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増える「脱炭素SaaS」、CO2排出量管理をクラウドで - マイクロソフトも参入

最終更新日:(記事の情報は現在から976日前のものです)
EUの「国境炭素税」導入計画や、日本政府のCO2排出量46%削減目標など、脱炭素社会へ向かう流れが強まっています。こうした状況に対応するには、マイクロソフトが発表したSaaS「Cloud for Sustainability」など、専用の排出管理サービスが有効です。

CO2マネジメントはより重要課題に

人間のさまざまな活動によって大気へ排出される二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の一要因とされています。国際連合(国連)も持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)で気候変動対策に言及し、CO2排出量の削減に積極的です。

特に欧州連合(EU)は排出量削減を目指し、多く排出する製品やサービスに「国境炭素税」を課す計画まで発表しました。民間企業でも、フォルクスワーゲン傘下の高級スポーツカーメーカーであるポルシェが、自動車部品の納入業者に部品製造時に再生可能エネルギーを使うよう強く求めるなど、脱炭素の動きが活発になっています。日本も同様で、政府が2030年度の排出量を2013年度比46%減とする方針を打ち出したほか、2050年のカーボンニュートラル達成を目指しています。

脱炭素の流れに背を向け続けることは、もはや不可能でしょう。企業としては、製品の製造や販売、サービス提供の過程で排出されるCO2の量を管理しなければなりません。排出量が多い場合は、排出量取引などを通じたカーボンオフセットで、カーボンニュートラルに近づくよう努力することになります。

マイクロソフトが“脱炭素SaaS”提供へ

CO2の排出量を抑えるには、事業活動のどこで、どれだけのCO2が排出されたか正確に把握することが必要です。とはいえ、多種多様なデータを集計したうえで、必要に応じて排出権を売買したりすることは、とても手間がかかります。

こうした作業を効率的に処理できるよう、マイクロソフトは7月、CO2排出量の管理用SaaS型サービス「Microsoft Cloud for Sustainability」を発表しました。

Microsoft Cloud for Sustainabilityは、さまざまなデータソースからCO2排出量を取得し、分析できるように集計するための企業向けSaaSです。詳細は明らかにされていませんが、ほかの各種システムと連携して排出データを自動的に集められる、としています。「データをExcelに手作業で入力することをやめ、データコネクタによるシームレスなデータフローに移行」することで、データ収集作業の大幅な省力化が期待できそうです。

排出削減の目標を設定し、排出量が多く削減目標を満たせていない領域を特定する、といった分析も簡単に行えます。排出量の多い原因が特定できれば、消費エネルギーの削減、再生可能エネルギーの利用、排出量取引によるカーボンオフセットといった対策が実行しやすくなります。

そして、目標達成までの進捗状況をレポートにする機能も備えています。今後、顧客からCO2排出量の目標を示され、報告を求められる場面が増えるはずです。Microsoft Cloud for Sustainabilityを利用すれば、レポート作成も容易になると思われます。

増えるCO2排出量管理システム

CO2排出量を管理するシステム自体は以前から使われていたものの、IT業務でクラウドサービスを利用することが増えている影響か、SaaS形式で提供される排出量管理システムも目立ちます。

以下では、最近発表されたCO2排出量管理に関係するサービスをいくつか紹介しましょう。

パーセフォニ:ERPクラウドで排出管理

米国のパーセフォニ(Persefoni)は、企業向けにCO2会計・管理プラットフォームSaaSを提供しています。

このサービスは、CO2排出を管理するためのERPクラウドサービスで、排出にかかわるデータの測定や分析、予測、報告などの処理が可能です。CO2関連の取引データをリアルタイムに収集し、脱炭素に向けた取り組みに役立てられる、としています。

日立:再生可能エネルギーを見える化

日立製作所は2021年1月、再生可能エネルギーの使用状況を見える化するシステムを発表しました。

企業の使用している建物や設備、サービスごとに、再生可能エネルギー由来の電力で稼働しているかどうかを調べられます。スマートメーターとブロックチェーンを活用することで、建物や設備という単位での集計が可能だそうです。

そのため、企業全体の再生可能エネルギー利用量が不十分だとしても、細かく利用状況を分析することで、利用推進に向けた施策が実施しやすくなるでしょう。

A.L.I.:排出量の小口リアルタイム取引

A.L.I. Technologies(A.L.I.)は、CO2排出量を可視化できるSaaSプラットフォーム「zeroboard(ゼロボード)」を、2021年7月よりベータ提供すると公表しています。中小企業の導入を想定していて、月額料金は数千円からで済むとしています。

CO2排出量のデータを集計して可視化するだけでなく、カーボンオフセットまで一貫して行えるそうです。しかも、A.L.I.の持つ排出量に関する在庫を活用することで、小口のリアルタイム取引を実行可能としました。A.L.I.が挙げた例によると、タクシーの利用や商品のオンライン購入といったような小さな経済活動によるCO2排出も、「その場でオフセットする」ということまでできるそうです。

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三菱重、日本IBM:CO2自体の取引を容易に

三菱重工業と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、CO2そのものの取引に関するサービス「CO2NNEX」を提供する計画です。

CO2NNEXは、CO2を回収して貯留や転換利用する処理「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CCUS)」を実行するにあたって、関連する一連の業務を管理するプラットフォームです。CO2を流通させるCCUSバリューチェーンと総量や移送量、購買量、貯留量などを可視化すると同時に、証跡を残して検証も可能にします。排出したい企業と購入者のマッチングも、プラットフォーム上で行えます。

脱炭素社会実現へSaaS活用を

脱酸素社会へ向かう流れは、世界的に強まっています。排出量と吸収量のバランスをとることで、見かけ上CO2排出を相殺するカーボンニュートラルどころか、CO2排出を完全になくすカーボンゼロや、CO2吸収の方を多くするカーボンネガティブを目標にする企業も出てきました。

この状況へ対応するには、CO2排出量を削減するほか、排出権購入でカーボオフセットして計算上の排出量を減らす、といった行動が考えられます。さらに、CO2を回収して大気に放出されないよう貯留する「Carbon dioxide Capture and Storage(CCS)」や、前出のCCUSなど、より積極的な取り組みも必要になっていくでしょう。

CO2排出の管理や取引に関する処理は、複雑さを増していきます。マイクロソフトの言うとおり、Excelによる排出データ管理はすでに困難です。専用サービスの利用を検討する段階になってきました。

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