全世界におけるユニコーン企業の概況
スタートアップ・テック企業やベンチャーキャピタルに関する独自のデータベースとアナリストを保有する米調査会社CB Insigtsが2019年1月に発表したデータによると、ユニコーン企業は全世界で300社以上に増加した。そのうち約半数が米国、次いで中国が約3割を占める。
評価額100億ドル以上の規模を誇るデカコーン企業(decacorn)は20社。TikTokで一躍有名になったバイトダンス(Bytedance・中国)750億ドル、Uber(米国)720億ドル、ディディ(Didi Chuxing・中国)560億ドル、WeWork(米国)470億ドルなど、ほぼ米中企業が占める。
インドはユニコーン企業数「世界第4位」
ユニコーン企業数における世界第3位はUnited Kingdomで、インドは4位にランクインした。インド企業の占有率は約4%に過ぎないが、日本にもじわりと進出する企業が目につく。いまさらだが、インドのユニコーン企業についてまとめてみた。
ちなみに、日本からは Preferred Networks というIoTとディープラーニングを中心に研究・開発を手がけるスタートアップ企業1社のみで、アジアのなかでは韓国6社、インドネシア4社よりも少ない。シンガポールも1社だった。
インドのユニコーン企業に注目するワケ
インドのユニコーン企業は、全部で13社。そのうち One97 Communications (operates Paytm)の評価額は100億ドルで、唯一デカコーン入りを果たしている。いま話題のキャッシュレス決済 PayPay(ペイペイ)にも連携されたインド最大の決済サービス事業者だ。
PayPay(ペイペイ)は、ソフトバンクとヤフーの合弁会社が提供する、バーコードやQRコードで決済を行うスマホ決済サービス。2018年に提供を開始し100億円キャンペーンで一躍脚光を浴びたが、実はその約1年前、2017年5月にはソフトバンク・ビジョン・ファンドがPaytmを提供するOne97 Communicationsに対して14億ドルという大型出資を行い話題になっていた。
さらに先日は、インド最大級のホテルチェーンOYO(オヨ)が日本の不動産業界に参入予定であることが報じられた。敷金・礼金・仲介手数料など初期費用がかからない賃貸サービスを日本で提供するとして注目されているが、OYOを運営する Oyo Rooms も、評価額50億ドルのユニコーン企業。ソフトバンクが初めて出資したのは2015年だ。
インドのユニコーン企業が見据える主な市場はアフリカや中東だと思われるが、日本市場への参入も進みつつある。アリババやテンセントといった中国IT大手の大型出資も目立ち、中国に続いてインドでも、リープフロッギング現象は加速の一途だ。また、インドの人口は2030年頃には中国を抜いて世界1位におどり出るというデータもあり、インドが世界経済に及ぼすインパクトは右肩上がりに大きくなると予測される。ソフトバンクが出資してきたインドのユニコーン企業くらいは知っておいたほうがよい。
ソフトバンクが出資した「インドのユニコーン企業」
インドのユニコーン企業13社の社名、評価額、分野は下記の通りだ。ソフトバンクが過去に出資したことがあるユニコーン企業には、★印をつけた。
企業名 | 評価額 | 分野 | ★印はソフトバンクが出資した企業 |
---|---|---|---|
One97 Communications (operates Paytm) | 100億ドル | Fintech | ★ |
Snapdeal | 70億ドル | Biotechnology | ★ |
Oyo Rooms | 50億ドル | Travel Tech | ★ |
Olacabs | 43億ドル | On-demand | ★ |
ReNew Power Ventures | 20億ドル | Energy & Utilities | |
Zomato Media | 20億ドル | Social | |
Hike | 14億ドル | Social | |
Swiggy | 13億ドル | On-demand | |
Shopclues | 11億ドル | eCommerce/Marketplace | |
InMobi | 10億ドル | Adtech | ★ |
PolicyBazaar | 10億ドル | Fintech | |
BYJU'S | 10億ドル | Ed Tech | |
Udaan | 10億ドル | e-commerce |
(CB Insigts 公表のリストよりBeyond編集部にて加工)
One97 Communications (operates Paytm)
いま話題のキャッシュレス決済サービスPayPay(ペイペイ)に技術提供しているPaytmは、インド最大の決済サービスだ。QRコード決済はもちろん、モバイルウォレットはECでの買い物や公共料金支払いなど多岐に渡る支払いに対応。
Snapdeal
Snapdealはインドの有名なECサイト。インド最大のECサイト Flipkart (こちらにもソフトバンクは26億ドル出資、すでに売却。米ウォルマート傘下)、アマゾンとインドEC市場を奪い合うが、左記2強に押され苦戦を強いられている。
Oyo Rooms
Oyo Roomsは格安ホテルサービスを提供する。進出した地域の宿泊需給データをAIで分析するというテクノロジーをホテル業界に持ち込み、既存ホテルをフランチャイズ化して部屋数を急拡大している。客室数は世界第1位のマリオットに続いて2位だという。
Olacabs
Olacabsはインドの配車サービスで、Uberとともにインド都市部では生活インフラとして定着しているという。オートリキシャや2輪の配車にも対応しているのは、インドならではのサービス。配車サービス大手のデカコーン・ディディからの出資を受けている。
InMobi
モバイル広告ネットワークを運営するInMobi。200か国をカバーし、月間広告インプレッション数は1,261億、MAUは7億5,800万人にのぼるという。(2019年2月現在・数値はInMobi公式サイトより抜粋)
インドは急速に、R&Dの新たな世界的ハブへ
JETRO(日本貿易振興機構)が発表した「2017年度日本発知的財産活用ビジネス化支援事業エコシステム調査 ~インド編~」によると、R&Dセンターを持つ多国籍企業は、2010年には721社だったが、2016年には943社と急増している。また、インドにある多国籍企業のR&Dセンターで働く人員数も右肩上がりに増加しており、2020年には50万8,000人に達するとの予測だ。
最もホットな上位5セクターは、アナリティクス、フィンテック、トラベルテック、ヘルステックとアグリテック。そのうち、フィンテックとフードテックは2019年も引き続き成長する見込みだという。これらの領域において、インドのユニコーン企業やスタートアップ企業がディスラプターとなる日が訪れるかもしれない。