年10%以上拡大続く「次世代」物流システム、宅配ボックスやドローンがけん引

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記事の情報は2019-03-19時点のものです。

富士経済は、ロボティクス・オートメーション、IoT、AIらをキーワードとする次世代物流システム、サービスの市場動向および将来予測を「次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望 2018」として発表した。次世代物流システム市場は当面年率10%以上の拡大が続き、なかでも宅配ボックスやドローン市場が注目されるという。
年10%以上拡大続く「次世代」物流システム、宅配ボックスやドローンがけん引

総合マーケティングビジネスを手がける富士経済は1月、「次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望 2018」を発表した。「次世代物流システム」として、ロボティクス・オートメーション、ロジスティクスファシリティ、IoT、AIから計26品目を、「次世代物流サービス」としてトラックシェアリングや低温物流サービスなど5品目を対象に、市場動向を調査した。

調査対象(出典:プレスリリース)

次世代物流システムは年利10%以上の拡大続く

同社によると、物流システム市場は年率10%以上の拡大が当面続くという。ロボティクス・オートメーション分野では、多品種少量生産に対応するAGV(無人搬送車)や、AIとロボットを組み合わせたシステムが大きく伸びると見込む。AI関連では、音声認識や画像認識を活用したシステムが本格導入へと移行する段階に入り、成長するという。

次世代物流サービス市場を見ると、2017年時点で低温物流サービスが90%以上を占める。国内では成熟しつつあるもののアジアを中心に海外での伸びが予想されるとした。新サービスとして注目されるのが、トラックや倉庫のシェアリングだ。オンライン上でマッチングするサービスの伸びが期待できるという。

宅配ボックスが成長分野

EC発達による配達件数増加や再配達の課題を解決する策として、宅配ボックスが注目されている。まだ普及率は低いものの成長が見込まれる分野だ。

今後も再配達の一部廃止や有料化、配送業者が配送物を玄関先などに置く「置き配(指定場所配達サービス)」などのサービス改定に伴い、市場拡大が予想される。将来的には、機能面を重視するニーズを受け、IoTに対応する電子制御式も普及が期待される。(引用:プレスリリース)

出典:プレスリリース

同社は、住宅種別ごとに傾向をまとめている。

まず戸建住宅の場合、購入者は一般消費者が中心。低価格帯の製品が好まれるため参入障壁が低く、生産数量増加に伴って価格が低下、普及が進むという。

集合住宅向けは、分譲マンションや賃貸アパート向けの宅配ボックス、駅や商業施設に設置される宅配ロッカーを対象としている。分譲マンションは、デベロッパーの主導により宅配ボックス導入が進んでいる。リノベーションなどを契機とする新規設置や取り替えニーズもあり、さらに普及が進むと見込む。水など重量物の宅配ニーズを受けて、共有フロアだけでなく各世帯専用のボックス設置も多い。

賃貸アパートも分譲マンションには及ばないものの伸長。普及にはさらなる低価格化が求められ、事業者によっては低価格製品の投入を進めているとのこと。

なお、公共スペース向け宅配ロッカーが再配達問題の解決策として注目されているものの、設置例は少ない。日本は自宅で受け取る習慣が根強いためと同社はみている。

2025年物流向けドローン市場12.5倍に

少量輸送に適した物流ドローンは、配達業界の人手不足や過疎地域で問題視されている買い物難民問題解決策の一つとして期待される。2025年の市場規模は25億円と、2017年比12.5倍に拡大すると予測している。

出典:プレスリリース

政府もドローン普及を後押し、国土交通省などが法整備を進めている。同社は「当面は実証実験や試験運用を経て、山間部や離島などの特定の地域における輸送サービスの展開が進むとみられる」としており、都市部など有人地帯での運用は2020年以降の本格化が期待される。

一方で、ドローンはトラックと比べて積載可能な重量が軽いため膨大な数が必要となる。また現状、150メートル以上の空域や空港周辺、人口密集地上空の飛行には許可が必要。普及に向けた課題の一つだという。

IoTプラットフォームは4.5倍、27億円規模へ

「物流向けIoTプラットフォーム」と位置づけるカテゴリも成長が続く。同社はこのカテゴリを次のように定めている。

物流現場の情報とWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、ERP(統合基幹業務システム)などのシステムを収集・統合・分析し、人の配置や作業員の能率向上、流通在庫の最適化、車両管理や配車ルートの効率化といった物流業務の改善を行うためのプラットフォーム・ソフトウェア。(引用:プレスリリース)

2017年はPoC(実証実験)、PoV(価値実験)が中心で、医薬品卸やスーパーマーケットの倉庫作業業務や配送業務の最適化、効率化などでの活用が見られた。2018年に入り倉庫作業の効率化を目的としたサービス提供も本格的に行われ始めた。現場の人手不足や効率化に向けて、さらなる需要の増加が期待され、2025年の市場規模は2017年の4.5倍にあたる27億円へ拡大するという。

出典:プレスリリース

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