キャリアに生きるリカレント教育とは?背景と現状・導入事例・生涯学習の重要性を解説

さまざまなワークスタイルが登場するなかで、改めて大人の「学び直し」が注目されています。日本でもさまざまなプログラムが提供されはじめている「リカレント教育」の概要と、現状、また現状における課題について解説していきます。

キャリアに生きるリカレント教育とは?背景と現状・導入事例・生涯学習の重要性を解説

リカレント教育とは

リカレント教育とは、務教育や基礎的な教育を終えている者が、必要に応じて、生涯にわたり教育と就労を繰り返していく教育システムをいいます。

リカレントとは、「繰り返し」や「復習」という意味です。そのため、リカレント教育を日本語にすると「回帰教育」や「循環教育」と呼ばれるケースもありますが、一般的には、社会人が必要に応じて自らの意志で学び直しを行うことをリカレント教育と指すことが多いようです。「生涯学習」の方が馴染み深い方もいるかもしれません。

政府が推進するリカレント教育

政府も働き方改革から派生した「人生100年時代構想会議」において、リカレント教育を推奨する方針を示しています。

同会議では、すべての人に開かれた大学教育の機会を確保するとともに、教育の負担を軽減するための給付型奨学金の推奨や、何歳になっても学び直せる環境整備と社会人の多様なニーズに対応する受け皿が必要であることが話し合われました。

安倍首相も、同会議にてリカレント教育の必要性を述べるとともに「リカレント教育を受けた方に就職の道が開けるよう、産業界には人材採用の多元化を検討いただきたい」と、学び直しを行った社会人の仕事の受け皿をつくるように、産業界に要望しています。

欧米と日本の違い

リカレント教育はスウェーデンの経済学者によって提唱されたもので、OECD(経済協力開発機構)で取り上げられたことによって広まった構想です。もともと欧州発祥であるため、特に欧米日本とではリカレント教育の定着度合いや考え方に差がありました。

欧米では、生涯にわたり教育と就労を交互に行うという本来の考え方が根付いており、それに基づいた教育システムが整備されています。これはリカレント教育が提唱された当時の社会状況が大きく影響しているといわれ、子供の頃に身に着けた知識やスキルが社会で役立たなくなるケースが多かったことから、状況に応じて繰り返し再教育を受けられるシステムが受け入れられやすかったといわれています。

一方、日本ではリカレント教育のコンセプトは受け入れられましたが、当時は終身雇用制度が一般的だったため、社会人となって企業に入った後に、再び教育機関で学び直すという考え方が広まり難かった部分があります。

しかし、多様な働き方が推奨されるようになるなかで、キャリアアップのために必要な知識や技術を身につける場として、リカレント教育が注目されるようになりました。

なぜリカレント教育が必要なのか

それでは、特に日本でリカレント教育が必要とされるようになった理由はなんでしょうか。

政府が「人生100年時代構想会議」を行ったように、日本は少子化とともに高齢化が急速に進んでおり、近い将来超長寿化社会が訪れるといわれています。これは若い労働力が減少して働き手が少なくなり、労働生産性の向上が叫ばれるようになったことに加え、これまで「リタイヤ世代」だった60代以上の元気に働ける人々が増えることを意味します。

そういった人々が自分の状況に合った多様な働き方をしていくためには、年齢に関係なく自らのキャリアアップ・スキルアップのために学び直せる環境が必要です。先述のように、欧米ではこういった考え方が浸透しており、自らの意志で教育機関に戻って学習を続けることでそれまでとは違うキャリアを歩む人は珍しくありません。

日本ではそういった考え方が根付き辛かったものの、少子高齢化やAIなどの技術革新が進展するなかで、自分なりの働き方を工夫する姿勢が求められるようなってきています。そのためのスキルアップの手段として、学ぶ年齢に囚われないリカレント教育の必要性が注目されるようになってきたのです。

リカレント教育導入に際しての課題

このように、社会の状況が変化し、転職が当たり前の時代になるにつれ、日本でも今後ますますリカレント教育の必要性が高まっていくことが予想されます。

しかしリカレント教育の導入にあたっては、現状さまざまな障害があることは否めません。主に以下の2つの点で大きな課題を抱えているといえるでしょう。

公的支援や補助制度の未整備

政府による「人生100年時代構想会議」について紹介しましたが、それでもまだ公的機関によるリカレント教育への支援や補助制度は未整備といえます。

教育機関のなかには、社会人が好きな時間に学べるサテライト講義を開催する学校や、夜間や土曜日に受講可能な大学院も出てきています。しかし、フランスなどのような有休教育制度などは法制化されておらず、現在の仕事を中断してキャリアアップのための教育に自主的に参加するのが難しいのが現状です。

また、教育費用の面でも支援制度があまりなく、学び直しをしたくても経済的な面から断念せざるを得ないという人はけっして少なくありません。そういった費用面の負担を減らすための支援や給付金といった制度を充実させる必要があるでしょう。

企業の理解が不可欠

さらに、リカレント教育には企業側の理解も不可欠です。しかし実際は、従業員の外部での学び直しを想定していない企業がほとんどです。たとえ教育機関が充実しても、社会人には学生のように自由に学ぶための時間は多くありません。そこで企業側がリカレント教育の必要性を認識し、積極的に導入することが求められます。

特にこれまでのような社内教育だけでは不十分になってきていますから、外部の教育機関と協力するなどして、忙しい従業員が自主的に学ぶことでスキルアップを図れる環境を整える必要があるでしょう。