【図解】働き方改革とは?背景と課題、推進のポイント7つと企業事例まとめ

働き方改革が必要とされる社会背景や、企業が働き方改革を推進して解決すべき2つの課題を図解し、働き方改革の基礎知識をまとめた。働き方改革を推進する7つのポイントと企業の働き方改革事例を紹介するとともに、働き方改革の最終ゴールは「知的生産性の向上」であるとの考察をまとめた。働き方改革関連法が成立したが、減らない残業や副業の是非など課題は山積だ。個人と企業が自律的に働き方改革を進める一助となれば幸いである。

【図解】働き方改革とは?背景と課題、推進のポイント7つと企業事例まとめ

働き方改革の背景にある「3つの事情」とは

働き方改革関連推進法が成立し、2019年4月より残業時間の上限規制などいくつかの対応が迫られている。しかし、働き方改革がこれほどまでに叫ばれるようになった背景とは何だろうか?

本記事では、働き方改革が必要だとされる理由を3つの観点から紹介したい。1つめは人口減少(日本社会の高齢化)、2つめはテクノロジーの進化、3つめは人生100年時代の到来だ。詳しく解説しよう。

働き方改革の背景(1)人口は減少の一途

・2025年問題:団塊の世代が75歳以上(後期高齢者)に。人口の3割が65歳以上になる。

・2050年問題:人口の約4割が65歳以上になる。

・2060年問題:働き手となる15歳〜65歳(生産年齢人口)は、人口の約半分まで減少。

平成28年版「通信情報白書」によると、日本の人口は2060年には3割減の8674万人になると予測されている。就業して生産活動の中核をなすとみなされる「生産年齢人口」にいたっては、4割減の4418万人にまで落ち込む見通しだ。

出典:平成28年版通信情報白書(総務省)

超高齢化社会に備えるためには、女性や若者、高齢者などの労働力が必要となる。多様な人々が活躍できる「一億総活躍社会」を実現するためには、育児や介護や病気の治療などのプライベートと仕事を両立できるよう、企業や社会全体で多様な働き方を推進しなければならないのだ。

すでに人手不足が叫ばれて久しい。有効求人倍率は1.5倍を超えてなお、右肩上がりで上昇中だ。今後も人材難に苦しむ企業は加速度的に増えるだろう。企業は多様な働き方を戦略的に整備し、優秀な人材の確保と離脱防止につとめる必要がある。

働き方改革の背景(2)テクノロジーが進化

働き手からすると、いまは空前の売り手市場。だが、安心してはいられない。RPAやAIなどテクノロジーの進化はめざましく、「大手企業の正社員=安泰」という働き方はすでに崩壊しつつある。また、テクノロジーの進化により、労働環境のみならず産業構造が大きく変わる局面を迎えている。

【テクノロジーの進化による代表的な変化】
・機械に仕事が奪われる、仕事の内容が変わる(RPA、AI)
・産業構造が変わる(ブロックチェーン、スマートコントラクト、IoT、AR/VR)
デジタルディスラプチャーの台頭、シェアリングエコノミーの発展(代表的な企業はUber、Airbnb、WeWorkなど)

つまり人口減少を背景とした、テクノロジーの活用で業務効率化をはかるという意味での「働き方改革」だけではなく、事業やビジネスモデルそのものを見直して新たな付加価値を創出するというイノベーションが求められているのだ。

政府主導の労働生産性向上にだけ焦点を当てた「働き方改革」では、変革を起こせない。知的生産性向上をともなうことが、企業がイノベーションを起こせる鍵となる。

働き方改革の背景(3)人生100年時代の到来

いま医療やヘルスケア、新薬の分野がめざましく発展しており、健康寿命は飛躍的に伸びると予測されている。内閣府の発表によると、日本は「世界のどの国も経験したことのない高齢社会」を迎えるそうだ。

出典:平成28年版高齢社会白書(内閣府)

安倍総理は2017年に「⼈⽣100年時代構想会議」を開き、同会議にはLIFE SHIFT(ライフシフト)著者のひとりであるリンダ・グラットン氏も招聘した。

グラットン氏が提出した資料によると、日本で2007年に⽣まれの⼦どもの50%は、107歳まで生きる。超高齢化社会を迎え社会保障システムの見直しもせまられるいま、70歳、80歳まで現役として働く人生が現実味を帯びてきているのだ。

【人生100年時代への対策として求められる行動】
・学校に行って、就職して定年まで働いて、引退、という3ステージの脱却
マルチステージ型の人生への転換
・生涯学び続けること、大人の学び直し

この大変革の時代に現役期間が伸びるということは、決められた仕事を効率よくこなすだけでは生き残れない。個人個人が自己研鑽し、知的生産性の向上を目指すほうが懸命だ。副業やNPOへの参加もいいだろう。

働き方改革によって解決すべき「2つの課題」とは

多様な人が活躍しやすく、テクノロジーを活用し、長く元気に働き続けるためには「働き方改革」が不可欠である。企業が取り組むべき課題を2つに絞って紹介したい。

1つめの課題は、長時間労働の是正。日本人の労働生産性は主要先進国7カ国のなかでは最下位だ。2つめの課題は、正規と非正規の格差是正である。業務を可視化し多様な人が働きやすく評価される組織が必要だ。

働き方改革で取り組むべき課題(1)「長時間労働」の是正


・労働生産性:日本の時間あたり労働生産性は4,694円、主要先進7カ国のなかでは最下位。

・有給消化率:日本人の有休消化日数は平均10日、2年連続世界最下位。

「労働生産性の国際比較 2017年版」によると、日本の時間あたり労働生産性はOECD加盟国35か国中20位、アメリカの約3分の2である。主要先進7か国のなかでは、47年連続の最下位だ。

出典:労働生産性の国際比較 2017年版(OECD)

これは、1日の労働時間の長さもさることながら、日本人が「休まない」ことも起因しているのではないだろうか。欧米では1か月もの長期休暇でしっかりリフレッシュし、生産性高く働くスタイルが一般的だ。

日本では有休取得日数は10日前後。しかも小分けにして取得している。「罪悪感がある」「休んでも仕事は減らない」というコメントも印象的だ。

業務の効率化をはかって長時間労働を是正し労働生産性をあげために企業は、「業務量の削減」と「休みやすい雰囲気づくり」を両輪で進める必要があるだろう。

2018年1月22日に召集された通常国会、通称「働き方改革国会」では、36協定の見直し、残業時間の罰則付き上限規制、インターバル規制などの法改正が検討される予定だ。

働き方改革で取り組むべき課題(2)「正規 VS 非正規の格差」の是正


・正規と非正規の賃金格差 → 正規:非正規=100:65

・男女の賃金格差 → 男性:女性=100:73

・男性正社員と女性非正規の生涯年収差 → 約1億円

「1日8時間以上、週5日働けて、出張や転勤はいつでも対応可」。

日本で正社員といえばほとんどの場合、このような均質的な働き手をさしている。逆にいうと、その前提で働けなくなった人は非正規として働くしか道がないのが現状だ。

平成28年「賃金構造基本統計調査」によると、正規と非正規の賃金格差は激しく、改善傾向とはいえ非正規の賃金は正社員の6〜7割にとどまっている。

出典:平成28年「賃金構造基本統計調査」男女別、正規VS非正規の賃金格差

平成28年「労働力調査」によると、非正規の7割近くが女性である。かの有名なM字カーブ(女性の年齢別就業率をグラフにしたとき、30代前半で就業率が急に下がる現象)が示すように、育児や介護などの事情を持った女性は非正規として働かざるを得ない。

リーマンショック直後の超氷河期時代に就職し正規雇用されなかった若者、出産・結婚や介護のため働き方を変えざるを得なかった女性、管理職ポジションにつけなかった55歳以上などのシニア層、障がいを持つ方などが、パートやアルバイト、派遣などの非正規として働いている。

出典:平成28年「労働力調査」 非正規の性別・年齢別内訳

非正規労働者は研修やOJTなど教育の機会や成長機会も少ないため、いちど非正規として働くと正社員になることが難しいという側面もある。厚生労働省の発表によると、正社員になりたいのになれない「不本意非正規」は296万人もいる。

しかしいまは、空前の人手不足。企業は柔軟な働き方を容認して、多様な人が活躍できるよう、また働くモチベーションの高い人がより活躍できるよう、非正規の待遇改善が必要だとされている。

正規と非正規の待遇差改善を求める同一労働同一賃金については、「働き方改革国会」において本格審議が進められる予定。すでに厚労省からガイドライン案も発表されている。

働き方改革を上手に推進する「7つのポイント」とは

働き方改革を推進するにあたり、気をつけるべきポイントは7つに絞られる。育児や介護、不妊治療、学び直しのためのスクーリングなど、仕事とプライベートの両立を願う理由は人それぞれだ。働く時間と場所の制約解除のほか、個別最適化を意識したマネジメント、テクノロジーの活用など多面的に制度化を進める必要があるだろう。

働き方改革推進のポイント(1)「多様な働き手」を理解する

いま、「均質な人が長時間働く時代」から「多様な人が多様な場所・時間で働く時代」への転換期を迎えている。均質な人とは、毎日8時間以上、週5日勤務でき、転勤の辞令にも従うことができる働き手のことだ。この働き方をできなくなると、労働市場価値が一気に減少するのが実情だろう。

ある調査によると、20代男性の約9割、女性の7割が「働き方改革の推進の有無は、就職活動の企業選びにおいて影響する」と回答している。

ほかにもさまざまなケースがある。抱える事情はさまざまだ。
・育休を取りたいと希望する男性
・子どもが生まれても経験やスキルを活かして働きたいと考える女性
・不妊治療中の夫婦
・学び直しのために大学へ通う人
・介護をしながら管理職をつとめることを会社に言い出せないでいる男性…

多様な背景を持つ人をまずは知り、歩み寄ることから「働き方改革」は始まる。

働き方改革推進のポイント(2)働く場所と時間をフリーにする

次に必要なのは、多様な人が働きやすい環境と制度の整備だ。テレワークやサテライトオフィスを導入して職住近接をはかったり、短日・短時間制度やフレックスタイムの導入など、さまざまな方法があげられる。

「働き方改革」は、制度導入で完結しないし、働く側の自律性や向き不向きも影響する。労使が歩み寄って最適解を模索するのが、最も効果的かもしれない。

働き方改革推進のポイント(3)マネジメントは「個別最適化」へ

イクボスが求心力を持ってきたように、働く場所と時間の多様化が進むと、当然ながらマネジメント手法にも変化が求められる。

たとえばリモートワーカーはオフィスワーカーと比べて、「きちんと評価されているのか」と不安を抱えたり、組織へのエンゲージメントが下がりがちだ。働く人の経験やスキルはもちろん、志向や背景に理解を示し、的確なタイミングで最適なコミュニケーションをはかるマネジメントが必要となる。

「働き方改革」によって人材マネジメントの負荷が増すことは念頭に置いたうえで、「個別最適化」マネジメントへ舵を切ることが大切だ。人材マネジメントの職につく人は、チーム生産性を高めるといわれる「心理的安全性」、人種、性別、年齢、肥満の度合いなどで無意識に人を判断する「無意識のバイアス」などの概念を学ぶ必要もあるだろう。

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働き方改革推進のポイント(4)「非正規」活用はコストカットだけではない、再定義へ

「2018年問題」といわれる無期転換がこの春からはじまる。通算5年以上、同じ組織で働いてきた有期契約労働者が「無期雇用の希望」を申し出ることができるのだ。企業はこれを断れない。

また同一労働同一賃金の法整備も時間の問題だ。これが決まれば、雇用形態だけを理由として待遇に格差をつけることは難しくなっていく。

人件費のコストを抑えるために非正規を活用するという人事戦略は限界なのだ。企業の戦略にあった非正規の在り方を再定義すべきである。

働き方改革推進のポイント(5)働き方改革の弊害を意識しよう

働き方改革には弊害もある。ひとつは、多様な人の「働きやすさ」だけを追求してしまい、「働きがい」が片手落ちになってしまうことだ。「マミートラック」はその代表例だろう。人は、仕事で得られる満足度が高ければ高いほど、生産性も成果も高まるものだ。

ほかにも、業務量の見直しがないまま生産性向上のミッションが中間管理に丸投げされるケースや、仕事が終わっていないのに定時帰宅を強制される「ジタハラ」など、働き方改革の弊害も生まれている。

働き方改革を確実に進めるための第一歩は、「業務の可視化、業務量の削減」ではないだろうか。

働き方改革推進のポイント(6)テクノロジーを積極的に活用して労働生産性を向上しよう

業務の棚卸し、業務量のスリム化を進めるにあたり、有効なのはツールの導入だ。それを機にBPR(ビジネスプロセスの抜本的な再設計)も進めやすいだろう。

いまは「勤怠管理」、「経費生産」、「MA」、「BI」、「ビジネスチャット」、「グループウェア」などさまざまなクラウドサービスが比較的低コストで導入できる。

まだ導入が進んでいないなら、トレンドをおさえたて他社での導入が進んでいるものから実験的に部署単位で導入していることも一案だ。もちろん、ツールを最大限活用するためには、働き方のルールづくりも忘れずに。

働き方改革推進のポイント(7)最終ゴールは「知的生産性の向上」であることを意識しよう

前述のとおり、テクノロジーが進化し産業構造そのものを変革しつつあるいま、「働き方改革」が目指すべきは労働生産性の向上だけでは不十分だ。

多様な人が、それぞれの背景や個性を活かして、イノベーションを起こすことこそが「働き方改革」の最終ゴールである。

イノベーションとは何も、一握りの人のものではない。現状を見つめ直し、より良い状態を模索する、その繰り返しが大きな変革へとつながってゆく。

そのためには、働く人ひとりひとりが幅広く情報を集めて物事をじっくりを考え、考えを深化させることが必要だ。つまり、知的生産性の向上が次世代のテーマとなることは間違いない。