雇止めを加速すると囁かれる「無期転換」ルールを正しく理解する3つのポイント

「無期雇用転換」とは、派遣やパート・アルバイトなど有期雇用契約の非正規労働者として働く方を無期雇用に切り替えること。一定の条件を満たせば無期雇用契約への切り替えが可能となることから、企業の人件費高騰を招くとして、雇止めが加速するのではと囁かれてきました。本記事では、誤認されやすい無期転換のルールを正しく理解するための3つのポイントと、企業がいかに対応すべきかを図解しました。

雇止めを加速すると囁かれる「無期転換」ルールを正しく理解する3つのポイント

無期転換とは

まずは、無期転換のルールについてポイントをおさらいしましょう。2012年4月に労働契約法が改正され、その中に無期労働契約への転換に関する条文が盛り込まれました。1回以上雇用契約を更新し、通算した雇用契約期間が5年を超える有期契約労働者が、無期雇用契約への切替を申し込むと、次の契約更新のタイミングから無期雇用契約が成立するという趣旨の条文です。

派遣やパート・アルバイトなど非正規の有期契約労働者を多く抱える企業の中には、この問題を2018年問題と定義し、早期から高い危機感をもって対応に動いている企業も見受けられます。

2017年には「非正規社員○人を正社員化」といったニュースが多く報道されました。また「多様な正社員制度」を設ける企業も、働き方改革推進企業として注目を集めました。これらの背景には人材不足問題のほかに、この無期転換権を意識した側面もあると思ってよいでしょう。しかし無期転換と正社員化はイコールではありません。

2018年は、同一労働同一賃金残業の上限規制など、企業にとって多大なるインパクトを持つ法規制が待ち構えています。企業経営者や経営管理部門の方々はこれらの対応とあわせて、「2018年問題」とも呼ばれる無期転換の基本的なルールをしっかり抑えておく必要があるでしょう。

無期転換ルールの認識を誤りやすいポイントを3つ、まとめて紹介します。

(1)有期契約労働者からの個別申し込みが必要

「2018年問題」と取りだたされる無期転換ですが、「タイミングが到来したら自動的に無期契約に変わる」というわけではありません。労働者からの申し込みがあってはじめて無期雇用契約が成立します。

会社が、派遣やパート・アルバイトなど有期雇用契約の非正規労働者として働く対象者に対し無期転換権が発生することを通知する義務はないのですが、逆に言えばいつのタイミングで対象者から申し出があるかわからないとも言えます。

いま一度、自社で労働契約を取りかわしている派遣やパート・アルバイトなど有期契約労働者の雇用契約期間を確認し、そのタイミングが早くていつ訪れるのかを把握しておくべきでしょう。

ちなみに、もし無期転換の申し込みがなかった場合は、そのまま有期雇用契約を更新することが可能です。

(2)無期転換権の発生は、一律「入社後5年」ではない

「5年のカウント」は、2012年4月以降の契約からスタートします。それ以前から雇用している方については、2012年4月以降に更新した契約の初日からのカウントとなります。

図を用いて説明しましょう。

上記の図のように、ちょうど2012年4月1日に雇用契約を締結し(あるいは更新し)、そこから1年契約を5回繰り返した場合には、2018年4月からの契約に対し、無期転換を申し込むことができます。

2012年6月1日に雇用契約を締結し(あるいは更新し)、そこから1年契約を5回繰り返した場合には、2018年6月からの契約に対し、無期転換を申し込むことができます。

有期労働契約と有期労働契約の間に、空白期間(同一使用者のもとで働いていない期間)が6か月以上ある場合は、その期間より前の有期労働契約は5年のカウントに含めないことになっており、これを「クーリング」といいます。(※通算対象の契約期間が1年未満の場合は取り扱いが異なる)

ちなみに無期転換ルールには「特例」が設けられていますが、対象は限定的です。年間の賃金見込額が1,075万円を超える専門職従事者と定年後に引き続き雇用される方に限られています。

おさらいしますと、派遣やパート・アルバイトなど非正規労働者として有期雇用契約を締結した後に無期転換の申し込みがあった場合には、その次の契約更新のタイミングから無期転換の対象となります。無期転換権は、契約が5年を超えたら更新の都度、行使することができる権利なのです。

(3)無期転換は「正社員と全く同じ待遇」を求めるものではない

派遣やパート・アルバイトなど非正規労働者の方の無期雇用転換を正社員化と混同する方がいますが、このふたつはイコールではありません。

ごくシンプルに言ってしまえば、有期だった雇用契約期間が、期間の定めのない雇用契約に切り替わるということです。以下に変更点をまとめました。

<無期転換後の主な変更点>

有期雇用契約時の対応 無期転換後の変更点
契約終了・解雇 契約期間満了で雇用契約を終了できる 労働基準法に定められた解雇ルールに則った対応
育休取得 制限を設けることが可能 制限を設けることは不可
給与形態 定めなし 定めなし



有期雇用の場合は、余剰人員が発生している、業務量が減少しているなどの理由をもとに契約期間満了で雇用関係を終了させることが可能です。

しかし無期転換後は、正社員同様に労働基準法に定められた解雇ルールに沿った対応が必要になります。

また、有期雇用の場合は育休等の取得に制限を設けることができますが、無期転換後には育休取得に制限を設けることは禁止されており、取得を制限することはできません。

無期転換権はあくまでも雇用の安定を強化するためのルールです。よって、給与形態を正社員と同じく月給制にすることまでは求められていません。

そのほかの福利厚生や教育研修などの待遇も、無期転換した労働者を正社員とを全く等しく扱わなければならないということではありません。

ただし、「もともと長く働いてもらうつもりではあったし、それなら人件費の問題はクリアできそう!」と感じた方は注意が必要です。

現在、政府で議論が進んでいる同一労働同一賃金は、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保を求めているからです。合理的な理由なく雇用形態だけを理由として待遇に格差をつけることは難しくなっていくでしょう。

無期転換のタイミングで正社員に切り替えるという企業が多いのは、このためです。どちらにしても、人件費のコストを抑えるために有期雇用を活用するという人事戦略は限界にきているのです。