「ジョブディスクリプションの明確化」こそ、働き方改革の第一歩

安倍内閣が主導する働き方改革法案の先行きが不透明な状況が続く4月11日、政策シンクタンクPHP総研主催「新しい働き方経営者シンポジウム」が東京赤坂で開かれた。メンバーシップ型雇用から日本式ジョブ型雇用への移行や、副業・兼業の必要性などについて、パネリスト4名による熱い議論が交わされた。(※6月11日更新)

「ジョブディスクリプションの明確化」こそ、働き方改革の第一歩

シンポジウム開催にあたりPHP総研代表 永久寿夫氏は、創業者である松下幸之助氏の著書『道をひらく』から引用し、「人より一時間、よけいに働くことは尊い。努力である。勤勉である。だが、今までよりも一時間少なく働いて、今まで以上の成果をあげることも、また尊い。そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか」という言葉を紹介した。

周知のとおり、日本人の生産性はOECD加盟35か国中20位(時間あたり)とふるわない。いまこそ、「勤勉である」ということの意味を見直し、生産性高く働くとはどういうことかをもう一度意識すべきときだ。

メンバーシップ型雇用から「ジョブ型雇用」へ

続く「新しい働き方経営者会議」による提言「経営者が日本の働き方を変える」の紹介では、メンバーシップ型雇用から日本式ジョブ型雇用への移行を強調した。

「従来の日本企業が取り入れてきたメンバーシップ型雇用では、仕事内容が曖昧なまま採用されて、働く場所や時間も会社の都合に合わせるという働き方が一般的だった。業務を幅広くこなせるゼネラリストを企業が大量に雇用することが、大量消費大量生産の時代においては競争力の源泉になり得たためだ。しかしニーズが多様化し、技術が日進月歩を遂げるいま、それでは企業競争力は下がる一方だ。働く人の幸福感も減退する。そうやって漫然と働くから、生産性が低いままなのではないか。」(永久氏)

この停滞感を打破するためには、メンバーシップ型雇用から「ジョブ型雇用」に切り替えていく必要があるという。ジョブ型雇用とは、「人」を基準にその人にふさわしい仕事を与えるメンバーシップ型雇用に対し、「仕事」を基準にその仕事にふさわしい人をつける雇用形態だ。ジョブ型雇用では企業と従業員の間で個別に雇用契約を結ぶ際に職務内容が明確に定められ、従業員ひとりひとりがプロとして活躍することが求められる。役割、求められる能力、成果、報酬、勤務地、労働時間は契約によって明確に定められ、契約は年度ごとに更新。従業員一人ひとりの能力と希望に応じて仕事の内容と報酬が決まるという働き方だ。

「ジョブ型雇用の組織では、適材適所を図りやすいだけではなく、人材獲得もしやすくなる。働き手は自分の持っている実力によって報酬を得ることができるようになるため、モチベーションが上がりやすい。自分自身の適性や、労働市場における市場価値もわかりやすくなり、キャリア形成にも役立つだろう。」(永久氏)


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世界の労働市場でガラパゴス化する日本

パネルディスカッションでは、冨山 和彦氏(株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO)、青野 慶久氏(サイボウズ株式会社 代表取締役社長)、北野 泰男氏(キュービーネット株式会社 代表取締役社長)、日比谷 尚武氏(Sansan名刺総研 所長/一般社団法人at Will Work理事)が登壇。

世界の労働市場における日本のガラパゴス化について、さまざまな立場から警鐘が鳴らされた。

「実は、ジョブ型雇用を行っていない国は、日本だけだ。欧米などの先進国に限った話ではなく新興国も含めて、日本以外のグローバル企業ではジョブ型雇用が当たり前で、日本でよく聞かれるゼネラリストという職群は存在しない。」(冨山氏)

冨山 和彦氏(株式会社経営共創基盤 代表取締役CEO)

日本企業だけが従来の「メンバーシップ型雇用」を頑なに続けていては、日本人だけがグローバルローテーションから弾き出されてしまう。同時に、人材を海外から雇い入れることもできなくなり、日本は労働市場においてガラパゴス化してしまう。

メンバーシップ型からジョブ型へと雇用のあり方を転換し、雇用から働き方を変えていかなければ、経営が成り立たない時代なのだ。長きに渡りこの点を主張してきたという冨山氏は「この転換は必然である」と強調する。