メタップスの「赤字決算」にみる、資本主義から価値主義へ移行する社会

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記事の情報は2018-01-21時点のものです。

先週はメタップスの決算報告がにわかに話題となった。営業利益が前年同期比でマイナス99.4%の赤字決算を公表したのだ。しかも仮想通貨の利益は評価しないという。 決算を好意的に見るもの、否定的に見るもの、斜めに見るものさまざまな思惑が入り乱れる。 話題の『お金2.0』の作者、佐藤航陽氏率いるメタップス。稀代のイノベーター佐藤社長は会社を、そして社会をどこへ導こうとしているのか。

資本主義を超える承認欲求

この価値観の転換は、メタップスの佐藤社長やCAMPFIREの家入社長のように、革新的な思想を持ちながらも同時に資本主義的にも成功をおさめ、そこからさらに価値主義へと時代を転換させようとしている若い世代がリーダーとなり牽引していることも大きい。彼らは「承認欲求」の高まりに注目している。

今や若者はミニマリズムに目覚め、あまりモノを買わないとされる。消費者庁のデータでも、34歳以下の世代は消費性向が著しく低いことが如実に現れている。

モノを買わない社会の先に何があるのか。そこにあるのは、Facebookやインスタグラム、ツイッターなどでいいねを押してもらいたいという承認欲求なのである。

価値主義はこの承認欲求で満たされている人ほど、経済的にも恩恵を得ることができるものだろう。

価値主義とはフォロワーが多いということではない

そこで承認欲求となると、多くの人がフォロワー数稼ぎに精を出す。そしてそれは時に、一部の暴走するYoutuberなどの承認欲求と金銭欲の乱用につながりかねない。

しかし誤解してはならないのが、価値主義における"勝者"は決してフォロワーが多いこととイコールではない。ただ単に、従来では資産を多く持った人から、新たにフォロワー数が多い人に権力が移譲されるわけではないのだ。

たとえば、社会起業を考えてみよう。

どれほど社会的に意義があっても、従来は資本主義の中で寄付や補助金ぐらいしか生き延びる道がなかった。しかし、価値主義の時代には、理念に共感する人によって支えられ、資金を得ることができるだろう。SDGs(持続可能な開発目標)も同様だ。貧困が共感、つまり人の不幸に胸を痛める心優しき市井の人々によって、救済される時代が来るのだ。

共感で集まる小さなサークルができ、そこでお金が循環するのが価値主義の世界である。共感でつながる小さなサークルがときには国をまたいでグローバル規模で広がり、資本主義とは全く異なるセオリーで経済圏を形成していく未来が予想される。

「メタップスの赤字決算」がこれほど話題となったのは、こういった時代の移り変わりを多くの人々が敏感に感じとり"共感"しているからにほかならない。