収入印紙が必要な契約書の種類と金額一覧!不要な場合や条件も
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収入印紙とは
収入印紙は印紙税を納付するために使用される証紙であり、ここでの印紙税とは、経済取引に関連する特定の文書(課税文書)の作成に対して課される国税です。
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストアなどで購入でき、金額に応じてさまざまな種類があります。この制度は、文書の作成行為自体に着目して課税する独特の仕組みをもっており、取引の安全性と信頼性が担保できる役割をはたしています。
収入印紙を適切に使用することは、法令遵守の観点からも重要であり、企業や個人の経済活動において欠かせない要素です。
収入印紙が必要な契約書の種類と金額一覧
印紙税法では、国税庁の発行している「印紙税額の一覧表」にて課税対象となる文書を20種類に分類しています。
これらの文書は性質や目的に応じて異なる税率が適用され、該当する契約書・書類に定められた金額の収入印紙の貼付が必要です。契約書に貼る収入印紙の金額がいくらになるのかを確認しましょう。
1号文書|不動産・権利・貸借・運送
「1号文書」として定められている、収入印紙を貼るべき契約書は次の4種類です。
不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
この種類の契約書は、高額な資産の譲渡に関するものが多く、経済的影響が大きいため、とくに注意が必要です。不動産売買契約書が最も一般的で、特許権や著作権といった無体財産権の譲渡契約書も含まれます。また、事業譲渡契約書も該当します。
これらの契約書では、取引金額が高額になることも多いため、印紙税額が高くなりがちです。とくに不動産売買契約書については、2014年4月1日から2027年3月31日までの間、印紙税の軽減措置が適用※されているので、最新の税率を確認しましょう。
※出典:国税庁「「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について」(2024年8月21日閲覧)
地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
地上権設定契約書や土地賃貸借契約書などが含まれる、土地の利用権に関する契約書がこれに該当します。これらの契約は長期にわたることが多く、経済的価値も高いため、1号文書として扱われます。
契約期間が長期の場合、印紙税額の算定基準となる「契約金額」の計算に注意が必要です。たとえば、月額賃料に契約期間の月数を乗じた金額が契約金額として計算されます。ただし、契約期間が定められていない場合や更新可能な場合は、特別な計算方法が適用されるため注意しましょう。
消費貸借に関する契約書
金銭や物品の貸借に関する契約書がこれに該当し、最も一般的なのは金銭消費貸借契約書で、ローン契約書もこれに含まれます。
貸借の対象が金銭の場合は契約金額が明確な一方、物品の場合は時価相当額を契約金額として印紙税額を決定します。なお、金融機関が作成する消費貸借契約書については、特別な税率が適用される場合もあるので注意が必要です。
また、保証契約書が消費貸借契約書と一体となっている場合、別途印紙税が必要になる可能性もあります。
運送に関する契約書
貨物運送契約書や旅客運送契約書など、物品や旅客の運送に関する契約書がこれに該当し、運送業者が作成する標準的な運送状も1号文書として扱われます。継続的な運送取引の基本契約書は、後述する7号文書として扱われる可能性があるので、契約の性質をよく確認しましょう。
また、国際運送に関する契約書の場合、為替レートの変動に注意し、適切な印紙税額を算定することが重要です。
1号文書の契約書における収入印紙の金額表
この1号文書の契約書に貼る収入印紙の金額は、契約金額によります。詳細な金額は次表のとおりです。
契約金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税※ |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 10,000円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 20,000円 |
5千万円を超え1億円以下 | 60,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
※第1号文書と第3号文書〜第17号文書のどちらにも所属する文書は、契約金額が1万円未満であっても非課税とはなりません。
2号文書|請負契約
2号文書で定められている契約書は「請負に関する契約書」であり、工事請負契約書や物品加工注文請書、広告契約書などが該当します。収入印紙の金額も契約金額によって、次表のように変わります。
契約金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税※ |
100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1,000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 10,000円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 20,000円 |
5千万円を超え1億円以下 | 60,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 400,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
※第2号文書と第3号文書〜第17号文書のどちらにも所属する文書は、契約金額が1万円未満であっても非課税とはなりません。
また、「建設工事の請負に関する契約書」に関しても、2014年4月1日~2027年3月31日までの間に作成されたものについては、印紙税の軽減措置が適用されています。不動産売買契約書と同じく、最新の税率を確認しましょう。
5号文書|合併や分割
5号文書は「合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書」であり、「会社法又は保険業法に規定する合併」に関する契約、または「会社法に規定する吸収分割契約又は新設分割計画」に関する契約のみです。
合併契約書は、2つ以上の会社が1つの会社に統合される際に作成される文書です。吸収合併と新設合併の2種類があり、それぞれの形態に応じた契約内容が記載されます。吸収分割契約書は、既存の会社が事業の一部を他の既存会社に移転する際に作成されます。新設分割計画書は、既存の会社が事業の一部を新しく設立する会社へ移転する際に作成される文書です。
これらの文書は、企業の資産・負債の移転、株式の割当、従業員の処遇など、重要な事項を定めるため、法的にも経済的にも大きな影響をもつのが一般的です。
そのため、印紙税法では一律40,000円といった比較的高額の印紙税を課しています。この固定金額は、取引の複雑さや重要性を反映したものといえます。
7号文書|継続的な取引
7号文書は「継続的な取引の基本となる契約書」であり、売買や請負、委任、寄託などの取引について、将来反復して行われることを前提とした契約書が該当します。たとえば、売買取引基本契約書や特約店契約書、代理店契約書・業務委託契約書・銀行取引約定書などです。
この種の契約書の特徴は、個別の取引条件を詳細に定めるのではなく、取引の基本的な枠組みや原則を定めることにあります。そのため、契約書に具体的な取引金額が記載されていないことも多く、この場合は一律4,000円の印紙税が課されます。
ただし、基本契約書に具体的な取引金額や期間が明記されている場合は、金額に応じて印紙税額が変動するので注意しましょう。また、基本契約書と個別契約書を別々に作成する場合も、それぞれに印紙税が課される可能性もあります。
なお、契約期間が3か月以内かつ更新の定めが記載されていない一時的な契約は、7号文書に該当しません。
12号文書|信託契約書
12号文書は「信託行為に関する契約書」であり、委託者が受託者に財産の管理や処分を委ねる契約が文書化された書面です。この文書は、不動産信託や金銭信託、有価証券信託など、さまざまな種類の信託に適用されます。
印紙税法では、信託行為に関する契約書(信託証書を含む)に対する印紙税額は一律200円と定められており、信託財産の価額や種類に関係なく固定金額が適用されます。
13号文書|保証契約書
13号文書は「債務の保証に関する契約書」であり、主たる債務者の債務を保証人が引き受けることを約束する契約書です。この文書には、連帯保証契約書や保証委託契約書なども含まれます。
印紙税法では、債務の保証に関する契約書に対する印紙税額は一律200円と定められています。ただし、主たる債務の契約書に併記されるものは除外され、非課税の対象です。つまり、独立した保証契約書を作成する場合にのみ、この印紙税が適用されます。
14号文書|金銭・有価証券の寄託契約書
14号文書は「金銭又は有価証券の寄託に関する契約書」であり、金銭や有価証券を他人に預ける契約を文書化した契約書です。この文書には、預金契約書、保護預り契約書などが含まれます。
こちらも印紙税法では印紙税額が一律200円と定められており、寄託物の価額や種類にかかわらず一定金額で適用されます。
ただし、継続的な寄託取引の基本契約書の場合は、7号文書(継続的取引の基本となる契約書)として扱われる可能性があり、この場合は4,000円の印紙税が課されるため注意しましょう。
15号文書|債権譲渡・債務引受けの契約書
15号文書は「債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 」であり、既存の債権を第三者に譲渡したり、他人の債務を引き受けたりする契約を文書化した契約書です。主に売掛債権譲渡契約書、債務引受け契約書などが該当します。
記載された契約金額が1万円以上の場合や、契約金額の記載がないものは、一律200円と定められています。また、記載された契約金額が1万円未満の場合は非課税です。
収入印紙が不要になる場合
契約書や領収書に収入印紙を貼付する必要がない場合もあります。次に、これらの具体的なケースについて詳しく説明します。ただし、印紙税法は改正されることもあるため、常に最新の情報を確認しましょう。
1万円未満の1号文書・2号文書・15号文書
1号文書や2号文書、15号文書については、契約金額が1万円未満の場合には収入印紙が要です。
ただし1号文書と、3号から17号文書の両方に該当し、1号文書に所属が決定される場合は、1万円未満でも非課税にはなりません。同様に2号文書と、3号から17号文書の両方に該当し、2号文書に所属が決定される場合も、1万円未満でも非課税にはなりません。
また、実際に契約金額が1万円未満だったとしても、契約金額の記載がない場合は、原則として200円の収入印紙が必要となります。
電子契約書
電子契約書は、紙の契約書と異なり、収入印紙を貼付する必要がありません。これは、印紙税法が「文書」の作成に対して課税するものであり、電子データは「文書」に該当しないためです。
電子契約書を利用することで、印紙税のコストを削減できるだけでなく、契約締結のスピードアップや保管コストの削減といったメリットもあります。
ただし、電子契約書を印刷して使用する場合は、「文書」となり印紙税が課される場合もあるため注意しましょう。また、電子契約と紙の契約を併用する場合の取り扱いについても、慎重に確認する必要があります。
非課税文書に該当する場合
印紙税法では、特定の目的や性質のある文書を非課税としています。たとえば、地方公共団体や特定の公益法人が作成する文書、国や地方公共団体に提出する文書の控えなどです。
また、特定の取引に関する文書(例:農業協同組合が組合員との間で行う取引に関する文書)も非課税とされています。さらに、身元保証に関する契約書も非課税です。
非課税文書に該当するかどうかは、取引の性質や当事者の属性によって判断されるため、専門家に相談することをおすすめします。
※出典:国税庁「印紙税法 | e-Gov法令検索」(2024年8月21日閲覧)
クレジットカード決済の場合の取り扱い
クレジットカード決済を利用した場合、通常の領収書とは異なる取り扱いとなります。クレジットカード会社が発行する利用明細書は、印紙税法上の「金銭又は有価証券の受取書」には該当しないため、収入印紙は不要です。
また、加盟店がクレジットカード会社に提出する売上票も、印紙税の課税対象外となります。ただし、クレジットカード決済であっても、別途領収書を発行する場合は、領収書に対して通常の印紙税ルールが適用されます。つまり、記載金額が5万円以上の場合は収入印紙が必要です。
オンライン決済やキャッシュレス化が進むなか、このような新しい決済方法に対する印紙税の取り扱いについては、最新の税務情報を確認することが重要です。
収入印紙の印紙税の節約方法
ここまでで紹介してきた印紙について、料金表からもわかるように、多くの契約者と契約する場合は収入印紙の費用が契約者にとって大きな負担になりかねません。
しかし、次のような方法を行うことで、収入印紙の印紙税を節約できます。
1. 電子契約書を利用する
印紙税のかかる契約書とは実物として「交付」されたものに限定されます。しかし電子的に作られて紙として出力されていないものは「交付」されたとはみなさないため、印紙税の対象ではありません。これにより、電子契約書で発行すれば収入印紙代はかからないことになります。
また、電子契約書では、「電子署名」を行うことで、電磁的な記録として保管されるため、押印の必要がありません。詳しくは次の記事で解説しているため、ぜひ参考にしてください。
2. 契約書の原本コピーを交付する
契約書を作成する際に原本へ収入印紙を貼付し、相手方には原本のコピーを交付することで、収入印紙は1通分だけで済むため印紙税を節約できます。この方法は、双方が同じ内容の契約書を保有する必要がある場合に有効です。
契約書は原本であってもコピーであっても、契約の効力は原則として同じです。そのため、一方が原本でもう一方がコピーで保管することにより、収入印紙代を節約することには何の問題もありません。
ただし、この方法を採用する際は次の点に注意が必要です。
- 原本とコピーの区別を明確にする
- コピーには「原本に収入印紙貼付済み」といった文言を記載する
- 原本の保管者や閲覧方法について、あらかじめ当事者間で合意する
コピーに「この写しは原本と相違ない」といった記載をすると、原本と同じだとみなされ、印紙を貼るべき対象になってしまいます。その他、場合によっては双方が原本を保持しなくてはならない場合もあるため、法的要件は十分に確認しましょう。
3. 契約書の金額を工夫する
3つめは、契約書に記載する契約金の書き方を工夫する方法です。たとえば請負契約書で「請負金額110万円(税込)」と記載されていると、この契約は110万円のものだと判断されて印紙は400円になります。
しかし、次のように記載の仕方を変えると、契約金は100万円だと判断されて印紙代は半分の200円になります。
請負金額 110万円(うち消費税等10万円)
請負金額 100万円 消費税額等10万円 合計110万円
大きな契約になれば印紙代も結構な金額になるため、契約書に記載する契約金額の書き方もよく考慮しましょう。
4. 印紙税の軽減措置を活用する
前述したとおり、特定の取引や期間においては、印紙税の軽減措置が設けられていることもあります。
2027年3月31日までの期間、不動産売買契約書や建設工事の請負契約書に対して、印紙税の軽減措置が適用されています。これらの措置を適切に活用することで、印紙税を大幅に削減可能です。
ただし、軽減措置は一時的なものであったり、特定の条件を満たす必要があったりするため、常に最新の税制情報を確認しましょう。
5. 契約書の分割や統合をする
契約内容を適切に分割または統合することで、印紙税を節約できるかもしれません。
たとえば、高額な一括契約を複数の小額契約に分割することで、全体の印紙税額を抑えられます。逆に、複数の関連する契約を一つの契約書にまとめることで、印紙税を節約できる場合もあります。
ただし、恣意的な分割や統合は、税務上の問題を引き起こすかもしれません。また、契約の管理や執行にも影響を与える可能性があるので、法務部門や関連部署と十分に協議したうえで実行しましょう。
印紙税法の概要と課税の仕組み
印紙税法は1899年に制定され、1967年に全部改正された法律で、課税文書の作成に対して課税する仕組みを定めています。
この法律は、課税対象となる文書の種類、税額、納付方法などを規定しており、課税の仕組みは文書の性質と記載金額にもとづいて決定されます。印紙税は、文書作成時に収入印紙を貼付することで納付される税制です。
この仕組みにより、取引の透明性が確保され、経済活動の安定化に貢献しています。また、印紙税法は時代の変化に応じて改正され、電子契約書の普及に伴う対応も行われています。
収入印紙を契約書に貼る必要性と法的義務
しかし、なぜ契約書を作成するうえで、国に税金を納める必要があるのでしょうか。平成17年の国会では、当時の首相であった小泉純一郎氏が次のように答えています。
「印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であり、いわゆる流通税の一つとして、現在においても、我が国の税体系及び税収面において基幹税目を補完する重要な役割をはたしていると考えている。」
※出典:参議院「印紙税に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院」(2024年8月21日閲覧)
このように、印紙税は経済取引の背後にある利益と、文書作成による法律関係の安定化に着目しています。つまり、収入印紙を貼ることは、取引の正当性と安定性を国が認めることと同義です。
これにより、契約当事者間の信頼関係が強化され、万が一の紛争時にも法的保護を受けやすくなります。また、印紙税の納付は、社会的責任をはたすことにもつながり、企業や個人の信用力向上にもつながります。
よって収入印紙の貼付は、単なる税負担ではなく、取引の安全性を担保する重要な行為です。
収入印紙の貼付場所
収入印紙の貼付場所は文書の種類によって異なりますが、一般的には文書の表面の見やすい位置に貼ることが求められています。貼付の際は、印紙が剥がれないように糊付けし、文書の記載内容を隠さないよう注意が必要です。
印紙を貼った後は、印紙の彩紋(さいもん)と契約書の記載にまたがるように判子を押すか、署名をして消印する必要があると、法第8条第2項にて定められています。これは、印紙の再使用を防ぐためです。
正しい貼付場所と方法を守ることで初めて、印紙税の適切な納付を証明し、文書の法的有効性を確保できます。
領収書に貼る場合
領収書に収入印紙を貼る場合、一般的に右上の空白部分に貼ることが多いです。しかし、貼付場所が法律で厳密に位置が定められているわけではありません。そのため、もし貼る場所の記載がない場合は、何も書かれていない空いているスペースに貼れば問題はありません。
ただし、領収書の記載内容を隠さないように注意しましょう。また、領収書の控えがある場合は原本にのみ印紙を貼り、控えには「原本に課税済み」のように記載します。
契約書に貼る場合
契約書に収入印紙を貼る場合、一般的に表紙や契約書本文の冒頭部分の余白に貼ることが一般的です。ただし、契約書の内容や署名欄を隠さないような注意が必要です。
複数ページある契約書の場合、通常は最初のページに貼りますが、最終ページに貼ることもあります。重要なのは、契約当事者全員が印紙の存在を確認できる位置に貼ることです。
複数枚の印紙を貼る場合の注意点
高額の契約書のように、複数枚の印紙を貼る必要がある場合は、いくつかの注意点があります。
まず、印紙は重ならないように並べて貼りましょう。これは、各印紙の金額が明確に確認できるようにするためです。
また、印紙の合計金額が正確な印紙税額になるよう注意しましょう。たとえば、10,000円の印紙税が必要な場合、200円の印紙を50枚貼るのではなく、10,000円の印紙1枚を貼るのが正しい方法です。消印も各印紙にまたがるように行います。
結論としては200円の収入印紙を50枚貼っても法的な問題はありませんが、契約書の場合は別の紙に50枚貼ってすべてに割り印をし、契約書と一緒の綴りにする必要があります。
複数枚の印紙を使用する場合は、計算ミスや貼り忘れがないよう、複数人でチェックしましょう。
契約書に収入印紙が必要な事例
次に、日常業務でよく作成する契約書は収入印紙を貼る必要があるのか、いくらの収入印紙を貼るのかについて、具体的な例を3つほど挙げて説明します。
収入印紙が必要な契約書はイメージが湧きにくい部分もあるため、具体例を踏まえながら理解を深めましょう。
業務委託契約書の場合
業務委託契約書は、典型的な「7号文書」である「継続的な取引の基本となる契約書」に該当します。この場合は契約金額にかかわらず、一律4,000円の収入印紙が必要です。
たとえば、月額10万円で1年間の業務委託契約を結ぶ場合も、月額100万円で5年間の契約を結ぶ場合も、同じく4,000円の収入印紙を貼付します。
ただし、契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがない場合は7号文書に該当しないため、印紙税は不要です。
広告契約書の場合
広告契約書は「2号文書 請負に関する契約書」に該当します。この場合、請負代金の金額に応じて印紙税額が変動します。
具体的には、契約金額が1万円以上10万円以下の場合は200円、10万円を超え100万円以下の場合は400円、以降段階的に増加し、契約金額が50億円を超える場合は最高で600,000円の印紙税が必要です。
たとえば、100万円の広告契約を結ぶ場合は400円の収入印紙を、1億円の広告契約を結ぶ場合は100,000円の収入印紙を貼付します。
賃貸借契約書の場合
賃貸借契約書の取り扱いは、賃貸の対象によって異なります。建物や機械の賃貸借契約書(リース契約書を含む)は、印紙税法上の課税対象とならない「不課税文書」に該当するため、収入印紙は不要です。
たとえば、オフィスビルの賃貸契約書や、コピー機のリース契約書には印紙を貼る必要がありません。
一方、土地の賃貸借契約書は「1号文書」に該当し、課税対象となります。土地の賃貸借契約書の場合、契約金額(賃料総額)に応じて印紙税額が決まります。
たとえば、月額10万円で2年間の土地賃貸借契約(総額240万円)を結ぶ場合、2,000円の収入印紙が必要です。
印紙税に関する罰則と対応
印紙税の不適切に取り扱ってしまうと、法的な制裁を受ける可能性があります。これには金銭的なペナルティだけでなく、刑事罰が科される場合もあります。
次に紹介する印紙税に関する主な罰則と、問題が発生した際の対応方法を把握し、不必要なリスクを回避しましょう。
印紙税の過怠税について
印紙税の納付を怠った場合、過怠税が課されます。過怠税は、納付すべき印紙税額の3倍相当額(印紙税額の300%)です。
たとえば、本来200円の印紙税を納付すべきところ、納付しなかった場合、600円の過怠税が課されます。ただし、納付しなかったことについて正当な理由がある場合や、税務署長が告知する前に自主的に納付した場合は、過怠税が免除または1.1倍相当額(印紙税額の110%)に軽減される場合もあります。
また、印紙を貼りつけたとしても消印をしていないと過怠税として額面相当の額が課されるため、消印の押し忘れがないように注意しましょう。
印紙税法違反の刑事罰
印紙税法違反の悪質なケースでは、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金といった刑事罰が科される可能性もあります。たとえば、偽造した印紙を使用した場合や、すでに使用済みの印紙を再使用した場合などが該当します。
また、法人の代表者や従業員が業務に関して違反行為を行った場合、法人自体にも罰金刑が科されるかもしれません。ただし、これらの刑事罰は悪質性が高い場合に適用されるものであり、単純なミスや軽微な違反の場合は、過怠税の行政処分で対応されます。
事後的な印紙税納付の方法
印紙税の納付を怠ったことに気づいた場合、速やかに対応しましょう。「印紙税不納付事実申出手続」をe-Taxソフトで作成し、課税文書の作成場所の所在地を所轄する税務署に提出することで、自己申請が可能です。
また、印紙税の事後的な納付方法としては、主に次の2つがあります。
1. 追納
不足分の印紙を追加で貼付し、消印する方法です。この場合、追加した印紙の消印日が納付日となります。
2. 現金納付
印紙税を現金で納付する方法です。納付書を使用して金融機関や税務署で納付します。
自主的に不足分を納付した場合、状況に応じて過怠税を免除または軽減されることが一般的です。そのため、問題に気づいたらすぐに対応しましょう。不明な点がある場合は、税務署に相談することもおすすめです。
収入印紙に関するQ&A
最後に、実務で発生する「よくある質問」を解説します。
収入印紙の代金はだれが負担しますか?
収入印紙の代金は、原則として課税文書を作成した人が負担します。
1対1の契約は、ほとんどの場合において契約書を2通作り、双方が1通ずつ保管するのが一般的です。この場合は契約者双方が折半して1通ずつ負担して収入印紙を貼るケースが多いです。
収入印紙代が少額の場合は、契約金額をもらう側がサービスとして負担するケースはあっても、法律には定められていません。トラブルを避けるために当事者間で決めておきましょう。
収入印紙はどこで購入できますか?
収入印紙は郵便局や法務局の窓口で購入できます。ほかには「印紙売りさばき所」として認められている店で購入可能です。目印は郵便の「〒」マークに「切手 はがき」と「印紙」と記載された看板が出ているお店です。もちろん、コンビニエンスストアでも購入できます。
ただし、コンビニエンスストアで扱っている印紙は多くが200円の印紙であるため、200円以上の印紙が必要な場合は郵便局か法務局に行きましょう。
契約後に契約金額を変更した場合はどうなりますか?
金額の変更に関しては、変更前の契約金額が契約書に記載されている場合と、記載されていない場合で対応が異なります。変更前の契約金額が載っている場合は、変更前後の差額が契約金額です。
たとえば、30万円を50万円にした場合で、変更前が30万円だと記載されていれば、収入印紙代の判定基準となる契約金額は差額の20万円になります。ただし、50万円が30万円になっても、収入印紙代の差額分は返還されません。
一方変更後の金額しか契約書に記載されていない場合、収入印紙代は変更後の金額で計算されます。
収入印紙に消印が必要なのはなぜですか?
収入印紙自体が、そもそも消印を押すことで納税の照明が成立する仕組みだからです。そのため、当然ながら収入印紙には消印をしなければ印紙税を納付したとは認められません。
消印に関しては、契約書だけではなく領収証も同様です。消印がない場合は、税務調査で印紙税を納めていないと判断され、追徴金が課せられるので注意しましょう。
誤って納付したらどうなりますか?
「印紙税を本来の金額よりも多く納付してしまった」「課税文書に該当しないのに誤って印紙を貼りつけてしまった」など、場合によっては過剰に納付してしまうケースも考えられます。
このようなケースであれば、印紙税の還付請求が可能です。
ただし、還付請求が認められるのは「作成から5年を経過していない文書」です。5年経過すると時効となり請求権が消滅するため、忘れないようにしましょう。
なお、印紙税の過怠税や刑事罰に関しても「作成から5年を経過していない文書」にのみ適用され、この期間を過ぎると時効として扱われます。
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原本保全の確実性向上
契約書をクラウドで一元管理することは、コンプライアンスの強化につながります。従来の紙で生じていた紛失のリスクや、詳細な更新事項の目視を必要とした原本確認が容易になるとともに、バックアップデータが原本となるため、データとしての検索性や確認の精度向上にも最適です。
収入印紙が必要な契約書を理解し、電子契約書も積極活用しよう
なぜ収入印紙が必要なのか、どのような書類に貼らなければならないのか、いくらの金額の印紙を貼らなければらないのか、といった印紙税の謎が随分と解けたのではないでしょうか。
必要な収入印紙の貼られていない契約書でも、契約自体が無効になることはありません。ただし、必要な収入印紙を貼付していないことが税務署にわかると、印紙税法違反として罰せられます。
大きな契約をする場合、収入印紙の費用はかなりの金額がかかるので、印紙税がかからない電子契約書も用いてコスト削減を図りましょう。
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