中小企業の失敗しない人事評価制度の作り方 | 導入事例・おすすめ人事評価システム
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人事評価制度とは
人事評価とは企業が従業員の能力や成果、モチベーションなどを評価することであり、人事評価制度はこれらを評価する基準を定め、適正に運用するための制度です。人事評価制度は、主に次の目的があります。
- 適正な処遇の決定
- 人材育成
- 企業方針の明確化
人事評価制度は企業人事における軸であり、人事評価を元に給与や人事異動、人材育成などを行うため、正確な評価を行う制度を作ることが重要です。
中小企業における人事評価制度の実態
中小企業が抱える大きな問題に人材不足があります。原因の一つは人事評価制度が有効に運用されていないことです。中小企業の人事評価制度は、どのような実態なのでしょうか。
人事評価制度の導入状況
中小企業診断士協会による「中小企業における人事評価制度の現状」によれば、企業規模の小さい中小企業ほど人事評価制度の整備が進んでいません。
また、中小企業庁が発表した「2022年版の中小企業白書」では、人事評価制度の導入割合について次のように記載されています。
従業員5~20人の企業では、人事評価制度があるのは4割未満であるのに対し、101人以上の企業では9割程度となっており、企業規模による差異が大きいことが分かる。
※引用:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第2節人的資本への投資と組織の柔軟性、外部人材の活用」(2023年11月6日閲覧)
人事評価制度の運用状況
「中小企業における人事評価制度の現状」では、運用の中でも従業員の納得性を高めるための取り組みについて、否定的な回答が肯定的な回答を上回っており、十分とは言えない状況です。社員の多くが人事評価に対して、公平感や納得感を得にくいと感じているのです。
原因は、そもそも人事評価制度の重要性を理解していない、制度自体は導入しているものの形骸化してしまっているなどのケースが考えられます。公正な人事評価制度が定着していなければ、生産性が低下するだけでなく、離職率も高まります。
つまり、中小企業こそ人事評価制度の整備が必要不可欠です。これまで評価制度を導入していなかった企業はもちろん、社員の定着率が低い企業は早急に人事評価制度の整備が必要でしょう。
人事評価の不満を解消する方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
中小企業に人事評価制度が必要な理由
中小企業に人事評価制度の導入が必要な理由は、次の3つです。
- パフォーマンスの向上
- 定着率の向上
- コミュニケーションの活性化
パフォーマンスの向上
人事評価制度の導入は、社員一人ひとりのパフォーマンス向上につながります。
中小企業には、限られた人数で高いパフォーマンスを出すことが求められます。人事評価制度を導入すれば、個々の社員が自身の強みや弱みを認識できるようになり、適切な目標をもって達成に向け努力することで強みを伸ばし、弱みの改善にもつながるでしょう。
また、一人ひとりの能力を正しく把握することで、適切な人材配置や人材育成が可能になります。
ただし、評価するだけで終わらせずに、納得感をもって改善に向けて行動できるよう、フィードバックを通じて評価対象者と認識を合わせることも必要です。適切に制度を運用することで、少数精鋭で最大の効果を上げられるようになるでしょう。
定着率の向上
人事評価制度は、社員の定着率を高めることにも有効です。
中小企業にとって離職防止は大きな課題の一つです。 高齢化や人口減少が進み、今後さらに労働力は減少していくと予測されます。なかでも、少ない人数でマルチタスクをこなすことの多い中小企業は、人口減少の影響を受けやすいでしょう。たった一人の退職でも、人手不足により大きなダメージを負う可能性もあります。さらに、新しい人材を雇うには、時間的にも金銭的にも大きなコストがかかるため、離職防止の取り組みは非常に重要です。
人事評価制度を運用すれば、自身の努力が評価され報酬や待遇に反映されたと認識されればモチベーションアップにつながり、離職率の低下も期待できるでしょう。
コミュニケーションの活性化
人事評価制度の運用は、コミュニケーションの活性化にもつながります。
人事評価制度を運用すると、上司と部下1対1で定期的に評価面談を行うことになります。コミュニケーションをとる機会が増えることで、部下が上司に業務の悩みを相談しやすい環境が整備できるでしょう。
中小企業は少ない人数で業務を回すため、一人ひとりの不満や社員間でのわだかまりが全体に影響しやすくなります。しかし、コミュニケーションが活発に取れるようになれば、トラブルの防止や早期発見・解決が可能です。
中小企業が人事評価制度を整備することで解決できる課題・悩み
中小企業をはじめ規模の小さい企業でも、人事評価制度を整備すれば、社員の仕事に対するモチベーションを高められ、生産性も向上できます。社員個人の生産性向上は経営にも大きく寄与し、働き方改革の実現へのステップにもなるでしょう。
BOXILの口コミの中にも、人事評価システムによる制度の整備で、これまでExcel(エクセル)で進めていた業務が効率化し、より公平な評価が可能になったと感じる企業が多いようです。さらに、人事評価のコストパフォーマンスも改善した企業も少なくありません。
より具体的には、人事評価制度の整備によって次のような課題・悩みを解決できます。
人員に関する課題
慢性的な人手不足と離職率の高さに悩んでいる中小企業にとっては、人事評価制度を整備することで優秀な人材に長く勤めてもらえるようになるでしょう。
適正な人事評価ができないと、社員が不満をもち離職につながる原因になります。しかし公正な評価制度ができれば評価の内容にも納得しやすくなります。結果、社員の仕事への満足感が高まり、企業へのエンゲージメントも増大するでしょう。
また昇格基準が明確になることで、モチベーションアップにもつながります。離職率が低下すれば、常に新しい人材を雇い入れる必要がなくなるため、採用の手間やコスト低減が可能です。
業務に関する課題
業務に関する課題としては、評価基準の曖昧さが招く次のようなものがあります。
- 評価者の判断による部分が大きくなり、評価に差が生まれやすくなる。
- 評価者がどのように評価すべきか悩みやすく、評価に時間がかかる。部下の人数が多ければ費やす時間も増えるため、評価者の負担も大きくなる。
人事評価制度を作り基準を明確化すれば、公正に評価できるため各々の社員の強みや能力が明確化するでしょう。結果としてそれが生産性の向上や人材配置の適正化にもつながります。
また、人事評価制度で基準をはっきりさせれば、スピーディーに判断が行えます。これまで評価にかかっていた時間を、より重要な仕事に充てられるようになるため、企業全体の生産性向上にも期待できます。
コミュニケーションに関する課題
近年、テレワークの導入により、社員同士のコミュニケーションに悩んでいる企業は増えています。社員も上司とのコミュニケーションができないために、働きが正当に評価されているか不安を感じている人は多いようです。そこで新しいワーキングスタイルも含めて人事評価を見直すことで、社員同士はもちろん上司と部下とのコミュニケーションを活性化し、企業に対する帰属意識も高められるでしょう。
また人事評価制度の整備によって、社員は管理者から適切な評価やフィードバックを得られるため、上司と部下で信頼関係が構築されやすく、コミュニケーションも活性化できます。さらに、社内に社員の情報が蓄積されていくので、チームや各々の社員の抱える課題を早期に発見し、解決できることもメリットです。
人事評価制度を導入する方法
中小企業が人事評価制度を導入あるいは整備する場合、コンサルティングを依頼する方法と、社内で評価制度を作る方法の2つがあります。
人事評価制度のコンサルティングを依頼する
近年政府の働き方改革の推進や、公正に社員を評価する仕組みづくりは社会からの関心が高まっています。これに伴い、人事のプロフェッショナルによるコンサルティングサービスを提供する業者も増えており、依頼する企業も増えているようです。社内に人事領域の専門家がいないなら、こういったコンサルティングを利用するのも、効率的な手段のひとつと言えるでしょう。
コンサルティングにかかる費用は業者によって変わります。コンサルティング業者を選ぶうえで重要なのは、できるだけ実績やノウハウの多いコンサルタントを選択することです。また、ひとくちに人事コンサルティングといっても分野は多岐にわたるため、人事評価制度の改善したい部分を明確化し、領域に強みをもつ業者に依頼するのがよいでしょう。
社内で人事評価制度を作る
社内でも人事評価制度は整備できます。経営状況に応じて柔軟に制度を変更したい場合や、最初に制度を作ったあとで、運用しながら改善を重ねたい場合は、社内で評価制度を作成するとよいでしょう。
中小企業で人事評価制度を作成するにあたっては、まず社員の評価基準と評価手法を明確にし、十分な猶予をもって導入スケジュールを決めておく必要があります。必要に応じて社員側と相談しながら、ブラッシュアップするのが重要です。
人事評価制度を作成するにあたって知識や経験に不安がある場合は、セミナーを受講するのもおすすめです。中小企業庁や経済産業省など官庁から、民間コンサルティング企業にいたるまで、人事評価制度についてさまざまなセミナーが行われています。
1日で完結するものもあり、実践的な内容を教えてもらえるので、すぐに評価制度に反映可能です。わからないことがあれば質問でき、コンサルティング業者や人事評価システムを導入するにあたってのヒントになることもあります。
人事評価制度の作り方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
動画でも人事評価制度について解説しています。あわせて参考にしてください。
中小企業が気をつけるべき人事評価制度の運用方法
中小企業の人事評価制度を作成・運用する方法について、具体的に解説します。大きくわけて紙やExcelで評価シートを作成する従来型の手法と、人事評価システムによる運用があります。
紙やExcelなどの評価シート
紙やExcel、スプレッドシートなどの人事評価シートを作成する方法は、多くの企業で運用されています。メリットとしては、導入コストがかからないこと、特別な知識を必要としない点が挙げられます。一方で、データの共有や確認にどうしても時間がとられてしまい、情報の蓄積・共有しにくいのがデメリットです。
とくに大量の人事データを扱わなければならない大企業の場合、紙やExcelでのデータ管理は難しいところがあります。過去のデータの確認がしにくかったり、人事評価の進捗が把握できなかったりする弊害があり、評価の集計にも手間がかかるでしょう。そのため中小企業のようにある程度データが管理しやすい規模の企業におすすめです。
人事評価システムの導入
もう一つの方法として、人事評価システムを導入して評価を行う方法があります。多くの企業が上記の紙やExcelでの管理から、人事評価システムを活用した評価にシフトしており、シェアも高まっています。導入コストはかかるものの、人事評価の作業量を削減でき、業務の効率化が可能です。
とくに人事担当者は必要な情報を効率的に収集および閲覧でき、評価の進捗状況も把握しやすいので、全体の生産性が大きく向上します。さらに、情報を一元管理できることで各々の社員の強みを見出しやすく、適材適所の人材配置を可能にするメリットもあるでしょう。正当な評価につながるため、社員の仕事へのモチベーションアップにも寄与します。
人事評価システムはさまざまな評価基準が設定されており、内容はシステムによってさまざまです。システムの人気ランキングや知名度ではなく、どのような評価基準によって作られたシステムなのか、導入目的や課題解決に適したシステムなのかをチェックすることが大切です。システムによってはデモや無料プランを提供しているところもあるので、システムや使い勝手を試してから導入を検討するとよいでしょう。
中には中小企業向けの人事評価システムもあるため、あわせてチェックするのもおすすめです。
中小企業における人事評価制度の作り方
それでは、中小企業における具体的な人事評価制度の作り方について紹介します。次の順番で評価制度を構築するのが一般的です。
1.制度導入の目標設定を行う
やみくもに評価制度を導入するのではなく、まずは賃金形態や企業理念などにもとづき、導入後に評価制度がどのような状態で運用されるべきか、目的と目標を明確化しましょう。そこに向かって具体的な運用を考えなければ、一貫性のある制度設計はできません。
人事評価制度導入後の目標設定の例は、次のとおりです。
- 人事評価を通じていかにビジョンを社員に浸透させるか
- 最適な人材配置にするために必要な事柄
- 社員の満足度が向上するような施策を制度に盛り込むこと
それぞれの項目について、達成すべき具体的な目標を設定しましょう。
2.評価基準を決める
人事評価制度の運用目的や設定した目標に合わせ、能力評価・成果評価・情意評価を組み合わせて評価基準を決めます。
- 能力評価:社員の職務遂行能力を評価するもの。日々の業務や問題が発生した場合の対応能力の評価
- 成果評価:任意の期間における社員の目標達成の度合いや過程の評価
- 情意評価:仕事への向き合い方や姿勢の評価
たとえば営業担当者の場合、成果評価は個人の売上目標をどの程度達成できたかが評価項目となるでしょう。情意評価は日々の業務態度や遅刻・欠勤の状況を評価します。ただし上記2つの項目に比べて評価者の主観が入りやすいため、さまざまな角度から可能な限り客観的に評価しなければいけません。
これらのうち、どの評価項目を重視するかは企業によって違います。企業理念や経営目標に沿った組み合わせを考えましょう。
3.評価手法を決める
評価基準を決めたら、実際に社員の評価方法を選択します。多くの企業では管理者が部下の評価を行っていますが、最近では管理者に加えて同僚や部下からの評価も査定に含める、360度評価やMBOといった手法を取り入れる企業も増えているようです。代表的な評価手法は次のとおりです。
MBO(目標管理制度)
MBO(目標管理制度)はピーター・F・ドラッカーが提唱した制度で、社員がみずから達成すべき目標を設定し、達成度合いを人事評価に加える方法です。社員がみずから目標へ向かって行動できるように促す効果があるといわれており、達成度合いを人事評価に加えることにより、各社員の能力開発やモチベーションの向上が期待できます。
ただし、職種や部門によっては明確な目標設定が難しい場合もあるので、できる限り公平・公正な評価ができるように工夫しなければいけません。他の制度と組み合わせて運用し、評価の公平性を担保するのもよいでしょう。
MBOとは何か次の記事で解説しています。
360度評価
360度評価は管理者のみならず、評価対象となる社員の同僚や部下など、さまざまな関係者の意見を人事評価に加える手法です。
360度評価は社員を多角的に評価する方法であり、管理者側は評価にかかる時間を削減できます。また社員側も多面的なフィードバックを得られるので、新たな気づきを得られるメリットがあります。
さまざまな社員の評価や意見が加味されるため、個人の主観によらない客観的な評価を得られるのが特徴です。最近では多くの企業が360度評価を採用しており、一定の成果を挙げています。中小企業では、評価する側の人員が少なかったり制度が整っていなかったりと、人事への負担も偏りやすいため、360度評価を併用することで効率的に公平な成果が得られるでしょう。
360度評価について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、社内で高いパフォーマンスを発揮している人の行動特性を分析し、それを基準として社員一人ひとりの評価を行う手法です。優秀な成績を上げている社員や、継続的に一定の成果が上がっている社員をベンチマークとして、実際の行動ベースで評価します。
実在する社員を評価基準とするケースが多い一方で、理想の人物像を設定することもあります。
会社で成果を出している社員の行動を評価基準とする場合、他の社員も評価されるポイントをつかみやすいので行動方針を決めやすく、企業側も効率的に人材育成できるのがメリットです。
コンピテンシー評価とは何か、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
4.実際に評価を行い継続的にアップデートする
評価手法を定めたら、実際に評価を行いましょう。導入したばかりの制度は不具合が起こる場合も多く、運用上の課題も発生しがちです。そのため常にブラッシュアップを行って、評価制度をアップデートし続けなければいけません。
また、評価者の育成や社員へのフィードバックも必要です。評価基準や評価内容についても社員に開示し、意見を求めましょう。
評価の方法についてはこちらの動画でも紹介しています。
中小企業における人事評価シートの作り方
まずシートに書き込む項目としては、次のものが挙げられます。
- 達成度
- 来期の目標
- 職場の活性化のために行ったこと
- 自己啓発
「達成度」は、今期設定した目標に対しての達成度(%)、コンピテンシー評価であれば行動基準をどの程度満たしているかを記入します。「職場の活性化のために行ったこと」は、具体的に職場を明るくする行動や、働きやすい職場にするために貢献したことなどを記入します。
「自己啓発」は、多くの人事評価シートに含まれている項目で、自分を高めるために勉強したことを書き込む項目です。資格取得の勉強や参考書の読書など、アピールできる点を記入します。項目には「1・2・3・4・5」「A・B・C」といった、定量的に入力できる部分を作ることで、評価がしやすくなるでしょう。
大企業では部署・組織ごとに人事評価シートを作っていることも多く、中小企業の場合は部署ごとの作成は無理でも、自社に合わせて内容をカスタマイズするのが重要です。次の記事では、人事評価シートのより詳しい作り方や、Excel(エクセル)のテンプレートを紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
中小企業が人事評価制度を導入・整備すべきタイミング
規模の小さな会社では、評価制度は必要ないと考えるかもしれません。しかし、次のようなタイミングの場合は、人事評価の導入がおすすめです。
また、すでに人事評価制度を導入している場合でも、次のタイミングで制度の見直しを行いましょう。
- 従業員数が50人を超えたとき
- 社内制度を見直すとき
- 人材を採用するとき
従業員数が50人を超えたとき
人事評価制度を導入すべきタイミングの一つは、社員の人数が増えたときです。目安としては、50人以上になったタイミングで、制度の導入を検討するとよいでしょう。
20人以下の小規模事業者であれば、経営者が全員の状況を把握できるかもしれませんが、人数が増えると目が行き届かなくなります。たとえば、50人以上の規模になると、全員の名前や担当業務などを把握できないことが多くなるでしょう。
しかし、従業員が自身の仕事を適切に評価してもらえないと、不満を感じたり、仕事へのモチベーションが低下したりする恐れがあります。不満を募らせないためにも、従業員数が50人以上になったときには、人事評価制度を導入した方がよいでしょう。
社内制度を見直すとき
社内の制度を見直すときも、人事評価制度を導入するタイミングです。
働き方改革の推進に伴い、テレワークの導入や、残業時間削減といった取り組みが求められています。しかし、フレックスタイム制やテレワークにより直接顔を合わせる機会が減ると、勤務態度を確認できないため、公正な評価がしにくくなるといった課題が出てきます。そのため、働き方改革を進めるときには、人事評価制度を導入した方がよいでしょう。
また人事評価をすでに導入している場合でも、従業員の意欲や定着率が低いなどの状況にある場合は、モチベーションアップや離職防止のために、人事評価制度の見直しを行うとよいでしょう。
人材を採用するとき
新しい人材の採用をする際にも、人事評価制度は重要な役割を果たします。
人数の少ない中小企業にとっては、従業員一人の活躍が業績に大きく影響するため、採用力を向上させることが重要です。近年は価値観が多様化しており、年功序列や学歴主義による評価ではなく、実力で正当に評価される会社が求められています。そのため、人事評価制度を整えて採用活動でアピールすれば、優秀な人材を採用できる可能性が高くなるでしょう。
さらに、人事評価制度の導入で個々の能力や適性を正しく把握していれば、どのような人材を採用するべきかの分析も可能です。これは採用後のミスマッチによる、早期離職を防ぐことにもつながります。
人事評価制度を取り入れた中小企業の事例3選
次に、人事評価制度と取り入れた中小企業の成功例を紹介します。ぜひ自社で作る人事評価制度の参考にしてください。
大王電機株式会社
- 従業員数:108名
- 事業:生産設備・検査装置の開発、計測器の校正など
兵庫県伊丹市にある大王電機は、財務的には無借金体質を維持していたものの、今後の大きな成長が見込めない状況でした。そこで経営理念・ビジョンと中期経営計画を策定する中で、人材の採用や育成をメインとして、人事評価制度を構築するといった体制の見直しを図りました。
具体的な取り組みとしては、経営ビジョンにもとづいた職務等級を設定し、等級ごとの役割を明確に定義。また上司との面談を通じて目標設定と進捗管理を行うことで、評価制度を整えました。
結果経営ビジョンにより従業員がなんのために働くのかが具体化され、価値観が統一されました。また従業員一人あたりの生産量が増加し、営業の顧客対応力が上がったことで、既存顧客の受注増加や新規顧客獲得につながったそうです。
※出典:中小企業・小規模事業者の人材活用事例集(2023年11月6日閲覧)
すててこ株式会社
- 従業員数:43名
- 事業:卸売業・小売業(衣料品)
福井県あわら市にあるすててこは、慢性的な赤字状態から抜け出すため、2014年に店舗販売からネット通販へと業態転換を図りました。また財務数値と従業員の貢献度が見える化できていなかったため、体制を変更。
毎月財務数値の概要を従業員に共有し、従業員の行動を何に何分使ったかまで数値化した日報を、作成するようにしました。日報のデータは月ごとに集計して分析した結果を元に毎月面談を実施。最終的に経営計画発表会で設定したチャレンジ目標に対して、どの程度達成したかを評価する制度を構築しました。
見える化を軸とした成長評価や改善活動もあり、売り上げは2011年では約2億円だったものが、2021年には約10億円、つまり10年間で約5倍にまで拡大できました。
※出典:中小企業・小規模事業者の人材活用事例集(2023年11月6日閲覧)
ベルテクネ株式会社
- 従業員数:108名
- 事業:金属製品製造業
福岡県須恵町にあるベルテクネ株式会社は、長年のトップダウン経営の影響で社員から一歩距離を置かれ、社員の声が届かない状況になっていました。これに対し「経営判断を誤ってしまう」と危惧した会長は、社員と信頼関係を構築するための取り組みを実施。
具体的には、社員が匿名で経営陣を評価できる「経営チェックシート」を作成し、年に1回社員が回答したデータを収集・分析しました。また経営陣は結果から見える社員と経営陣との考え方の溝を確認し、社員との対話によりこれを一つずつ埋めていきました。
そのほかにも、決算書や役員報酬、取締役会の資料・議事録もすべて社内に開示し、経営の透明性を向上。結果経営陣に対する社員の信頼を徐々に獲得し、社員自体に主体性が身に付いたことで経営参画意識の高い社員を生み出しました。この効果は業績や採用面にも表れており、会長が社長に就任した2006年から16年間で売り上げが2.5倍、社員数も2倍に増加しました。
※出典:2023年版中小企業白書 第2部変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業(2023年11月6日閲覧)
中小企業が人事評価制度で失敗しないための運用
人事評価制度を失敗しないためには、どのような運用をすればよいのでしょうか。ポイントとなるのは、次の5つです。
- 管理職からの理解を得て運用する
- 人事評価の目的を明確にする
- 公平な視点で評価する
- フィードバック面談を行う
- 人事評価システムを導入する
管理職からの理解を得て運用する
人事評価制度の導入について、管理職から理解を得て運用しましょう。
中小企業では、一人で多くの仕事を抱えて業務を回しており、人事評価を導入すれば、さらに仕事を抱えてしまいます。新しく人事評価制度を導入すると、管理者から「通常業務で忙しく、評価まで手が回らない」といった声が挙がる可能性もあります。かといって、管理職からの理解を得ないままに運用を進めても、評価制度を定着させるのは難しいでしょう。
そのため、人事評価制度を新たに導入したり変更したりする場合は、事前研修や説明会を開きましょう。評価制度の導入時に、目的や運用方法について明確に示し、管理職からの理解を得たうえで体制を整えることが大切です。
人事評価の目的を明確にする
評価制度の失敗を防ぐには、評価の目的を明確にすることも重要です。
人事評価制度の主な目的は、適切な人材配置や人材育成、生産性や定着率の向上です。中には評価自体が目的化してしまうケースもありますが、それでは本来の目的を達成できません。評価自体が目的にならないよう、管理者と定期的に目的の認識を合わせたり、運用体制に問題がないか意見をもらったりするとよいでしょう。
また人事評価制度について、「給与や昇給など待遇へ反映させるためのもの」と考えている人も少なくありません。しかし、昇給のような待遇への反映は、目的の一部です。目的を正しく認識できていないと、評価制度の失敗につながる原因となるため注意が必要です。
公平な視点で評価する
人事評価は、公平な視点で評価をするよう評価者に徹底させましょう。
評価者の知識や経験が浅い場合には、評価に主観が入りやすくなります。しかし、評価者に主観が入り込んでは、正当な評価ができません。不公平な評価は納得しにくく社員の不満を生むことにつながります。
そのため、評価項目の設定は、評価者の主観で評価が変わることのない、明確な基準が必要です。また、公平な人事評価を行うためには、人事評価への理解を深めてもらえるよう、評価者への研修を行いましょう。
フィードバック面談を行う
評価を行ったら、それを元に定期的にフィードバックを行いましょう。
ただ評価をしただけで終わってしまっては、対象者本人の成長につながらないだけでなく、自身のどこが悪かったのかがわからず不満を抱く場合もあるでしょう。対象者の不満を払拭するために、フィードバック面談では、具体的な例を提示して、なぜこのような評価結果にいたったかを説明します。
面談では、今後の活躍のために目標設定をすることも大切です。それにより、モチベーションやスキル向上などが期待できるほか、対象者の成長を促すことにもつながります。また、フィードバック面談では、評価者が威圧的な態度をとらないように気をつけましょう。感情的にならずに客観的なフィードバックをすることで、信頼関係の構築が可能です。
人事評価システムを導入する
人事評価システムを導入することも有効です。
ExcelやGoogleスプレッドシートで評価表を管理する場合、利用費はほとんどかかりませんが、人数が多くなると管理するデータ量が増え、管理がしにくくなります。また、間違ってファイルを削除してしまう、入力ミスが発生するなどのミスにより効率が悪くなることもあるでしょう。さらに、メールで誤送信する、紙ベースのデータを紛失するといったリスクもゼロではありません。
一方で、人事評価システムは手作業をする必要がなく、人的ミスの防止になります。また、評価の入力や管理・共有もしやすくなり、業務の効率化を図れるでしょう。セキュリティ対策もされているため、データの流出リスクも低減できます。社員が多く管理がしにくい場合にはシステムの導入を検討しましょう。
人事評価制度を定着させるために役立つ中小企業向け人事評価システム
中小企業での人事評価は、担当者も少なく運用が大変です。そこで評価制度の定着や、運営に役立つ代表的な人事システムを紹介します。
カオナビは人事評価ワークフローを効率化してくれる、タレントマネジメントシステムです。人材情報の見える化・一元化によって人事業務にかかる手間を削減し、社員がみずからの強みを活かせる人材配置を実現し、採用のミスマッチを防げます。さらに、社員のモチベーション分析や離職分析などもできるため、採用コストの削減に役立つでしょう。
HRBrainは人事データの活用からタレントマネジメントまで幅広く活用できるシステムです。人事評価管理から人事制度の構築、タレントマネジメントなど、さまざまな課題に対応できるクラウドサービスです。スタートアップ企業から大企業まで、業界・業種を問わず導入されています。幅広いデータを自由にかけ合わせて分析できるので、論理的でデータドリブンな人事の実現に寄与します。
HRMOSタレントマネジメント - 株式会社ビズリーチ
HRMOSタレントマネジメントは社員の入社から活躍まで、さまざまな人事データを連携させて評価を行える人材活用プラットフォームです。データにもとづいた客観的な人事判断が可能になるため、組織の継続的な成長に役立ちます。従業員管理・人事評価に活用できる「人材管理クラウド」と「採用管理クラウド」があり、連携してデータを活用できます。どちらもシンプルで初心者にも使いやすいため、どのような業種でもスムーズに導入・運用できるのが特徴です。
あしたのクラウドHR - 株式会社あしたのチーム
あしたのクラウドHRは、社員のデータベースから目標設定・人事評価・給与管理まで、一元的に行えるクラウドシステムです。またクラウドの各種機能に加え、「おせっかい」なほどの人事評価構築・運用支援も用意されているのが魅力です。人事ワークフローの改善を中心に、人事評価と給与の適切な調整や、ビッグデータを活用した人事課題の解決に活用できます。現状の評価制度を効率化して再現するのはもちろん、新しい人事評価制度の導入にも役立つでしょう。
あしたのチームは最短1か月で制度を構築し、月額制で運用を支援するクラウド型の人事評価制度運用サポートサービスです。社員数にもとづいたリーズナブルな価格設定で利用でき、飲食や人材・製造、卸売・小売、住宅業界まで幅広く導入されています。新しい人事評価制度を導入したい企業におすすめです。
CYDASは社員のパーソナルプロファイルの管理や人材情報収集機能など、人材管理に必要なアプリケーションを選択して利用できるクラウドサービスです。Google ドライブやSlackなど、さまざまなアプリケーションとのAPI連携も可能で、既存の人材管理システムに組み込むことで人事領域の業務を効率化できます。導入から活用まで丁寧なサポートも受けられます。
タレントパレット - 株式会社プラスアルファ・コンサルティング
タレントパレットは、データを活用した人事戦略が可能になる、クラウド型タレントマネジメントシステムです。さまざまな人材データを一元化・蓄積することで、配置から育成・採用・社員満足度向上など、分析にもとづいた科学的人事戦略を豊富な機能で実現します。
スキルナビはデータの入力負担が少なく、長期的に使いやすいタレントマネジメントシステムです。マネジメント層と社員側、それぞれの立場に向けたマネジメント機能が揃っているので、全社的に人材の適正化・効率化を実現できます。360度評価やBSCベースの評価などにも対応可能です。数あるタレントマネジメントシステムの中でも導入費用が安く、コストパフォーマンスの高さも魅力です。
本記事で紹介した人事評価システムも含め、こちらの記事ではおすすめの人事評価システムを比較しています。
人事評価制度の整備で適切な評価を実施しよう
人事評価制度は規模に関わらず必ず導入すべきもので、社員の公正な評価には欠かせません。
人事評価制度を作る場合には、まず制度がどのように運用されるべきか、理念や目標を元に設定します。そして、評価基準を決め、適した評価方法を選択しましょう。評価制度の定着には人事評価システムの導入がおすすめです。うまくシステムを活用することで、人事部門の手間を削減し、効率的かつ正確な人事評価ができるでしょう。
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