文書管理マニュアルの作り方!作成時の注意点やポイント
文書管理マニュアルとは?
文書管理マニュアルとは、文書を取り扱う際のルールを決めたマニュアルのことです。文書の作成から承認、管理の方法などの手順をマニュアル化したものと考えましょう。文書に関わる業務の具体的なフォーマットや手順を誰もがわかるように一般化したものです。
文書管理規程との違い
文書管理マニュアルと文書管理規程の違いは、手順書かルール書かという点です。
文書管理マニュアルは前述のとおり文書業務に関する具体的なフォーマットや手順を決めたものです。文書管理マニュアルを言い換えるなら作業マニュアルであり、実際の業務はこのマニュアルに沿って行われます。
一方で、文書管理規定は文書に書くべき内容や文書の申請から承認までのルートなど、会社で行われる文書業務のルールを定めたものです。文書管理規程に反しない書類を作って管理するための手順書が文書管理マニュアルです。
文書管理マニュアルの作り方
文書管理マニュアル作成は、次のような手順で進めると適切なマニュアルを作成しやすいです。
- 文書のライフタイムサイクルを理解する
- 文書業務の課題を洗い出す
- 文書管理のルールを策定する
- ルール管理者や適用範囲を決定する
- 社内に周知し運用する
- 作成が難しい場合はひな形を利用する
それぞれについて、ステップごとに確認しましょう。
文書のライフサイクルを理解する
文書の管理マニュアル作成の前に、文書のライフサイクルを理解することが重要です。文書のライフサイクルとは、文書の発生から破棄までを6段階に分けたサイクルのことです。6段階はそれぞれ次のように考えられます。
- 発生
- 伝達
- 活用
- 保管
- 保存
- 破棄
文書を自身が作成する、取引先から受け取るなどした場合に文書が「発生」します。発生した書類を社内で承認作業に回す、取引先に送るなどのフェーズが「伝達」です。発生や伝達直後の文書は一時的に「保管」され、検索されたり加工されたりして「活用」されます。役目を終えた文書はそのまま「破棄」されるか、社内ルールや法律にのっとって「保存」されます。
この文書のライフサイクルを理解することで、文書の管理マニュアル作成時にどのフェーズにおける作業を手順化したものか理解しやすくなるでしょう。
文書業務の課題を洗い出す
文書のライフサイクルを理解したあとは、実際の文書業務における課題の洗い出しが必要です。
文書の発生から破棄、もしくは保存までに問題が発生している箇所、発生する可能性のある箇所を徹底的に洗い出します。ここでの洗い出しに不足があるとあとからルールを変更しなければならないため、十分な時間をとって想定できる問題はすべて出しきりましょう。
誰が作成しても同じ文書を作成できる状態か、文書が紛失したり流出したりするリスクはないか、機密情報に誰もがアクセスできる保存方法ではないかなど、このタイミングであらゆるリスクや問題を洗い出します。
文書管理のルールを策定する
問題が洗い出せたら、その問題を解決するためのルールや手順の策定に入ります。
文書発生の段階において、それぞれが異なったフォーマットで作成していることで承認業務に大きな手間が発生している場合には、フォーマットの統一や文書に記載する内容をマニュアルで設定します。文書の紛失が頻繁に発生して問題となっている場合には、文書の保管や保存に対しても手順化を行い、紛失が発生しないような手順を考えなければなりません。
企業によって文書業務で発生している問題はそれぞれ異なるため、抱えている課題を解決するようなフォーマットや手順を設定しましょう。
ルール管理者や適用範囲を決定する
文書のフォーマットが統一され、作成や保管の手順が策定できたらフォーマットは誰が利用するべきか、ルールはどのようなタイミングで誰に適用されるかなどを明確に定めましょう。同様に、文書管理マニュアル自体やルールを誰が責任をもって管理するかも決めなければなりません。
こういったことが明確になっていない場合、文書業務に関わる人が自分に関係あるのか判断できなくなることや、マニュアル自体の問題がエスカレーションされず、マニュアルの問題を放置する事態になりかねません。
このような事態を避けるためにも、ルールの管理者やマニュアルの適用範囲は明確に決定しましょう。
社内に周知し運用する
これまでの手順を通じてマニュアルが完成したら、社内に周知し運用を行います。法令を遵守しながら効率的に文書業務が行えるマニュアルができたとしても、従業員がマニュアルに従って業務を行わなければ無価値です。
従業員がマニュアルを正しく理解して適切に運用できるようになるまで、説明やサポートをしながら浸透させる必要があります。実際に運用する中で、より効率的な運用について提案がある場合や、マニュアルに問題があると気付く場合もあるでしょう。
そのような場合は速やかにマニュアルを改訂し、新しいマニュアルとして運用を続けましょう。マニュアルは作成することが目的ではなく、作成し運用するところまでが重要であると考え、常に改善する意識をもって運用しましょう。
作成が難しい場合はひな形を利用する
いちからマニュアルを作成することが難しい場合は、ひな形を利用することも1つの手段として優れているものです。Webで検索すると多くの企業が文書管理マニュアルや文書管理手順書のひな型を提供しています。
これらのひな形をベースとしつつ、自社に必要な手順やルールを盛り込むことで自社業務の運用にマッチした文書管理マニュアルが作成できます。マニュアル作成をより効率的に進めたい場合は、ひな形を利用することもぜひ手段の1つとして考えておきましょう。
文書管理マニュアルを作るときの注意点
文書管理マニュアルを作るときにはいくつか注意点があります。たとえば、次のようなものが主な注意点やマニュアル作成のコツとして考えられます。
- ルールはできるだけ具体的に定める
- 文書関係者の権限を明確にする
- ルールはシンプルでわかりやすいものにする
- 紙文書と電子文書の扱いを明確にする
- 必要に応じてツールを利用する
ルールはできるだけ具体的に定める
文書管理マニュアル内でルールはできるだけ具体的に決めることを心がけましょう。マニュアルを作成するときには、すべての事象に対してできるだけ具体的に決めることが重要です。誰が・いつ・どのタイミングで・何を・どのように行うかのそれぞれが具体的に定まっていなければ、マニュアル作成の意図とずれた文書業務が行われてしまいます。
意図したとおりの文書業務を遂行してもらうためにも、マニュアルは誰に対してどのような手順での作業を求めているか、できるだけ具体的に決めることを心がけましょう。
文書関係者の権限を明確にする
作成された文書や取引先から受け取った文書に対して、関係者がどのような権限をもっているかを明確にすることも重要です。金額や内容に応じて誰がどのような処理を行えるのか明確にしていなければ、担当者がそれぞれの判断で文書やお金の処理を行ってしまう可能性もあります。
また、文書の閲覧や保存についても権限を明確にすることで余計なリスクを排除して文書業務に取り組める可能性が高いです。経営の重要な判断に必要な書類、社会的な影響が大きい情報が記載された書類、人事書類や個人情報が記載された機密性の高い書類などに、誰もが簡単にアクセスできる状態だとさまざまなリスクがあります。
必要な関係者のみが適切に閲覧できるように、マニュアルに閲覧・保存手順とともに明確なルールを定めておきましょう。
ルールはシンプルでわかりやすいものにする
ルールや手順をできるだけシンプルでわかりやすいものにすることは、できるだけ具体的にルールを定めることと同じくらい重要です。
ルールや手順がわかりにくく複雑な条件分岐をするものだとマニュアル利用者が判断に困るうえに、ヒューマンエラーが発生しやすい状態になります。非効率的な運用になってしまうばかりではなく、適切な文書業務ができない、誤った運用が常態化してしまう原因になりかねないため、ルールはできるだけシンプルでわかりやすいものになるよう心がけましょう。
紙文書と電子文書の扱いを明確にする
2022年に電子帳簿保存法(電帳法)が改正されて多くの企業で電帳法対応が進んでいます。電帳法への対応が過渡期である現在、紙文書と電子文書を混合して使っている企業も多いでしょう。それぞれの文書に対してどのような取り扱いをするべきか、明確に定めておくことも今の時期には重要です。
これまで紙で文書を作成し紙のまま管理してきた企業において、電子データで文書を保存する方法は慣れない業務です。ミスが発生しやすい慣れない業務を行う中で、紙文書と電子データの文書の扱いがマニュアルで明確に定まっていないと、よりミスをしやすい状況になります。
このような事態にならないためにも紙文書と電子データが混在する場合は、しっかりと紙文書と電子データ文書の扱いを明確に定めておくように心がけましょう。
必要に応じてツールを利用する
文書管理のマニュアルを作成してもなかなか文書業務を効率化できない場合には、文書管理システムの利用も検討しましょう。文書管理システムを利用すれば、手作業で行わなければならなかった業務を自動化できたり、非効率的だった紙ベースでの文書業務が効率化できたりするなどメリットが多いです。
マニュアルが非常に優れたものだとしても、手作業で文書業務を行う場合にはヒューマンエラーがつきものです。システムであればそのような手作業での文書業務を最低限にできるため、マニュアルに従った文書業務を効率的に行えます。
自社に合う文書管理システムがわからない人は、次の記事も参考にしながらシステム導入を検討してください。
文書管理マニュアルを作るべき理由
文書管理マニュアルは業務をより効率的に運用するため、法律を守りながら業務を行うためなどの理由があります。それぞれ詳しく確認します。
業務をより効率的に運用するため
文書管理マニュアルが作成され、マニュアルに沿った運用をすることでスムーズな文書業務が行われるようになることが作るべき理由の一つです。
企業では多くの文書や書類を業務に利用します。それらがバラバラのフォーマットで運用されたり、管理方法が統一されていなかったりすると社内で大きな混乱が発生するでしょう。
たとえば、営業担当がそれぞれの独自フォーマットを用いて申請を行った場合、承認者はぱっと見で自身が何の書類を見ているのかわからなくなり承認作業に余計な手間がかかります。また、文書の管理方法が統一されていなければそれぞれが自身の関わった書類を独自の手法で管理してしまい、書類の検索が難しくなることや場合によっては紛失することもあります。
書類業務の非効率化を避けるためにも、文書管理マニュアルは作成すべきです。
法律を守りながら業務を行うため
文書管理マニュアルを作成することで、すべての従業員が法律を守りながら文書業務を行えます。
一部文書は法的に作成や保管が義務付けられている場合があります。法的に一定期間の保管を義務付けられている文書の例は次のとおりです。
- 帳簿や税金に関する書類
- 株主総会の議事録や取締役会の議事録 など
マニュアルがない状態では、すべての社員がそれぞれに法律を意識しながら書類を作成しなければなりません。しかし、あらかじめマニュアルで法律を守れるような書類の作り方を手順としてまとめておけば、従業員はマニュアルに従って書類を作成・管理するだけで、意識せずとも法令遵守をしながら文書業務ができます。これが文書管理マニュアルを作成する理由の1つです。
文書管理マニュアルで業務を効率化しよう
文書管理マニュアルとは、企業内で文書の取り扱いルールを決めたマニュアルのことです。文書管理マニュアルがあることでフォーマットを統一し、作成・回覧・保存などの文書管理業務を全従業員が効率的に、また法令に違反しない形で行えることがメリットです。
しかし、マニュアルを作成してもなかなか文書業務がうまく回らない企業においては、文書管理システムの導入も検討の余地があります。
必要に応じて文書管理システムの導入も検討しながら、自社に合う文書業務の運用方法を見つけましょう。
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