サッポロビールが飲食CtoCスタートアップ「キッチハイク」と提携したワケ

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柳谷智宣の連載「ホットベンチャー・ケーススタディ」。今回は、食コミュニティの構築を手がけるスタートアップ「キッチハイク」の取り組みを紹介します。2018年10月22日に、サッポロビールと業務提携し、「HOPPIN’ GARAGE」というプラットフォームを提供するというプレスリリースが出ました。これまでサッポロビールはオープインイノベーションを手がけているというイメージがなかったので驚きです。キッチハイクの共同代表である山本雅也氏と、今回の提携を進めたサッポロビール土代裕也氏にインタビューしました。
サッポロビールが飲食CtoCスタートアップ「キッチハイク」と提携したワケ

サッポロビールが飲食スタートアップと組んだワケ

ユーザーが主役になるCtoCのコミュニティプラットフォームを作りたかった

ーー今回の連携のきっかけは何ですか?

もともと「HOPPIN’ GARAGE」の世界観やスキームは私の頭にありました。私は普段、ビジネス開発やその延長としてのコミュニケーション開発を行う仕事をしています。

いろいろなことを手がけているのですが、どうしてもメーカーとして我々がいて、我々が中心になって我々の取り組みに対して意見や感想を求めるという仕組みになります。我々が主役になってしまうので、これでは面白くないなと感じていました。

もっと主役が入れ替わって、誰でも主役になれるようなコミュニティを作りたいと考えていました。弊社はビールを造る設備は持っていますが、CtoCのプラットフォームやコミュニティは持っていないので、そういうことをできる会社を探していたのです。

そんなとき、2017年12月の日経新聞で、キッチハイクの名前を見つけました。すぐに、ホームページの問い合わせ窓口から会いたいとメッセージを送らせていただきました。(サッポロビール 土代氏)

(写真右から)キッチハイク 共同代表 山本 雅也氏 サッポロビール マーケティング開発部 ビジネス創出グループ マネージャーの土代 裕也氏

ーー「HOPPIN’ GARAGE」とは何ですか?

CtoCコミュニティを活用してユーザーイノベーションを行っていく仕組みです。ビールを作りたい方から、こんなビールを飲みたいという企画を応募していただき、弊社とキッチハイクさん、デザイナーさんでコミッティーを作って選定します。

これは実現したい、と感じたものについては、その方にご連絡をして、静岡の焼津にある醸造所で実際にビールをつくるブリュワーとパッケージのデザイナーとイベントを企画する人と一堂に会し、打ち合わせを行います。

その後、ポップアップ(キッチハイクのみん食イベントのこと)を作成し、参加者を集ってイベントを開きます。そこで、完成したビールをみんなに飲んでもらい、ビールを通じてつながっていってもらうというのが目的です。ビール好きのユーザー同士がつながっていければいいなと考えています。(サッポロビール 土代氏)

「HOPPIN’ GARAGE」のウェブサイト。ポップなデザインが目を引きます

ーーサッポロビールとしてはどんな狙いがあるのですか?

もちろん、コーポレートブランドの強化も目的です。サッポロビールって面白いよねって、もっと思ってもらうことが大事だと思っています。この取り組みが回り出すと、つくり手も売り手も飲み手も「HOPPIN’ GARAGE」にからめて付き合いができてくるので、既存商品の売り上げに寄与します。

もう一つは新商品開発で、イベントで提供され評判のよかった企画については実際に商品化します。また、アイディアをどんどんいただけるので、通常の商品開発にも活かせます。

よく会社はもっとお客さまに近づこうよ、と言っていますが、それを地でやるような話なのです。ビールの開発メンバーもこのポップアップに参加し、直にお客さまと触れることで新しい価値を生み出していくという狙いもあります。

最後は、関係人口が増えて、食とビールに関するコミュニティが大きくなってきたら、そこを活用したファンディングというのもあると思っています。(サッポロビール 土代氏)

ーーサッポロビールから連絡があってどうでしたか?

あのサッポロさんから? と驚きました(笑)。去年の12月に土代さんがオフィスに来られてお話をしたとき、CtoCでビールの輪が広がっていき、そこから尖った新しいビールが生まれていく、という構想にすごく共感しました。もともとキッチハイクは食でつながるコミュニティをやっていますし、僕自身がビールがめちゃくちゃ好きだっていうのもあって、同じ景色がばちっと見えた感じがしました。(キッチハイク 山本氏)

毎月1回オリジナルビールを振る舞う会が開催される

ーーどんなイベントが開催されているのですか?

一般ユーザーから募集したビールのイベントは1月に開催する予定で動いています。その前に、3回分は我々が選んだ人にアイディアを出してもらい、イベントを開催します。第1回は、10月に開催しており、ビールのアイディアは僕が出しました。

初回に僕が作ったのは『探検するハニーエール』です。キッチハイク創業時、私は世界中の人の家のごはんを食べ歩いていたことがありました。

その時、ラトビアで出会ったハニーエールの味を追い求めました。いろんな蜂蜜を合わせたり、フレーバーを試したりしながら、アルゼンチンのレモンの花の蜂蜜に決めました。蜂蜜はビールの発酵が終わった後に入れています。甘いのに苦味もあり、しっかりとビールの味がして、皆さんには美味しいと言っていただけました。(キッチハイク 山本氏)

今回のハニーエールは、弊社で作ろうとした人がいるかというと、多分いません。こういうアイディアがどんどん出てきており、これって面白いよね、商品化したいねという声はすでに出ており、いろいろと練っているところです。(サッポロビール 土代氏)

お披露目Pop-Upではみんなに『探検するハニーエール』が振る舞われました