょうか?
シンクライアントとは、ハードディスクなどの記憶装置を搭載せず、最小構成のクライアント端末で業務可能にするシステムです。多くの処理はサーバー側で行われ、データもサーバー側に蓄積されます。
この解説だとVDIとシンクライアントの違いがわかりにくいかもしれません。それもそのはずで、VDIはシンクライアントシステムのうちのひとつなのです。
シンクライアントには、大きく「ネットワークブート型」と「画面転送型」があり、仮想デスクトップであるVDIは、このうちの画面転送型のひとつです。
次の記事では、シンクライアントについてより詳しく解説しています。
リモートデスクトップとの違い
リモートデスクトップではユーザー全体でサーバーOSを共有するので、ユーザーごとに個別のアプリをインストール、操作環境をカスタマイズできません。一方でVDIの場合はユーザーごとに操作環境を変更できます。
ただし、リモートデスクトップでは同時にログインしそうなユーザー分、違う環境の分だけリソースを用意すれば良いのに対して、VDIではユーザー全員分のリソースを用意しなければなりません。よって、リモートデスクトップよりもVDIの方が自由度が高い反面、コストも高くなりがちです。
物理デスクトップとの違い
物理デスクトップで作業をすると端末側で操作、データを編集して、保存するのも端末側となります。一方でVDIの場合は、クライアント側の端末で操作はしますが実際にはその情報をサーバー側にある仮想化デスクトップで処理して画面を転送しているだけなので、クライアント側には情報は残りません。
VDIはネットワーク環境がないと操作できず、サーバー側とデータの送受信をするため少しタイムラグが発生するかもしれない点では物理デスクトップに劣りますが、どの端末からでも自分のデスクトップにログインできて、データが流出する可能性が低いという点では優れています。
VDIの方式
VDIには環境の構築の仕方によって、VDI方式、SBC方式、HDI方式、DaaS方式の4パターンがあります。イニシャル・ランニングコストともに、VDI>SBC>HDI>DaaSの順番となります。
ただし、VDIはコストがかかる分だけ快適に操作ができて、性能で比較するとHDI>VDI>DaaS>SBCの順番になりがちです。4つの方式の違いについて解説します。
VDI方式
VDI方式は仮想PC方式とも呼ばれ、サーバー上にユーザーごとの仮想デスク環境を構築しそれぞれにOSをインストールします。サーバーは共用していてもOSやアプリケーションは、ユーザーごとに変えられるので、自由な操作環境を構築させやすいです。
WindowsOSを使用する場合は、操作する端末ごとにVDAライセンス(バーチャル・デスクトップ・アクセス・ライセンス)が必要となります。
SBC方式
サーバーデスクトップ共有方式と呼ばれ、VDIは個別に環境が設定されているのに対して、SBC方式ではOSやアプリケーションを複数のユーザーで共有します。
ユーザー同士で環境を共有する分だけ自由度は低くなりますが、少ない物理的なリソースでも効率的に仮想化環境が構築できます。また、RDSライセンス(リモートデスクトップサービスライセンス)は比較的安価で、総じてVDI方式よりもコストを圧縮した導入が可能です。
HDI方式
ホスト型デスクトップインフラ方式と呼ばれています。VDIやSBCのようにサーバー内で仮想化したデスクトップ環境を構築するのではなく、ユーザー一人ひとりに物理PCとOS、アプリケーションなどを割り当てます。
ユーザーごとに自由に環境設定できるだけではなく、それぞれが占有のPCにアクセスして操作するので、同時に多数の従業員が仮想化デスクトップで作業をしても快適です。
コストもリモートPCアレイであれば、VDIやSBCよりも抑えられることが多いです。
DaaS方式
パブリッククラウド方式とも呼ばれています。VDIに必要な物理サーバーをパブリッククラウドに置き換えた方式です。サーバーに対する初期投資や管理に伴うコストが発生せずに、すぐに使用できるため手軽に導入できます。
コストについては一定以上の規模で運用、専門人員を配置できる場合は物理サーバーを自社で用意した方が長期的には安くなるかもしれませんが、小規模事業者が導入するのならばコストパフォーマンスが高いと考えられます。
VDI導入の2つの選択肢を比較
VDIを導入する際には、次の2つの選択肢があります。
- DaaS/クラウド型
- オンプレミス型
同じVDIを実現するため、DaaSとオンプレミス型で基本的な仕組みに違いはありませんが、大きく異なる点はシステムの運用形態です。
オンプレミス型
オンプレミス型は、VDIのために自社データセンターにサーバーを構築し、独自に運用を行う仕組みです。データセンターを自社に構えるため、自社ですべて完結する型になります。
オンプレミス型のVDIでは、環境構築にコストと期間を要するとともに、常にサーバーチェックが必要であり、そのための手間とコストの負担が求められます。
DaaS(Desktop as a Service)/クラウド型
DaaS/クラウド型VDIは、近年登場してきた型であり、プロバイダーのデータセンターにサーバーを委託する形をとります。専門のサービスプロバイダーが、環境構築や可用性、パフォーマンスを常時監視するため、上述したオンプレミス型の課題を解決できるだけでなく、コストを変動費化できます。
また既存のクライアント端末が使えなくなっても、代替機に仮想マシンイメージを配布すれば、すぐにデスクトップ/アプリケーション環境を用意できます。
システム運用をプロバイダーへアウトソースできるようになることがDaaSの最大の意義です。
しかし、オンプレミス型と比較して、自由に設定変更ができないというデメリットがあり、従量課金制のため、使い方次第ではオンプレミス以上にコストがかかる場合もあります。
DaaSについては、次の記事でも詳しく解説しています。
VDIを導入する4つのメリット
VDIを導入し、社内に分散している多数のクライアント端末をサーバー側で集中管理することで、運用コスト削減、セキュリティ強化や、ユーザーの生産性向上にも寄与できます。
情報漏えい対策
クライアント端末側にデータを一切残さない安全な運用が可能です。端末が紛失や盗難に遭った場合でも、情報漏えいを防ぐことができます。
デスクトップの集中管理により、確実なパッチ適用や不正アプリケーションの排除など、セキュリティポリシーを徹底できます。
コスト削減
従来、PCごとに行っていたソフトのインストールや更新、トラブル対応などをサーバー側から集中的に行うことで、管理者の負担が大幅に軽減され、コスト削減にもつながります。
マスターとなる仮想デスクトップイメージを用意し、目的に合わせてカスタマイズすることで、ユーザーごとに最適な環境を提供できます。
ワークスタイル変革
PCに限らず、スマートデバイスを使ってどこからでも利用できるVDIは、生産性の向上や新たなビジネス機会創出に取り組む企業にとって、ワークスタイル変革効果が注目されています。
事業継続計画(BCP)対策
災害時に従業員が出社できない場合でも、自宅作業が可能になるほか、既存のクライアント端末が使えなくなっても、場所を問わず業務を遂行できることで、災害対策や事業継続計画(BCP)にも有用というメリットがあります。
VDI導入で失敗しないための5つの注意点・事例
VDIを導入する際の注意点は、実は多く存在し、利用状況によって異なることが多いです。多発する問題をいくつか取り上げていきます。
VDIのライセンス契約
VDIを導入するうえで考慮しなければならないのがライセンスです。VDIに関するライセンスとしてVDAライセンス、RDS CALの2種類のライセンスがあります。
VDAライセンスとはVirtual Desktop Accessライセンスの略称で、Windows OSを使用、VDI環境では契約が求められます。接続するデバイスの数に応じて契約しなければなりません。
RSC CALとはRemote Desktop Services Client Access Licenseの略称で、SBC環境での契約が求められます。必要な契約数はセッション数に応じて変化します。
費用はVDSライセンス>RSC CALとなります。
仮想PCのレスポンス問題
VDIを導入する際によく起こる問題の一つに、仮想PCレスポンスの悪化があり、サーバーへのアクセスが集中すると仕事にならないというケースがあります。
その場合、製品カタログなどのデータを鵜呑みにして、仮想サーバーのサイジングを行っていることが多いので気をつけましょう。
不必要な最新機能
VDIを提供する企業は多く、ソフトウェアベンダー各社は競うように、新しいバージョンや機能を投入しています。
こうした画期的新機能に惹かれて導入してみたところ、実際にはほとんど必要ではなかったり、使えなかったりするケースがよくあるので注意が必要です。
バージョンの混在と運用管理が複雑化
VDIのような大がかりなシステム導入の場合、まずは一部の部門でテスト導入し、対象を拡大していく方法が一般的です。
その結果、サーバーOSや仮想化ソフトウェアなどのバージョンが、複数混在する状況になり、障害や都度再設計による手間、機器やスペースなどの無駄を発生させる原因になりえます。
デフォルト設定でスタートした結果、問題だらけ
VDIのシステムは、構築した標準設定ではすぐには使えず、多岐にわたるポリシー設定のほか、画面転送をはじめとした専門的なチューニングが欠かせません。
特に初期設計・設定ミスは、プロジェクトの大幅遅延や導入後の低パフォーマンス、管理部門の負荷増大など深刻なダメージをもたらすので要注意です。
VDIサービス(クラウド型)の比較
Parallels Remote Application Server - 株式会社日本ビジネスデータープロセシングセンター
- Amazon Web Services、Microsoft Azureを介して仮想デスクトップへ接続
- 接続元端末からのファイル転送、クリップボード操作を制御
- マルチモニター対応
Parallels Remote Application Serverは、デバイスの種類を問わず、仮想デスクトップやアプリケーションに接続できるVDIソリューションです。
接続先端末とアクセス用端末間のファイル共有や、端末ごとに利用できるアプリケーションを制御可能です。また、接続先の機器構成に関係なくマルチモニターを利用でき、画面解像度を手元端末のモニター構成へ自動調整してくれます。
Amazon WorkSpaces
- AWS(Amazon Web Service)で稼働するDaaSソリューション
- マネジメントコンソールでの簡単操作
- 月単位・時間単位での課金
Amazon WorkSpacesは、強固なセキュリティで守られたAWS環境で稼働する、DaaSベースのVDIソリューションです。
サポートされているデバイスなら、時間と場所を問わずにWindowsシステムへアクセスできます。マネジメントコンソールを数回クリックするだけで、高品質なデスクトップ環境を実現します。
月単位・時間単位での課金システムは、起動したAWSに対してのみ行われ、コスト削減も期待できます。
VMware Horizon Cloud
- クラウド・オンプレミス両方に対応
- ワークスペースへのセキュアなアクセス
- 従量課金制のサブスクリプションモデル
VMware Horizon Cloudは、DaaSベースのクラウド環境、オンプレミス環境もしくはその両方で、システム構築を可能とするVDIソリューションです。マルチテナント型アーキテクチャを採用し、最適化されたデスクトップ環境を提供します。
クラウド利用の場合、インフラ部分の提供がサービスに含まれているため、強固なセキュリティを実現しつつも初期費用を抑えることができ、従量課金モデルを採用していることから、小規模で始めて拡張していくのも簡単です。
NEC Cloud DaaS
- 初期費用不要で20台からスタート可能
- VDI・SBCの選べる仮想方式
- 豊富に用意されたオプション
NEC Cloud DaaSも、DaaS型VDIソリューションを提供しています。災害対策の複数データセンター管理、他社SaaSサービスとの連携、強固なセキュリティなど、時間と場所を問わないデスクトップ環境が実現できます。
ユーザーに応じたさまざまなデスクトップ環境を実現するVDI、単一の環境を複数ユーザーで活用するのに最適なSBCなど、複数の環境をニーズに応じて選択でき、最小20台からのスモールスタートも可能です。
IIJ GIO
- 現行システム資産の移行をサポート
- 業務規模の拡張に柔軟に対応
- 同社システムを組み合わせた柔軟な拡張性
IIJ GIOは、仮想デスクトップ環境の提供だけでなく、アプリケーションの移行サポートやコンサルティングを含めたVDIサービスを提供しています。
事業展開にあわせてシステム拡張が柔軟にできるほか、基幹システムデータ基盤、クラウドストレージ環境、ゲートウェイセキュリティ環境など、同社が提供するクラウドシステムとも連携できます。
リモートワークをはじめとしたさまざまな環境に対応しています。
VDIシステム導入で気をつけるべきこと
VDIシステムは画期的であり、多くのメリットも持っています。導入検討の価値はありますが、多くの煩雑な手順があるため、専門家などにお任せするのも一つの手段でしょう。
また、導入してコスト削減につながるのか、セキュリティ向上につながるのか、効果をしっかり算出してから導入するようにしましょう。
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
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