月食とは?
月食とは、太陽ー地球ー月の順番で天体が一直線に並んだときに、月に地球の影がかかって見えなくなる、もしくは欠けて見える現象で、英語ではLunar Eclipseと呼びます。月食は満月のときに起こります。日食とは違って、月が見える場所であれば地球のどこにいても同時に観測できるのが特徴です。
2023年の月食はいつ?
2023年に日本で観測できる月食は、10月29日の部分月食です。
月食の仕組み
月が地球の影に入ることによって月食は起こります。では、なぜ地球に影ができるのでしょうか?
太陽系で自ら光を放つ恒星は太陽だけです。そのほかの惑星・衛星は、太陽の光が当たる部分が昼となり、逆側は夜になります。つまり、太陽を背にした地球の夜の部分から「円錐状」の影が伸びているのです。
地球を公転している月が、この円錐状の影にかかったとき、月食は起こります。
満月の度に月食にならないのはなぜ?
満月のたびに月食が起こるのではないか、と疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。しかし月食は、年に1〜2回、多くとも3回程度しか起こりません。
これは、太陽の通り道となる黄道に対し、月の公転軌道である白道が約6°傾いているためです。通常の満月は、地球の影の北側や南側にそれた場所で起こるため、満月の度に月食になるわけではないのです。
月食よりも日食の方が多い?
月食は珍しい現象ではあるものの、年に1〜2回の割合で観測できます。これに対して、月の影が地球に投影される日食は、それほど多くないイメージがあるでしょう。
しかし実際には、21世紀の100年間に起こる月食が142回であるのに対し、日食は224回も起こるといわれています。日食の方が月食よりも多いのですね。
月食の起こる範囲が直径4,500km程度なのに対し、日食が起こる範囲は非常に広く、直径8,000km程度にもなるのです。
それにも関わらず日食の方が珍しく感じるのは、月の直径が地球の1/4程度と小さいために月の影が非常に小さく「日食を観測できる範囲が限られている」からです。
地球の影は2つある?
月食は、月が地球の影に入ることによって起こりますが、実は地球の影には種類が2つあります。
ここまでに解説した、円錐状の地球の影を「本影」といい、太陽の光がほぼ遮られた濃い影になります。これに対し、本影の逆円錐状に伸びる「半影」といわれる影があり、本影を取り囲むような薄い影ができるのです。
一般的な月食とは、本影に月が入った現象を指し、月が本影に入り始めたことを「食の入り」最大に月が欠けた状態を「食の最大」といいます。一方、半影に月が入ることを「半影食(Penumbral Eclipse)」というものの、影が薄いため月が欠けているかどうか、肉眼で確認するのは困難でしょう。
月食の種類
半影食も月食のひとつといえるものの、一般的には月が本影に入る「本影食」が月食です。この本影食は2つの種類に分類でき、月がどのように本影に入るかによって呼び名が異なります。
部分月食
月の一部分が本影に入ることで、一部が欠けたように見える月食が「部分月食(Partial Eclipse)」です。月がどの程度隠れて見えるかの割合を「食分」といい、0から1の値で示されます。
皆既月食
月のすべてが本影に入り、完全に影に隠れたように見える月食が「皆既月食(Total Eclipse)」です。
月食の進行
月食は、それぞれの天体の位置関係によって、どの程度の時間観測できるか異なります。その進行は一般的に「半影食の入り」「部分食の入り」「食の最大」「部分食の終わり」「半影食の終わり」となり、月の位置が地球に近いほど、部分食の入りから終わりまでの時間が長くなります。
また、観測地域によっては、月食の途中で月が欠けた状態で昇ってくる「月出帯食」や、逆に月が欠けた状態で沈んでしまう「月没帯食(月入帯食)」となることもあります。
月食が赤く見えるのはなぜ?
本影に完全に入る皆既月食の場合でも、月が真っ暗になることはほとんどなく、たいていは赤銅色の「赤い月」に見えます。これは「散乱」という、夕日が赤く見える現象が関係しています。
太陽光が地球の大気を通過する場合、短い波長の青い光が拡散してしまう一方、長い波長の赤い光は影の方向にやや屈折しながら通り抜けてしまうのです。この赤い光が月に投影されて赤く見えるのです。
月が青くなる「ターコイズフリンジ」
一方で、月食中に月の一部が青く見える、ターコイズフリンジという現象が近年話題になっています。これは皆既月食中、もしくは皆既になる直前・直後に「月の縁が青く見える」現象です。
太陽光が地球のオゾン層を通過するときに赤色が吸収され、青色が本影の縁に沿って映るため月が部分的に青く見えるのです。
月食のまとめ
意外にも観測の機会が多い天体ショー、狙いを定めて楽しんでみてはいかがでしょうか。