eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)が日本で普及しない理由と課題とは

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記事の情報は2020-04-08時点のものです。

対戦型コンピューターゲームで競う「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」。2018年8月のアジア大会では公式公開競技にも採用され、2024年にはオリンピックでの採用も検討されています。世界では多くのeスポーツ大会が開かれ盛り上がっているのに対して、日本では認知度も低く普及していません。eスポーツの問題点や日本における課題は何なのでしょうか。歴史や現状を見ながら紐解きます。
eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)が日本で普及しない理由と課題とは

eスポーツとは

eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略語で「イースポーツ」と読みます。

eスポーツはコンピューターゲームを複数のプレーヤーで対戦し、スポーツと同様に勝ち負けを競う競技で、世界規模の大会もあれば、プロが存在する世界でもあります。

世界の競技人口は1億人以上と言われており、観戦者も含めると3億人を超えるという声もあります。

コンピューターゲームとの違い

eスポーツの競技種目には格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズをはじめとした人気タイトルも含まれます。

eスポーツはただテレビゲームをプレイする感覚とは異なり、世界中で正式な大会も開催され多額の賞金も用意されています。プロ選手として活躍する人も多数。また、YouTubeをはじめとした動画サイトでの「観戦」も人気があります。

eスポーツの幅広い競技種目

具体的には、eスポーツでは次のようなカテゴリのゲームタイトルで戦います。

  • FPS(ファーストパーソンシューティング)
  • TPS(サードパーソンシューティング)
  • RTS(リアルタイムストラテジー)
  • MOBA(マルチプレイオンラインバトルアリーナ)
  • 格闘ゲーム
  • スポーツゲーム
  • レーシングゲーム
  • パズルゲーム
  • トレーディングカードゲーム
  • MMORPG
  • オンラインストラテジーゲーム

eスポーツの歴史

日本ではeスポーツが取り上げられるようになったのは比較的最近なので、新しくつくられた文化だと思っている人が多いかもしれません。実は世界的にみるとwスポーツは30年以上の歴史があります。  

年代 事象
1980年代 コンピューターゲームが誕生
1990年代 欧米ではPGL、CPLなどプレイヤーのプロ化
2000年 「eスポーツ(e-sports)」という単語の誕生
WCGC(World Cyber Games Challenge )開催
2003年 ESWC(Electronic Sports World Cup)開催
2006年 OCA主催第2回アジア室内競技大会で「eスポーツ」が正式種目入り
2007年 日本eスポーツ協会設立準備委員会の発足
2011年 第1回eスポーツJAPAN CUP開催
2015年 日本eスポーツ協会(JeSPA)設立
e-sports促進機構設立
2016 年 日本プロeスポーツ連盟設立
2018年 日本eスポーツ協会、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟が合併し、日本eスポーツ連合(JeSU)設立
アジア大会2018公式公開競技に採用

日本eスポーツ連合の設立により、日本でもプロライセンスの発行が進められています。また各地でeスポーツのイベントや大会が開催されており注目度も上昇しています。

World Cyber Games(ワールドサイバーゲームズ)とは

韓国企業World Cyber Games, Inc.が開催する国際的なeスポーツ大会。サイバーゲームフェスティバルとも呼ばれています。

毎年数多くのeスポーツ大会が開かれるなかでも、世界最大規模の大会の一つです。

ESWC(Electronic Sports World Cup)とは

フランスの企業ゲームズ・ソリューションが運営するeスポーツ大会です。

各国の予選を勝ち上がった選手がグランドファイナルに出場でき、各ゲームの上位入賞者に賞金が与えられます。これまでの総賞金総額は1,721,000ユーロ(2010年時点)にまでなっています。

eスポーツの始まり

eスポーツの始まりは1980年代です。この頃にコンピューターゲームが誕生し、数多くの大会が開催されました。このときにはまだeスポーツのプロという概念はありませんでした。

1997年に初めて、eスポーツのプロフェッショナルイベントとしての競技会が開催されました。これをきっかけに大会の規模や賞金の増額などが起こり、競技として拡大していきました。

eスポーツはいつ日本へ?

日本でも1980年代にはコンピューターゲームの大会がありました。ただeスポーツという単語が日本で使われ始めたのは2000年になってからのことです。

2007年に日本eスポーツ協会設立準備委員会が発足しました。2010年には人気ゲーマー・梅原大吾氏が企業とスポンサー契約を結び“プロゲーマー”に。すでに人気選手でしたがさらに認知度もあがり、日本のeスポーツ発展に大きく貢献しました。

海外でのeスポーツの普及の背景

他方、海外でのeスポーツの歴史はやや異なります。海外の方が日本よりも早くeスポーツが普及した背景や歴史を解説します。

「Game」という単語の捉え方

日本でゲームというと遊び・娯楽の文脈が強いものの、海外ではGame(ゲーム)という単語は「スポーツの試合」や「勝負」を意味する言葉として使われています。

早くからオンラインPCゲームが流通していた

海外は日本と比べて早くからオンラインPCゲームが流通しており、常にオンライン上の誰かと勝負するという習慣があったため、競技としてのeスポーツ受け入れにも抵抗感がなかったようです。

eスポーツがビジネス化

海外ではさらに、大会運営側がスポンサーの協賛や選手の参加費、観戦料を賞金にすることで、選手がeスポーツをビジネスとし生計を立てられるようにしました。“賞金稼ぎ”という野心を利用したビジネスを形成したことが普及のスピードを加速したとも考えられます。

日本でeスポーツの普及が進まない理由とは

任天堂のような世界でも有名なゲームメーカーがあり、eスポーツ採用ゲームタイトルを多く有するにも関わらず、日本は他国よりeスポーツの普及が遅れているといわれています。日本ではなぜeスポーツが広まらないのでしょうか。背景には、「ゲーム」という言葉への意識や、大会や賞金に対する規制が挙げられます。

日本人の「Game」イメージ

日本では「Game(ゲーム)」という言葉に対して「遊び」というイメージが強く、スポーツとして捉えるのに抵抗がある人が多いと考えられます。

オンラインゲームへの参入遅れ

日本ではコンシューマーゲーム機(家庭用ゲーム機)の人気が長く続いたため、オンラインPCゲームの普及が遅れたともいわれています。このことをeスポーツ普及に出遅れた理由の一つとする意見もあるのです。

賞金を巡る法規制

もう一つ重大な理由が、法規制です。日本では賭博規制と景品表示法により、海外のように高額な賞金を出すのが難しく、選手の育成もままなりませんでした。

この現状を打破しようとする模索も続いており、2018年2月に開催された「闘会議2018」では賞金総額2,815万円となる各タイトルの大会も行われました。ただし、とくに景品表示法を巡る問題は解決しておらず、海外と同レベルの賞金を出す大会は実現していません。

日本のeスポーツ普及への課題 

今後、日本でeスポーツが普及するにあたっては、次のような課題があると考えられます。

PRの不十分さ

日本では、まだまだeスポーツの認知度が高いとは言えず、海外と比べれば観客も少ないという現状があります。したがって、積極的なPRを通じて認知度をあげる活動も必要でしょう。

観客が増えればスポンサー企業も増えるかもしれません。

プロ選手の育成環境

日本でのゲームに対する意識の低さ、賞金の低さなどから、強いプロ選手を育成するのが難しい環境にあります。梅原氏をはじめすでに世界的に活躍している選手はいるものの、本格的に普及させるには、育成環境の整備が欠かせないでしょう。

eスポーツは世界で認められているスポーツ

世界で注目されている競技、eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)。対戦型のオンラインゲームで競うもので、2024年にはオリンピックの正式競技として採用される可能性もあります。

しかし日本では、著名なゲームメーカーやゲームタイトルがたくさんあるにも関わらず、普及が遅れているのが現状です。背景には日本での「ゲーム」に対するイメージや、法規制により高額賞金を出せないことなどがあるとされています。

この現状を打破し本格的な普及を目指そうと、2018年には3団体が合併した「日本eスポーツ連合」を設立。プロライセンスを付与するといった課題解決に向けた活動をしています。2018年、eスポーツは新語・流行語大賞の候補にも選ばれました。今後の発展が注目されます。