アップル増収増益も株価下落 スマホ市場は頭打ち、iPhoneに次ぐ柱を打ち立てられるか

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記事の情報は2018-11-15時点のものです。

米国アップルは2018年7〜9月期の決算を発表、を記録した。ところがアップルの株価は大幅に下がり、関連メーカーの株価も下落した。背景にはスマートフォンに対する需要の低迷があると思われる。あがいているのはアップルだけでない。先行きの明るくないスマートフォン市場で、各メーカーはどのような戦略を取るのだろうか。キーワードは「高価格路線」と「サービス部門強化」だ。
アップル増収増益も株価下落 スマホ市場は頭打ち、iPhoneに次ぐ柱を打ち立てられるか

アップル最高益を更新

アップルが米国時間11月1日に発表した決算は増収増益で、増収率および増益率は7~9月期としていずれも過去最高を記録した。主力製品「iPhone」の売上高も増加している。ところが好内容だったにもかかわらず、株価は大幅に下がり持ち直せていない。その後、iPhone用部品を供給するアップル関連企業の株価も下落しており、こうした状況を世界的な株安傾向の要因と指摘する報道もみられる。

確かにスマートフォンの販売台数は世界で頭打ちになっており、今後iPhoneによる収益が爆発的に増えるとは考えられない。その点はほかのメーカーも同様で、それぞれの戦略で事業を進めている。

スマートフォンを巡る現状を最新の数字で把握し、アップルやその他メーカーの方向性などをみていこう。

好決算のアップルだが暗雲たちこめる

iPhoneの高価格路線が奏功

アップルの2018会計年度第4四半期(2018年7月~9月期)決算は、売上高が629億ドル(約7兆1,655億円)で、前年同期の525億7,900万ドル(約5兆9,898億円)に比べ20%増収だった。しかも、純利益は141億2,500万ドル(約1兆6090億円)あり、同107億1,400万ドル(約1兆2,204億円)を大きく上回った。希薄化後の1株当たり利益(EPS)は2.91ドル(約331円)。これは同2.07ドル(約236円)の41%増に相当する。

決算発表のなかで興味深かったのは、iPhoneの販売に関するデータだ。前年同期の販売台数が4,668万台だったのに対し、当期は約4,689万台で増えたと言い難い。ところが、iPhoneによる売上高は、前年同期が288億4,600万ドル(約3兆2,858億円)、当期が371億8,500万ドル(約4兆2,357億円)と、29%も増えている。「iPhone SE」のような低価格モデルをあきらめ、価格の高いハイエンドモデルに注力するAppleブランド戦略が奏功したのだ。

また、サービス事業の売上高は10億ドル(約1,139億円)に達し、過去最高を記録した。これも、iPhoneのようなハードウェアから「App Store」「iTunes」などのサービスへ軸足を移しつつあるアップルの姿勢が結果に表れた形といえる。

アップル・関連メーカーの株価が下落

よい数字の決算であり、高価格路線やサービス事業重視という方向性も成果に結びついている。しかし、アップルの株価は決算発表後に大きく値を下げた。もっとも、6月以降の株価推移をみると、8月の株価急上昇により1兆ドル(約114兆円)企業となった興奮から冷め、市場が冷静にアップルの将来性を判断しただけに思える。

出典:Yahoo! FINANCE / Apple

ただ、iPhoneの販売台数が伸び悩んでいることは、iPhone用部品をアップルへ供給している企業に影を落としている。ブルームバーグの報道によると、iPhone需要の弱さや、ある部品メーカーの業績見通し下方修正などが影響したらしい。

受託製造サービス(EMS)を手がける台湾の鴻海(ホンハイ)やそのほか多くの部品メーカーをけん引してきたスマートフォンだが、株式市場は将来性が小さくなったと考え始めている。

需要が落ち込むスマホ市場

スマートフォン市場の現状は明るくない。

調査会社IDCが先日発表した2018年第3四半期の世界出荷台数は、3億5,520万台で前年同期の3億7,780万台に比べ6.0%減だった。出荷台数の減少は、なんと4四半期連続だ。

市場低迷の要因として、IDCは業界最大手のサムスン電子と中国市場を挙げた。具体的には、サムスンの出荷台数が前年同期比13.4%減、中国市場が6四半期連続の減少となっている。

カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチも同様の調査結果を発表し、「新興国の携帯端末市場は、中国や他の先進国の市場の落ち込みをカバーする規模まで到達できなかった」と指摘。先進諸国で需要が落ち込んでおり、「顧客にとって意味のあるイノベーションが出ないことと、製造品質の向上とが、買い替えサイクルの長期化を招いている」とした。

つまり、スマートフォン普及率が頭打ちとなっている先進国や一部の新興国では、新たに購入する層は少なく、買い替え需要も期待できない状況になっている。

高価格路線×サービス強化で生き残れるか

このように、スマートフォン市場は伸び悩んでいる。先進国では行き渡ってしまい、これまで拡大する一方だった中国市場もそろそろ限界が見えてきた。ほかの新興国や発展途上国に残っているパイも決して多くない。

そのなかでも好調な中国のスマートフォンメーカーは、海外進出を強めている。ファーウェイ(Huawei)のほか、オッポ(Oppo)、シャオミ(Xiaomi)、ビボ(Vivo)といったメーカーが目立っており、低価格モデル投入に加え、ハイエンドモデルの機能を徐々に中価格モデルに搭載することで平均販売価格(ASP)を引き上げる作戦だ。

出典:カウンターポイント / Oppo、Xiaomi、Vivoの3社が、世界的な減速傾向の中でも、単一四半期として過去最高の出荷台数に到達

一方、アップルなどは前述したとおり、高価格モデルで収益性を高めた。さらに、サービス事業の強化、スマートスピーカー「HomePod」によるAIエコシステム構築など、脱スマートフォンの動きが感じられる。

Android OSの開発元であり、日本で純正スマートフォン「Pixel 3」「Pixel 3 XL」の販売を始めて注目されたグーグルも、アップルと同じく高価格路線とAIエコシステム囲い込みという道を選んだ。

最近、折りたたみ式スマートフォンという画期的なデバイスが話題になったものの、スマートフォン市場全体に与える影響は小さいだろう。当面は、低価格や高価格に振った路線、サービス部門強化、囲い込みなどの方向がとられ、少しずつ市場の勢力図が変化していくはずだ。