リクルート「働き方改革」取り組みを経て、グーグルの「個別最適化」マネジメントから学んだこと

リクルートで働き方変革プロジェクトに携わったのち、生き方・働き方を再定義するために家族で世界旅行へ出かけている佐藤邦彦氏。リクルート時代から模索してきた日本の「働き方改革」が陥りがちな落とし穴の正体を、海外で得た体験を踏まえて語っていただきました。

リクルート「働き方改革」取り組みを経て、グーグルの「個別最適化」マネジメントから学んだこと

働き方改革の必要性が声高に叫ばれて久しい。筆者は2016年より、リクルートホールディングスで「従業員2万人の働き方改革をどのように推進するか?」というアジェンダに従事していた。

さまざまな試行錯誤の末、キーワードとなりそうなのが「個別最適化」のマネジメントであることは見えたものの、実践は容易ではない。他の日本企業で働き方改革を先導する人事リーダーも悩んでいた。

働き方改革と根本的に向き合うには"ライフシフト"が必要だと考え、夫婦で脱サラし家族で世界放浪の旅に出た。旅の中で世界有数のマネジメント先進企業であるグーグルの欧州本社を訪問し、その真髄を探った。

日本企業が陥っている「働き方改革」の落とし穴とは

グーグル欧州本社訪問の話題へ移る前に、日本人の働き方とリクルート時代の体験について振り返っておきたい。

多くの日本人の働き方はこうだ。

朝9時に出社し、お昼休みは12時〜13時にとり、上司の顔色見ながら退社時間を探る。政府がプレミアムフライデーを推奨すれば、カタチから実践するも、16時からビールを飲んでいいのだろうかと悩む始末。

筆者は、これらの手段の良し悪しを問うているわけではない。とはいえ、マネジメントする側もされる側も、日本人の傾向として「全体最適」「一律」という概念を好みやすいことを示唆していると思われる。

働き方改革を推進するときに、このようなメンタリティが無意識に表れていることが多い。これこそ、働き方改革の落とし穴ではないだろうか。

たとえば、長時間労働是正のために「全員必ず17時に帰宅」をルール化したとする。結果として、仕事が終わらずに家に持ち帰ってしまう。本末転倒である。

また最近では、全社員が定時帰宅を強制されるも残業ありきのライフスタイルに慣れきった家族から敬遠されるのか帰宅しないで街で時間をつぶす「フラリーマン」が続出していると聞く。

働き方改革の推進によって一律マネジメントの限界が明らかになった、氷山の一角ではないだろうか。

リクルート「働き方改革」失敗と改善から見えたこと

リクルートグループでも、時間と場所を自由に選択できる働き方を目指そうとリモートワーク制度の設置が進んだ。しかし、利用が進まない組織も多かった。

原因を探っていく中で、たとえばスタッフ部門でも人事と法務では働き方が全く違うという当たり前のことに気づく。

人事は、採用と評価など各専門性の職務に基づいて人がアサインされている。マネージャーが各自の状況を把握できると仕事が回るため、リモートワークは比較的やりやすい。

法務も同様にM&A担当や海外担当など各専門性の職務に基づいて人がアサインされている。

しかし実際には、1つの案件に対して互いの専門性を持ち寄りながら進めることも多い。またプリントアウトされた書面をみて仕事をするという習慣がある中では、リモートワークはやりにくい。

つまり、制度として従業員に平等な施策が用意されても、仕事の進め方や職場環境など、現場の個別具体的な問題を解決することができなければ、活用は困難なのだ。

リモートワークに適していそうな営業部門でも、こんな落とし穴が待ち受けていた。

売上目標達成に向けて営業が効率的にお客さま先を回ろうとリモートワークを活用する。この時、マネージャーは売上状況を逐一、一元管理したくなる。

状況が見えないので会社に戻ってこいと指示を出し続ける。そうなれば、メンバーの心理状態はリモートワークで効率化を図ろう、とはなりにくい。

制度をうまく活用したくなるような風土作りも、現代のマネジメントには求められているのである。

リクルート「働き方改革」取り組みからの学び

リクルートでは、先ほど述べたような失敗から現場で改善を重ねている。

わかったことは、会社のルールを作る法人と、現場を担うマネージャーが「個別最適化」のマネジメントを実行できるかどうかが鍵となる、ということだ。

逆にいえば、両者がともに「全体最適」「一律」な打ち手を講じることは、働き方改革を停滞させる要因となりやすい。

このような課題感を持ってグーグル欧州本社を訪問した筆者だったが、グーグルで実践されているマネジメントについて具体的な話を聞いて、働き方改革を成功に導く鍵について確信を得た。