非正規格差是正に前進?ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件を解説

6月1日、非正規格差を訴えたハマキョウレックス事件と長澤運輸事件、2件の裁判で最高裁の判断が下されました。その内容は待遇格差は賃金項目を考慮すべきというもので、定年後再雇用者に対し厳しい判断も下されています。非正規の待遇を改善し同一賃金にするにはどうしたらいいのか「非正規格差」について改めてみていきます。

非正規格差是正に前進?ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件を解説

非正規格差について最高裁が初判決

2018年6月1日、労働契約法で禁じられている「不合理な格差」に、正社員と非正規社員の待遇格差が該当するかを争った2件の訴訟判決が、最高裁第2小法廷で下されました。

労働契約法20条の解釈に対し、最高裁が判断を示すのは初めてであることから、その行方に大きな注目が集まっていました。以下、その2件の訴訟内容について簡単に説明します。

長澤運輸事件

定年後継続雇用された嘱託社員3人が、横浜市の運送会社「長澤運輸」を訴えた訴訟です。

彼らは職務給・住宅手当・家族手当がカットされ、かつ歩合給による調整で給与総額は定年前の75%になったといいます。これらから職務内容が同一にもかかわらず賃金の減額は「不合理な格差」にあたるとし、訴訟を起こしました。

これに対して最高裁は「皆勤手当と同趣旨となる精勤手当の格差は不合理」とした一方で、そのほかの手当・基本給の格差は、退職金を受け取っている事実や年金支給が受けられること理由に「不合理性を否定」した。

ハマキョウレックス事件

浜松市の物流会社「ハマキョウレックス」に勤める有期雇用労働者(契約社員)が、6種類の手当について正社員との「不合理な格差」があるとして是正を求め、訴訟を起こしました。

この訴訟は、高裁判決で通勤手当・無事故手当・給食手当など、4種類の手当に不合理な格差があると認定されていました。

そして6月1日、最高裁は「高裁判断を支持」すると判断を下しました。そのうえで、出勤者を確保する必要性は非正規社員でも変わらないとし、皆勤手当に関する審理は高裁に差し戻されました。「住宅手当」については、転勤の有無を理由として不合理性が否定されました。

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最高裁判決のポイント

本件の最高裁の判決では

  • 待遇格差は賃金総額ではなく、個別の賃金項目を考慮すべき
  • 出勤を確保する趣旨は正社員と非正規社員に違いはない
  • 転勤の可能性がある正社員の住宅手当が多額なのは格差とはいえない

の以上3点がポイントだったといえるでしょう。

退職金や賞与、家族手当など、判断が明確にされていない項目を残しているものの、今回の一件で最高裁が非正規労働者の待遇改善につながる可能性を示したことは、非正規格差是正に向けた大きな一歩といえるでしょう。

非正規雇用とはなにか

不合理な格差に関する最高裁の判断がここまで注目されたのは、政府主導で進められている働き方改革の柱となる「同一労働同一賃金」の実現に向け、非正規雇用者の処遇改善が推し進められているからです。

では非正規雇用とはどのような状態を指し、どのような雇用形態を意味するのか、その定義や具体例をみていきましょう。

 

非正規雇用の定義

期間の定めなくフルタイムで勤務する雇用形態を「正規雇用」とするならば「非正規雇用」は、期間・時間などの個別労働契約にしたがって限定的に勤務する雇用形態のことをいいます。たとえば、契約社員や嘱託社員、パートタイムなどがこれに該当します。

契約社員・嘱託社員

職務内容や期間、労働時間などに関し、労働者個別に契約を交わして勤務する雇用形態が「契約社員」です。期間を定めた「有期契約社員」として勤務し、複数回の契約更新を経た結果、実質正規社員と変わらない役割を担うことも少なくありません。

有期契約社員として勤務するという点では、嘱託社員も契約社員の一部といえます。一般的には定年退職後の再雇用契約として認識されることが多いものの、専門性の高い労働者が嘱託を受けて勤務するケースもあります。

派遣労働者

派遣労働者とは、労働契約を結んだ派遣元の指示で派遣先へ赴いて、派遣先の指揮命令を受けて労務を提供する労働者のことです。この場合の労働者は、派遣先企業と雇用関係がないのが特徴です。

そのため、派遣労働者との雇用契約、各種社会保険加入、給与支払いなどは「派遣元」が行い、業務内容の命令は「派遣先」が行います。

パートタイム

フルタイムで働く正規社員と比べて短い日数や時間で、限定的に勤務する雇用形態がパートタイムです。たとえば、1日4時間、週3日など、労働時間を限定した働き方になります。

結果的に総労働時間は短くなり、正規雇用と同等の業務量をこなすのは困難になりがちです。そのため、パートタイムでは単純作業や補助的な業務が中心になりやすく、低賃金かつ働きがい不足に陥りがちであるという問題もあります。

アルバイト

ドイツ語が起源となるアルバイトは、英語ではPart-Timerとなり、基本的にパートタイムと同義語です。つまり、短時間で限定的に勤務する雇用形態のことを指します。

一般的に、主婦が空いている時間を活用して働く形態をパートタイム、学生が学業と並行して働く形態をアルバイトと呼ぶケースが多いです。

非正規雇用の割合

下図は、厚生労働省が労働者に占める正規雇用、非正規雇用の割合と総数を調査した結果をグラフ化したものです。

出典:厚生労働省 非正規雇用の現状と課題

1984年には15.3%に過ぎなかった非正規雇用の割合が、1994年に20%を超えるとその勢いが加速。2004年以降は30%を超える高い水準でさらに増加傾向にあることがわかります。

この調査結果からわかるのは、正規雇用の女性が35万人増の1,127万人、非正規雇用の女性が23万人増の1,392万人と、2017年の調査では女性の就労が増加傾向にあるということです。

これは雇用形態にかかわらず、働く女性が確実に増加していることを意味します。非正規雇用が多いのは、育児などで制約がありながらも働く意欲が高いことの表れだともいえます。今後、非正規格差が是正されていけば、さらにライフスタイルにあわせた働き方を選択しやすくなるでしょう。

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非正規で働く3つのメリット

では、非正規雇用をポジティブなものとしてみた場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ライフスタイルに合わせて働ける

正規雇用の場合、1日8時間・週5日などのフルタイムで期限を設けずに働くことが大前提となります。労働者個別の契約となる非正規雇用の場合は、自身のライフスタイルにあわせた要件を持つ職場を選択して働くことが可能です。

子育てや介護、高齢などが理由で就労に制限がある、短期間限定で働きたいなどのケースでは、非正規雇用という形態はおおいにメリットとなるでしょう。

希望職種を選びやすい

正規雇用で希望の企業に入社しても、転勤や出向などの業務命令を受ける場合も考えられます。しかし、非正規雇用であれば、希望職種に絞って就労先を探し、入社後も当初の職務から大きくかけ離れることは少ないでしょう。

また、正規雇用に比べて職責や権限が限定的なケースがほとんどであるため、専門領域に特化して就労できるのもメリットでしょう。一方で、日本の企業では正社員の業務領域は多岐に渡るケースが多く、ジョブ型雇用の必要性が叫ばれています。

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採用のハードルが低い

フルタイムで期限を設けずに働く正規雇用は、企業側から見た場合も慎重な採用活動を行わざるを得ません。そのため、クリアすべき要件を複数設けるなどで採用基準を高く設定しています。

一方、非正規雇用の場合は、人員が不足しているポジションへの早期人員補充を目的とする場合が多く、業務が限定的であるため、正規雇用と比べて相対的に採用基準が下げられる傾向にあります。

これを利用して希望の企業に入社し、実績を積んで正規雇用に転換するというキャリア戦略を取る人も多く見られます。