エスカレーションとは?ルールやフロー作成方法や注意点を紹介
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エスカレーションとは?
エスカレーション(エスカレ)とは、インシデントやトラブルが発生した際の上司への段階的な報告のことです。具体的には、現場担当者から課長→課長から部長→部長から部門長といったように、より上の役職者へ報告をあげる方式を一般的にはエスカレーションといいます。
エスカレーションが発生するシーンは、自身の権限や能力で対応しきれない問題が発生したときです。発生した問題を解決できる権限や能力をもつ上位の役職者に指示を仰いだり、対応を代わってもらったりして対処します。
また、エスカレーションは通常行われる業務報告や定例報告とは異なり緊急時に行われる報告の場合が多く、上司の会議中や深夜早朝帯にも発生する可能性があります。
エスカレーションの意味は部門やシーンにより異なる
エスカレーションの意味は部門やシーンによって微妙に異なるニュアンスで使われることもあるため、それぞれのエスカレーションの意味について確認しましょう。
次の3つのケースにおいて、「エスカレーション」という言葉がどのような意味合いで使用されるか解説します。
- コールセンターのクレーム時
- IT業界でのインシデント発生時
- SEのプロジェクト管理
コールセンターでの顧客クレーム発生時のエスカレーション
コールセンターでの顧客クレームが発生した場合、担当オペレーターのみで解決できなければ上位担当者にエスカレーションが行われます。
たとえば、商品の不具合や納期のミスによって顧客に損害が発生したケースでは、担当オペレーターの権限だけでは顧客の損害を補填できません。
この場合、上位担当者であるスーパーバイザー(SV)や、コールセンター部門の責任者、場合によっては営業担当や製造担当にエスカレーションが行われ、各担当での対応となるでしょう。
IT業界でのインシデント発生時のエスカレーション
IT業界ではインシデントが発生したときにエスカレーションが行われます。
IT業界におけるインシデントとは、利用者が提供サービスを適切に利用できない状況を指す場合が多いです。社内トラブルだけではなく通信会社のネットワークエラーなどの外部要因でも、サービスが一時停止すればインシデントの発生と考えられます。
いずれの場合でも、インシデントが発生したらすぐに上長やクライアントへの報告が必要となり、この一連の対応をエスカレーションといいます。
SEのプロジェクト管理でのエスカレーション
SE業務のプロジェクト管理内でエスカレーションの言葉が使われるときは、プロジェクト進行で問題やリスクを発見した際に使われることが多いです。
SEのプロジェクトで複数タスクが同時進行することは一般的です。同時進行するタスクの中で、タスクの進捗が悪いことやリソース不足が発覚した場合に、エスカレーションが行われます。
エスカレーションの目的は、ボトルネックとなりうるタスクの優先的解決や追加リソース投入が検討されることで、スムーズなプロジェクト進行を維持することです。
タスク優先度の調整や、リソースの追加を検討することから、ほかの部門でのエスカレーション同様にPMや上長の承認を得る場合も多いです。しかし、コールセンターやIT業界で行われるエスカレーションより緊急度の低いケースが多く、しっかり予定を立ててエスカレーションが行えます。
スムーズなエスカレーション対応に必要なこと
スムーズなエスカレーション対応に必要なこととしては次のような点があります。
- エスカレーションルールの明確化
- エスカレーションフローの設定
- 発生から報告までのフォーマットの事前作成
- 作成したルールやフローの周知徹底を実施
エスカレーションルールの明確化
エスカレーションルールの明確化はエスカレーション対応の基礎として最も重要です。エスカレーションフローを含め、次のような内容をあらかじめ決めておかなければなりません。
- いつエスカレーションを行うか
- 誰が誰に対してエスカレーションを行うか
- エスカレーションを受けた人の対応できる責任範囲
- エスカレーションを行う場合の連絡先
- エスカレーションを行う手段(メールで済ませるのか、電話対応が必要かなど)
これらの内容が最低限定まっていることで、エスカレーションをしなければならないインシデントが発生したときに、担当者が迷わずに対応できます。
エスカレーションを行う場合は緊急事態が発生している場合も多く、初動対応を誤ることで問題の影響が拡大してしまう場合も多いです。
スムーズなエスカレーション対応で発生した問題の悪影響を最小限に抑えるために、あらゆるシーンを想定したエスカレーションのルールを事前に策定しておきましょう。
エスカレーションフローの設定
エスカレーションのルールと同時に、エスカレーションフローを策定することも必要です。
フローが必要な理由としては、エスカレーションの対応を少しでも早く行うためです。エスカレーションが発生したときにフローがなければどこに報告をするべきか都度検討しなければならず、対応が後手に回りエスカレーションが遅れてしまいます。
このようにエスカレーションを迅速に行い、問題をいち早く解決するためにも、ルールと一緒にエスカレーションフローを策定することは重要です。
発生から報告までのフォーマットの事前作成
エスカレーションを迅速に行う方法の一環として、インシデント発生から最終報告までのフォーマットを事前に作成することも有効です。
フォーマットを作成することで、報告をする人は報告する内容を整理しやすく、報告を受ける人は必要な情報を過不足なく整理された状態で受け取れます。
フォーマットがなければ報告者によって報告内容がバラバラになり、報告を受ける側も現在どのような状況で、何に対して優先的に対応すべきか迅速な判断を下せません。
フォーマットを定めておくことで、報告をする人・受ける人それぞれにメリットがあります。
作成したルールやフローの周知徹底を実施
エスカレーションのルールやフローは作成しただけでは効果を発揮しません。ルールやフローの社内周知を徹底することで、いざ緊急事態が発生したときに迅速な対応ができます。
発生した緊急事態に対して、少なくとも一次対応は全社員が迷うことなくできる体制を構築しましょう。
エスカレーションフローの作り方
エスカレーション対応をスムーズに行うに、あらかじめフローを設計しましょう。フロー作成のコツを流れに沿って紹介します。
STEP1.目的と対象範囲を明確にする
まずは、エスカレーションが必要となる目的や状況を整理しましょう。対象とする業務やトラブルの種類を明らかにすることで、対応すべき範囲を限定できます。
目的や範囲があいまいなままでは、判断が属人的になりやすいです。結果として、フローが機能しないおそれがあります。
STEP2.対応レベルと責任者を定義する
トラブルの深刻度や影響範囲に応じて、複数の対応レベルを設定します。それぞれの段階で誰が対応するか、責任者を明確にしましょう。
役割分担が不明確だと、報告の遅れや対応の抜け漏れが起きやすくなります。対応レベルごとの役割は文書化して共有することが大切です。
STEP3.通報から解決までの流れを図式化する
エスカレーションが発生した際の報告の流れや、対応の手順をフローチャートに落とし込みます。誰が、何を、いつ行うかを明示しましょう。
図にすることで全体像が把握しやすくなります。ただし、細かくしすぎると現場で運用しづらくなるため、要点を押さえて整理することが重要です。
STEP4.通報手段と対応時間の目安を決める
通報にはメールやチャット、専用ツールなど複数の手段があります。どの方法で報告するか、また、初動や対応完了までのおおよその時間も定めましょう。
手段や時間の目安が曖昧だと、緊急性の判断がばらつきます。全員が同じ基準で動けるよう、具体的に記載することが求められます。
STEP5.定期的にフローを見直す
一度作ったフローも、業務の変化に合わせて定期的な見直しが必要です。実際の対応状況を踏まえて改善を重ねることで、より実用的なものになります。
変更が発生した際は関係者に確実に周知し、古いフローと混在しないように注意しましょう。更新の履歴を残すことも有効です。
エスカレーション対応の注意点
エスカレーション対応時や、ルール・フローを決める際には、次のようなことに注意しなければなりません。
- 通報者に責任を問わない
- 発生事象の分類が迅速にできる指標を策定する
- ナレッジを蓄積して再発を防止する
通報者の責任を問わない
通報者の責任を問わないことはエスカレーション対応の注意点として最も大切なことです。なぜなら、通報者に責任を持たせてしまうと、各担当がエスカレーションを行わずに問題を隠すようになるからです。
初動対応であれば小さな問題だった事象も、あとから発覚した場合には非常に大きな問題となっているケースも多く、対応コストも大きくなります。
小さなヒヤリハットのレベルで問題に対応できるように、各担当者が通報しやすい組織づくりを行い、通報者の責任は問われないことを全社員の共通認識としている必要があります。
発生事象の分類が迅速にできる指標を策定する
発生事象の分類が迅速にできる指標を策定することも、迅速なエスカレーション対応には必要です。これはルールやフローを作成するときに設けるべき基準で、全社員が発生事象に対してエスカレーションをすべきかどうか判断するために必要です。
エスカレーションを行う場合の明確な基準がなければ、エスカレーションが行われる基準も担当によって変わってしまいます。
エスカレーションが不要な小さい事象は報告され、エスカレーションが必要な大きな問題は報告されないなど、正常な業務の運営に支障をきたす状態になりかねません。
基準を明確にすることで、報告者によってエスカレーションを行う問題のレベルに差が生じない体制の構築を目指しましょう。
ナレッジを蓄積して再発を防止する
エスカレーションの対応がすべて完了したら必ず発生事象と対応の振り返りを行い、知識(ナレッジ)を蓄積して再発防止に努めましょう。
ハインリッヒの法則によれば、1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットがあるといわれています。軽微な事故やヒヤリハットを完全になくすことは難しいです。
しかし、ナレッジを蓄積しておけば問題の数を減少させられる可能性はより高くなります。
発生した緊急事態とエスカレーション対応を材料として社内の仕組みを改善することで、今後同様の問題が発生しない組織づくりを目指しましょう。また、エスカレーションの対応のルールやフローの改善をすることも大切です。
実際のエスカレーション対応を行う中で、問題が発生したタイミングや報告をしにくかった内容などを検証し、スムーズなエスカレーション対応を阻害する要因についても改善します。
阻害要因を取り除くことにより、万が一の事態が発生したときにも正しくスムーズに対応できるエスカレーション体制が構築できるでしょう。
適切なエスカレーション対応でトラブルの被害を最小限に抑えよう
エスカレーション(エスカレ)とは、主に緊急事態が発生した場合に行われる上司への段階的な報告のことです。適切なエスカレーションを行うためにはルールやフローの策定、事前にフォーマットを作成することやエスカレーションで行う内容を社内に周知することが重要です。
また、報告者の責任を問わないこと、ナレッジを蓄積してエスカレーションが必要な事態を発生させないことなどの注意点もあります。
根本的にトラブルを発生させないことは大切です。しかし、トラブルが発生してしまったとしても、適切なエスカレーション対応を行うことでトラブルの影響は最小限に抑えられます。
適切なエスカレーション体制を構築して、トラブルが発生してもスムーズな業務遂行が継続できる組織づくりを目指しましょう。