「同一労働同一賃金」大企業では2020年4月、中小も21年から導入へ

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記事の情報は2017-12-27時点のものです。

正規雇用者と非正規雇用者の待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が大企業で20年4月、中小でも21年4月から実施されます。政府が公表しているガイドラインに沿って、給与、賞与、福利厚生などの待遇差の有り・無しを解説しました。
「同一労働同一賃金」大企業では2020年4月、中小も21年から導入へ

同一労働同一賃金を含む「働き方改革関連法」が、2018年6月に成立しました。大企業は2020年4月、中小企業においても2021年4月からは正式に導入される見込みです。基本給はもちろん、賞与や福利厚生から休暇や研修に至るまで、正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて対価を決める制度です。


※記事の内容は公開時のものです

同一労働同一賃金とは

法整備に先立ち、2016年12月にガイドライン案も公表されている同一労働同一賃金。この1年で、その言葉はすっかり浸透しました。

同一労働同一賃金が目指すのは、なんといっても正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保。

具体的には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消をはかるために両者を比較し、前提が同じなら待遇も同じ(均等)、前提が異なるなら、バランスのとれた待遇(均衡)を求めるものです。

待遇差の改善といっても給与、賞与、福利厚生など、何がどこまで求められるのか、分かりづらいとお悩みの経営者の方も少なくありません。

ちなみに、同一労働同一賃金の目的は非正規労働者の待遇改善なので、均等・均衡をベースに待遇を見直した結果、労働者の待遇を下げるようなことがあってはならないとされています。

ただし、長期的な観点で考えると支給基準や評価制度の見直しにより、待遇が向上する労働者が出る一方で、将来的に今より待遇が下がる労働者が出てくる可能性も十分あり得るというのは、よくとりだたされる問題点です。

ここでいう正規雇用労働者とは、期間の定めのない雇用契約を結びフルタイムで働く労働者で、具体的には正社員や無期転換したフルタイム労働者が該当します。

非正規雇用労働者とは、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者を指し、この非正規で働く方が同一労働同一賃金制度の導入による待遇改善のターゲットです。

そうなると、正社員と無期転換したフルタイム労働者の間に待遇差がある場合はどうすればよいのかも気になるところですが、両者の間の均等・均衡は当然確保できている前提の話ととらえてください。同一労働同一賃金の話は、あくまで正規と非正規の待遇差を改善するものです。

もうひとつ問題点となるのは、派遣労働者への対応です。非正規雇用労働者の枠組みには派遣労働者も含まれているのですが、派遣労働者はその他の非正規の方とは分けて考える必要があります。

派遣労働者については労働者派遣に関する法律で、派遣先の労働者との均衡を考慮するよう定められており、今後の法整備においては、企業の垣根を超えた同種の業務に従事する労働者の賃金水準との比較も盛り込まれる予定になっています。

同一労働同一賃金で問題となる「不合理な待遇差」とは?

不合理な待遇差については、パートタイム労働法と労働契約法において、下記3つの前提条件(考慮要素)をもとに判断することとされています。

現行法では、考慮要素にどのような違いがあるとどのような待遇差が合理あるいは不合理と判断されるのか、この問題点については具体的な基準までは規定されていません。

次の段落からは、同一労働同一賃金制度を導入する際の具体的な判断基準を紹介しますので、確認してみてください。

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同一労働同一賃金、給与における待遇差のアリ・ナシ

まず、正規と非正規で賃金テーブル賃金の支給基準が異なるという会社は非常に多いと思います。また、賃金テーブルや賃金の明確な支給基準自体が存在しないという会社も数多く存在するのではないでしょうか。

実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な就業形態に関する実態調査」(平成23年)によると、無期・有期パートに正社員と同じ賃金表・テーブルを同様に適用している割合は1.3%、有期社員に正社員と同じ賃金表・テーブルを同様に適用している割合は6.6%です。

また、厚生労働省「平成21年就労条件総合調査」 によると、非管理職社員の賃金表がある企業の割合は、従業員数33〜99人規模の企業では65.3%にとどまります。

先に言ってしまうと、賃金テーブルや給与の支給基準が存在しないという問題を棚上げしたままでは、同一労働同一賃金を考えることは不可能です。

まずは、職務や能力等を明確化しましょう。そして、その職務や能力等と給与等の待遇との関係を含めた処遇全体を確認し、明確に説明できる状態に変えていくことが必要です。

その上で、正規・非正規の間に待遇差がある場合は、どんな考慮要素をもとに待遇に差を設けたのか具体的に説明できる状態にしておくことが求められているのです。

正規・非正規の賃金テーブルを見直す場合は、できればこの機会に賃金テーブルを1本化することが望ましいですが、難しい場合は2本に分ける理由を具体的に説明できるようにしておきましょう。

ここからは、具体的な項目ごとに正規と非正規で待遇に差をつけることの合理性が認められるか否か、問題点に沿って解説していきます。