おもてなしが「過剰サービス」に、利用者満足度世界2位の羽田空港の事例

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「おもてなし」という言葉で表現される日本のサービス業は、世界的にみても品質が高いと言われている。しかし、その満足度を維持するために、過剰な労働を強いられている従業員がいるとしたら、それは「過剰サービス」だ。日本の玄関口「羽田空港」のケースを見てみよう。
おもてなしが「過剰サービス」に、利用者満足度世界2位の羽田空港の事例

松山千春の空港「神対応」が話題となったが

2017年8月20日のお昼頃、新千歳空港発、伊丹空港行きの飛行機が大幅に遅延し、乗客のいらだちがピークに達したときのこと。歌手でシンガーソングライターの松山千春が、CAにマイクを借りて、みずからの代表曲「大空と大地の中で」の一節を歌い、乗客を感動させたことが話題となった。

札幌発大阪行きの飛行機は、保安検査場の大幅な混雑が遅延につながったと発表されている。新千歳空港に限らず、保安検査場で人材不足が続いているという事実。薄給・過酷・過剰サービスの重労働で人手が足りず、疲弊しているというのだ。

日本の羽田空港の「おもてなし」は感動する

夏休み、お盆休み、GW、年末年始など、長期休暇を取って海外旅行に行くことも増えてきた。また、世間のピークと日付をずらした旅行をする人も徐々に増え、出張などでも空港を使うケースは多いのではないだろうか。

羽田空港は、非常に心地よい空港だ。ぴかぴかでまばゆく、人々が行き交い活気がある。英国の航空業界格付け会社であるSKYTRAX(スカイトラックス)社の調査によると、羽田空港は世界第2位の総合評価を得た。

さらに、「清潔な空港部門」では2年連続の1位。羽田空港は世界でも類を見ないほど、きれいな空港だといえる。一度、羽田空港に行ってみると、その清潔さに驚くことだろう。

年間8000万人が利用する羽田空港で、これだけの清潔さを維持しているのは驚くべきことだろう。それだけ、清掃が行き届いているということでもある。早朝の便であっても、夜間の便であっても、羽田空港に汚れているところなどない、というぐらいだ。

朝早くから、お店もオープンしており、早朝の早い便でも時間を潰すのに事欠かない。日本人であるわれわれには、痒いところまで手のゆきとどいた「おもてなし」がもはや当たり前のことだが、海外から帰ってきた時には、とても驚嘆することだろう。

過剰サービスだと思われるサービスの具体例4つ

しかし、本当に羽田空港のおもてなしはこれでいいのだろうか。世界ランキング上位の空港と比べて、筆者が過剰かもしれないと感じた羽田空港のサービスを挙げてみた。

(1)売店の開店時間が朝早すぎる

たとえば、羽田空港では、朝早く6時頃からお店が開いているケースが多い。だが、そこで働くスタッフのシフトはどうなっているのだろうか。同じくサービスランキング上位の、韓国・仁川空港などは、朝早く行っても開いているお店などない。

(2)ホームページが過剰に親切すぎる

また、ホームページもアメリカなどの空港では、どこに何が書いてあるかわからず、手荷物のことやペットのこと、持病のこと、ベビーカー、車椅子などの情報までも分かりづらいことが少なくない。

日本の羽田空港のホームページは、フライト情報、アクセスはもちろん、駐車場、空港マップ、ターミナルガイドなど、すべて揃っており整理整頓されていて、いつ閲覧しても見やすいことこの上ない。バリアフリーの観点で削れない箇所もあるだろうが、こうしたホームページを作り込んでる人たちの人件費は、どこからくるのだろうか?

(3)チェックイン後のアテンドが「丁寧すぎ」る

それだけではない。海外の空港では、チェックインすれば後は放置され、自分から進んで行動していく必要があるが、羽田空港では、チケットを渡すだけで、あとは誘導してもらえる。

(4)壊れ物の心配までしてくれる

手荷物検査場では、壊れ物がないかを丁寧に質問され、案内してくれるが、海外の空港では何も聞かれず、壊れても自己責任というのが一般的だ。

まさに日本は「おもてなし」の国だ。世界最高峰の顧客満足度を誇るだけはある。しかも、こうしたサービスは、ほぼすべてが無償である。

どれだけおもてなしを頑張っても、それはスタッフの自助努力によるものだとしたら、それは収入に見合った対価のない「過剰サービス」と言い換えられるのではないだろうか。

日本はOECDの調査でも労働生産性が22/35位

その一方で、日本の労働生産性が著しく低いという問題点もある。公益財団法人 日本生産性本部の調査によると、日本はOECD加盟国の中でも下位の方で、35か国中22位だ。

これは、アメリカのみならず、夏場などに数週間のバケーションを取るフランス、イタリア、デンマークなどのヨーロッパの国々より低く、さらには、財政破綻したギリシャよりも低いということになってしまう。

これはどうした事態だろうか。私たちは常に、毎日過重労働にさらされている。過重労働を避けて、少ない時間で効率よく働くには、生産性の向上しかない。

まして、おもてなしが国をあげて良しとされる風潮があるなか、サービス業では「過剰サービス」が恒常化しても誰も文句を言い出せない。

ここで、生産性とは何か、そして、その生産性はどのようにすれば上昇するのか、などを真剣に考えていく必要があるだろう。