健康経営に経産省も意欲、導入メリット・デメリットや企業取り組み事例

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近年、健康経営に取り組む企業が増えてきています。経済産業省が「健康経営優良法人制度」を中小企業にまで広げて推進し、健康経営銘柄に認定されると株価の上昇や企業イメージが向上して話題になる企業も増えています。 本記事では、健康経営のメリットと導入のポイント、導入した企業の取り組み事例を解説します。

健康経営に経産省も意欲、導入メリット・デメリットや企業取り組み事例

近年、長時間労働の弊害であるアブセンティズム・プレゼンティズムが問題視されています。アブセンティズムとは、体調不良なメンタル不調などの病欠により出勤することができなくなり、労働力が低下してしまうこと、プレゼンティズムとは、出社しているものの心身の不調によりパフォーマンスが低下してしまうことです。

従業員の健康管理は、ますます企業にとって重要な課題となっています。経済産業省でも、大企業のみならず中小企業にも健康経営を推進させる動きがあり、健康経営への注目と需要が高まっているのです。

健康経営とは

経済産業省では、「健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する」ことであるとしています。

従業員の心身の健康が損なわれることで、集中力の低下や欠勤が増え、生産性は低下してしまいます。結果として企業の事業収益にも影響を及ぼすほか、従業員の離職につながる可能性もあり、企業価値が下がってしまうのです。

そこで従業員の健康維持・向上への投資が、従業員のモチベーション向上や企業価値向上にもつながるとして、健康経営を取り組む企業が増えています。

働くことで疲弊していくのではなく、従業員が健康を維持しながら元気に働ける会社であることが、経営面に大きなメリットを生むと考えられています。

健康経営実現を目指す、経産省の動向

経済産業省では、2015年より「健康経営優良法人」の認定制度を開始しています。この認定は、健康経営に取り組む優良な法人を顕彰するものです。

2018年2月には「健康経営優良法人2018」を選出し、さまざまな業界から大規模法人部門では541法人、中小企業部門では776法人が選ばれています。認定を受けた企業は、対外的なブランディングや企業価値向上を期待できることもあり、認定企業数は年々増加しています。

健康経営優良法人の認定基準は、「経営理念」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価・改善」、「法令遵守・リスクマネジメント」の5項目で、健康に関する課題を積極的、効率的に取り組んだ企業が認定されます。

「健康経営優良法人2018」発表で、健康経営を見える化~経産省発表 | ボクシルマガジン
経済産業省は2月、日本健康会議において「健康経営優良法人2018」が選出されたことを発表した。今回は、大規模法人部...

また経済産業省では、健康経営優良法人について抽象企業向けにもパンフレットを公布し、推進しています。

健康経営を実現するメリット

健康経営は経営に大きなメリットがあると前述しましたが、どのようなメリットがあるのかを解説します。

生産性の向上

健康経営の施策のひとつである「ストレスチェックの実施」、「健康診断の費用を企業が負担」などの取り組みによって、心身の体調不良による欠勤や休職を未然に防ぐことができれば、結果的に生産性の向上につながります。

一方で、つらくても無理をすれば出社できる程度の不調によって、最善のパフォーマンスを発揮できないプレゼンティズムも無視できない問題です。

出社しているので企業としては、その賃金を支払っています。しかし従業員は本来のパフォーマンスを発揮できていないのですから、組織としての生産性は低下しているのです。生産性を考えるうえでは、プレゼンティズムへの対策は欠かせません。

企業のイメージアップ

健康経営をしっかりと行っている企業は、「働きやすい」という印象を与えるので、企業のイメージアップにつながります。また、従業員が生き生きと働いていれば、彼・彼女らと仕事やプライベートで接した人は、企業に対して良い印象を持ち、口コミとなって広まります。広告費のかからない宣伝にもなるのです。

今では健康経営に対する取り組み姿勢は、企業の良し悪しを判断する重要な材料になっており、採用活動や人材確保にも影響をもたらします。商品やサービスを提供するうえでも、企業イメージは売上に大きく貢献するでしょう。

その他、経済産業省が選定する健康企業銘柄に選ばれた企業の平均株価は上昇する傾向があることも見逃せません。(出典:経済産業省 商務情報政策局「健康経営銘柄について」)

健康経営導入の4ステップ

では、実際に健康経営を導入するには、どのようにすべきなのかを順を追って解説します。導入においては、経済産業省が発表した「企業の健康経営ガイドブック」が役に立つので、参考にされることをおすすめします。

経営トップによるビジョンの発信

健康経営を実行力あるものにするため、まず経営トップが健康経営の重要性を理解し、経営理念の中に明文化したうえで、従業員や投資家に向けて発信することが望ましい方法です。

それにより、企業が組織として主体的に健康について取り組む方針であるということを、従業員に明確に伝えられます。経営トップから従業員ひとり一人まで全員が理解することで、健康経営を組織マネジメントのひとつとして捉え、実践することが可能になります。

組織体制の整備

続いて、従業員の健康増進に向けた組織体制を構築する必要があります。健康経営の推進を担当する部署を作り、専門資格を持つ職員の配置や、人事部などに担当者を置くなどさまざまな方法があります。

担当者もしくは推進部署の従業員の健康管理に関する知識習得をバックアップするため、あるいは現場の管理職への理解促進のためにも、健康管理研修の実施は有用です。

課題を把握し、施策を実行

次に、従業員の健康状態について現状の把握・分析を行い、目標を明確にします。そして経営理念に沿った、目標を実現のため施策を決めて実行します。

ストレスチェックや健康診断の結果だけでなく、残業時間や休日出勤の有無、有給消化率などから労働環境の問題点も確認しましょう。

たとえば、管理職の長時間労働や、特定部署の有給消化率の低さがあれば、「長時間労働の抑制」や「休暇取得の推進」を課題に設定し、施策を検討します。

健康保険組合などとの連携

健康経営を実現していくためには、企業と健康保険組合などとが適切に連携していくことが重要です。前述した「企業の健康経営ガイドブック」によると、企業と健康保険組合とでは取り組みの目的や優先順位が違うことが指摘されています。

それぞれの役割や取り組み状況を整理しながら、適切に連携を図っていくことが肝要です。