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人材紹介契約書とは?ひな形付きで記載事項を解説

最終更新日:(記事の情報は現在から17日前のものです)
「人材紹介契約書」とは、人材紹介会社が求人企業へ求職者を紹介して、雇用契約が締結された成功報酬として、紹介手数料を受け取る契約を書面化したものです。 本記事では、人材紹介事業や手数料について紹介し、職業安定法の規定や注意点および必要な条項などを解説しています。記事の最後では、すぐに使える人材紹介契約書のひな形をダウンロードできます。

人材紹介契約書とは

人材紹介とは、国から許認可を受けた人材紹介会社が、働き手を求める企業に対して働きたい人材を紹介し、企業と労働者との雇用契約締結へ向けてサポートする仲介業務です。有料職業紹介の人材紹介会社は、両者を引き合わせて雇用契約を締結させた成功報酬として、求人者から紹介手数料を受け取ります。

このとき、求人募集をする企業と人材紹介会社とのあいだで、人材紹介の業務内容や報酬および禁止事項などについて合意したことを証する書面が「人材紹介契約書」です。人材紹介契約書は、契約条項が職業安定法に違反していないか、慎重に確認する必要があります。

なお、人材紹介契約は、民法上の準委任契約に該当します。準委任契約とは、業務委託契約に含まれる種類の契約で、法律行為でない業務の遂行を依頼する契約です(民法656条)。準委任契約は、事実行為(事務処理)の委託をする契約で、事実行為の例としては、医師の診察や治療、コンサルティング契約、技術指導契約、介護サービス契約などがあります。

職業安定法で定められている必須の記載事項

人材紹介事業をするには国の許認可が不可欠であり、免許に基づかない人材紹介営業は職業安定法で禁止されています。

これは、求職者がだまされたり、高額の手数料を請求されたり、個人情報を不当に利用されたりなど、弱い立場の求職者をトラブルから遠ざけ保護するためです。

職業安定法に規定された、人材紹介契約書に必須の記載事項について解説します。

取扱職種の範囲等

有料職業紹介事業において人材を紹介できない職種は、職業安定法32条の11第1項に定められた「港湾運送業務と建設業務に関する職種」です。また、同法32条の12第1項によれば、これ以外の職種でも厚生労働大臣に取扱職種として届出たもの以外の職種なら、求職者への紹介はできません。なお、紹介禁止規定に違反した場合には、職業安定法64条1号、4号にあるとおり「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。

この項目では、事業として紹介する職種の範囲を明記します。以下のような記載であれば、職業安定法に違反する心配はありません。

  • 港湾運送業務および建設業務を除く全職種
  • 取り扱い地域は日本国内に限る

手数料に関する事項

有料職業紹介事業者が企業(求人者または関係雇用主)から受け取る手数料は、職業安定法に「上限制手数料」と「届出制手数料」の2つの規定があります。その内容は以下のとおりです。

上限制手数料

上限制手数料とは、求人者に労働者を紹介して雇用契約に至った労力に対する、求人者からもらう成功報酬の法定上限額です。

また、求人受付手数料とは、求人者の求人募集情報を自社システムに登録しメディアなどに掲載する手数料です。こちらにも法定上限が設定されていますが、上限制手数料とあわせて徴収できます。

手数料 割合・金額
上限制手数料 (A)課税事業者11.0%、免税事業者10.3%
(B)課税事業者14.8%、免税事業者13.9%
求人受付手数料 課税事業者710円、免税事業者660円

手数料金額は、職業に就いた労働者に実際に支払われた賃金総額に対し、原則として(A)の手数料率を乗じます。もしも、労働者が6か月を超えて働き続けた場合には、はじめの6か月間に実際に支払われた賃金が、手数料算定のもとになる賃金の最大額です。

期間の定めのない雇用契約に基づいて同一の者が引き続き6か月を超えて働いた場合には、(A)および(B)を乗じた金額のうち大きいほうが上限制手数料です。ただし(B)の場合は、6か月分の賃金から「臨時に支払われる賃金」もしくは「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」を除いた賃金に対して(B)の手数料率を乗じます。

上限制手数料を上回る額を受け取ろうとする場合には、厚生労働大臣へ届け出て「届出制手数料」を受け取ります。

届出制手数料

届出制手数料も上限制手数料と同様に、雇用契約に至った労力に対して求人者からもらう成功報酬です。ただし、上限制手数料を超える額の手数料額をもらう場合に、厚生労働大臣に届け出た上限額内であれば、求人者との合意によって自由に手数料額を決めて徴収できます。

実際の採用割合は、上限制手数料よりも届出制手数料を採用する場合がほとんどです。その理由は、手数料の請求タイミングが早くでき、算定基準の賃金は推定年収で(6ヶ月の実支払より大きい)、手数料率が高く手数料金額が大きくなりやすいからです。

ただし、届出制手数料に法定の上限料率はないものの、実務上は届出制手数料率が50%を超えて申請しても受理されないことがほとんどです。なお、この実務上の上限手数料率は地域的な慣行であり、管轄の労働局によって30〜50%などローカルルールを敷いている場合があるため、事前に管轄労働局へ相談するとよいでしょう。

苦情の処理に関する事項

求人者および求職者から苦情が出た場合の責任に関して明記します。

厚生労働大臣に届出をした職業紹介責任者は、苦情に対応する責任者もしくは求人者情報および個人情報の取扱者になるのが一般的です。

求人者の情報及び求職者の個人情報の取扱いに関する事項

人材紹介会社は、求人者の個人情報をはじめ、過去の職歴や経験など本人にとっては周囲に知られたくない情報を取り扱うこともあります。そのため、個人情報や重要情報の漏えいを防止し、求職者から得た全ての情報を厳格に管理する旨を記載します。

返戻金制度に関する事項

紹介した求職者が、就業後に自己都合で早期退職した場合に、求人者に対して手数料を返還する内容の条項です。まれに、紹介者が手数料欲しさに適切でない紹介をする場合がありますが、返戻金制度によって、働く意思を強く持ってその職業に適性がある求職者を探して紹介する、動機づけの効果も期待できます。

なお、求職者の退職までの就業期間によって、返還手数料額が下記のように変動するのが一般的です。

就業から退職までの期間 返還する紹介手数料の割合
2週間以内 80%を返還
1か月以内 70%を返還
2か月以内 50%を返還
3か月以内 30%を返還

なお、求職者の死亡や被災など、求職者および求人者の双方に責任のない不測の事態によって退職した場合には、返戻金制度を適用しないとするのが望ましいでしょう。

人材紹介契約書の主な記載事項

人材紹介契約書の主な記載事項や記載例などについて解説します。

業務内容

人材紹介に関して、具体的にどのような業務を委託するのかを記載します。
「職業安定法に定める求職者の紹介と職探しに関する相談や助言」などとします。

人材紹介手数料

届出制手数料もしくは上限制手数料の内容について、紹介手数料が「いつも時点で」「いくら」発生するのかまで明確に記載します。なお、手数料の発生時期は、雇用契約の締結後の、実際の勤務開始日にするとよいでしょう。

返還金

紹介した求職者が自己都合で早期退職した場合に、紹介業務が完全でなかったとして紹介者が求人者へ返金する紹介手数料の割合について記載します。

就業期間に応じて、紹介手数料に対するパーセンテージで表記すると分かりやすいでしょう。

直接取引の禁止

直接取引とは、求人者が人材紹介会社を通さずに求職者と直接連絡を取り合って雇用契約を結ぶことです。

仮に、届出制手数料率が30%だとすると年収600万円の方なら紹介料は180万円にもなり、決して安いものとはいえません。そのため、紹介を受けた求職者へ人材紹介会社を通さずに、直接アプローチして雇用契約を結んで紹介料の支払いを免れようとする、悪意ある求職者がまれにいます。

ここでは、規定に違反した求職者への罰則についても規定する必要があります。直接契約をした場合にも、手数料相当の罰則金が発生すると規定する場合が一般的です。

損害賠償

入社後に求職者が求人者から被った損害について、人材紹介会社は責任を負わないとする条項です。原則として、人材紹介会社は求職者が入社するまでをサポートすればよく、この条項によっていつまでも仲介責任が続いてしまうリスクを回避します。

秘密保持

人材紹介事業のなかで、人材紹介会社および求人者の双方は、相手方の事業に関する機密事項を提供する場合があります。そのため、守秘義務を課すべき情報の範囲を明記して漏洩を防ぐ必要があります。

反社会的勢力の排除

企業が反社会的勢力による悪影響や被害を防止する対策として、契約書に反社会的勢力の排除を表明します。現在ではどの業界の契約書にも盛り込まれる、契約書には必須の条項です。

人材紹介会社と求人者の双方が反社会的勢力とは無関係であると誓約し、相手方の反社会的勢力との関係を知覚した場合は、無催告でただちに契約を解除できる旨を明記します。

契約の解除

相手方が契約条項に違反した場合や、契約を継続し難いほど信頼を失墜する事実があった場合には、契約期間内であっても相手方に適切に通知して、契約を解除できる規定です。

人材紹介契約書のひな形(テンプレート)

人材紹介契約書のひな形としてこちらにテンプレートを用意しているので、人材紹介契約書を作成する際にはぜひご利用ください。

人材紹介契約書のひな形(テンプレート) 人材紹介契約書のひな形(テンプレート)


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