セゾン、パナソニック、アクセンチュアほか「正社員化」の成功事例、3つのパターン別に解説

「非正規という言葉をこの国から一掃する」――、2016年の第3次安倍内閣発足時に安倍首相が発した言葉だ。実際に、非正規社員の「正社員化」に踏み切る企業も出てきている。その背景と施策の内容から、今後企業として取り組むべきことを探る。

セゾン、パナソニック、アクセンチュアほか「正社員化」の成功事例、3つのパターン別に解説

最近注目されている「多様な正社員」制度とは?

非正規社員の「正社員化」がニュースになることが増えてきた。最初に目に入るようになったのは、2014年頃。スターバックスやユニクロ、イケアといった小売業で、パート・アルバイトや契約社員を正社員に転換する施策が注目された。ここ1年ほどは、働き方改革における「同一労働同一賃金」や、労働契約法に定められた「無期転換ルール」など、法制度の変化や、それを受けた企業の動きが様々に報じられている。

企業が実施する「正社員化」には以下の2つがある。

(1)「多様な正社員」と呼ばれる従来の正社員とは異なる社員区分の新設
(2)非正規社員だった従業員の(従来の正社員と同じ条件での)正社員登用

「契約社員として一定の成果を出し、正社員に登用された」とか、「派遣社員として長年勤め、正社員になれると期待していたのに派遣切りにあった」といった話題でイメージされるのは主に(2)のケースだが、今回は(1)の「多様な正社員」というしくみについて考える。

そもそも「正社員」の定義をおさらい

「正社員化」について論じる前に、「正社員」とは何かを整理しておきたい。実は「正社員」という言葉の法的な定義はないが、一般的には以下の3つの要件を満たす従業員が「正社員」と呼ばれてきた。

・労働契約の期間の定めがない(定年まで働き続けることができる)
・所定労働時間がフルタイムである
・直接雇用である

厚生労働省では、これに加えて「多様な正社員」という考え方を打ち出している。これは勤務地限定、職務限定、勤務時間限定など、何らかの制限がありつつも、定年までの無期雇用である従業員を指す。

例えばユニクロが現在も募集している「地域正社員」は、転勤なし、週20時間以上であれば短時間勤務も相談可、という「多様な正社員」の一種だ。企業によるが、従来型の正社員と同等かそれに近い福利厚生や教育研修、昇給・昇格のチャンスも与えるケースが多い。

以前であれば、転勤あり、フルタイム(残業あり)、仕事の内容は無限定……、という条件を受け入れることが正社員雇用の前提であった。しかし、人手不足への対応や人材の多様性の重視という観点から、何らかの制約のある人材も正社員としての待遇をしようという動きが確実に増えてきている。

その背景や期待する効果により3つのタイプに分け、企業が「多様な正社員」の導入に取り組む事例を紹介する。

パターン(1)制約のある社員にも成長やキャリアアップを期待

「同一労働同一賃金」の原則が浸透していない日本では、正社員と比較して非正規社員の待遇が低いことや昇進・昇格の可能性に制限があることが当然のことだと思われてきた。

しかし、その会社で長く働く意思があり、経験やスキルが十分あるならば、勤務時間や勤務地などの制約があっても正社員と平等に扱い、より力を発揮してもらった方が会社の利益にもなる、と考える企業が出てきている。

事例1. 有期雇用者を無期転換し、全社員共通人事制度に移行したクレディセゾン

クレジットカード大手のクレディセゾンは2017年9月、地域や職務が限定された専門職社員や嘱託社員など、複数あった社員区分を撤廃し、雇用形態や処遇を「全社員共通人事制度」に統一した。

元々は総合職社員といういわゆる従来型の正社員の他に3つの社員区分があり、雇用期間、賞与の有無、退職金の有無、職務内容の限定の有無、給与制度(月給/時給)などの違いがあった。

新制度では、基本的に全員が無期雇用。給与は月給制で賞与の支給対象となり、福利厚生制度も同一のものを適用し、退職金(確定拠出年金)も全員対象となった。

また、職務の限定を撤廃して評価制度も統一した。例えばコールセンターのスタッフとして雇われていた社員が、今後の評価や本人の希望によっては管理職に昇格したり、別の部署に異動したりすることもあり得る。

同社はこの制度変更の目的を、「持てる人材のパワーを最大限にするための戦略」だとしている。

フィンテックの台頭など変化の激しい業界において今後も持続的成長を続けるためには、社員にチャレンジ精神を持って力を発揮してもらうことが必要となる。そのためには、全体の4割程度である総合職社員だけでなく、それ以外の社員にもより戦力になってもらうという狙いが、同社の「正社員化」の背景にあるのだ。